芙蓉は後宮で花開く

速見 沙弥

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出会い

41話

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 家族会議が終わり、湯浴みを終えた蓮花は髪を梳かしながら考えていた。
 何故、あの時すぐに仕事を辞めると言わなかったのか。何故、飛の姿がちらついたのか。

「そういえば……」

 蓮花は綉礼の屋敷で明苑が言っていた事を思い出す。

『だって、その人だけドキドキするのか、他の人でもそうなのか今のままじゃわかんないでしょ?』

 さっき李星に助けて貰って密着した時、自分はドキドキしていただろうか。あの近距離で目が合っても緊張もしていなかった。
 でも飛には――。そこまで考えて蓮花は立ち上がり布団に潜り込む。

 好きかどうかはまだ分からない。でも少しでも確実に飛の事を意識してしまっている。
 蓮花は自分のその気持ちを認めるべきか否か、まだ決めかねていた。
 好きになったところで素性の分からない人。もし家の格が釣り合わないのであれば、好きになっても望みは薄い。それならいっそこの気持ちに名前を付けなくてもいいんじゃないか。

 ぐるぐる頭の中で思考を巡らせているうちに眠気が襲ってきて蓮花はいつの間にか夢の中へと誘われてゆく。

 そうやって考えている時点でその気持ちを無視できなくなっていることにも気付かずに。





「蓮花? もうそろそろ準備しないといけないんじゃない?」
「んん……」
「蓮花ったら。朝よ、起きなさい」
「ふあ……おはよう。起こしてくれてありがとう母様」
「いいのよ。たまには朝もゆっくりしなさいな」

 翌日、珍しく起床の遅い蓮花を心配して蘭玲は娘の部屋へやって来た。目覚めは悪くない蓮花は少し揺するとすぐ起きる。蘭玲も娘が起きたのを確認すると居間へと戻って行った。

 昨晩考え事を遅くまでしていたせいで朝の起床時間がずれてしまったようだ。いつもが早すぎるくらいなので仕事に遅れる心配は無い。
 しかも今日の仕事は午前中だけなので気持ち的にも少し楽だ。

 蓮花は気持ちを切り替えて仕事の支度を始めた。







「それじゃあお先に失礼します」
「あ、蓮花! 今日はお昼の用意はしてるのかい?」
「いえ、まだです」
「じゃあ今日の残りだけど、いるんだったら持って帰りなよ。指示数の間違いで余ってしまったみたいでね」
「そうなんですか? じゃあお言葉に甘えていただきます!」

 午前の仕事を終えて帰ろうと挨拶をした時、親切な同僚に声をかけてもらい料理を分けてもらう。蓮花はどうせならできるだけ出来たての状態で食べようと、庭の一角でお昼を食べることにした。

 
 
 お昼を食べ終えた蓮花は少々食べ過ぎて苦しくなったお腹をならすために少し休憩をしようと決める。
 のどかな日差しが差し込む午後。木の葉の揺れるさわさわとした心地よい耳障りの音に包まれながら目を閉じた。


 
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