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第4章 いそげ、姉妹関係の儀式
024 6日目 AM9時 オルアの会議初参加と注意事項
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司会(中路真々美)がいる指令室に、冬香とオルアが集まった。
丸いテーブルを3人が囲んだ。
司会(中路真々美 Mamami NAKAJI)
「今日は面接担当の2人が有給休暇明けで出てくる。
9時から10時までは、socks情報板を確認する時間になるから、10時から会議を始めることになる。
今までは、冬香と私の4人が参加していたが、今回からは、オルアさんも参加してもらう。」
オルア=サーパース(Allrounah SURPASS)
「真々美様、了解です。
参加いたします。」
ナレーション(筆者の解説)
「姉妹関係の儀式の関係で、本日の昼過ぎまでは、敬称付きで呼ぶ決まりを守っている2人です。
聞いてて、違和感がありますね。
また、socks (ソックス、靴下) 情報板とは、社内メールと掲示板を統合して一体化したようなものです。
話題ごとにスレッド(thread)が立てられるため、メール確認よりも効率が良いです。
メールのような配信もれがないため、全員が見れます。
また、メール確認で1日が過ぎることもありません。
スレッドを見れば、誰が何の業務を実施中か分かります。
個別通信もできますが、人間関係の悩みや困りごとを相談することに使用されます。
業務内容を共有したくないからという理由で、個別通信を行うことは禁止されています。
カセイダード王国が業務を効率化するとともに、情報共有により、トップと末端が同じ判断をできる状態を確立させた仕組みが、socks (ソックス、靴下) 情報板です。
参照期限が定められているため、1年を超える古い日付の情報についての参照義務は有りません。
古い情報に重要なものがある場合は、気づいたものが日付更新することになっています。
もちろん、過去の経過を理解している者が貴重ですが、わすれていても責められることはありません。
ただし、過去の情報を提供してくれた者に対して、
「指摘された。 揚げ足を取られた。 邪魔された。」
などという言動を取ると、大きな失点になります。
悪意帰属バイアスの精神の持ち主は、十分に注意してくださいね。
もちろん、過去の情報を提供した者が、必要以上に知らない者を責めることも禁止です。
当然ながら、
最後に処理する者が誰か、
責任を取らされる者が誰か、
ということが分からないひとは邪魔になるため、ベーシックインカムによる自宅封印の対象となります。
その結果、平均的な会社では考えられないくらい、ホワイトな風土が出来上がっています。
それにつけても、カセイダード王国に移住したい気持ちで、いっぱいです。」
ナレーション(筆者の解説) おわり
司会(中路真々美)
「ただし、注意事項がある。
オルアさんは、会議を聞く権利が与えられただけで、意見を言うことはできない。」
オルア=サーパース
「真々美様、どういうことでしょうか?」
司会(中路真々美)
「過去の経過などを知らないオルアさんが意見を言うと、会議の邪魔をすることになってしまうからだ。
この判断はおかしいとか生ぬるいなどと感じることが多々出てくるだろうが、おとなしく聞くだけに留めておいてくれ。 その代わり、話題ごとに質問を受け付ける時間を設けるから、質問をメモしながら聞いてくれ。
いま言ったことは、面接担当の2人の前でも繰り返すが気を悪くしないでくれ。
会議に新しい者を参加させるときに言う決まりだからだ。」
オルア=サーパース
「真々美様、了解いたしました。
書記や会議の議事録は私が作成すれば良いでしょうか?」
司会(中路真々美)
「発言者が自分で議事録用のsocks (ソックス、靴下) 情報板書き込んでから発言する決まりだから、議事録作成の手間は不要だ。
オルアさん自身が質問したいことだけ、メモすればいい。
もちろん、会議と同時進行で出来上がっていく議事録を見ながら、会議内容を聞いて欲しい。」
オルア=サーパース
「真々美様、了解いたしました。
そうなると【議事録作成ハラスメント】が発生しないから良い仕組みですね。」
ナレーション(筆者の解説)
「【議事録作成ハラスメント】とは、議事録作成者が重要と感じたことと、議事録確認者の価値観が違う場合に発生します。
悪意で、他者が作った議事録を全否定する者も存在します。
また、重要度がより高い項目に親切で入れ替えた可能性もあるでしょう。
しかし、他者が実施したことを無駄にする判断は悪意があると判定しなければなりません。
差別という名の優遇により、自身を特権階級者のように信じ込む者も確かに存在します。
カセイダード王国では過去に発生した問題をもみ消したり、かくしたりしません。
最悪のケースが発生しないように、事前に手を打ち続けています。
このような国風文化が理由で、光元国の移民応募者が落とされたのでした。
身も蓋も無い言い方をすれば、他者を落とし入れたり、いじめたり、ライバルを蹴落とす技量は、マイナス要素でしかありません。
それよりも、このような嫌がらせを受けて、実力を発揮できなかったひとたちをリサイクルというか有効活用することを実行している体制がカセイダード王国に健在しています。」
◇
司会(中路真々美)
「そして、冬香、落ち着いて聞いて欲しいのだが、こころの準備は良いだろうか?」
医師(白石冬香 Fuyuka SHIROISHI)
「どうしたの、かしこまって。
光元国に対して、厳しい処置をするだろうと予想しているから、ちょっとやそっとのことでは驚いたりしないわよ。」
司会(中路真々美)
「そうか、そう言ってくれると有り難い。
実は、・・・
実はだな、
Versilを国外に出さないことが決定した。
しかも、換算レートを大きく変えることを、絵美が承認した。」
医師(白石冬香)
「真々美がそこまで、おそるおそる言うところから考えて、
1Versil = 100丸(光元国の通貨)
くらいかしら?」
オルア=サーパース こころの声
『 0が1つ足りないわ。
1Versil = 1000丸
くらいにしてくれないと、
わたしの怒りは収まらないわ。』
司会(中路真々美)
「 1Versil = 1万丸(光元国の通貨)
にすることになった。
本日、面接責任者から各国に対して、通達を出してもらう。
2023年9月1日から実施となる。」
真々美は、白沢絵美様が承認の署名を入れた書面を、冬香とオルアに見せた。
医師(白石冬香)
「はあ、いくらなんでもやりすぎでしょ。」
オルア=サーパース
「さすがは、白沢絵美様ね。
よく分かっておられるわ。
素敵すぎる。」
医師(白石冬香)
「オルア、だまりなさい。」
オルア
「はい、冬香様。」
オルアは恐怖で震えた。
冬香がオルアに放った気は、『怒気当て』と『圧殺』の間くらいの強さだった。
ご参考: 016 5日目 アリムさんの訓練 「1 気」
医師(白石冬香)
「真々美、わたしに相談してくれても良かったんじゃないかしら?」
冬香は目が笑っていない笑顔を、真々美に向けた。
司会(中路真々美)
「冬香が怒ることは正当性があると考えている。
換算レートを変えることで、暗殺される危険もあるだろう。
世界各国からの非難の的に、冬香を巻き込みたくなかったから、相談しなかった。
もし、この換算レートを撤回する必要がある場合には、冬香に代替わりする余地も残したかった。」
医師(白石冬香)
「それでも、相談して欲しかった。
絵美様の承認を得ているようだけれど、よく承認してくださったわね。」
司会(中路真々美)
「それが、・・・」
真々美は、白沢絵美様との会話を、冬香とオルアの二人に説明した。
> 司会(中路真々美)
> 「光元国への対応として、
> 1Versil = 100丸(光元国の通貨)にしようと考えています。
> また、今後はカセイダードの通貨を両替せず、カセイダード王国への支払い時の換算レートのみにしたいと思います。」
>
> 白沢絵美
> 「光元国と関係諸国に分からせたいのならば、
> 1Versil = 1万丸(光元国ひかりもとこくの通貨)にしないと分からないのではないかなあ?
(中略)
> じゃあ、責任者は私の名前で行きましょうか?
> サインして送ります。
> 届いたでしょ。」
引用元: 015 白沢絵美様は、お見通し
医師(白石冬香)
「え、絵美様。
そんな大胆な判断をされるなんて。
ごめんなさい、真々美。
あなたは、なにも悪くないわ。」
オルア=サーパース
「白沢絵美様、素敵です。」
オルアは身構えたが、冬香からの気は来なかった。
司会(中路真々美)
「という訳で、絵美様の承認書のコピーを、面接2人組に渡すことになる。
経過については、説明しない。
余計な心配をさせたくないからな。」
医師(白石冬香)
「わたしには、心配させても良いのかしら。」
司会(中路真々美)
「冬香は、わたしのサブシス(Sub-Sis)だから、甘えさせてくれないか?
わたしも絵美の判断には、かなり驚いて動揺している。
わたしが戸惑っていると、その場で絵美自身を責任者とした書面を作成して送ってきたんだ。
ここまでされたら、反対もできないと分かるだろう。」
医師(白石冬香)
「たしかに、わたしが絵美様のサブシス(Sub-Sis)でも反対できないわね。」
オルア=サーパース
「絵美様は、本当に素晴らしいわ。」
冬香は、もうどうでも良くなった。
さすがに、絵美様には言い返せない。
◇
冬香は気を取り直した。
医師(白石冬香)
「わたしからの伝達事項は・・・
ついさっき、オルアに強い気をはなった後だから、とても言いにくいのだけれど・・・」
オルア=サーパース
「さすがに、びっくりしたけれど、もう水に流すわ。
冬香様への親近感はかなり下がったけれどね。」
医師(白石冬香)
「ものすごく言いにくくなった。
どうしよう。
こまったわ。
真々美、換算レートの話は、ふたりのときにして欲しかった・・・」
司会(中路真々美)
「オルアさん、換算レートの話を、冬香とふたりだけのときにしなかった私の落ち度で、冬香とオルアさんの間にある親密度を著しく下げてしまったことを、深くお詫びいたします。
どうか、いまの冬香からの発言と『怒気当て』は、無かったことにしてください。
お願いします。」
オルア=サーパース
「真々美様、冬香様、ひとつ約束してください。
二度と『怒気当て』しないでください。
お二人の前では気を張りたくないのです。」
司会(中路真々美)
「冬香、ごめんさないは?」
医師(白石冬香)
「オルア、ごめんなさい。」
オルア=サーパース
「冬香様、今回だけですよ。
二度目は無いですよ。」
医師(白石冬香)
「オルア、ごめんなさい。」
◇
オルア=サーパース
「それで、言いかけたことはなにですか?」
医師(白石冬香)
「そ、それは・・・」
オルア=サーパース
「冬香様、早くおっしゃってください。」
医師(白石冬香)
「明日の夜、オルアの部屋に行きたいわ。」
オルア=サーパース
「夜ですか? ご来訪の目的はなにですか?」
医師(白石冬香)
「あ、あのね。
今度は攻守交替して、そのね。
オルアに抱かれたいの。
オルア、わたしを抱いてください。」
オルア=サーパース
「えっ? 姉妹関係の儀式って、終わりましたよね。」
司会(中路真々美)
「オルア? 食事をするのは、人生で1回だけではないだろう。
それと同じように、姉妹関係の営みは、なんども行うぞ。
恋人関係のようなものだからな。」
オルア=サーパース
「すると、あの大がかりなセットを用意して、特別な儀式のセリフを何度も言うのですか?」
司会(中路真々美)
「いや、あれは初回限定で、2回目以降はお互いのタイミングが合えば、見つめ合うだけで始めることになるだろう。
もちろん、雰囲気とお互いの気持ちが重要になる。
もしかして、オルアさんは冬香と肌を重ね合うことが嫌なのか?」
医師(白石冬香)
「がーん。 そんなあ。」
冬香はショックで固まってしまった。
オルア=サーパース
「いいえ、冬香様、真々美様、そんなことは有りません。
あの大がかりな儀式が不要なら、2日に1日は愛し合いたいです。」
司会(中路真々美)
「のこりの1日は、嫌なのか?」
オルア=サーパース
「もう、真々美様、分かっているくせに、アリムさんと過ごしたいんです。」
医師(白石冬香)
「じゃ、じゃあ、嫌じゃないのね。」
オルア=サーパース
「もちろんよ、冬香様。 ただ、ね。」
医師(白石冬香)
「な、なにか条件があるの?」
オルア=サーパース
「冬香様、朝まで眠らせませんよ。
覚悟してくださいね。」
医師(白石冬香)
「は、はい。
よろしくお願いいたします。」
司会(中路真々美) こころの声
『受けモードの冬香は、別人かと思うくらい、かわいいな。』
◇
司会(中路真々美)
「それでは、気を取り直して、冬香からの連絡事項はどんな感じだ?」
医師(白石冬香)
「アリムさんのスケジュールが遅れに遅れています。」
オルア=サーパース
「えっ? そうですか?
このペースで行けば、3年後には告白の舞台へアリムさんを招待できますね。
それは、もう余裕ですね。」
医師(白石冬香)
「それは、おめでとうございます。
とても、喜ばしいわ。
遅れているのは、アリムさんの遺伝子書き換えの話です。」
オルア=サーパース
「たしかに、そうですね。
真々美様と冬香様にお願いしたから大丈夫と解決済みの気分でいました。」
司会(中路真々美)
「たしか、遺伝子を書き換える内容は決まったはずだよな。」
医師(白石冬香)
「内容は決まりましたが、遺伝子を書き換える前にするべきことが出来たので、止まっています。」
オルア=サーパース
「冬香様、わたしは、なにをすれば良いですか?」
医師(白石冬香)
「アリムさんとナイトバインド。 そして、真々美とわたしもナイトバインドを遺伝子を書き換える前にするべきです。」
ナレーション(筆者の解説)
> 騎士(Knight)契約と夜(Night)契約をパートナーと結ぶこと。
> 契約(Contract)と言うよりは拘束(Bind)に近いから、ナイトバインドと呼ばれる。
くわしくは、
004 運営側の話し合い、クラスターとは
をお読みください。
ナレーション(筆者の解説) おわり
オルア=サーパース
「冬香様、ナイトバインドは遺伝子書き換えの後でも良いのではありませんか?」
医師(白石冬香)
「アリムさんは予想外にレベルが高くて、その・・・」
冬香は真々美の顔をのぞき込んだ。
真々美はピンと来た。
司会(中路真々美)
「うーん、どうしようか?
オルアさん、ひとつ約束できるか?
今から言うことを聞いても、絶対に小石拾いや雑草摘みに行かないと。」
真々美は、ものすごく迷ったが、うそとごまかしは止めた方が良いと判断した。
もちろん、迷いに迷ったが、換算レートの話の時の冬香のように感情の限界突破をされるよりはマシという思いに至った。
オルア=サーパース
「アリムさんを苦しめた、苦しめている、苦しめようとしている連中の話なら、悪即斬にするわ。
それなら良いかな?」
司会(中路真々美)
「いや、それをしないでくれ!
と念押ししているのだがな。」
オルア=サーパース
「真々美様、心配しないでください。
証拠を残さないことはもちろんのこと、苦しむ暇さえ与えないようにしますから。
もちろん、3親等までが所有する財産はすべて回収しますから、無駄も発生しません。」
司会(中路真々美)
「オルアさん、そんな良い笑顔で言われても困るのだが。」
医師(白石冬香)
「真々美、お疲れさま、代わるわ。
ありがとう。
オルアが真々美とわたしの遺伝子をアリムさんにあげて欲しいという検討結果についてです。」
オルア=サーパース
「もしかして、アリムさんの敵がしたことにより書き込めなくなっているとかですか?」
司会(中路真々美)
「いや、わたしたちの遺伝子を書き込む前にアリムさんの遺伝子を確認して、該当箇所を復旧できるか試したんだ。」
オルア=サーパース
「復旧できないくらいダメージを受けていたとかですか?」
医師(白石冬香)
「復旧はできたわ。
それも予想をはるかに超える良い結果でね。」
オルア=サーパース
「じゃあ、なにが問題なのですか?」
医師(白石冬香)
「これを見てくれますか?」
冬香はオルアに、アリムさんの遺伝子の復旧結果を見せた。
> アリムさんの遺伝子を復元しました。
>
> 『意識飛ばし』 Grade 5、
> 『怒気当て』 Grade 5、
> 『圧殺』 Grade 5
>
> アリムさんの遺伝子を復元しました。
>
> 『瞬間記憶』 Grade 5、
> 『記憶圧縮』 Grade 5、
> 『録音再生』 Grade 5
引用元: 017 5日目 アリムさんの訓練 「2 記憶」
医師(白石冬香)
「粉々になっていたアリムさんの遺伝子を、真々美の発案で復元を試みたの。
真々美とわたしの遺伝子を仮想の完成見本として、医療用AI に処理させた結果の一部です。
ほかの箇所もわたしたち3人の遺伝子を仮想の完成見本として、復元を試みる価値が大いにあります。」
オルア=サーパース
「へえ、アリムさんって、すごいひとだったのね。
じゃあ、徹底的に復元したら、さらに素敵になりそうね。
楽しみだわ。」
司会(中路真々美)
「その後のことを考えてみてくれ!」
オルア=サーパース
「わたしたち3人の相手は超一流の男性になるかもね。
真々美様も、冬香様も、うれしいでしょ。」
医師(白石冬香)
「うれしいことは、うれしいですが、手放しでは喜べませんね。」
オルア=サーパース
「どうしてですか?
はっ? まさか、真々美様と冬香様は、アリムさんの優秀さに嫉妬の感情を抱いてしまったのですか?」
司会(中路真々美)
「嫉妬などではなくて、わたしたちでは、アリムさんを魅了(ほれさせることが)できなくなる可能性がある。
3人セットでも、相手にされなくなるかもしれない・・・」
オルア=サーパース
「まさかあ、わたしたち3人に鼻の下を伸ばさなかった男性はいなかったよね。
そんなのありえないわ。」
医師(白石冬香)
「いまのアリムさんでさえ、オルアに十分に気に入られているわよね。
それは、とてもすごいことだと思うけれど?
カセイダード王国に、オルアが相手をしても良いと思える男性はいなかったわよね。」
オルア=サーパース
「いませんね。今も。」
司会(中路真々美)
「今までは、オルアさんが相手をしない方だったが、これからは、オルアさんが相手にされなくなる方になる可能性が高い。」
オルア=サーパース
「まさかあ、冬香様と真々美様は深く考えすぎじゃないかなあ。
そう言えば、アリムさんも深く考えすぎだったよ。」
司会(中路真々美)
「なんの話だ?」
オルア=サーパース
「サイコロステーキの感想の話よ。
アリムさん、面白かったわ。」
オルアは、アリムさんの感想について、真々美と冬香に伝えた。
>アリム
>
> 「ファミレスのサイコロステーキは、キューブ型をしたハンバーグなんだけれど、いま食べているサイコロステーキは、本物のステーキをひと口サイズに切ったものだから本当に美味しいね。」
>
> アリムさんは、いきなり席を立ちあがって、きょうつけ(または、気を付け)の姿勢になった。
>
> アリム
> 「大変、気が引き締まる思いです。
> ボクはオルアさんが大好きです。
> オルアさんを、もう一人の自分として大事にします。
> このように、お伝えくださいませ。」
>
引用元: 023 6日目 AM8時 サイコロステーキの感想
司会(中路真々美)
「アリムさんは流石だな。」
医師(白石冬香)
「そうね。
わたしが切って、真々美が焼いた意味を良く理解しているわ。」
オルア=サーパース
「そういえば、焼いてから切るのが普通だった言っていたわ。」
医師(白石冬香)
「オルア?
魔力が戻っているはずだけど?
話は変わるけれど、コモンルーンに、[6] スリーカー(Threeker)は、表示されたかしら?
姉妹関係の儀式のあとは、性魔力を使っていないわよね?」
オルア=サーパース
「はい、冬香様。
コモンルーンは使用していません。
いまは、スリーカーは表示されていません。」
医師(白石冬香)
「そう、残念だわ。」
司会(中路真々美)
「気付かなくても害が無いことは気付かないことで、性魔力の消費を抑えているのかもしれないな?」
医師(白石冬香)
「そうかもしれないわね。」
冬香は、オルアはお花畑モードなのかなと思ったが、声には出さなかった。
医師(白石冬香)
「あのサイコロステーキにはね、オルアに害を成すものは、私がサイコロサイズになるまで細切れにして、」
司会(中路真々美)
「わたしが焼き尽くす。という意味が込められている。
ある種の決意表明だな。
それをアリムさんは、見事に感じ取ったということだな。」
医師(白石冬香)
「たいていの男性なら、身の程知らずに、
「ぼくが幸せにします。」
と、できもしないことをほざいて、女性をだまそうとするけれど・・・」
司会(中路真々美)
「 「もう一人の自分として大事にします。」
という言葉には、謙虚さと真実味を感じるな。」
医師(白石冬香)
「確かに、「釣りあげたら、どうとでもできる。」と二枚舌を持つ男性どもより、信頼できるわ。」
オルア=サーパース
「そんな深読みが求められたのね。
笑って悪かったわ。
次からは笑わないように、こらえなきゃね。」
医師(白石冬香)
「という訳で、先にアリムさんをナイトバインドしてから、遺伝子書き換えを実施すべきと考えています。」
司会(中路真々美)
「ハエの能力を持つ改造人間を作って、制御装置を取り付ける前に逃げ出されたシェイバーのような間抜けには成りたくないだろう。」
オルア=サーパース
「考えすぎだと思うけどなあ?」
医師(白石冬香)
「万が一のことが起こって、アリムさんがオルアではなく他の女性を好きになっても問題ないなら、ナイトバインドを後回しにしますか?
たとえば、面接担当の二人組は面接対象者たちに非常に気に入られていたから、アリムさんも気に入るかもしれないわ。」
オルア=サーパース
「冬香様、真々美様、生理が始まったようです。
本日は下がらせていただけませんか?」
医師(白石冬香)
「生理用品なら持ってくるから、心配しないで。」
オルア=サーパース
「いいえ、せっかくですが、わたしの生理はとても重くて、始まったら寝込んでしまうのです。」
司会(中路真々美)
「それは大変だ。 この部屋の奥にある布団で寝てくれ。
姉妹関係の儀式で使用した布団がまだ敷いてあるから使ってくれ。」
オルア=サーパース
「いいえ、ご迷惑をおかけするわけには行きません。
自分の部屋で休むことにします。」
医師(白石冬香)
「水くさいこと言わないで、オルア。
あなたは大事なサブシス(Sub-Sis)だから、そばに付いていたいわ。」
司会(中路真々美)
「そうだぞ、オルアさん。
いますぐアリムさんの所に戻ってナイトバインドする以外のことなら、目の付くところにいてくれた方が良い。」
オルア=サーパース
「いますぐ、アリムさんをナイトバインドしたいです。」
医師(白石冬香)
「明日にしてくれますか。オルアさん。」
◇
司会(中路真々美)
「午後の昼ごはんが終わったら、アリムさんを連れてきてくれ!
受伝台の予言を読んだもらって、どこまで感じるか確かめたい。」
オルア=サーパース
「はい、真々美様。」
医師(白石冬香)
「その後で、アリムさんとわたしたちの計4人で、アリムさんのナイトバインドの実施と遺伝子書き換えの予定について、アリムさんと相談します。
まさか、わたしたちのような素敵な女の人を断ることはないだろうから、順調に進むと思うわ。
カセイダード王国の男性が聞いたら、妬みで国中が一揆で反乱状態になるような栄誉なことだから、万に一つも予想外のことにはならないと思うわ。」
司会(中路真々美)
「会議の最初に、冬香とオルアさんが姉妹関係を成立させたことを伝える。
ふたりとも儀式の口上を思い出しながら、正しくあいさつしてくれ。
それと、面接準備者のメラニィ オネスティ Melanie HONESTY は、オルアさんに嫉妬の言葉を述べるだろうが、本日が唯一文句を言える機会だろうから、恨まないでやってくれ。」
オルア=サーパース
「はい、真々美様。
あの、冬香様は、オネスティさんの思いに気付かなかったのですか?」
医師(白石冬香)
「気付いていたけれど、その思いにこたえることは出来ないから、気付かないふりをしていたわ。」
オルア=サーパース
「オネスティさんは、腰抜けですね。
ダメでも思いくらいは伝えれば良かったのに。」
医師(白石冬香)
「それはできないわね。
もしも思いを告げてきたら、わたしたちはオネスティさんを遠ざけなければならない。
だから、彼女は思いを隠してきたのよ。」
オルア=サーパース
「それなら、墓場まで持っていけば良いのに。」
司会(中路真々美)
「姉妹関係の成立を聞かされた直後であれば、お祝いの言葉の一種として、ハイシス(High-Sis)の前でサブシス(Sub-Sis)に嫌味を言うことがゆるされる。
つまり、冬香の前で一度だけ、オルアさんに悪態をつくことが許される。
そのあとは、思いを封印して、オルアさんに普通に接してくれるだろう。」
医師(白石冬香)
「オネスティさんは、女の人のクラスター(Class-Star)だから男の腐った者のような見苦しい嫉妬や嫌がらせはしないわ。
オルアは、ただ一言、彼女に答えればいいの。
「冬香様をハイシス(High-Sis)に戴く栄誉と、
冬香様のサブシス(Sub-Sis)に選ばれた幸運を
大事にして、冬香様をお慕い続けます。」
と。」
司会(中路真々美)
「そしたら、オネスティさんは、
「その誓いを破った時は、わたしが冬香様のサブシス(Sub-Sis)になるからね。」
と答えて終了となる。」
オルア=サーパース
「もしかして、そこまでが姉妹関係の儀式に含まれるのですか?」
医師(白石冬香)
「うーん、そうでもないけれど、オネスティさんが私を名前で呼ぶことがゆるされる最初で最後の機会になるわ。
だから、オルアは、「冬香様を取られた!」と気分を害さないようにしてね。」
オルア=サーパース
「冬香様も同じような経験をされたのですか?」
司会(中路真々美)
「わたしが冬香をサブシス(Sub-Sis)に迎えたときに、」
面接責任者の ウェン シュウピン 温 秀平 Shuupin WEN が同じようなセリフを冬香に言ったな。」
オルア=サーパース
「真々美様も冬香様も、おモテになるのですね。」
オルアは嫉妬の感情を隠すために無表情になった。
司会(中路真々美)
「たまたま、ご縁があっただけだ。」
医師(白石冬香)
「そうね。 偶然の出会いね。」
司会(中路真々美)
「ウェンさんも魔力が高いから、
もしも万が一の話だけれど・・・ と断ってから、
オネスティさんに台詞を説明しているだろう。」
オルア=サーパース
「こころの準備をしておきます。」
医師(白石冬香)
「よろしく頼むわね。」
司会(中路真々美)
「それと、大事なことだから何度もしつこく釘を刺すが、会議中は静かに聞くだけにしてくれ。
換算レートの話の時のように、思わず感想を声や表情に出してしまったら、
「だまりなさい。」ではなくて、
「いね。」
と言われてしまうからな。」
オルア=サーパース
「それは厳しすぎない。 4ね、なんて。」
医師(白石冬香)
「「いね。」は、みやこ言葉で、去りなさいとか帰りなさいという意味よ。」
オルア=サーパース
「まぎらわしいわね。」
医師(白石冬香)
「4ね、という感情を抑え込んだ意味があるのかもしれないわね。」
司会(中路真々美)
「質問タイムを作るから、そのときだけオルアさんが話すことが許される。
ただし、意見と解釈される余地が無いように言葉を選んでくれ。」
オルア=サーパース
「分かりました。
意見を言えるようになる時期はいつですか?」
司会(中路真々美)
「カレンダーで1年後だから、2024年の8月7日からは意見を言っても問題ない。
ウェンさんとオネスティさんがオルアさんを認めてくれたら、早くて6か月後くらいには、
「サーパースさんは、どう思いますか?」
と振ってくれるかもしれない。
ウェンさんとオネスティさんの両方から発言の機会を振ってくれるようになれば、
わたしと冬香もオルアさんに、
「オルアさんは、どう思いますか?」
と発言の機会を振れるようになる。
」
オルア=サーパース
「段取りと手順が大変ね。」
医師(白石冬香)
「たしかにそうね。
でも、こういう説明をする上司は、光元国には存在しないわ。
意見を言わない常識があるかどうかを試金石(テスト問題)にしているようね。」
オルア=サーパース
「そういうルールを知らずに、意見を言ったらどうなるの?」
司会(中路真々美)
「常識が無いとか、
思いあがっているとか、
勘違いしていると判断されて、
良くても降格されてしまう。
まあ、退職に追い込まれることが多いようだ。」
オルア=サーパース
「なに、それ。
そんなだから、光元国の移民申請者が全員落とされるのよね。」
司会(中路真々美)
「常識として求められることは、国によって違うからな。
アリムさんは光元国ではダメ認定されたようだが、カセイダード王国では高価値と認定された。
ところ変われば品代わるだな。」
医師(白石冬香)
「ウェンさんとオネスティさんは、ほかの星からの移民で、カセイダード王国の考え方に賛同できたひとたちだから、アリムさんと同じような立ち位置ね。」
オルア=サーパース
「カセイダード王国の整理された言語体系が、多くの星のひとを受け入れることを可能にしたのね。」
司会(中路真々美)
「言語と法律は、簡略化とルール化しやすいと言えるな。」
医師(白石冬香)
「ただし、ひとのこころと本音だけは、制御コントロールできないのよ。」
司会(中路真々美)
「オルアさんには冬香のとなりで、オネスティさんのとなりに座ってもらうことになる。」
オルア=サーパース
「テーブルの陰で、シャーペンを刺されたりするのかしら。」
医師(白石冬香)
「それは無いわ。
もし、そんなことをしたら、わたしの視界に入ることが禁止されるから、割に合わないわ。
男の腐った者みたいなことはさせないし、するほど、オネスティさんは馬鹿じゃないわ。」
オルア=サーパース
「それなら良いけれど、もしも嫌がらせされたら、どうすれば良いの?」
医師(白石冬香)
「わたしの足を踏むとか、わたしの太ももを触るなどで合図して。」
オルア=サーパース
「了解いたしました。」
司会(中路真々美)
「それよりも、会議を聞くことと作成されていく議事録を確認することに集中して欲しい。
もっとも、オネスティさんにそんなことをさせてしまったら、ウェンさんも、わたしの視界から出されるから、絶対に防ぐだろうな。」
◇
司会(中路真々美)
「 冬香、オルアさん、会議は12時まで続くだろう。
今、9:38だ。
9:55には、面接2人組のウェンさんとオネスティさんが指令室のドアをノックするだろう。
だから、9:50にはテーブルに待機してくれ。」
医師(白石冬香)、オルア=サーパース
「「わかりました。」」
◇
医師(白石冬香)
「明日の夜が楽しみね。
オルアの部屋は散らかっているだろうけれど、言わないようにしなきゃね。」
オルア=サーパース
「会議、大変そうね。
ウェンさんとオネスティさんは、面接ビデオで見たけれど、どんなひとたちなんだろう。
女の人のクラスターだから、裏表はないと思うけれど、緊張するわ。」
司会(中路真々美)
「オルアさんが質問タイムまで、静かに出来ますように!と祈ろう。」
◇
そのころ、アリムさんは・・・
アリム
「100までさえも遠いなあ。」
【正性知識 2000】という分厚い本を読もうとがんばっていた。
【読者様へ】
あなたの10秒で、この作品にパワーをください。
「お気に入りに追加」 【 ↓ 】 お願いします。
丸いテーブルを3人が囲んだ。
司会(中路真々美 Mamami NAKAJI)
「今日は面接担当の2人が有給休暇明けで出てくる。
9時から10時までは、socks情報板を確認する時間になるから、10時から会議を始めることになる。
今までは、冬香と私の4人が参加していたが、今回からは、オルアさんも参加してもらう。」
オルア=サーパース(Allrounah SURPASS)
「真々美様、了解です。
参加いたします。」
ナレーション(筆者の解説)
「姉妹関係の儀式の関係で、本日の昼過ぎまでは、敬称付きで呼ぶ決まりを守っている2人です。
聞いてて、違和感がありますね。
また、socks (ソックス、靴下) 情報板とは、社内メールと掲示板を統合して一体化したようなものです。
話題ごとにスレッド(thread)が立てられるため、メール確認よりも効率が良いです。
メールのような配信もれがないため、全員が見れます。
また、メール確認で1日が過ぎることもありません。
スレッドを見れば、誰が何の業務を実施中か分かります。
個別通信もできますが、人間関係の悩みや困りごとを相談することに使用されます。
業務内容を共有したくないからという理由で、個別通信を行うことは禁止されています。
カセイダード王国が業務を効率化するとともに、情報共有により、トップと末端が同じ判断をできる状態を確立させた仕組みが、socks (ソックス、靴下) 情報板です。
参照期限が定められているため、1年を超える古い日付の情報についての参照義務は有りません。
古い情報に重要なものがある場合は、気づいたものが日付更新することになっています。
もちろん、過去の経過を理解している者が貴重ですが、わすれていても責められることはありません。
ただし、過去の情報を提供してくれた者に対して、
「指摘された。 揚げ足を取られた。 邪魔された。」
などという言動を取ると、大きな失点になります。
悪意帰属バイアスの精神の持ち主は、十分に注意してくださいね。
もちろん、過去の情報を提供した者が、必要以上に知らない者を責めることも禁止です。
当然ながら、
最後に処理する者が誰か、
責任を取らされる者が誰か、
ということが分からないひとは邪魔になるため、ベーシックインカムによる自宅封印の対象となります。
その結果、平均的な会社では考えられないくらい、ホワイトな風土が出来上がっています。
それにつけても、カセイダード王国に移住したい気持ちで、いっぱいです。」
ナレーション(筆者の解説) おわり
司会(中路真々美)
「ただし、注意事項がある。
オルアさんは、会議を聞く権利が与えられただけで、意見を言うことはできない。」
オルア=サーパース
「真々美様、どういうことでしょうか?」
司会(中路真々美)
「過去の経過などを知らないオルアさんが意見を言うと、会議の邪魔をすることになってしまうからだ。
この判断はおかしいとか生ぬるいなどと感じることが多々出てくるだろうが、おとなしく聞くだけに留めておいてくれ。 その代わり、話題ごとに質問を受け付ける時間を設けるから、質問をメモしながら聞いてくれ。
いま言ったことは、面接担当の2人の前でも繰り返すが気を悪くしないでくれ。
会議に新しい者を参加させるときに言う決まりだからだ。」
オルア=サーパース
「真々美様、了解いたしました。
書記や会議の議事録は私が作成すれば良いでしょうか?」
司会(中路真々美)
「発言者が自分で議事録用のsocks (ソックス、靴下) 情報板書き込んでから発言する決まりだから、議事録作成の手間は不要だ。
オルアさん自身が質問したいことだけ、メモすればいい。
もちろん、会議と同時進行で出来上がっていく議事録を見ながら、会議内容を聞いて欲しい。」
オルア=サーパース
「真々美様、了解いたしました。
そうなると【議事録作成ハラスメント】が発生しないから良い仕組みですね。」
ナレーション(筆者の解説)
「【議事録作成ハラスメント】とは、議事録作成者が重要と感じたことと、議事録確認者の価値観が違う場合に発生します。
悪意で、他者が作った議事録を全否定する者も存在します。
また、重要度がより高い項目に親切で入れ替えた可能性もあるでしょう。
しかし、他者が実施したことを無駄にする判断は悪意があると判定しなければなりません。
差別という名の優遇により、自身を特権階級者のように信じ込む者も確かに存在します。
カセイダード王国では過去に発生した問題をもみ消したり、かくしたりしません。
最悪のケースが発生しないように、事前に手を打ち続けています。
このような国風文化が理由で、光元国の移民応募者が落とされたのでした。
身も蓋も無い言い方をすれば、他者を落とし入れたり、いじめたり、ライバルを蹴落とす技量は、マイナス要素でしかありません。
それよりも、このような嫌がらせを受けて、実力を発揮できなかったひとたちをリサイクルというか有効活用することを実行している体制がカセイダード王国に健在しています。」
◇
司会(中路真々美)
「そして、冬香、落ち着いて聞いて欲しいのだが、こころの準備は良いだろうか?」
医師(白石冬香 Fuyuka SHIROISHI)
「どうしたの、かしこまって。
光元国に対して、厳しい処置をするだろうと予想しているから、ちょっとやそっとのことでは驚いたりしないわよ。」
司会(中路真々美)
「そうか、そう言ってくれると有り難い。
実は、・・・
実はだな、
Versilを国外に出さないことが決定した。
しかも、換算レートを大きく変えることを、絵美が承認した。」
医師(白石冬香)
「真々美がそこまで、おそるおそる言うところから考えて、
1Versil = 100丸(光元国の通貨)
くらいかしら?」
オルア=サーパース こころの声
『 0が1つ足りないわ。
1Versil = 1000丸
くらいにしてくれないと、
わたしの怒りは収まらないわ。』
司会(中路真々美)
「 1Versil = 1万丸(光元国の通貨)
にすることになった。
本日、面接責任者から各国に対して、通達を出してもらう。
2023年9月1日から実施となる。」
真々美は、白沢絵美様が承認の署名を入れた書面を、冬香とオルアに見せた。
医師(白石冬香)
「はあ、いくらなんでもやりすぎでしょ。」
オルア=サーパース
「さすがは、白沢絵美様ね。
よく分かっておられるわ。
素敵すぎる。」
医師(白石冬香)
「オルア、だまりなさい。」
オルア
「はい、冬香様。」
オルアは恐怖で震えた。
冬香がオルアに放った気は、『怒気当て』と『圧殺』の間くらいの強さだった。
ご参考: 016 5日目 アリムさんの訓練 「1 気」
医師(白石冬香)
「真々美、わたしに相談してくれても良かったんじゃないかしら?」
冬香は目が笑っていない笑顔を、真々美に向けた。
司会(中路真々美)
「冬香が怒ることは正当性があると考えている。
換算レートを変えることで、暗殺される危険もあるだろう。
世界各国からの非難の的に、冬香を巻き込みたくなかったから、相談しなかった。
もし、この換算レートを撤回する必要がある場合には、冬香に代替わりする余地も残したかった。」
医師(白石冬香)
「それでも、相談して欲しかった。
絵美様の承認を得ているようだけれど、よく承認してくださったわね。」
司会(中路真々美)
「それが、・・・」
真々美は、白沢絵美様との会話を、冬香とオルアの二人に説明した。
> 司会(中路真々美)
> 「光元国への対応として、
> 1Versil = 100丸(光元国の通貨)にしようと考えています。
> また、今後はカセイダードの通貨を両替せず、カセイダード王国への支払い時の換算レートのみにしたいと思います。」
>
> 白沢絵美
> 「光元国と関係諸国に分からせたいのならば、
> 1Versil = 1万丸(光元国ひかりもとこくの通貨)にしないと分からないのではないかなあ?
(中略)
> じゃあ、責任者は私の名前で行きましょうか?
> サインして送ります。
> 届いたでしょ。」
引用元: 015 白沢絵美様は、お見通し
医師(白石冬香)
「え、絵美様。
そんな大胆な判断をされるなんて。
ごめんなさい、真々美。
あなたは、なにも悪くないわ。」
オルア=サーパース
「白沢絵美様、素敵です。」
オルアは身構えたが、冬香からの気は来なかった。
司会(中路真々美)
「という訳で、絵美様の承認書のコピーを、面接2人組に渡すことになる。
経過については、説明しない。
余計な心配をさせたくないからな。」
医師(白石冬香)
「わたしには、心配させても良いのかしら。」
司会(中路真々美)
「冬香は、わたしのサブシス(Sub-Sis)だから、甘えさせてくれないか?
わたしも絵美の判断には、かなり驚いて動揺している。
わたしが戸惑っていると、その場で絵美自身を責任者とした書面を作成して送ってきたんだ。
ここまでされたら、反対もできないと分かるだろう。」
医師(白石冬香)
「たしかに、わたしが絵美様のサブシス(Sub-Sis)でも反対できないわね。」
オルア=サーパース
「絵美様は、本当に素晴らしいわ。」
冬香は、もうどうでも良くなった。
さすがに、絵美様には言い返せない。
◇
冬香は気を取り直した。
医師(白石冬香)
「わたしからの伝達事項は・・・
ついさっき、オルアに強い気をはなった後だから、とても言いにくいのだけれど・・・」
オルア=サーパース
「さすがに、びっくりしたけれど、もう水に流すわ。
冬香様への親近感はかなり下がったけれどね。」
医師(白石冬香)
「ものすごく言いにくくなった。
どうしよう。
こまったわ。
真々美、換算レートの話は、ふたりのときにして欲しかった・・・」
司会(中路真々美)
「オルアさん、換算レートの話を、冬香とふたりだけのときにしなかった私の落ち度で、冬香とオルアさんの間にある親密度を著しく下げてしまったことを、深くお詫びいたします。
どうか、いまの冬香からの発言と『怒気当て』は、無かったことにしてください。
お願いします。」
オルア=サーパース
「真々美様、冬香様、ひとつ約束してください。
二度と『怒気当て』しないでください。
お二人の前では気を張りたくないのです。」
司会(中路真々美)
「冬香、ごめんさないは?」
医師(白石冬香)
「オルア、ごめんなさい。」
オルア=サーパース
「冬香様、今回だけですよ。
二度目は無いですよ。」
医師(白石冬香)
「オルア、ごめんなさい。」
◇
オルア=サーパース
「それで、言いかけたことはなにですか?」
医師(白石冬香)
「そ、それは・・・」
オルア=サーパース
「冬香様、早くおっしゃってください。」
医師(白石冬香)
「明日の夜、オルアの部屋に行きたいわ。」
オルア=サーパース
「夜ですか? ご来訪の目的はなにですか?」
医師(白石冬香)
「あ、あのね。
今度は攻守交替して、そのね。
オルアに抱かれたいの。
オルア、わたしを抱いてください。」
オルア=サーパース
「えっ? 姉妹関係の儀式って、終わりましたよね。」
司会(中路真々美)
「オルア? 食事をするのは、人生で1回だけではないだろう。
それと同じように、姉妹関係の営みは、なんども行うぞ。
恋人関係のようなものだからな。」
オルア=サーパース
「すると、あの大がかりなセットを用意して、特別な儀式のセリフを何度も言うのですか?」
司会(中路真々美)
「いや、あれは初回限定で、2回目以降はお互いのタイミングが合えば、見つめ合うだけで始めることになるだろう。
もちろん、雰囲気とお互いの気持ちが重要になる。
もしかして、オルアさんは冬香と肌を重ね合うことが嫌なのか?」
医師(白石冬香)
「がーん。 そんなあ。」
冬香はショックで固まってしまった。
オルア=サーパース
「いいえ、冬香様、真々美様、そんなことは有りません。
あの大がかりな儀式が不要なら、2日に1日は愛し合いたいです。」
司会(中路真々美)
「のこりの1日は、嫌なのか?」
オルア=サーパース
「もう、真々美様、分かっているくせに、アリムさんと過ごしたいんです。」
医師(白石冬香)
「じゃ、じゃあ、嫌じゃないのね。」
オルア=サーパース
「もちろんよ、冬香様。 ただ、ね。」
医師(白石冬香)
「な、なにか条件があるの?」
オルア=サーパース
「冬香様、朝まで眠らせませんよ。
覚悟してくださいね。」
医師(白石冬香)
「は、はい。
よろしくお願いいたします。」
司会(中路真々美) こころの声
『受けモードの冬香は、別人かと思うくらい、かわいいな。』
◇
司会(中路真々美)
「それでは、気を取り直して、冬香からの連絡事項はどんな感じだ?」
医師(白石冬香)
「アリムさんのスケジュールが遅れに遅れています。」
オルア=サーパース
「えっ? そうですか?
このペースで行けば、3年後には告白の舞台へアリムさんを招待できますね。
それは、もう余裕ですね。」
医師(白石冬香)
「それは、おめでとうございます。
とても、喜ばしいわ。
遅れているのは、アリムさんの遺伝子書き換えの話です。」
オルア=サーパース
「たしかに、そうですね。
真々美様と冬香様にお願いしたから大丈夫と解決済みの気分でいました。」
司会(中路真々美)
「たしか、遺伝子を書き換える内容は決まったはずだよな。」
医師(白石冬香)
「内容は決まりましたが、遺伝子を書き換える前にするべきことが出来たので、止まっています。」
オルア=サーパース
「冬香様、わたしは、なにをすれば良いですか?」
医師(白石冬香)
「アリムさんとナイトバインド。 そして、真々美とわたしもナイトバインドを遺伝子を書き換える前にするべきです。」
ナレーション(筆者の解説)
> 騎士(Knight)契約と夜(Night)契約をパートナーと結ぶこと。
> 契約(Contract)と言うよりは拘束(Bind)に近いから、ナイトバインドと呼ばれる。
くわしくは、
004 運営側の話し合い、クラスターとは
をお読みください。
ナレーション(筆者の解説) おわり
オルア=サーパース
「冬香様、ナイトバインドは遺伝子書き換えの後でも良いのではありませんか?」
医師(白石冬香)
「アリムさんは予想外にレベルが高くて、その・・・」
冬香は真々美の顔をのぞき込んだ。
真々美はピンと来た。
司会(中路真々美)
「うーん、どうしようか?
オルアさん、ひとつ約束できるか?
今から言うことを聞いても、絶対に小石拾いや雑草摘みに行かないと。」
真々美は、ものすごく迷ったが、うそとごまかしは止めた方が良いと判断した。
もちろん、迷いに迷ったが、換算レートの話の時の冬香のように感情の限界突破をされるよりはマシという思いに至った。
オルア=サーパース
「アリムさんを苦しめた、苦しめている、苦しめようとしている連中の話なら、悪即斬にするわ。
それなら良いかな?」
司会(中路真々美)
「いや、それをしないでくれ!
と念押ししているのだがな。」
オルア=サーパース
「真々美様、心配しないでください。
証拠を残さないことはもちろんのこと、苦しむ暇さえ与えないようにしますから。
もちろん、3親等までが所有する財産はすべて回収しますから、無駄も発生しません。」
司会(中路真々美)
「オルアさん、そんな良い笑顔で言われても困るのだが。」
医師(白石冬香)
「真々美、お疲れさま、代わるわ。
ありがとう。
オルアが真々美とわたしの遺伝子をアリムさんにあげて欲しいという検討結果についてです。」
オルア=サーパース
「もしかして、アリムさんの敵がしたことにより書き込めなくなっているとかですか?」
司会(中路真々美)
「いや、わたしたちの遺伝子を書き込む前にアリムさんの遺伝子を確認して、該当箇所を復旧できるか試したんだ。」
オルア=サーパース
「復旧できないくらいダメージを受けていたとかですか?」
医師(白石冬香)
「復旧はできたわ。
それも予想をはるかに超える良い結果でね。」
オルア=サーパース
「じゃあ、なにが問題なのですか?」
医師(白石冬香)
「これを見てくれますか?」
冬香はオルアに、アリムさんの遺伝子の復旧結果を見せた。
> アリムさんの遺伝子を復元しました。
>
> 『意識飛ばし』 Grade 5、
> 『怒気当て』 Grade 5、
> 『圧殺』 Grade 5
>
> アリムさんの遺伝子を復元しました。
>
> 『瞬間記憶』 Grade 5、
> 『記憶圧縮』 Grade 5、
> 『録音再生』 Grade 5
引用元: 017 5日目 アリムさんの訓練 「2 記憶」
医師(白石冬香)
「粉々になっていたアリムさんの遺伝子を、真々美の発案で復元を試みたの。
真々美とわたしの遺伝子を仮想の完成見本として、医療用AI に処理させた結果の一部です。
ほかの箇所もわたしたち3人の遺伝子を仮想の完成見本として、復元を試みる価値が大いにあります。」
オルア=サーパース
「へえ、アリムさんって、すごいひとだったのね。
じゃあ、徹底的に復元したら、さらに素敵になりそうね。
楽しみだわ。」
司会(中路真々美)
「その後のことを考えてみてくれ!」
オルア=サーパース
「わたしたち3人の相手は超一流の男性になるかもね。
真々美様も、冬香様も、うれしいでしょ。」
医師(白石冬香)
「うれしいことは、うれしいですが、手放しでは喜べませんね。」
オルア=サーパース
「どうしてですか?
はっ? まさか、真々美様と冬香様は、アリムさんの優秀さに嫉妬の感情を抱いてしまったのですか?」
司会(中路真々美)
「嫉妬などではなくて、わたしたちでは、アリムさんを魅了(ほれさせることが)できなくなる可能性がある。
3人セットでも、相手にされなくなるかもしれない・・・」
オルア=サーパース
「まさかあ、わたしたち3人に鼻の下を伸ばさなかった男性はいなかったよね。
そんなのありえないわ。」
医師(白石冬香)
「いまのアリムさんでさえ、オルアに十分に気に入られているわよね。
それは、とてもすごいことだと思うけれど?
カセイダード王国に、オルアが相手をしても良いと思える男性はいなかったわよね。」
オルア=サーパース
「いませんね。今も。」
司会(中路真々美)
「今までは、オルアさんが相手をしない方だったが、これからは、オルアさんが相手にされなくなる方になる可能性が高い。」
オルア=サーパース
「まさかあ、冬香様と真々美様は深く考えすぎじゃないかなあ。
そう言えば、アリムさんも深く考えすぎだったよ。」
司会(中路真々美)
「なんの話だ?」
オルア=サーパース
「サイコロステーキの感想の話よ。
アリムさん、面白かったわ。」
オルアは、アリムさんの感想について、真々美と冬香に伝えた。
>アリム
>
> 「ファミレスのサイコロステーキは、キューブ型をしたハンバーグなんだけれど、いま食べているサイコロステーキは、本物のステーキをひと口サイズに切ったものだから本当に美味しいね。」
>
> アリムさんは、いきなり席を立ちあがって、きょうつけ(または、気を付け)の姿勢になった。
>
> アリム
> 「大変、気が引き締まる思いです。
> ボクはオルアさんが大好きです。
> オルアさんを、もう一人の自分として大事にします。
> このように、お伝えくださいませ。」
>
引用元: 023 6日目 AM8時 サイコロステーキの感想
司会(中路真々美)
「アリムさんは流石だな。」
医師(白石冬香)
「そうね。
わたしが切って、真々美が焼いた意味を良く理解しているわ。」
オルア=サーパース
「そういえば、焼いてから切るのが普通だった言っていたわ。」
医師(白石冬香)
「オルア?
魔力が戻っているはずだけど?
話は変わるけれど、コモンルーンに、[6] スリーカー(Threeker)は、表示されたかしら?
姉妹関係の儀式のあとは、性魔力を使っていないわよね?」
オルア=サーパース
「はい、冬香様。
コモンルーンは使用していません。
いまは、スリーカーは表示されていません。」
医師(白石冬香)
「そう、残念だわ。」
司会(中路真々美)
「気付かなくても害が無いことは気付かないことで、性魔力の消費を抑えているのかもしれないな?」
医師(白石冬香)
「そうかもしれないわね。」
冬香は、オルアはお花畑モードなのかなと思ったが、声には出さなかった。
医師(白石冬香)
「あのサイコロステーキにはね、オルアに害を成すものは、私がサイコロサイズになるまで細切れにして、」
司会(中路真々美)
「わたしが焼き尽くす。という意味が込められている。
ある種の決意表明だな。
それをアリムさんは、見事に感じ取ったということだな。」
医師(白石冬香)
「たいていの男性なら、身の程知らずに、
「ぼくが幸せにします。」
と、できもしないことをほざいて、女性をだまそうとするけれど・・・」
司会(中路真々美)
「 「もう一人の自分として大事にします。」
という言葉には、謙虚さと真実味を感じるな。」
医師(白石冬香)
「確かに、「釣りあげたら、どうとでもできる。」と二枚舌を持つ男性どもより、信頼できるわ。」
オルア=サーパース
「そんな深読みが求められたのね。
笑って悪かったわ。
次からは笑わないように、こらえなきゃね。」
医師(白石冬香)
「という訳で、先にアリムさんをナイトバインドしてから、遺伝子書き換えを実施すべきと考えています。」
司会(中路真々美)
「ハエの能力を持つ改造人間を作って、制御装置を取り付ける前に逃げ出されたシェイバーのような間抜けには成りたくないだろう。」
オルア=サーパース
「考えすぎだと思うけどなあ?」
医師(白石冬香)
「万が一のことが起こって、アリムさんがオルアではなく他の女性を好きになっても問題ないなら、ナイトバインドを後回しにしますか?
たとえば、面接担当の二人組は面接対象者たちに非常に気に入られていたから、アリムさんも気に入るかもしれないわ。」
オルア=サーパース
「冬香様、真々美様、生理が始まったようです。
本日は下がらせていただけませんか?」
医師(白石冬香)
「生理用品なら持ってくるから、心配しないで。」
オルア=サーパース
「いいえ、せっかくですが、わたしの生理はとても重くて、始まったら寝込んでしまうのです。」
司会(中路真々美)
「それは大変だ。 この部屋の奥にある布団で寝てくれ。
姉妹関係の儀式で使用した布団がまだ敷いてあるから使ってくれ。」
オルア=サーパース
「いいえ、ご迷惑をおかけするわけには行きません。
自分の部屋で休むことにします。」
医師(白石冬香)
「水くさいこと言わないで、オルア。
あなたは大事なサブシス(Sub-Sis)だから、そばに付いていたいわ。」
司会(中路真々美)
「そうだぞ、オルアさん。
いますぐアリムさんの所に戻ってナイトバインドする以外のことなら、目の付くところにいてくれた方が良い。」
オルア=サーパース
「いますぐ、アリムさんをナイトバインドしたいです。」
医師(白石冬香)
「明日にしてくれますか。オルアさん。」
◇
司会(中路真々美)
「午後の昼ごはんが終わったら、アリムさんを連れてきてくれ!
受伝台の予言を読んだもらって、どこまで感じるか確かめたい。」
オルア=サーパース
「はい、真々美様。」
医師(白石冬香)
「その後で、アリムさんとわたしたちの計4人で、アリムさんのナイトバインドの実施と遺伝子書き換えの予定について、アリムさんと相談します。
まさか、わたしたちのような素敵な女の人を断ることはないだろうから、順調に進むと思うわ。
カセイダード王国の男性が聞いたら、妬みで国中が一揆で反乱状態になるような栄誉なことだから、万に一つも予想外のことにはならないと思うわ。」
司会(中路真々美)
「会議の最初に、冬香とオルアさんが姉妹関係を成立させたことを伝える。
ふたりとも儀式の口上を思い出しながら、正しくあいさつしてくれ。
それと、面接準備者のメラニィ オネスティ Melanie HONESTY は、オルアさんに嫉妬の言葉を述べるだろうが、本日が唯一文句を言える機会だろうから、恨まないでやってくれ。」
オルア=サーパース
「はい、真々美様。
あの、冬香様は、オネスティさんの思いに気付かなかったのですか?」
医師(白石冬香)
「気付いていたけれど、その思いにこたえることは出来ないから、気付かないふりをしていたわ。」
オルア=サーパース
「オネスティさんは、腰抜けですね。
ダメでも思いくらいは伝えれば良かったのに。」
医師(白石冬香)
「それはできないわね。
もしも思いを告げてきたら、わたしたちはオネスティさんを遠ざけなければならない。
だから、彼女は思いを隠してきたのよ。」
オルア=サーパース
「それなら、墓場まで持っていけば良いのに。」
司会(中路真々美)
「姉妹関係の成立を聞かされた直後であれば、お祝いの言葉の一種として、ハイシス(High-Sis)の前でサブシス(Sub-Sis)に嫌味を言うことがゆるされる。
つまり、冬香の前で一度だけ、オルアさんに悪態をつくことが許される。
そのあとは、思いを封印して、オルアさんに普通に接してくれるだろう。」
医師(白石冬香)
「オネスティさんは、女の人のクラスター(Class-Star)だから男の腐った者のような見苦しい嫉妬や嫌がらせはしないわ。
オルアは、ただ一言、彼女に答えればいいの。
「冬香様をハイシス(High-Sis)に戴く栄誉と、
冬香様のサブシス(Sub-Sis)に選ばれた幸運を
大事にして、冬香様をお慕い続けます。」
と。」
司会(中路真々美)
「そしたら、オネスティさんは、
「その誓いを破った時は、わたしが冬香様のサブシス(Sub-Sis)になるからね。」
と答えて終了となる。」
オルア=サーパース
「もしかして、そこまでが姉妹関係の儀式に含まれるのですか?」
医師(白石冬香)
「うーん、そうでもないけれど、オネスティさんが私を名前で呼ぶことがゆるされる最初で最後の機会になるわ。
だから、オルアは、「冬香様を取られた!」と気分を害さないようにしてね。」
オルア=サーパース
「冬香様も同じような経験をされたのですか?」
司会(中路真々美)
「わたしが冬香をサブシス(Sub-Sis)に迎えたときに、」
面接責任者の ウェン シュウピン 温 秀平 Shuupin WEN が同じようなセリフを冬香に言ったな。」
オルア=サーパース
「真々美様も冬香様も、おモテになるのですね。」
オルアは嫉妬の感情を隠すために無表情になった。
司会(中路真々美)
「たまたま、ご縁があっただけだ。」
医師(白石冬香)
「そうね。 偶然の出会いね。」
司会(中路真々美)
「ウェンさんも魔力が高いから、
もしも万が一の話だけれど・・・ と断ってから、
オネスティさんに台詞を説明しているだろう。」
オルア=サーパース
「こころの準備をしておきます。」
医師(白石冬香)
「よろしく頼むわね。」
司会(中路真々美)
「それと、大事なことだから何度もしつこく釘を刺すが、会議中は静かに聞くだけにしてくれ。
換算レートの話の時のように、思わず感想を声や表情に出してしまったら、
「だまりなさい。」ではなくて、
「いね。」
と言われてしまうからな。」
オルア=サーパース
「それは厳しすぎない。 4ね、なんて。」
医師(白石冬香)
「「いね。」は、みやこ言葉で、去りなさいとか帰りなさいという意味よ。」
オルア=サーパース
「まぎらわしいわね。」
医師(白石冬香)
「4ね、という感情を抑え込んだ意味があるのかもしれないわね。」
司会(中路真々美)
「質問タイムを作るから、そのときだけオルアさんが話すことが許される。
ただし、意見と解釈される余地が無いように言葉を選んでくれ。」
オルア=サーパース
「分かりました。
意見を言えるようになる時期はいつですか?」
司会(中路真々美)
「カレンダーで1年後だから、2024年の8月7日からは意見を言っても問題ない。
ウェンさんとオネスティさんがオルアさんを認めてくれたら、早くて6か月後くらいには、
「サーパースさんは、どう思いますか?」
と振ってくれるかもしれない。
ウェンさんとオネスティさんの両方から発言の機会を振ってくれるようになれば、
わたしと冬香もオルアさんに、
「オルアさんは、どう思いますか?」
と発言の機会を振れるようになる。
」
オルア=サーパース
「段取りと手順が大変ね。」
医師(白石冬香)
「たしかにそうね。
でも、こういう説明をする上司は、光元国には存在しないわ。
意見を言わない常識があるかどうかを試金石(テスト問題)にしているようね。」
オルア=サーパース
「そういうルールを知らずに、意見を言ったらどうなるの?」
司会(中路真々美)
「常識が無いとか、
思いあがっているとか、
勘違いしていると判断されて、
良くても降格されてしまう。
まあ、退職に追い込まれることが多いようだ。」
オルア=サーパース
「なに、それ。
そんなだから、光元国の移民申請者が全員落とされるのよね。」
司会(中路真々美)
「常識として求められることは、国によって違うからな。
アリムさんは光元国ではダメ認定されたようだが、カセイダード王国では高価値と認定された。
ところ変われば品代わるだな。」
医師(白石冬香)
「ウェンさんとオネスティさんは、ほかの星からの移民で、カセイダード王国の考え方に賛同できたひとたちだから、アリムさんと同じような立ち位置ね。」
オルア=サーパース
「カセイダード王国の整理された言語体系が、多くの星のひとを受け入れることを可能にしたのね。」
司会(中路真々美)
「言語と法律は、簡略化とルール化しやすいと言えるな。」
医師(白石冬香)
「ただし、ひとのこころと本音だけは、制御コントロールできないのよ。」
司会(中路真々美)
「オルアさんには冬香のとなりで、オネスティさんのとなりに座ってもらうことになる。」
オルア=サーパース
「テーブルの陰で、シャーペンを刺されたりするのかしら。」
医師(白石冬香)
「それは無いわ。
もし、そんなことをしたら、わたしの視界に入ることが禁止されるから、割に合わないわ。
男の腐った者みたいなことはさせないし、するほど、オネスティさんは馬鹿じゃないわ。」
オルア=サーパース
「それなら良いけれど、もしも嫌がらせされたら、どうすれば良いの?」
医師(白石冬香)
「わたしの足を踏むとか、わたしの太ももを触るなどで合図して。」
オルア=サーパース
「了解いたしました。」
司会(中路真々美)
「それよりも、会議を聞くことと作成されていく議事録を確認することに集中して欲しい。
もっとも、オネスティさんにそんなことをさせてしまったら、ウェンさんも、わたしの視界から出されるから、絶対に防ぐだろうな。」
◇
司会(中路真々美)
「 冬香、オルアさん、会議は12時まで続くだろう。
今、9:38だ。
9:55には、面接2人組のウェンさんとオネスティさんが指令室のドアをノックするだろう。
だから、9:50にはテーブルに待機してくれ。」
医師(白石冬香)、オルア=サーパース
「「わかりました。」」
◇
医師(白石冬香)
「明日の夜が楽しみね。
オルアの部屋は散らかっているだろうけれど、言わないようにしなきゃね。」
オルア=サーパース
「会議、大変そうね。
ウェンさんとオネスティさんは、面接ビデオで見たけれど、どんなひとたちなんだろう。
女の人のクラスターだから、裏表はないと思うけれど、緊張するわ。」
司会(中路真々美)
「オルアさんが質問タイムまで、静かに出来ますように!と祈ろう。」
◇
そのころ、アリムさんは・・・
アリム
「100までさえも遠いなあ。」
【正性知識 2000】という分厚い本を読もうとがんばっていた。
【読者様へ】
あなたの10秒で、この作品にパワーをください。
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