男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ

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第25話 雑談配信3 ※天川有加里視点

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「んっ」

 ペットボトルの水を飲んで、水分を補給する。配信をスタートしてから既に45分ほど経過していた。まだまだ話は続く予定だ。どう話そうか頭の中で整理しながら、再び話し始める。

「それで、彼が動画を見て語った感想なんだけど」

チャット欄▼
:なんて言われた?
:はよはよ
:聞かせて
:水分補給は大事
:私の参考になるのかしら

「一番、評価が高かったのが外食デートの妄想回だったかな」

チャット欄▼
:ああ、あれね
:やっぱりね
:そうなんだ
:ホントに?
:私の知り合いの男性は、あんまり外食とか好きじゃないけど
:どういうこと?

「ああ、うん。さっきも言った通り、彼は食べることが大好きらしいから。一般的な男性の好みとは少し違うかも、って言ってたかな」

チャット欄▼
:それじゃあ参考にならないじゃん
:彼の好み、ということね
:いやいや、でも貴重な意見でしょ
:聞く価値はありますぜ
:続きを聞かせて

「そうそう。貴重な意見だよ。で、他の動画も見てもらって、彼からのアドバイスがあるんだけど」

 それから私は、直人くんの意見を視聴者に伝えた。リアルな男性の意見。本当は、あんな動画を男性に見せるなんてダメだと思う。女性の強烈な欲望をぶつけるのは、相手を苦しめる可能性が高い。それなのに、彼は付き合ってくれた。本当に感謝だ。それを、視聴者の皆にも感じてほしい。この話は、とても奇跡的な出来事なんだってことを分かってほしいな。

チャット欄▼
:そっか。男性は、そう感じるんだねぇ
:今後は気をつけないと
:距離感が大切ってことね
:そこが嫌われるポイントなのか
:しっかり覚えておこう
:なんだか、これからは男性と上手く付き合えそうな気がする!
:気が早いよ

「彼と話しているうちに、かなり時間が経ってしまって。もう帰さないといけない、ってなっちゃって」

チャット欄▼
:男性とお話するだけで、時間はあっという間に過ぎ去るよね
:学生だから、夜遅くまで引き止めたらダメだよ
:そんな長い時間を一緒に居たなんて、羨ましすぎるだろ
:連絡先は? いつゲットしたの?
:早く帰らせてあげないと

「でも、帰したら二度と会えないかもしれないって思ったよね。その時は、連絡先の交換とか考えになかったなぁ。会えなくなるのが悲しかったから」

チャット欄▼
:偶然出会っただけなら、普通はそれで終わりだよね
:話を聞いてもらったのに、それ以上は望みすぎでしょ
:どうやって連絡先の交換をしたの?
:こっから、どう展開していくのか分かんない

「で、そんな私の感情が顔に出てたのか、向こうから提案してくれて。連絡先を教えるんで、また悩みがあったら気軽に相談してください、って!」

チャット欄▼
:はぁ?
:あり得ないでしょ
:向こうから? マジで?
:どんな幸運?
:漫画かアニメのような展開だ
:いやいやいや
:逆ナンじゃん! 存在していたの!?

「皆も信じられないよね? 私も驚いたよ。それで、本当に連絡先を交換して。その勢いに乗って、配信で話していいかどうかも聞いて。ちゃんと、彼の許可を得たよ。だから今日の話を、配信でも話せたんだ」

チャット欄▼
:なるほど……って、ならんよ
:本当に交換したのかよ
:そんな都合よく、男性の連絡先をゲットできる?
:だから、どんな幸運?
:羨ましい
:連絡して

 今日の出来事について、大体のことを語り終えた。視聴者もう興奮して、いつもの配信と比べて多くのメッセージがチャット欄に書き込まれている。流れていく速さも明らかに早い。全てを読みきれないほど大量のメッセージが次々と画面に表示されて消えいていく。

「って、え?」

チャット欄▼
:今、ちょっと彼に連絡してみなよ
:どんな返事がくるかな
:みたいみたい!
:なんて送るか、皆で考えようよ!
:相手は男性だから。慎重に文面を考えないとね

「ちょっとちょっと、待って皆、勝手に」

 私が直人くんにメッセージを送る、という流れになっている。視聴者が勝手に始めて、送るメッセージの内容まで考えようとしていた。

 とても興奮している視聴者たち。この流れは、止めようとしても無理だろう。私が彼にメッセージを送るまで、彼女たちは納得しないだろう。

 そして何より、私も面白そうだと思ってしまった。いやでも、配信のノリで送ってしまえば、彼に迷惑だと思われてしまうかも。それで嫌われてしまう可能性がある。でも、うーん。

 どうする。彼にメッセージを送るか、送らないか。連絡を取るのか、どうか。

 気軽に相談してください、と彼は言ってくれた。だから、思い切って送ってみようかな。優しい彼なら、許してくれるはず。

 彼の優しさに付け込むようで申し訳なく思ったが、どうしてもやってみたかった。直人くんも視聴者の反応を気にしてくれていたから、それを伝えるためにも必要だ。だから、問題はないはず。

「わかった。今ちょっと、彼にメッセージを送ってみるよ」

チャット欄▼
:おおおっ!
:きたあああっ!!
:わあ!
:相手の返事が気になる
:あまり迷惑をかけないで
:返信が楽しみすぎる
:これっきりじゃないといいね
:期待してる
:さすが配信者だね
:なんて送る?

「うーん。どうしよう。ちょっと考える。危ないモノが映らないように、一旦蓋絵にするね」

 配信画面を隠した。これで、視聴者には何も見えないだろう。映らないように気をつけて、スマホを手に持った。ここに、彼の連絡先が記録されている。アプリを起動して、どんな内容を送ろうか考えてみる。

チャット欄▼
:情報セキュリティは大事
:ちゃんと隠してね
:見せてよ
:絶対に画面には映さないように注意してね
:なんて送るのかな

 私の声は聞こえるけれど、画面には何も見えない状態。チャット欄は盛り上がっていた。視聴者たちも彼の情報が漏れないように、注意を促してくれた。そして私が、なんと送るのか注目している。ううん、緊張するな。

「えーっと。夜遅くに連絡してごめんね。実は今、配信で君の話をしゃべったよ。配信は、とても盛り上がってる。視聴者も皆、君の話に夢中だよ。本当にありがとう」

 とりあえず、こんな感じだろうか。スマホに入力してみたメッセージを、配信でも読み上げる。

チャット欄▼
:いい感じじゃないか?
:悪くないと思う
:えー? それを送るの?
:なんか軽い気がする
:ちゃんと考えて送ったほうがいいよ

「いや! これ以上は考えても無理。とりあえず、送ってみる。それで、返事があるのかどうか待ってみよう」

 考え込むとメッセージを送れなくなる。今のテンションのまま勢いに乗って送ってしまおう。そう思った私は、彼にメッセージを送った。これで、彼のスマホに届いてしまったはず。

「はい、送った。……って、え?」

チャット欄▼
:ん?
:どうした?
:もう送ったの?
:行動が早い
:何?
:え、って何だ?

「えええぇぇぇ!?」

 私はスマホを見て驚いた。一瞬、配信中であることも忘れて思わず声が出るほどの衝撃。

 彼に送ったメッセージの返信が、すぐに届いたから。そして、こんな事が書かれていたから。

『こんばんは。実は今、ミルキーウェイさんの配信見てます。とても面白いですね』
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