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出会い
18話
しおりを挟む「紅龍殿下!」
声のした方を向くと息を切らした武官と思われる男性二、三人がこちらへ走ってきていた。少年はバツの悪そうな顔をしてその様子を見ている。すぐ近くまで来ると先頭にいた男性が少年の元へ跪いた。
「あれほど一人で部屋をお出にならないで下さいとお願いいたしましたのに」
「ごめん」
少年、もとい紅龍は自分でも悪いことをしたと自覚しているようで、すぐに謝罪をする。目の前で行われるやり取りに蓮花の心は焦りでいっぱいだった。
この国で紅龍と呼ばれる人物はただ一人【姜 紅龍】、龍人であり第二皇子である皇族だ。蓮花は知らなかったとはいえ、なんという事をしてしまったのかと今までの一連の出来事を思い返した。
「ん? おい、ここで何をしている。まさかお前が紅龍殿下を連れ出したのか!」
「違うんだ、湖玉! この人は僕が困っているところを助けてくれたんだ」
こちらに気づいた武官が――湖玉と言うらしい――蓮花に食ってかかる。しかし紅龍が慌てて庇ってくれる。蓮花はそんな紅龍に向かって正式な礼を取り跪く。
「知らなかったとはいえ、無礼な振る舞いの数々。お詫びのしようもございません。ご気分を害してしまい申し訳ございません」
「そんな、君は助けてくれただけなのに……。湖玉が怒鳴るからだよ!」
「も、申し訳ございません。そなたも悪かったな」
深く頭を下げる蓮花を紅龍は慌てて止める。湖玉を諌めると流石に決めつけすぎたと思ったのか謝ってくれた。
「いえ、誤解されるようなことをした私か悪いのです。心優しい殿下に感謝いたします」
「こちらこそ、小鳥を戻してくれてありがとう」
「さあ殿下、そろそろ戻りませんと」
「……わかった」
もどかしそうに蓮花と紅龍を見る湖玉。躊躇う素振りを見せたが素直に武官達に連れられて去っていった。
姿が見えなくなってからやっと蓮花は詰めていた息を吐いた。さっきまでこの国の王族が目の前にいたなんて信じられない。まるで現実味のない状況に蓮花は混乱したが、父にお弁当を届ける事を思い出し慌てて歩き出した。
「ご無事で何よりです、殿下」
「いやあ、それにしても流石紅龍殿下です! 下々の者にもお優しい」
「さすがこの国の頂点にお立ちになるお方です!」
「黙れ」
そう持て囃すお付きの武官に紅龍は睨みを聞かせる。それまでの笑顔はどこへ行ったのか一気に青ざめる男たち。
「どこで誰が聞いているのか分からないんだ。思うのは心の中だけにしておけ」
ふっ、と笑みを零す紅龍は小鳥を心配していた紅龍とはまるで別人だった。笑った紅龍を確認して周りの男たちも笑みを浮かべた。その様子を湖玉はじっと見つめていた――。
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