男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ

文字の大きさ
上 下
42 / 60

第42話 盛り上がり続ける配信 ※天川有加里視点

しおりを挟む
「えーっと、それで。まず話しておきたいのは、私達の出会いから。前に私は配信で語ったけれど、一ヶ月ぐらい前かな」
「はい、そうですね。僕は、その配信も見てましたよ」
「そういえば、そうだったね。配信中にメッセージを送って、すぐに返してくれて。あの時は、ありがとう」
「いえいえ、そんな。配信、とっても面白かったです」

 なんとか話せているかな。いつもはカメラに向けている視線を彼の方に向けて話をする。楽しそうに笑って会話してくれる、彼の表情が見える。やっぱり、いつもとは違う配信の雰囲気。カメラじゃない場所を見て話すのは不思議な感覚だ。

チャット欄▼
:めちゃくちゃ楽しそうに話してるやん
:羨ましい
:その配信は見たよ
:アーカイブを何度も見直した
:あの話、本当だったのね
:視線の先に彼が座っているのか

「それで、私が道の真ん中で頭を抱えていて、君が声をかけてくれた」
「心配だったので。あんな所でしゃがみ込んでいて、急病なのかと心配しました」
「そうだった。あの時は心配させて、ごめんなさい!」
「ほんとですよ! でも、何事もなくて良かったです」

 あの時は、彼を心配させてしまい本当に申し訳ないと、今でも思っている。しかもその後に、悩みを聞いてもらって色々と解決までしてくれた。あれから、状況が良くなって、今では配信に出演までしてくれた。感謝してもしきれない恩人だった。

チャット欄▼
:心配かけるな
:前の配信でも思ったけど、危ないよ
:友人君は、ちゃんと気をつけて
:危ない女性には近づいたらダメだよ
:心優しいところが素敵
:私も心配されたい

 視聴者達は全員彼の味方のようで、心配するような言葉が次々とチャット欄に書き込まれていく。次々と流れていく視聴者のメッセージを横目で確認しながら、事前に用意していた台本に沿って話を続ける。この1ヶ月間を振り返って話す。

「それで、あの時に連絡先を交換して、メッセージのやり取りしたね」
「そうですね。WeTubeとか配信の事とか色々と教えてもらって、楽しかったです」
「そっかそっか。君は、配信とか見たことなかったんだよね」
「ペットの動画とか好きで見てるけれど、他は見たことないかなぁ。配信を見るのはミルキーちゃんのが初めてかな」
「あ、うん。み、ミルキーちゃん……」

チャット欄▼
:仲良し
:そんな気楽に男性と連絡できるなんて信じられない
:清楚な彼を配信の世界に引きずり込むなんてダメでしょ
:ペットの動画、いいよね
:動画は見てるんだ
:名前を呼ばれて、恥ずかしがってる

 彼に配信者としての名前で呼ばれた時に私は、少し恥ずかしさを感じてしまった。配信で本名を出さないように気をつけてくれて、ありがたい事なんだけれど。

 こんな事になるのなら、もっとちゃんと考えてから配信者名を決めるべきだった。かっこいい感じの名前で、活動をスタートするべきだったかな。

 ちょっとした後悔もありながら、次の話題へと進む。

「それで、私たちは2人で映画を見に行ったね」
「あれは、ミルキーちゃんの妄想デートが実際に楽しめるのかどうか、検証してみるというデートでした」
「結果は、色々と失敗があったけど」
「僕は、とても楽しかったですよ」
「そ、そう……?」

チャット欄▼
:恋愛映画の失敗
:チョイスミス
:その話も配信で聞いた
:事前の確認不足
:失敗した話を聞いて、私たちは失敗しないように気をつけられる
:一緒に見に行ってくれる相手が居ないけどね
:そんな事もあったみたいだね
:やっぱり優しい、友人君

「実は、あの後に何本か別の恋愛映画を見てみたんですよ。やっぱりどれも、僕には合わなくて。やっぱり、アクションやSF系のジャンルが好きです」
「そうなんだ!」

チャット欄▼
:やっぱり駄目だったか
:男性に恋愛映画は合わないのね
:面白いのに
:SF系も見るんだ。偉いね。
:あの作品は見た?
:おすすめの恋愛映画があるよ
:また挑戦してみて
:次見たら面白さが理解できるかも
:合わないって言ってるんだから、そんな作品をオススメするな

 2人で映画を見に行ったときのことを振り返る。彼は、あの後にも恋愛映画を見てみたらしい。そして、合わないことを改めて実感したようだ。次に彼と映画を見る時は必ず、アクション系の話題作を見るようにしよう。彼の好みを事前に調べておき、合わせることが大事なんだと学習済みだ。

 話題も次々と変わっていく。映画の好みの話から、今まで見てきた作品で面白いと思ったもの。そして、趣味の話に。

 私は配信することが好きで、今も活動を続けている。これで稼いでいるけれども、趣味みたいなものだ。

 彼は体を動かすことが好きらしく、スポーツが好きとのこと。他にも色々と多くの趣味を持っているそうだ。好きなことが多くて、凄いと思った。

チャット欄▼
:多趣味な男性って珍しいね
:私も、彼と一緒にスポーツを楽しみたい
:男性のスポーツしてる姿なんて、素敵だろうなぁー
:見てみたい
:私も好きだよ。一緒だね!
:ゲーム実況とか興味あるかな
:配信のチャンネルを開設したら人気になりそうだ

 そんなことを話しているうちに、あっという間に1時間が過ぎていた。体感だと、10分ぐらいに思うほど会話に集中してしまっていた。しっかり時間は経過していたようだ。

「あっと、もうそろそろ終了の時間かな」
「あ、もうそんな時間ですか」

チャット欄▼
:えー
:もう終わるの?
:早いよ
:まだ続けてほしい
:終わるな
:早すぎるよ
:予定していた時間を伸ばそう
:続けて続けて
:まだお話聞きたいよ

 視聴者の多くが引き留めようとしてくれている。それは嬉しいこと。でも今回は、予定の時間になったら絶対に配信を終わらせるつもりだ。

「彼は、今回が初めての配信だから。あんまり長く続けると疲れちゃうから、ね」
「気を使ってくれて、ありがとうございます」
「そんなの当然よ」

チャット欄▼
:それなら仕方ない
:早く配信を終わらせよう
:予定の時間を超えないように気をつけて
:次の配信を楽しみにしてるよ!
:疲れたら休まないとね
:無理はしないで
:友人君、今日は頑張ったね 
:出演してくれてありがとう!
:声が聞けて良かった

 視聴者全員が手のひらを返して、配信を終了することを納得してくれた。ということで配信を終わらせる。

「今日は、配信で君とお話できて楽しかった」
「僕もです。また機会があれば、出演したいです」
「本当に!? それは良かった。またぜひ。ということで、最後は二人で」
「「バイバイ」」

 最後に私たちは声を合わせて、視聴者と挨拶。こうして今回の配信は終了した。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます

neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。 松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。 ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。 PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。

男女比1対99の世界で引き篭もります!

夢探しの旅人
恋愛
家族いない親戚いないというじゃあどうして俺がここに?となるがまぁいいかと思考放棄する主人公! 前世の夢だった引き篭もりが叶うことを知って大歓喜!! 偶に寂しさを和ますために配信をしたり深夜徘徊したり(変装)と主人公が楽しむ物語です!

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

処理中です...