君と彩る一ページ

蓮奈

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終わりが始まり

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新学期を告げる蜃気楼。まだ暑い九月。カンカン鳴り響く電車の踏切の音。荷物を線路に放り込もうとしたその刹那。

「君、何しているのかな?」

「ちょっと!止めないでよ」

そのお兄さんは鋭い目をして、止めなかったら私が自殺すると言った。その通りだ。私は死ぬつもりだった。クラスで頭がいいから、皆の勉強の面倒を見ていた。しかしだんだんと疲れて、二学期もそれなら全て捨ててしまおうと思った。だが、男性に阻止されてしまった。

「ちょっとついてきて、悪いようにはしないから」

「それ怪しい人が言う台詞!離して!」
 
男性は手を離さず、図書館へ向かっていった。そしてスタッフに挨拶しながらバックヤードに通された。

「俺は、三谷 洋。図書館司書だよ」

「えっと、天羽 怜菜です。高校二年生で……」
 
何を話していいのか分からない。すると三谷さんは、いきなり核心を突いてきた。

「君、なんで自殺しようとしてたの?大丈夫、司書は本人の希望がない限り学校にも通報しないし親にも言わないから。俺は君の味方だから、話してほしい」
 

親にも誰にもいえなかった苦悩は、口から零れて溢れていった。

「私、自分で言うのもあれだけど、学年トップで……皆に宿題代わりにやってとか勉強教えてとか言われて、辛いけど嫌な顔一つせずにやってたんです。でもある日、頭の中でプツンと糸がきれた音がして、気がついたら自殺しようとしてました」 

洋さんは私の頭を撫でて、辛かったね頑張ったねと言ってくれた。堰を切ったように涙が溢れ、大きな声で泣いてしまった。

「今日はここにいて、好きな本を読んで過ごすといいよ。専門書から漫画まで何でもあるよ」

「……ありがとうございます」

私は親にメッセージアプリで熱中症で倒れたから学校休むと伝えた。好きだったけど廃版になって買えなかった本があったので、一日かけてそれを読んでいた。時間が過ぎるのはあっという間で閉館時間になった。私が帰ろうとしたら、洋さんがとんできて、メッセージアプリの連絡先を交換した。それで私は帰って、家で洋さんに今日はありがとうというメッセージとスタンプを送った。すると洋さんから明日も図書館来ていいよと帰ってきた。優しくてまめな人だなと思った。
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