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出会い
39話
しおりを挟む昔から李星は軽い調子で蓮花にちょっかいをかけてくる。最初はまともに返していたが他の人にも同じような事をしているのを見て、蓮花もある程度流すようになった。
「蓮花も今はちょっと気になる人がいるみたいだし、李もさっさと諦めなよね~」
「は?」
「ちょっと、明苑! だからそんなんじゃないってば」
ニヤニヤする明苑を咎める蓮花。ふと李星の方をみるとさっきまでのにやけ顔ではなく何かを考えているような様子だった。
「李星?」
「あ? おお、まあ蓮花にもとうとう春が来たのか。俺の事は遊びだったのね!」
「なに言ってるんだか、全く。――私そろそろ家帰らないといけないから、向こうのお店寄ってから帰るね!」
「暗くなってきたから気をつけて帰れよー」
「うん、ありがと!」
三人に見送られながら蓮花は帰路に着いた。
「お待ちしておりましたわ、渧淳様。お会いしとうございました……」
「間が空いてしまって申し訳ありません……。何しろ人目をかいくぐるのはここではあまりに難しい」
暗闇の中、部屋で対面するのは艶やかな雰囲気を持つ女人と男の獣人の二人。二人が醸し出す空気でただならぬ関係であることは明確だった。
「早く堂々と貴方の横でいられることが出来たらいいのに」
「本来なら今頃貴女は私の妻だったはず。運命とは酷なものです……。ですがまたこうやって貴女と甘い時間を過ごすことが出来るなんて」
女は男の手を引き寝台へと呼び寄せる。男はこれからする行為を思わせるその仕草に高ぶる気持ちを見せないよう抑え込む。
「そんな事を言って、私以外の方を奥様に迎えたじゃありませんか」
「ヤケになっていたのですよ。貴女が手に入らないなら誰と結婚しても同じこと。いつも想っていたのは貴女だけです」
「本当かしら――ッ」
軽く笑う女に待ちきれないと言わんばかりに荒々しく口付ける男。それに応えながら二人は寝台へ沈み込んでいく。
男は女の耳元で愛を囁きながら衣服を脱がせてゆく。男に愛撫される女の目は天井を見つめながら妖しく微笑んでいた――。
気怠げな様子で寝台へ並んで寝る二人。男は女に腕枕をしながら髪を撫でる。女は男の逞しい胸に頬を寄せ息を整えていた。
「ところで、最近は彼の様子はどうですか? 何か異変は?」
「おかしいことは何も。最初の頃は怪訝な顔をしていましたが、あの子も自分の立場と利益を理解したんでしょう。最近は率先して取り巻きを増やしていますわ」
「将来有望なことで何よりです。いずれ私が彼の父親になる事もしっかりご理解頂かないと」
「……さっきからあの子のことばかりね。私の事もちゃんと見ていて下さらないと悪い事をしてしまいますわよ」
男の頬に手をあて、自らの方へ向けさせる。男は女に口付け、それは次第に深くなっていく。
「夜はまだ長い、時間を潰さないといけませんね……」
「あら、そんなのあっという間ですわ。お楽しみはこれからですもの」
再び交じり合いながら、二人の夜は深まって行った――。
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