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第14話 4人家族

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更に3ヶ月後

〔……母ちゃん…母ちゃん…お願い、返事をして…〕

ララは涙を流しながら母の手を握る

〔………あぁ、こんな事になるならあの時……〕
〔…私も死にたい…母ちゃんとルカが居る所に行きたい…〕
〔うぅ…どうしてどうして、私達が一体何をしたって言うの?〕

この時、少女は死を求める
少し前まで生を求めていた人を変えたものは現実の残酷さ
弟を失い、更には母を失う
目の前で何も出来ずに、ただ罪が無くなるその瞬間を見る事しか出来ない

【……ララ、行こう…もうここには居られない】
【アロゲンス軍に見つかった、長く居ると俺たちまで…】

〔……母ちゃんとルカは?2人も連れて行くんだよね?〕

【……無理だ、行けない】

〔えっ?どうして…2人も家族だよ…〕

【……無理なんだ、無理なんだ、分かってくれ…ララ】

イーサンは娘の肩に手を添えながらそう言った
確かに2人は家族だ、でも今の2人は死人なのだ
今の状況で死人を連れて行く事は出来ない
荷物が増えればリスクも増える
悲しいが置いて行くことしか選択肢がない

〔……………〕

父のその言葉を聞いたララは酷く絶望した顔をする
今まで一緒に生きてきた家族を捨てる…
その選択は7歳の少女にとって酷く辛いものだった

〔……母ちゃん、ルカ、ごめんなさい…寂しいよね、苦しいよね、…憎いよね〕
〔……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい〕
〔…ごめんなさい〕
〔……母ちゃん、これ好きだったよね、ブルーベリー味のパン〕
〔……〕

ララはノマ達の方に目を向ける

〔……これ食べてね、少ないけど〕

ララはパンを少しだけちぎると母の手元に置いた

〔……ルカ、ルカは…クマのぬいぐるみが好きだったよね〕

ララはクマのぬいぐるみをルカのそばに置いた
このクマのぬいぐるみはララが一生懸命ルカの為に作ったものだ
ララはその時ルカとの思い出を思い出した

〔…辛かったよね、お腹空いたよね…ごめんね、お姉ちゃんが代わりに死ねば良かったよね〕
〔(いや、私が代わりに死にたかった)〕

〔……ごめんね、またね、ルカ、母ちゃん〕
〔また、また、会おう……〕

ララは下ろしていた腰をゆっくりと持ち上げた

〔行こう…父ちゃん、ノマ、タロ〕

【あぁ…行こうか…ごめんな、ララ】

〔…?〕

【…なんでもないよ…】

〔……そっか〕

{…父ちゃん、これからどこ行くの?}

ノマは痩せ細った手で父の手を握ろうとした

【……地下に行く、サンコーシ地下街という名前の所だ】

{…サンコーシ地下街?}

【あぁ、そこはサンリ族だけで無く色々な種族の人達が集まって過ごしている所だ】
【そこに居る人達は皆、地上で帰る場所がない人達】
【あそこならきっと俺たち家族を守ってくれるはずだ】

{…そうなんだ}

【あぁ…】

〔………〕

「ワンワン!(どうしてみんな暗いかおをしてるの?)」

〔……?ごめんね、タロ、貴方も大切な家族…〕

小さな少女は愛犬を強く抱きしめた

〔(もう…家族を失いたくない…)」と…





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