男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ

文字の大きさ
上 下
2 / 60

第2話 幼馴染の女性達

しおりを挟む
 朝の用事を済ませるとちょうどいい時間になったので、学校へ行く支度を済ませて家を出る。戸締まりを忘れないように気をつけて。それから、すぐ近くに建っている森住《もりずみ》という表札のある一軒家のインターホンを押した。

「はいはーい」

 家の中から、元気な女性の声が聞こえてくる。そして、すぐに玄関の扉が開いた。

「おはようございます、由美子《ゆみこ》さん」
「おはよう、直人《なおと》くん」

 今朝は、母親ではなく長女の由美子さんが出迎えてくれた。すでに就職していて、会社勤めをしている大人のお姉さん。スラッとした長身で、髪も長い黒髪をポニーテールにしている。目鼻立ちの整った綺麗な顔立ちの女性だ。

「麻利恵《まりえ》ッ! 直人くん来てるよ! 早く支度しなさいッ!」
「ちょ! まって! すぐ行くからッ!」

 由美子さんが家の中に呼びかける。すると奥からバタバタした返事と、ドタバタと大きな足音が響いているのが聞こえてきた。いつものように今朝も、かなり慌てているようだ。

「ごめんね、直人くん。あの子また、ギリギリまで寝てたみたいで」
「いえ、大丈夫ですよ。まだ時間に余裕はあるので、学校に遅刻することはありませんから」
「ほんとに? ありがとうね。……ったく、男の子を待たせるなんて本当にダメな妹なんだから」

 そう言って、由美子さんは大きなため息をついた。

「直人くん、おはよう」
「おはようございます、遥《はるか》さん」

 由美子と一緒に玄関で待っていると、出てきたのは森住家四女の遥さん。金色に近い茶髪でショートヘア、ギャルっぽい見た目の女性。白シャツにデニムという、ラフな格好。彼女も、今から学校へ行くようだ。しかし遥さんは、高校生ではなく大学生。なので、僕たちとは別の通学ルートを行くことになる。

「また、麻利恵の奴が待たせてるのね。私だったら、直人くんを待たせることなく、もっと早く家を出れるんだけど……」
「いえいえ、少しぐらい待たされても気にしていないんで大丈夫ですよ。その間に、遥さんや由美子さんと会って、お話することが出来たんで嬉しいぐらいです」

 僕がそう言うと、遥さんは笑顔を浮かべた。そして次の瞬間、彼女の表情は曇ってしまった。

「あーあ。私も直人くんと同い年だったら、一緒に楽しく学校へ行けたのになぁー。同級生になりたかったなぁ。本当に残念だわ」

 遥さんは、心の底から残念そうに言った。朝から、そんな表情にさせてしまうのは申し訳ない。やっぱり、女性には悲しそうな表情よりも笑顔で居てほしい。だから、僕は言った。

「また、休みの日に二人で遊びに行きましょう」
「え? 本当に? いいの?」
「もちろん、いいですよ」
「やった!」

 遊びに行こうと誘ったら、遥さんは嬉しそうな顔になって僕の手を握った。
――ギュウゥゥゥッ! とても強い握力を感じた。ちょっと痛い。

「手を離しなさい、遥。直人くん、痛がってるでしょ。それに、男の子をそんな風に触ったりしたら危ないから止めなさい。直人くんじゃなかったらセクハラで訴えられてるかもしれないから、本当に気をつけなさいよ」
「あっ! ご、ごめんなさい」
「いえいえ、大丈夫ですよ」

 由美子さんの注意を聞いて、パッと手を離した遥さん。そして、頭を上げて謝ってくる。僕は気にしていない。むしろ、女性と触れ合えたことに喜びを感じている。

 だけど世間一般の男性は、女性が軽く触れただけでセクハラで訴える人が居るのも事実だった。それを考えると、遥さんの行動は危険な行為だと言えるだろう。

「いつまでも直人くんとおしゃべりしてないで、さっさと行きなさい」
「わかったよ。行ってきます」
「行ってらっしゃい」

 僕が手を振って見送ると、遥さんは笑顔で手を振り返してくれた。そして、機嫌よく出かけていった。

「あの子、今日の授業は3限からって言ってたのに。こんなに朝早く家を出る必要はないじゃない。多分、直人くんとお話したいから早く出て行ったのよ」
「やっぱり、そうですか」

 由美子さんが教えてくれた。大学の3限ということは、午後からの授業ということになるのだろうか。そうすると、こんなに早く家を出る必要はない。もしかしたら、他に用事があったのかもしれないけれど。

 僕も、遥さんがお話したいという気持ちには気づいていた。そして、由美子さんの気持ちについても。

「由美子さんも今度、二人で遊びに行きましょうね」
「……私も、いいの?」
「もちろんですよ。由美子さんとのドライブ、とても楽しかったです。だから、また由美子さんの運転する車に乗せてください」
「わかった。直人くんのために、とっておきのドライブコースを考えておくわ」

 そんな会話をしていると、ようやく麻利恵がやって来た。学生服を着た、黒髪でショートヘアの女性。寝起きなのか、少し髪の毛に癖が残っていた。だが、その容姿はとても整っていて、まるでモデルのようにスタイルもいい。だから、寝起きの姿でも美しいと思えた。

 彼女だけでなく、森住家の皆が美人だった。というか、彼女たちだけでなく、この世界には美人の女性が多い。それなのに、他の男性たちの興味が薄い。これも、僕の価値観がズレているからなのか、美的感覚が狂っているのか。

 でも、周りに美しい女性が多いと思えるのは幸せなことだった。やっぱり、見た目って大事だから。僕も気をつけている。周りからよく見られるように、日々努力していた。

 っと、そんなことを考えるよりも。

「ご、ごめん! かなり待たせちゃった」
「全然、待ってないよ」
「本当に? ごめんね」
「大丈夫だから。じゃあ、行こうか」
「うん」

 そんなに謝る必要はない。さっさと行こうと促したら、麻利恵はホッとした様子になった。

「それじゃあ行ってきます、由美子さん」
「行ってきます、姉さん」
「気をつけて。麻利恵、直人くんに何かあったら大変だから。そうならないように、貴女が絶対に守りなさいよ」
「わかってる。気をつけるよ」

 由美子さんは、何度も麻利恵に念を押した。その言葉に対して、麻利恵は真面目な表情で答えていた。

 こうして僕と麻利恵の二人は、並んで歩き始めた。ここから最寄りの駅まで歩き、電車に乗って学校へ行く。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます

neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。 松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。 ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。 PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。

男女比1対99の世界で引き篭もります!

夢探しの旅人
恋愛
家族いない親戚いないというじゃあどうして俺がここに?となるがまぁいいかと思考放棄する主人公! 前世の夢だった引き篭もりが叶うことを知って大歓喜!! 偶に寂しさを和ますために配信をしたり深夜徘徊したり(変装)と主人公が楽しむ物語です!

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

処理中です...