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動乱
74話
しおりを挟む借金の返済日に遅れることなく何とか綱渡りで生活を続けていたある日、故郷の叔母から文が届いた。
帰ることの出来ない晋奏に変わって母の看病をしてくれているのが、母の妹である叔母だった。
母の身になにかあったのかと急いで文を開くとそこには、叔母からの金の無心が書いてあった。
母と叔母は昔から折り合いが悪く、仕方がなく看病をしている。看病に時間を取られて仕事もろくにできない。このまま帰って来ないのであれば自分の生活費も上乗せして送れ、という内容だった。
晋奏は頭を抱えた。これ以上金を送ってしまうと自分の生活が出来ない。出費に大して収入が追いついていないのだ。しかし王琳に追加で保証人になってくれと頼むのはあまりに申し訳ない。結論が出ないまま、晋奏は金貸しの元へと足を運んでいた。
保証人無しで貸してもらえないか交渉しようと決め、金貸しに借入の追加をお願いする。すると金貸しは王琳を保証人として追加の借入をすると勘違いしてしまい、あれよあれよという間に借用書と金を用意した。
晋奏は王琳を保証人としないと告げようと機会を見ていたが金が目の前に置かれた時、心の中の悪魔が囁いた。
ちゃんと今でも返済できているのだから借りたとしてもちゃんと返せば問題ない――今思えばその考えに心がぐらついた時こそ、晋奏の運命の分かれ目だった。
気付けば金貸しの元から去った晋奏の手には金が抱えられていた。
ちゃんと返せば大丈夫。そう繰り返しながら家に帰った。
しかし現実は甘くない。
たとえ一時的に金が増えたとしても今までより出費が多くなってしまっているため、それまできちんと返済金として取っておけていた分がどんどん残らなくなっていった。
王琳に追加で借入をしたことも言い出せず、なんの疑いもない真っ直ぐな目でこちらを見る王琳。そんな彼の目を見つめ返すことができなくなったのはいつからだったか。
自分でも解決方法が分からぬままどんどん深みにはまっていく晋奏。そんな時、隣に住む商人の男が賭博で大勝したという話が耳に入った。
晋奏はこれだ、と思った。元手が少なくても逆転出来る数少ない方法。もうこれしかない――晋奏は手元にあったなけなしの金を握りしめ賭博場に走った。
結果は惨敗だった。賭けに使わなければあと一、二週間は食べられただろうにもうすっからかんだ。
その瞬間、晋奏は自分の心の糸が切れる音がした。
それからどうやっていたのか自分でも記憶がふわふわしている。気付けば晋奏は故郷の村に戻り実家の前にたっていた。何日も歩いて帰ったのだろう、足はもう棒のようだった。
意識が段々とはっきりした晋奏は猛烈に母に会いたくなった、母の部屋に向かって走り出す。
目的の扉を開き、母の姿を見ようと寝台に目を向ける。
「は……? どういう、事だよ」
――寝台の上はもぬけの殻だった。
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