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第27章 アリムの無理とクラスター制度

172 シフト メラ姉、シフト 理香

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スリーカー
「では、続けます。

 男性の二重人格制御者と女性の二重人格制御者において、呼び方が変わる理由は、ある人格から他人格へ交代するときの所要時間が違うからです。」

シュウピン
「どれくらい違いますか?」

スリーカー
「女性のシフターは3秒、男性のトラスファーは30秒です。」

真々美
「10倍も差があるのか?
 その理由を聞いてもいいか?」

スリーカー
「女性の場合は、会議室にある「使用中」と「空き」の切り替えスイッチをスライドさせるくらいに人格交代が簡単です。 それに対して、男性の場合は、変換作業が必要なため、時間が掛かります。」

シュウピン
「それで、メラニィは、どうすれば、シフターになれるのですか?」

スリーカー
「メラニィさんと理香の場合は、すでに人格が存在しているので、簡単です。
 理香、よく聞いてください。」

メラニィ
「はい、もうひとりの理香。どうすれば良いですか?」

スリーカー
「あなたの身体の現在の所有者は、後ろにいる「メラニィ」です。
 栄語風の呼び方で聞き取れないでしょうが、あとで御本人から説明を受けてください。
 あなたは、第2の人格として、ちからを貸してあげてください。」

メラニィ
「後ろにいる女性がそろそろ代わって欲しいそうだから、代わるね。
 ねえ、お別れする前に、もうひとりのワタシは幸せですか?
 黄花様に習った医術を役立てる仕事についていますか?」

スリーカー
「もちろんです。
 ワタシのツインレイ。

 あとで、夢の中で、お話しましょうね。」

メラニィ
「良かったです。
 それでは、めら兄さん、いいえ、めら姉さんに代わります。

 どうすれば、代われますか?」

スリーカー
「栄語で、むずかしいですが、「シ・フ・ト メラニィ」と声に出してください。」

メラニィ
「シ・フ・ト メラネエ」

3秒後・・・

メラニィ
「シュウピン、冬香様、心配を掛けました。
 理香に代わるときは、「シフト 理香」と言えばよいですか?」

スリーカー
「そうです。 お試しください。」

メラニィ
「「シフト 理香」」

3秒後・・・

メラニィ
「理香に変わりました。
 ちゃんと交代できるのですね。
 じゃあ、また代わります。
 「シフト め、ら、にぃーこ、にこ」」

3秒後・・・

メラニィ
「はい、ふたたび、メラニィです。
 そんなにわたしの名前は発音が難しいのだろうか?
 冬香様、どう思われますか?」

冬香
「まあ、そのうち慣れるわ。
 育った言語と違う言語の聞き取りや発音はむずかしいものよ。」

メラニィ
「じゃあ、気長に待ちます。
 シュウピン、心配してくれたそうだな。
 ありがとう。」

シュウピン
「ああ、可愛いサブシス メラニィ。
 あなたが元に戻ってうれしいわ。

 もし、ダメだったら、あの愚物の墓にミサイルを打ち込もうかと思っていたわ。」

メラニィ
「ハハ、それはやめてくれないか?
 モンテハート大公爵は、死後の世界で毎日毎日説教されて、別人のような人格者になっていたからな。

 もう、シュウピンに、うらまれるようなことはしないだろう。」

シュウピン
「あなたの言葉じゃなかったら、討論大会が始まっていたわ。」

メラニィ
「しぶしぶでも、理解してくれたなら良かった。」

スリーカー
「それでは、冬香様。
 メラニィ様の治療は完了ということで、よろしいですか?」

冬香
「ええ、ありがとう。
 でも、もっとくわしく教えて欲しいわ。

 たとえば、真々美、オルア、わたしも前世の人格と入れ替わるシフターに成れるのですか?」

スリーカー
「いいえ、成れません。
 真々美様、冬香様、オルア様の場合は、前世の記憶はお忘れかもしれませんが、人格的には同じなので、入れ替わる意味はないです。」

冬香
「そうではなくて、2つの人格を行き来できる方が、多くのことができて、より多くの患者が救えると思うのです。」

スリーカー
「同じソフトウェアの旧バージョンと新バージョンを同時に使用するくらい無意味ですね。」

オルア
「もしかして、ちがう魂が同じ肉体に入っている場合のみ意味があるということですか?
 メラニィさんと理香さんのように。」

スリーカー
「その通りです。
 たとえば、真々美様は、紅姫様の【妖刀斬 紅丸】をある程度まで振るえるようになっておられるでしょう。」

真々美
「すべてではないが、ある程度までは手になじんできた気がする。」

冬香
「でも、ワタシは【聴診丸】のちからについて、知らないことが多すぎるわ。」

スリーカー
「そのうち、分かります。
 冬香様、あなたが黄花様だとしたら、どのようにするだろうか?と考えたら、いろいろと試せます。

 どうしても、という場合は聞いてくだされば良いですが、お守り代わりに持ち歩いているだけで、【聴診丸】のちからを使おうとされていませんよね。」

冬香
「それは、そうだけれど・・・」

スリーカー
「今回、もうひとりのワタシがした、患者の頭に【聴診丸】を当てる使い方は、数多くある使い方の1つに過ぎません。 【聴診丸】のちからを普段使いされていれば思い出せます。」

オルア
「じゃあ、【音色のそろばん】は、どうなの?」

スリーカー
「電卓を使うときに、【音色のそろばん】でも計算することを勧めます。
 そうすれば、なにかを感じるはずです。」

オルア
「でも、少しは教えてくれてもいいじゃない?」

スリーカー
「わたしは黄花様の弟子ですから。

 いえ、その、そう怒らないでください。

 つまり、紅姫様や青紫様の神器のことは分からないのです。」

オルア
「じゃあ、過去の人格を呼び覚まして、シフトできるほうが良いはずよね。」

スリーカー
「オルア様が時間をかけて描いた絵画の上に、誰かが絵を書いたら、どうしますか?」

オルア
「元通りに直すまで、痛めつけます。」

スリーカー
「前世のあなたが、かわいそうですね。」

真々美
「それは、つまり、今より悪くなる可能性が高いということか?」

スリーカー
「その通りです。
 メラニィ様やアリム様の例は、ウルトラスーパーハイパーレアケースです。

 全財産を使って、宝くじを買って、1等をねらうような危険なケースです。」

真々美
「よく分かった。
 冬香、オルア、わたしたちは前世の人格を呼び出さない方が良さそうだ。」

冬香
「そのようね。」

オルア
「前世の私なら、こうするかな? って、いろいろと試すことは大丈夫ですか?」

スリーカー
「ええ、とても良い方法だと思います。

 青紫様も、
   「他の人が使っても、ただの古いソロバンでしかない。」
とおっしゃっていました。

 つまり、オルア様しか【音色のそろばん】を使いこなせないと推測します。」

絵美
「じゃあ、次は、アリムのトラスファーについて教えてくれますか?」

つづく
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