男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ

文字の大きさ
上 下
53 / 60

第53話 任命式3

しおりを挟む
 ステージの上で、僕は任命書を受け取った。

 金色の立派な額縁に入った紙には、宣伝大使に任命するという旨が書いてあった。それを両手で持った瞬間に、カメラのフラッシュが焚かれた。眩しくて何も見えないぐらい、ビカビカっと連続で。思わず目を細める。すごい量の写真を撮られていた。

 その後、任命書を胸に抱えてマイクを片手で持ち、集まった人々に向かって挨拶をする。用意してもらったセリフを、そのまま言うだけの簡単な仕事だ。好感の持てるような振る舞いを心がけて。

「本日、宣伝大使に就任することになりました、七沢直人です」

 すると、割れんばかりの拍手と歓声が起こった。まるで、アイドルのライブ会場みたいな雰囲気だと思った。ものすごい盛り上がりである。先程まで緊張感のある厳かな感じの会場だったのに、一気にお祭りムード。

 簡単な挨拶を終えて、僕はステージから降りる。とりあえず、ここでの仕事は終わり。次の出番は式典が終わってからのインタビュー。それまで、少し待機となる。

 僕がステージから降りて会場の人達が落ち着くと、任命式も順調に進む。そして、何の問題もなく終わった。

「こちらに移動を、お願いします」
「はい、わかりました」

 案内係のスタッフに誘導されて場所を移動する。少し広めのホテルの廊下には既に多くの取材陣がいて、僕の到着を待っていたようだ。立ち位置につくと、再び一斉にフラッシュが炊かれる。

 ステージの上で撮られた時よりも距離が近くて、さらに激しい光に目がチカチカした。眩しいな。そんな僕の様子に気付いたのか、一緒に行動していた久遠さんが皆に注意してくれた。

「カメラのフラッシュを止めてください! 彼の目に余計な負担がかかります!」

 カメラマン達は慌ててフラッシュを止めてくれた。そのおかげで、眩しさは和らいだ。助かった。ありがとう、久遠さん。

 インタビューが始まったが、質問内容は事前に渡された台本通りの内容だった。

「宣伝大使のご就任、おめでとうございます。今のお気持ちを教えてください」
「そうですね。とても光栄なことですし、緊張しています。でも、一生懸命頑張りますので、よろしくお願いします」
「これからの活動について、意気込みを聞かせて下さい」
「まだ具体的には決まっていませんが、様々なイベントなどに参加して政策に対する認知度向上に貢献できたらと思っています」

 そんな感じで、記者の質問に淡々と質問に答えていった。当たり障りのない内容なので、特に深く考えることもなく、事前に用意されていた内容をスラスラと答えるだけ。

「インタビューの時間は以上となります。ありがとうございました」

 スタッフの人がそう告げると、集まっていた記者やテレビクルー達は素直に引き上げていく。僕も、控室へ戻ることになった。

「お疲れ様、立派だったよ」
「すごく堂々としていて、カッコよかったです!」

 控室に戻ると、智恵子さんや小川さん、スタッフの皆が温かく迎えてくれた。彼女たちのおかげで、なんとか無事に終えることができたと思う。本当に感謝しかない。

「ありがとうございます、皆さん」

 お礼を言うと、智恵子さんはニッコリと笑ってくれた。

「午前は、これで終わりだろう。この後の予定は?」
「午後から記者会見ですね。その前に、昼食の時間があります」

 智恵子さんの質問に、久遠さんが答える。時計を見ると、時刻は12時前だった。スケジュール通りの進行状況である。緊張から解放されて、お腹も空いていた。昼食がとても楽しみだ。

「注文すれば、控室に料理を運んできてくれるそうです」
「じゃあ、お昼ご飯にしようか」

 智恵子さんの一言で、皆が注文することになった。僕もメニュー表を渡されて、何を食べようか選ぶ。どれも美味しそうだな。どれにしようかな。

 じっくり悩んで、食べたいものを選んだ。

「じゃあ、コレとコレ。あと、この料理も注文をお願いします」
「相変わらず、よく食べるわね。午後も仕事があるようだけど、大丈夫かい?」
「うん、大丈夫。お腹、ペコペコなんだ」
「そうか。まあ、存分に食べなさい」

 僕が選んだ料理の量を見て、智恵子さんが呆れた顔をする。注文を取りに来た人や、スタッフの皆も驚いていた。確かに、かなりボリュームがある料理ばかりかも。でも、全然平気である。むしろ、もっと食べてもいいぐらいだ。仕事のことを考えて、腹八分目ぐらいに抑えておく。



「お待たせしました。こちら、ご注文のお品でございます」

 直ぐに注文した料理が届いた。どうやら、ホテルのシェフが作ってくれたらしい。高級ホテルに相応しい、非常に豪華な食事だった。

 注文した料理を控室まで運んできてくれたホテルの人達が、テーブルの上に料理を並べる。良い匂いが、部屋の中に充満する。さらに、お腹が空いた。早く食べたい。

「うわぁ、すごい! とっても美味しそうですね!」

 小川さんも目を輝かせている。僕も同じ気持ちだ。

「さあ、温かいうちに頂こうじゃないか」

 ようやく、料理が並べ終わった。智恵子さんが音頭を取って、皆でいただきますをする。

 智恵子さん、小川さん、久遠さんにスタッフが数十名。こんなに大人数で食事するのは初めてかもしれない。賑やかで楽しいな。

「美味しいね、これ」
「はい、最高です!」
「そうだね。とても美味しいわ」

 楽しく会話しながら、昼食を頂く僕達。あっという間に完食してしまった。満足感でいっぱいになる。ごちそうさまでした。

 その後、少し休憩を挟んでから記者会見場へ向かうことに。午後からも頑張ろう。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます

neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。 松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。 ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。 PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。

男女比1対99の世界で引き篭もります!

夢探しの旅人
恋愛
家族いない親戚いないというじゃあどうして俺がここに?となるがまぁいいかと思考放棄する主人公! 前世の夢だった引き篭もりが叶うことを知って大歓喜!! 偶に寂しさを和ますために配信をしたり深夜徘徊したり(変装)と主人公が楽しむ物語です!

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

処理中です...