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第1章 ボクの新しい名前
005 【挿絵】 オルアさんと、わたしの新しい名前
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オルアさんが専属メイド(実は、将来のパートナー)になることを引き受けられました。
◇
待合室となった別室で息が詰まる思いをして、わたしは結果を待っていた。
短くて、はかない夢だったな。
ベーシックインカムを導入した国に招待されるなんて、あまい夢を見なきゃよかった。
目から涙があふれだす。
ノックノックとドアを叩かずに声で言う人がドアの前にいた。
司会:
「開けるぞ」
医師:
「どうしました、どこか痛いですか? それとも、お腹がすきましたか?」
オルア:
「ご希望が有れば、言ってね。」
わたし:
「結果が不安になって、考えたら悲しくなって・・・」
司会と医師は、オルアを見る。
『良いなあ。 代わって欲しい。』と心の中で思った。
優しく慰めて寄り添えば簡単に落とせそうだ。
オルア:
「大丈夫ですよ。
これからは私がフォローしますから。
私のことは、オルア様と呼びなさい。」
わたしは、
『なんか怖い、わたしを弱らせてコントロールしたいひとかな?』
と不安になった。
司会:
「ざぶとん、全部とりなさい。」
医師:
「はい。」
司会:
「オルアさんと呼べばいい。 適切な距離感は大事だからな。」
わたし:
「オルアさん、よろしくお願いします。」
オルア:
「わたしといるときは、常に敬語を使って常にへりくだった態度でいれば、それ以上気を遣うことは無いから。」
わたし:
「ゴマをすらなくて良いなら助かります。」
司会:
「オルア、いい加減にしろ? ああ。」
医師:
「ゴマをすることは苦手ですか?」
わたし:
「たとえば、和菓子が大好きだ!と宣言してもらえたら、和菓子を贈ります。
しかし、言わなくても分かるだろう?と言われても分かりません。」
司会:
「言わなくても分かるだろ?って、あかちゃんを相手にしてきたのか?」
わたし:
「いいえ、成人した方々でした。」
医師:
「苦労してきたのですね。」
オルア:
「これからは、わたしがサポートしますので、泥船に乗ったつもりで安心してください。」
わたし:
「せめて、木の小舟でお願いします。」
『相性は悪くないのかもしれないな。』
司会と医師はそう判断した。
そして、疲れた。
◇
医師:
「あなたが会場で不便を感じたことの原因が分かりましたので、本国到着までに治療します。」
わたし:
「なにの治療ですか?」
医師:
「主に、赤緑色盲(red-green color blindness)と聴覚情報処理障害(APD, auditory processing disorder)ですね。」
わたし:
「光元国では治療方法が見つかっていません。
それを治すとなると、とても高額になるのでは?
わたしには払えません。」
司会:
「あなたが、カセイダード本国の国益に尽力してくれれば大丈夫です。」
わたし:
「過度の期待をされても困ります。
期待外れだと、がっかりされて、嫌われたり、罵倒されたり、いじめられたり、怒鳴られたりしたくありません。」
オルア:
「その場合は、わたしのサポートがダメだったということで、私の責任になります。」
わたし:
「そんな成績保証の学習塾のようなことをして良いのですか?
責任を押し付ける先が確保されていれば、なまけて努力しなくなりますよ。」
オルア:
「馬鹿正直ですね。
そのときは早めに見捨てますから気にしないでください。」
わたし:
「オルアさんは逃げられるなら良いことですね。
でも、わたしは
「出来そうにないことは出来ない、無理です。」
とお断りしたいです。
傷が小さいうちに。」
オルア:
「おはようからおやすみまで、いっしょにいますから大丈夫です。
それとも、わたしが一緒にいることで、あなたのやる気というか活力になりませんか?
わたしには魅力を感じませんか?」
わたしは、オルアさんの目を見た。
先ほどまで、強い言葉をはなっていた人物とおなじとは思えないほど、目が潤っていた。 瞬き1つでもすれば、涙があふれだすかもしれない。
わたし:
「でも、わたしが、オルアさんにお返しできるものが有りません。
オルアさんになんのメリットが有るのですか?」
司会:
「もういい、だいたい分かった。」
良かった。あとは、荷造りするだけだな。短い夢でも楽しかった。
オルアさんに余計な苦労をさせて、恨まれなくて済む。
わたしは、そう思った。
医師:
「過去の経験が、あなたをそうしたのですね。
でも、カセイダードに移住するのですから、過去を清算しろとまでは言えませんが、無かったこととして箱に閉じ込めても良いのではないですか。」
司会:
「そうだな。
光元国のことを忘れるためにも、気分を変えるためにも、改名することを勧める。
これからの貴方は夢をもてるようになって欲しい。
そして、『私には、夢が有る!』と胸を張って、自信を持って生きて欲しい。
そう願って、この名を贈る。」
アリム・・・「夢が有る」という意味だ。
医師:
「アリムさん、これからは新しい人生を歩んでください。
それが治療できない部分を癒してくれます。」
わたしは、感動して、うつむいて泣いてしまった。
これまでの苦しい過去、悲しい経験から解放された気がして、大声を出して泣いてしまった。
◇
10分間ほど泣いただろうか?
私が泣きやむまで、3人はそばにいてくれた。
オルアさんの声が聞こえる。
ずっと、わたしが泣きやむのを待って、わたしの新しい名を呼んでくれた。
オルア:
「アリムさん、あごあげて、天を見て、元気出して。
こんな素敵な人がそばにいるんだから!
ねっ。」
やさしい視線と、包むような笑顔に、こころが暖かくなった。
アリム:
「はい。」
わたしの新しい人生が始まろうとしていた。
◇
オルア:
「行くよ! アリムさん。」
と手を引いてくれた。
アリム:
「はい。」
手から伝わるオルアさんの体温に幸せを感じました。
◇
待合室となった別室で息が詰まる思いをして、わたしは結果を待っていた。
短くて、はかない夢だったな。
ベーシックインカムを導入した国に招待されるなんて、あまい夢を見なきゃよかった。
目から涙があふれだす。
ノックノックとドアを叩かずに声で言う人がドアの前にいた。
司会:
「開けるぞ」
医師:
「どうしました、どこか痛いですか? それとも、お腹がすきましたか?」
オルア:
「ご希望が有れば、言ってね。」
わたし:
「結果が不安になって、考えたら悲しくなって・・・」
司会と医師は、オルアを見る。
『良いなあ。 代わって欲しい。』と心の中で思った。
優しく慰めて寄り添えば簡単に落とせそうだ。
オルア:
「大丈夫ですよ。
これからは私がフォローしますから。
私のことは、オルア様と呼びなさい。」
わたしは、
『なんか怖い、わたしを弱らせてコントロールしたいひとかな?』
と不安になった。
司会:
「ざぶとん、全部とりなさい。」
医師:
「はい。」
司会:
「オルアさんと呼べばいい。 適切な距離感は大事だからな。」
わたし:
「オルアさん、よろしくお願いします。」
オルア:
「わたしといるときは、常に敬語を使って常にへりくだった態度でいれば、それ以上気を遣うことは無いから。」
わたし:
「ゴマをすらなくて良いなら助かります。」
司会:
「オルア、いい加減にしろ? ああ。」
医師:
「ゴマをすることは苦手ですか?」
わたし:
「たとえば、和菓子が大好きだ!と宣言してもらえたら、和菓子を贈ります。
しかし、言わなくても分かるだろう?と言われても分かりません。」
司会:
「言わなくても分かるだろ?って、あかちゃんを相手にしてきたのか?」
わたし:
「いいえ、成人した方々でした。」
医師:
「苦労してきたのですね。」
オルア:
「これからは、わたしがサポートしますので、泥船に乗ったつもりで安心してください。」
わたし:
「せめて、木の小舟でお願いします。」
『相性は悪くないのかもしれないな。』
司会と医師はそう判断した。
そして、疲れた。
◇
医師:
「あなたが会場で不便を感じたことの原因が分かりましたので、本国到着までに治療します。」
わたし:
「なにの治療ですか?」
医師:
「主に、赤緑色盲(red-green color blindness)と聴覚情報処理障害(APD, auditory processing disorder)ですね。」
わたし:
「光元国では治療方法が見つかっていません。
それを治すとなると、とても高額になるのでは?
わたしには払えません。」
司会:
「あなたが、カセイダード本国の国益に尽力してくれれば大丈夫です。」
わたし:
「過度の期待をされても困ります。
期待外れだと、がっかりされて、嫌われたり、罵倒されたり、いじめられたり、怒鳴られたりしたくありません。」
オルア:
「その場合は、わたしのサポートがダメだったということで、私の責任になります。」
わたし:
「そんな成績保証の学習塾のようなことをして良いのですか?
責任を押し付ける先が確保されていれば、なまけて努力しなくなりますよ。」
オルア:
「馬鹿正直ですね。
そのときは早めに見捨てますから気にしないでください。」
わたし:
「オルアさんは逃げられるなら良いことですね。
でも、わたしは
「出来そうにないことは出来ない、無理です。」
とお断りしたいです。
傷が小さいうちに。」
オルア:
「おはようからおやすみまで、いっしょにいますから大丈夫です。
それとも、わたしが一緒にいることで、あなたのやる気というか活力になりませんか?
わたしには魅力を感じませんか?」
わたしは、オルアさんの目を見た。
先ほどまで、強い言葉をはなっていた人物とおなじとは思えないほど、目が潤っていた。 瞬き1つでもすれば、涙があふれだすかもしれない。
わたし:
「でも、わたしが、オルアさんにお返しできるものが有りません。
オルアさんになんのメリットが有るのですか?」
司会:
「もういい、だいたい分かった。」
良かった。あとは、荷造りするだけだな。短い夢でも楽しかった。
オルアさんに余計な苦労をさせて、恨まれなくて済む。
わたしは、そう思った。
医師:
「過去の経験が、あなたをそうしたのですね。
でも、カセイダードに移住するのですから、過去を清算しろとまでは言えませんが、無かったこととして箱に閉じ込めても良いのではないですか。」
司会:
「そうだな。
光元国のことを忘れるためにも、気分を変えるためにも、改名することを勧める。
これからの貴方は夢をもてるようになって欲しい。
そして、『私には、夢が有る!』と胸を張って、自信を持って生きて欲しい。
そう願って、この名を贈る。」
アリム・・・「夢が有る」という意味だ。
医師:
「アリムさん、これからは新しい人生を歩んでください。
それが治療できない部分を癒してくれます。」
わたしは、感動して、うつむいて泣いてしまった。
これまでの苦しい過去、悲しい経験から解放された気がして、大声を出して泣いてしまった。
◇
10分間ほど泣いただろうか?
私が泣きやむまで、3人はそばにいてくれた。
オルアさんの声が聞こえる。
ずっと、わたしが泣きやむのを待って、わたしの新しい名を呼んでくれた。
オルア:
「アリムさん、あごあげて、天を見て、元気出して。
こんな素敵な人がそばにいるんだから!
ねっ。」
やさしい視線と、包むような笑顔に、こころが暖かくなった。
アリム:
「はい。」
わたしの新しい人生が始まろうとしていた。
◇
オルア:
「行くよ! アリムさん。」
と手を引いてくれた。
アリム:
「はい。」
手から伝わるオルアさんの体温に幸せを感じました。
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