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2.救い
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「え?」
驚きのあまり何も言葉が出てこない。
「当たり前でしょー。だってお姉様は簡単な魔法すら使うことができないんだから。リアム様みたいな立派な人には私のがお似合いよ!ねー!」
リリアンはリアム様の腕を擦り寄るよう両手でに掴んだ。
「……リアム様」
どうして。どうしてなのですか、リアム様。
「……すまない」
私が助けを求めてリアム様を見ると、申し訳なさそうに目を逸らされた。
「もう両家とも承諾して決まったことです」
奥様が私に冷たく告げた。
「……っ」
私は我慢できず、広間を飛び出した。外は雨が降っていた。どこにも行き場なんかないのに、私は屋敷から走り出した。
裾が泥で汚れても気にすることもできなかった。
無意識のうちにお母様の墓まで来ていた。
お母様の墓は屋敷の裏にある森の中にポツンとある。普通ならこんな所にあるわけがないのに、奥様の嫌がらせだ。
久々に訪れた墓には葉がたくさんかかっていた。
「しばらく来られなくてごめんね」
私は手で葉をはらう。
お母様は、私が物心つく前に亡くなった。それからすぐに奥様がやってきて妹が生まれ、父は外に長期で出かける仕事が多くなった。
2人からは嫌がらせにあい、使用人からは魔法も使えない役立たず扱い。生きた心地がしない中で、リアム様が唯一の救いだった。
でも、その救いすら奪われた。
「お母様、私はどうすればいいの?」
話しかけても何も返っても何も返ってこない。当たり前だ。
雨が強くなってきた。流石に帰らないと。
私はとぼとぼと屋敷へと歩いた。
「ミラ様、奥様がお呼びです」
びしょ濡れになりながら屋敷に戻ると、使用人が険しい顔で私を迎えた。
私は奥様の部屋へと向かった。何を言われるのだろうか。怖い。
コンコン
「ミラです。入ってもよろしいでしょうか」
「どうぞ」
「失礼します」
部屋へと入ると、奥様はお怒りだった。
「何その汚い格好!」
自分の格好を改めて見て、雨で髪もぐしゃぐしゃで服は裾どころか全体が汚れていた。
「申し訳ありません」
私は奥様に深々と頭を下げた。
「まあ、それよりお客人がいるにも関わらず出て行くなんて」
「……申し訳ありません」
悔しさで震えながら頭を下げ続ける。
「今後のことだけれど、この家の娘である以上この家のためになるような所へ嫁がせてあげるから安心しなさい」
「……ありがとうございます」
本当はこんな人に礼なんて言いたくないけれど、今の私の立場じゃどうしようもない。
「でも魔法も使えないし、ろくな貰い手はないだろうけど」
奥様は私を見て鼻で笑った。
「すみません」
こればかりは魔法が使えない私が悪いんだ。リリアンは屋敷の人たちが頼りにするほど魔法が使える。私は何もできない。
「あと明日から毎日あなたから魔力を吸い上げていくから」
さらりと聞き捨てられない言葉が奥様から飛んできた。
「どっどうしてですか!」
魔力は人の根源。そんなもの吸い上げられたら……
「魔法も使えないくせに魔力を持っていてどうする気なの?」
「……っ」
確かに私にあっても魔力を使うことはできない。でも……
「まあ、吸い過ぎてどこかに嫁ぐ前に干からびて死んじゃうかもねー」
奥様は高笑いし出した。
「せいぜいしっかりリリアンの養分となりなさい」
私は何も答えられず、ただ俯くしかなかった。
「もういいわ。部屋に戻りなさい」
「……はい。失礼します」
私は奥様の部屋を静かに立ち去った。
驚きのあまり何も言葉が出てこない。
「当たり前でしょー。だってお姉様は簡単な魔法すら使うことができないんだから。リアム様みたいな立派な人には私のがお似合いよ!ねー!」
リリアンはリアム様の腕を擦り寄るよう両手でに掴んだ。
「……リアム様」
どうして。どうしてなのですか、リアム様。
「……すまない」
私が助けを求めてリアム様を見ると、申し訳なさそうに目を逸らされた。
「もう両家とも承諾して決まったことです」
奥様が私に冷たく告げた。
「……っ」
私は我慢できず、広間を飛び出した。外は雨が降っていた。どこにも行き場なんかないのに、私は屋敷から走り出した。
裾が泥で汚れても気にすることもできなかった。
無意識のうちにお母様の墓まで来ていた。
お母様の墓は屋敷の裏にある森の中にポツンとある。普通ならこんな所にあるわけがないのに、奥様の嫌がらせだ。
久々に訪れた墓には葉がたくさんかかっていた。
「しばらく来られなくてごめんね」
私は手で葉をはらう。
お母様は、私が物心つく前に亡くなった。それからすぐに奥様がやってきて妹が生まれ、父は外に長期で出かける仕事が多くなった。
2人からは嫌がらせにあい、使用人からは魔法も使えない役立たず扱い。生きた心地がしない中で、リアム様が唯一の救いだった。
でも、その救いすら奪われた。
「お母様、私はどうすればいいの?」
話しかけても何も返っても何も返ってこない。当たり前だ。
雨が強くなってきた。流石に帰らないと。
私はとぼとぼと屋敷へと歩いた。
「ミラ様、奥様がお呼びです」
びしょ濡れになりながら屋敷に戻ると、使用人が険しい顔で私を迎えた。
私は奥様の部屋へと向かった。何を言われるのだろうか。怖い。
コンコン
「ミラです。入ってもよろしいでしょうか」
「どうぞ」
「失礼します」
部屋へと入ると、奥様はお怒りだった。
「何その汚い格好!」
自分の格好を改めて見て、雨で髪もぐしゃぐしゃで服は裾どころか全体が汚れていた。
「申し訳ありません」
私は奥様に深々と頭を下げた。
「まあ、それよりお客人がいるにも関わらず出て行くなんて」
「……申し訳ありません」
悔しさで震えながら頭を下げ続ける。
「今後のことだけれど、この家の娘である以上この家のためになるような所へ嫁がせてあげるから安心しなさい」
「……ありがとうございます」
本当はこんな人に礼なんて言いたくないけれど、今の私の立場じゃどうしようもない。
「でも魔法も使えないし、ろくな貰い手はないだろうけど」
奥様は私を見て鼻で笑った。
「すみません」
こればかりは魔法が使えない私が悪いんだ。リリアンは屋敷の人たちが頼りにするほど魔法が使える。私は何もできない。
「あと明日から毎日あなたから魔力を吸い上げていくから」
さらりと聞き捨てられない言葉が奥様から飛んできた。
「どっどうしてですか!」
魔力は人の根源。そんなもの吸い上げられたら……
「魔法も使えないくせに魔力を持っていてどうする気なの?」
「……っ」
確かに私にあっても魔力を使うことはできない。でも……
「まあ、吸い過ぎてどこかに嫁ぐ前に干からびて死んじゃうかもねー」
奥様は高笑いし出した。
「せいぜいしっかりリリアンの養分となりなさい」
私は何も答えられず、ただ俯くしかなかった。
「もういいわ。部屋に戻りなさい」
「……はい。失礼します」
私は奥様の部屋を静かに立ち去った。
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