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第14話 面会
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今日はこれから、お父様と一緒にエンゲイト公爵家の当主様とお会いすることに。 お父様から少し教えてもらった。どうやら、私がナハティガル男爵家に引き取られることになった取引について、公爵家も関係があるらしい。
私が新しい生活に慣れた頃合いを見て、一度どこかで話し合いの場を設けたい、と言われていたそうだ。その話し合いの場に、これから向かう。
「緊張しているかい?」
「はい、少し……。でも、大丈夫です」
馬車に乗って、エンゲイト公爵家へ向かっている途中。隣りに座っていたお父様が、心配そうに私を見つめていた。
「そうか。だが、無理だけはしないように」
「ありがとうございます」
お父様のお気遣いに感謝しながら、目的地へ到着するのを待つ。しばらくすると、馬車が止まった。目的地に到着したようだ。
お父様が先に降りて、私に手を差し伸べてくれる。
「ありがとうございます」
私は微笑みながら、お父様の手を取った。馬車を降りると、そこには豪華な建物があった。ここが、エンゲイト公爵家のお屋敷。ここからは、ナハティガル男爵家の娘として失礼のないように気をつけて振る舞う。
「ようこそいらっしゃいました、アレッサンドロ様。それと、ベリンダ様も」
私達を出迎えてくれたのは、執事服を着たヒゲの男性。とても落ち着いた雰囲気のある人だった。彼に案内されて、屋敷の中に入る。
「どうぞ、こちらへ」
案内された部屋は、大きなテーブルがある広間だった。そして、既に一人の男性が座っている。
「よく来てくれた、二人共」
「お久しぶりです、ブルクハルト様」
お父様が挨拶して、横に立つ私も一緒に頭を下げた。エンゲイト公爵家の当主様は優しそうな方で、穏やかに笑みを浮かべている。
「そちらが、ベリンダ嬢だね。一度、君のパーティーでも挨拶したことがあったな。改めて、私がブルクハルトだ」
「お久しぶりでございます、ブルクハルト様」
ブルクハルト様がパーティーに参加してくれた時のことは、ハッキリ覚えている。向こうも覚えていてくれたようで、とても光栄だった。
「まずは座りなさい」
「はい」
「失礼します」
私達は椅子に腰掛ける。すると、すぐにメイドさん達が飲み物を用意してくれた。
「さて。早速だが、本題に入ろうか。私の息子であるウォルトンについてだ」
ウォルトン様のことも、よく覚えている。パーティーに何十回も参加をしてくれた御方。私の考えた演出を気に入ってくれたようで、とても評価してくれた人だった。
「ベリンダ嬢も知っているとは思うが、彼は今年で18歳になる。それなのに、まだ相手が居ない。そろそろ結婚相手を見つけなければならない年齢なのにだ」
「そうなのですね」
ウォルトン様は、パーティーで非常に人気だった。だけど、会場で女性にダンスを申し込んでいる場面を見たことがない。パートナーも連れずに、会場でいつも一人で行動している。色々な参加者と談笑したり、挨拶している姿は見かけるけれど。
だから、一人で行動するのが好きなのだろうと思っていた。まだ彼は、婚約相手が決まっていなかったのね。だけど、ウォルトン様ならすぐお相手が見つかると思う。
そんな話を、なぜ私にするのか。疑問に思っていると。
「そこで、息子と君を結婚させようと考えている」
「えっ……!?」
思わず、驚きの声が出てしまった。どうして、私なんかと? 過去に一度、婚約を破棄されたような女と?
「まだ、正式に決めたわけではない。なので一度、ウォルトンと会って話をしてくれないか?」
「は、はい。もちろん、それは構いませんが……」
「では、決まりだな」
こうして私は、ウォルトン様と会ってお話することになった。
私が新しい生活に慣れた頃合いを見て、一度どこかで話し合いの場を設けたい、と言われていたそうだ。その話し合いの場に、これから向かう。
「緊張しているかい?」
「はい、少し……。でも、大丈夫です」
馬車に乗って、エンゲイト公爵家へ向かっている途中。隣りに座っていたお父様が、心配そうに私を見つめていた。
「そうか。だが、無理だけはしないように」
「ありがとうございます」
お父様のお気遣いに感謝しながら、目的地へ到着するのを待つ。しばらくすると、馬車が止まった。目的地に到着したようだ。
お父様が先に降りて、私に手を差し伸べてくれる。
「ありがとうございます」
私は微笑みながら、お父様の手を取った。馬車を降りると、そこには豪華な建物があった。ここが、エンゲイト公爵家のお屋敷。ここからは、ナハティガル男爵家の娘として失礼のないように気をつけて振る舞う。
「ようこそいらっしゃいました、アレッサンドロ様。それと、ベリンダ様も」
私達を出迎えてくれたのは、執事服を着たヒゲの男性。とても落ち着いた雰囲気のある人だった。彼に案内されて、屋敷の中に入る。
「どうぞ、こちらへ」
案内された部屋は、大きなテーブルがある広間だった。そして、既に一人の男性が座っている。
「よく来てくれた、二人共」
「お久しぶりです、ブルクハルト様」
お父様が挨拶して、横に立つ私も一緒に頭を下げた。エンゲイト公爵家の当主様は優しそうな方で、穏やかに笑みを浮かべている。
「そちらが、ベリンダ嬢だね。一度、君のパーティーでも挨拶したことがあったな。改めて、私がブルクハルトだ」
「お久しぶりでございます、ブルクハルト様」
ブルクハルト様がパーティーに参加してくれた時のことは、ハッキリ覚えている。向こうも覚えていてくれたようで、とても光栄だった。
「まずは座りなさい」
「はい」
「失礼します」
私達は椅子に腰掛ける。すると、すぐにメイドさん達が飲み物を用意してくれた。
「さて。早速だが、本題に入ろうか。私の息子であるウォルトンについてだ」
ウォルトン様のことも、よく覚えている。パーティーに何十回も参加をしてくれた御方。私の考えた演出を気に入ってくれたようで、とても評価してくれた人だった。
「ベリンダ嬢も知っているとは思うが、彼は今年で18歳になる。それなのに、まだ相手が居ない。そろそろ結婚相手を見つけなければならない年齢なのにだ」
「そうなのですね」
ウォルトン様は、パーティーで非常に人気だった。だけど、会場で女性にダンスを申し込んでいる場面を見たことがない。パートナーも連れずに、会場でいつも一人で行動している。色々な参加者と談笑したり、挨拶している姿は見かけるけれど。
だから、一人で行動するのが好きなのだろうと思っていた。まだ彼は、婚約相手が決まっていなかったのね。だけど、ウォルトン様ならすぐお相手が見つかると思う。
そんな話を、なぜ私にするのか。疑問に思っていると。
「そこで、息子と君を結婚させようと考えている」
「えっ……!?」
思わず、驚きの声が出てしまった。どうして、私なんかと? 過去に一度、婚約を破棄されたような女と?
「まだ、正式に決めたわけではない。なので一度、ウォルトンと会って話をしてくれないか?」
「は、はい。もちろん、それは構いませんが……」
「では、決まりだな」
こうして私は、ウォルトン様と会ってお話することになった。
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