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出会い
17話
しおりを挟むその日蓮花は休日のはずがいつも通り宮廷にいた。父が家に忘れたお弁当を届ける役目を任されたのだ。少し家を出るのが早かったので普段ゆっくり歩けない所を歩きながら時間を潰していた。
周りを見回しながら歩を進めていると、ある木の下でうずくまっている子供が目に入る。もしや怪我でもしているのかと思い慌てて駆け寄る。
「どうしたの? 大丈夫?」
目線を合わせるように膝を曲げ顔を覗き込む。顔を下げていたので気づかなかったが少年は目も髪も綺麗な真紅色だった。目を奪われたが、自分が何故こちらに来たかを思い出した蓮花は少年の手に包まれている小鳥を見つけた。
「巣から落ちてしまったみたいなんだ……」
「怪我は――していないようね。見つけてあげたのね、すごいわ」
眉を下げている少年の不安を消すように頭を撫でてあげる。幾分か表情を和らげた少年にほっとした。
「巣は……あそこね。その子私に預けてもらってもいいかしら?」
「どうするの?」
「お姉さんがあそこにこの子を戻してきてあげる。その代わりと言ってはなんだけど、このお弁当を守っていてもらえる?」
少年は小鳥とお弁当を見比べて考え込んだ。少しの沈黙の後、こくんと頷いた少年に蓮花は微笑みかけて小鳥を預かる。
「ありがとう。よし、じゃあお姉さん頑張っちゃうね!」
胸元の合わせを少し弛めた。少年は蓮花の行動に驚いて慌てて目線をお弁当で隠す。袂に入れることも考えたが登ってる間に落としてしまうかもしれない、そう考えた蓮花は小鳥に少しの間だけ胸元にいてもらうことにした。もちろん、少し弛めただけなので肌が見えることはない。
木登りは子供の頃以来だったので少し心配だったが、体は覚えているものでするすると登れた。さっきまで目を隠していた少年もその様子に釘付けになっていた。
巣に手が届く所に到着したところで蓮花は問題に気がついた。ここまでは両手で支えていたが小鳥を置く少しの間片腕で自分の体重を支えなければいけない。普通の女人よりは力はあるかもしれないが自分の体重を支える程の自信はない。しかしここで考える時間が長ければ長いほど持久力は低くなってしまう。一か八か、と蓮花は片手を枝から離した。
「っもう、落ちちゃダメ、だよ」
枝を掴む震える手にありったけの力を入れて胸元にいる小鳥を巣に戻す。落とさずに戻せた事に気が緩んだしまったのか腕が悲鳴を上げて枝から離れてしまった。
「危ない!」
少年が叫びながら目を背けた。少年の声を聞きながら、ここで自分が怪我をしてしまうと少年が気に病んでしまう。そう思い蓮花は必死で着地の体勢をとる。
どんっとそれなりの音が響いた。
少年も蓮花もそろそろ目を開けた。蓮花は尻もちをついている。少年は慌てて蓮花に駆け寄ってきた。
「大丈夫?」
「ええ、なんともないわ。お弁当ありがとうね」
服に着いた土を払い預けていたお弁当を受け取った。心配そうに見る少年にお礼を言った時遠くから誰かが走って来た。そして蓮花はその人物の発した言葉に驚愕する。
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