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第38話 出演依頼 ※天川有加里視点
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私が雑談で話している直人くんの存在は、本当なのか嘘なのか。
掲示板やSNSで何度も繰り返し議論されているのを、私は知っていた。もちろん、私の語っている話は本当なのだけれど、視聴者には真偽の判断はできないと思う。
私の話は、全て本当だと主張してくれる人たちが居る。けれど、裏方として作家を雇い雑談するために作り話を書かせているとか、そんな噂もあるらしい。そうやって疑っている人も多く居るようだ。
私の話は全て嘘だろうと思い込んでいる人たちから、実在するのなら証拠を出せとダイレクトメッセージで何件も送られてきていた。
最初は無視していた。けれども、ここまで多くの注目が集まってしまった以上は、対処しなければならないだろう。この問題を放置することは出来そうにない。炎上につながる可能性もあるから。
でも、実在することを証明するためには直人くんの協力が必要不可欠だった。
配信か動画に出演してもらう。そうすれば、一発で視聴者の皆に信用してもらえるはずだ。とても簡単なこと。編集できない配信に出演してもらえれば、確実かしら。
だけど、直人くんを配信の世界に関わらせてもいいのだろうか。彼には普通の生活がある。もしものことがあって、彼に迷惑をかけてしまうことになったら大変だし。そうなってしまった場合に、私は責任を取ることが出来るのだろうか。
それに、もしも出演の依頼を断られてしまったらどうしよう。それで面倒だと思われたりして、彼との関係が途切れることになってしまったら。
考えれば考えるほど不安になってくる。本当にこれでいいのか? 他に良い方法は無いか。彼の協力がなくても、証明する方法は無いのだろうか。
私は、しばらく迷い続けていた。そして、決断した。
直人くんに現状を話してみる。それしかない。協力がなければ、証明することなど不可能なこと。他に良い方法が思いつかない。
また悩みがあったら気軽に相談してください、と言ってくれた彼。その言葉を信じて、思い切って全て話してみようと思う。覚悟を決めて、彼と話してみることに。
平日の夕方。この時間なら学校も終わっていて、お話できるはずだ。そんな時間を狙って、彼に電話をかけてみた。つながるまで、私はドキドキした。すると、すぐに彼は電話に出てくれた。
「もしもし、有加里さん?」
スマホから、彼の優しい声が聞こえてきた。右手でスマホを強く握りしめながら、話し始めた。
「あ、うん、直人くん。今、ちょっとお話できる? 相談したいことがあって」
「いいですよ。どうしました?」
少し緊張したけれど、落ち着いて会話を始めることが出来たかな。私は単刀直入に、配信のことについて思い切って彼に話してみることにした。
「有加里さんの配信に出演ですか? いいですよ」
「あ、えっ!? い、いいの?」
「もちろん。なんだか、面白そうですし」
「そ、そっか。ありがとう」
拍子抜けするほどあっさりと、配信に出演することを了承してくれた。こんな簡単に引き受けてくれて大丈夫なのだろうか。少し心配になる。
とりあえず、このまま続けて詳しい配信内容について決めることにした。
「じゃあ、えーっと。その配信は、何をしようかな」
「有加里さんの、いつもの雑談に僕がお邪魔するという形でどうでしょう?」
「そうね。あまり、企画をカッチリ決めないで。フリー雑談で」
「はい、それが良いと思います」
「もちろん声だけの出演で」
「それは、有加里さんのご判断に任せますよ」
「配信の曜日は、直人くんの都合が良い日で」
「じゃあ、次の土曜日のお昼とか、どうですか?」
「あ、うん。じゃあ、土曜日に」
配信に関する内容も、トントン拍子で決まっていく。予定としては来週の土曜日の昼から配信を開始する予定になった。
本当に、あっさり決まってしまった。まだ実感がわかないまま話し合いは終わる。この短時間で、私の悩みも全て解決した。また彼に助けてもらった。
「じゃあ、えっと。土曜日の配信、よろしくね直人くん」
「はーい。有加里さんとの配信、楽しみにしてますね。それじゃあ、バイバイ」
「う、うん。バイバイ」
私は直人くんとの通話を切ると、早速パソコンを立ち上げた。次の土曜日に行う配信で、彼が出演してくれるという旨を告知するためである。とりあえず、企画内容はフリー雑談。彼の顔出しは無し、ということで決定したことを皆に伝える。
「これで、よし!」
この配信で、私の話は全て本当だということを証明することが出来るだろう。
掲示板やSNSで何度も繰り返し議論されているのを、私は知っていた。もちろん、私の語っている話は本当なのだけれど、視聴者には真偽の判断はできないと思う。
私の話は、全て本当だと主張してくれる人たちが居る。けれど、裏方として作家を雇い雑談するために作り話を書かせているとか、そんな噂もあるらしい。そうやって疑っている人も多く居るようだ。
私の話は全て嘘だろうと思い込んでいる人たちから、実在するのなら証拠を出せとダイレクトメッセージで何件も送られてきていた。
最初は無視していた。けれども、ここまで多くの注目が集まってしまった以上は、対処しなければならないだろう。この問題を放置することは出来そうにない。炎上につながる可能性もあるから。
でも、実在することを証明するためには直人くんの協力が必要不可欠だった。
配信か動画に出演してもらう。そうすれば、一発で視聴者の皆に信用してもらえるはずだ。とても簡単なこと。編集できない配信に出演してもらえれば、確実かしら。
だけど、直人くんを配信の世界に関わらせてもいいのだろうか。彼には普通の生活がある。もしものことがあって、彼に迷惑をかけてしまうことになったら大変だし。そうなってしまった場合に、私は責任を取ることが出来るのだろうか。
それに、もしも出演の依頼を断られてしまったらどうしよう。それで面倒だと思われたりして、彼との関係が途切れることになってしまったら。
考えれば考えるほど不安になってくる。本当にこれでいいのか? 他に良い方法は無いか。彼の協力がなくても、証明する方法は無いのだろうか。
私は、しばらく迷い続けていた。そして、決断した。
直人くんに現状を話してみる。それしかない。協力がなければ、証明することなど不可能なこと。他に良い方法が思いつかない。
また悩みがあったら気軽に相談してください、と言ってくれた彼。その言葉を信じて、思い切って全て話してみようと思う。覚悟を決めて、彼と話してみることに。
平日の夕方。この時間なら学校も終わっていて、お話できるはずだ。そんな時間を狙って、彼に電話をかけてみた。つながるまで、私はドキドキした。すると、すぐに彼は電話に出てくれた。
「もしもし、有加里さん?」
スマホから、彼の優しい声が聞こえてきた。右手でスマホを強く握りしめながら、話し始めた。
「あ、うん、直人くん。今、ちょっとお話できる? 相談したいことがあって」
「いいですよ。どうしました?」
少し緊張したけれど、落ち着いて会話を始めることが出来たかな。私は単刀直入に、配信のことについて思い切って彼に話してみることにした。
「有加里さんの配信に出演ですか? いいですよ」
「あ、えっ!? い、いいの?」
「もちろん。なんだか、面白そうですし」
「そ、そっか。ありがとう」
拍子抜けするほどあっさりと、配信に出演することを了承してくれた。こんな簡単に引き受けてくれて大丈夫なのだろうか。少し心配になる。
とりあえず、このまま続けて詳しい配信内容について決めることにした。
「じゃあ、えーっと。その配信は、何をしようかな」
「有加里さんの、いつもの雑談に僕がお邪魔するという形でどうでしょう?」
「そうね。あまり、企画をカッチリ決めないで。フリー雑談で」
「はい、それが良いと思います」
「もちろん声だけの出演で」
「それは、有加里さんのご判断に任せますよ」
「配信の曜日は、直人くんの都合が良い日で」
「じゃあ、次の土曜日のお昼とか、どうですか?」
「あ、うん。じゃあ、土曜日に」
配信に関する内容も、トントン拍子で決まっていく。予定としては来週の土曜日の昼から配信を開始する予定になった。
本当に、あっさり決まってしまった。まだ実感がわかないまま話し合いは終わる。この短時間で、私の悩みも全て解決した。また彼に助けてもらった。
「じゃあ、えっと。土曜日の配信、よろしくね直人くん」
「はーい。有加里さんとの配信、楽しみにしてますね。それじゃあ、バイバイ」
「う、うん。バイバイ」
私は直人くんとの通話を切ると、早速パソコンを立ち上げた。次の土曜日に行う配信で、彼が出演してくれるという旨を告知するためである。とりあえず、企画内容はフリー雑談。彼の顔出しは無し、ということで決定したことを皆に伝える。
「これで、よし!」
この配信で、私の話は全て本当だということを証明することが出来るだろう。
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