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第36話 デート報告配信3 ※天川有加里視点

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「映画の選択は失敗したけど、挽回する方法はあるよ」

 私は、自分が実践したことを視聴者に語る。

チャット欄▼
:ほんと?
:どうやったの
:取り戻せたのか
:教えて
:気になる

「それはね。映画を見終わった後に感想を言い合って、自分が面白かったと思った部分を本気で語り合うんだよ」

チャット欄▼
:えー?
:話聞いてくれるんか?
:そんな方法で
:私の話なんて聞いてくれないよ
:まあ、試してみる価値はあるんじゃない?
:そもそも映画を一緒に見に行ってくれる男が居ない

「どうして世間で話題になっている作品なのかをじっくりと語ってみたら、彼も納得してくれたよ。だから、話し合うことは大事だね」

チャット欄▼
:話を聞いて納得してくれたのか。心が広い男だ
:聞き分けがいい
:羨ましい
:ミルキーちゃんが今までの配信で鍛えてきたトーク力があるからこそ
:私には無理?
:彼が心の底から納得したのか、本当のところは分からないけどね
:面倒だから、ただ単に話を合わせただけとか?

 他の男性と比べて、直人くんが特別に優しいという可能性は高い。だから私の話を聞いて、映画に対する評価を適当に合わせてくれたのかもしれない。

 だけど、私が彼と話した時の表情に嘘はなかった。本当に楽しく、映画について語り合った。

 彼以外だと、それほど真剣に話を聞いてくれないかもしれない。それは、私には分からない。あれこれ考えると、色々と悩んでしまいそうだ。だから私は、実際にあった出来事を皆に話すだけ。

 この情報を、上手く活用してほしい。そして、幸せな体験を皆にも。

「映画について彼と語り合った後、その日は帰ることになった」

チャット欄▼
:もう帰るのか
:映画を見てお茶するだけじゃ物足りなさそう
:ホテルに連れていけば
:ワンチャン

 面倒なメッセージは無視して、私は話を続ける。もしかしたら、今も彼が配信を見ているかもしれない。反応してしまう様子は、彼に見られたくないから。

「もちろん、帰りも電車で」

チャット欄▼
:また電車か
:やっぱり車は必要そう
:一緒に帰るのか
:ちゃんと送り届けないと

「帰りの道は、かなり緊張もほぐれて楽しく会話することが出来た。内容はプライベートな事なので、詳しくは言えないけど」

 この時に彼と色々お話した。趣味の話とか、他にも色々。もしかしたら、誰なのか特定できてしまうような個人情報をポロッと口に出してしまいそうなので、詳しい内容については皆には教えない。気をつけないと。

チャット欄▼
:配信で言えないようなことを……!?
:いや、だから羨ましすぎるよ
:私も一緒に帰りたい!
:いいなぁ
:プライバシーの保護はバッチリ

「それで、彼との別れ際なんだけれど……」

チャット欄▼
:もう終わりか
:あっという間だね
:どうした?
:まだ何かある?

「私にとって、その日一番の衝撃があって……」

チャット欄▼
:別れ際に?
:いや、まさか
:アレか?
:動画のアレを実践したの!?
:まさかまさか
:駄目だぞ

「そうそう。キスしてもらった。お別れのキスを」

チャット欄▼
:うわぁぁぁ!
:マジか
:羨ましくて死にそう
:キス”してもらった”!?
:してもらった?
:え、向こうから?
:なにそれ
:は?
:は?
:動画で見たアレか
:現実に存在しているなんて

「彼も動画を見ていてくれて、知っていた。それで、別れ際にチュッと」

 話している間に思い出して、どんどん顔が熱くなる。男の人と、生まれて初めてのキス。とても優しく、唇に触れるだけのソフトなキス。けれども、それだけでとんでもない衝撃があった。

チャット欄▼
:顔が真っ赤
:思い出してるのか
:唇に手を当てるな
:私もされたい
:いいなー

「慣れた様子で、彼は去っていった。カッコよかったなぁ」

チャット欄▼
:想像したらヤバいな
:私だったら、そのまま押し倒して襲ってる
:それは良い雰囲気
:ああ~っ

「これが実際にあった男性とのデート内容。妄想とは、やっぱり違うよね」

チャット欄▼
:リアルだった
:こんな経験をした女が居るんだね
:凄すぎ
:純粋に羨ましい
:私も本物のデートしたい
:なんか感動してきた
:ミルキーちゃんの恋愛事情が知れて嬉しい

「聞いてくれてありがとう! また、彼とのデートした時には報告配信するつもり。待っててね」

チャット欄▼
:お話を聞けてよかった
:次があるなんて
:やっぱり羨ましい
:次も早く聞きたい

 彼から、またデートしましょう、と言われていた。だから今度こそは失敗しないように頑張ろうと思う。それを、配信で話せたら良いな。

 視聴者の数を確認してみると、5千人を超えていた。これほど多くの人に見られていたのか。当然、過去最高の視聴者数を更新していた。

 皆が、彼に興味津々ということだろう。
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