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ジャンケン大会

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 味方を巻き込む事を厭わず大きな岩を投げてくるモノ、土魔法らしき石槍を飛ばしてくるモノ、味方を盾にして後ろから攻撃してくるモノなど様々ないやらしい攻撃を躱し反らしつつ刀を振り続けた。スキルは未だ一切使っていない……分身以外はだけどね。
 一方香織さんは魔法スキルを結構な頻度で使用している。最初の頃は同じようにスキルは使わずに遠目から弓を放ったり近付いてきたモノを刀で攻撃していたのに、魔法の頻度が増えたのは体力的にキツイのかな?と不思議に思っていたら、どうやら接近戦が嫌みたいだ。分身を通してちょくちょく観察していたら理由がわかった。それは……巨人が腰みのだけのせいで股間が丸出しになる光景が多々あるからのようだ。巨人の巨大なアレがブランブランとしているのから、必死に顔を背けてつつも赤く染めている姿は……ちょっと興奮しそうになったのは秘密だ。ただまぁ巨大なアレはグロいのは確かなんだけどね。見慣れている俺でも……俺でも思うんだから、香織さんにとっては相当なものだろう。えっ?見慣れているはずないだろう?お前のは可愛いもんだろうだって?……そ、そんな事ないはずだ!きっと平均……いや、ビッグに違いない。誰と比べたわけでもないけれど。
 対してうどんたちはガンガンとソコを攻めまくっていた。躊躇なく斬ったり燃やしたり凍らせたり……見ていて俺まで内股になってしまうほどに攻めまくっていた。ロンは空から風魔法で切り付けたり、その身体を巻き付けてへし折ったり、首元に噛み付いたりしていた。空を飛ぶ事以外はどう見ても蛇にしか見えない戦い方なんだけど、それを言うと拗ねそうなので黙っておこう。
 ちなみにメスの巨人もいた。もうねメロンとかスイカとかってレベルじゃないものが2つ大きくブルンブルンと揺れていたよ。アレだ……あんまり大きいのは気持ち悪いっていうか怖いね。いや、饅頭怖い的な意味ではなく、本当に恐怖だよ。何事も適度の大きさが1番だと思う……本当につくづく感じたよ。

 だいたい1人当たり100体前後を屠ったんじゃないかと思う。見えるところにはいなくなったようなので散らばっている魔晶石などのドロップを拾いながら前進して行く事3時間。どうやら師匠たちもかなり先に進んでいるようで、俺たちが落とさせたドロップよりも明らかに大きい魔晶石や巨大な武器防具が散乱していた。それらを更に拾いつつ前進して行く。5時間ほど進んだところでようやく師匠たちが戦う姿が見える所にまで追い付いた。神殿ももうすぐそこに見える場所だ。
 その戦闘風景は相変わらず異次元だ。6本腕から色とりどりの魔法が襲い来るのを弾き飛ばして他の敵へとぶつけたり、6つの巨大な剣が同時に振り下ろされるのを紙一重で避け、決して足を留める事なく身体を駆け登り首を一振で落としていたりするのだ。斬りつける場所はどうやら基本的には敵の魔力の薄い場所のようだ。
 こうやって冷静になって強者の戦いを見ているとわかる事も多いね。今回は相手の魔力の濃薄を考えず刀を振るっていたけれど、次回からはこれを参考にして戦いたいところだ。

 そして2時間ほど経ったところで全ての戦闘が終了した、残すは神殿の中だけだ。

「ここらで1度休憩をしてから突入としようか」

 アレだけの激しい戦闘をした後だというのに、軽い調子でそう言う師匠たち……どうなってるんだろうか、その体力は。そしてみんなすごくスッキリしたら顔をしているようだ。

「中には何がおるかのう……期待が膨らむな」
「神殿だとしたら、中に居るのは神かもしれんな」
「1つ目の巨人の神か……どんな見知らぬ技を繰り出してくれるのか」

 えぇっ!?
 楽しみと仰いましたか?神と戦いたいと思うのはこの人たちくらいじゃないだろうか……
 あっ、そういえばうちにも4神がいたや……もうすっかり忘れちゃっていたけれど。確かに神の名を持つ者たちだけど……今も我先にと久々のハゲヤクザの絶品料理をがっついて食っている姿からは想像もつかないよ。

 そういえば香織さんの料理はかなり進歩した。なんたって30日間毎日ばあちゃんに指導されて調理していたからね。美味しいか美味しくないかと聞かれたら、未だにまだ後者ではあるのだけれど、それでも覚悟を決めて食べないといけないという程のものではなくなった。ただばあちゃんが目を離すとすぐにとんでもない事になるらしくて、付きっきりで指導していないとダメらしいけどね。ばあちゃんがボソリと「なんであんな物が出来上がるのかわからないわ」って首を頻りに傾げていたよ……物体Xになる過程はどれだけ見ていても謎のままらしい。あと香織さんは調理中につまみ食いをするのは確かに多いらしいんだけど、そのつまみ食いのタイミングは物体Xになる直前で、その時はまだ普通の料理の時らしい。つまり……物体Xの味を本人は1度も味わっていないって事だ。その事からアレを作って人に食べさせるのは確信犯かと疑いもしたが、本人的にはより美味しくしているつもり……愛情的なものらしい。
 愛ってなんだっけ……
 香織さんからの愛は欲しいけれど、欲しいけれどなんか怖くなってきたよ。
 あとばあちゃんも今回の戦いで、香織さんが調理した物体Xを6本腕の1つ目の巨人の口に放りこんでみたいなんだけど、俺が恐竜に食わせた時と同じようにやはり悶絶しながら死んだらしい。その事を話す時のばあちゃんの目は師匠と同じだった……そして俺を怯えた表情で見ていた。

「さて参るか」
「その前にじゃ、もしや神が出た場合の事を考えおくべきじゃ。神となれば出るのは1体かそこらじゃろ、その時に戦う者を誰にするか」

 じいちゃんの発言から始まったジャンケン大会。立候補は師匠、ハゲヤクザ、じいちゃんの3人だ。鬼畜治療師は棄権し、ばあちゃんは早々に負けていた。初めて知ったよ、ジャンケンとは動体視力勝負なのだと。どれだけ相手の手を読み取るかが要らしい。だから試しに俺がばあちゃんや鬼畜治療師といくらジャンケンしても勝てなかった。いい事を知った、後日アマとキムにジャンケンを仕掛けてみようと思う。
 で、どうやら3人はほぼ同じレベルらしくていつまで経っても全く勝負がつかないから、結局はあみだくじで決める事となったよ。結果はじいちゃんだ。その喜びようは尋常じゃなかった……嬉しさのあまりかばあちゃんに思わず抱きついていたからね。本当に仲のいい夫婦だよ、俺と香織さんもいつかあんな関係になれたらいいなって夢を見てしまったね。
 ちなみにジャンケンでの動体視力なんだけど、若い師匠が1番有利なんじゃないの?って純粋に思ったんだけど、どうやら魔力を目に集める事で若さのリードはほぼ無いに等しいほどになるそうだ。どうりで目の辺りが光ってるかのように魔力で煌々としていたわけだよ。

「では参るぞっ皆の者我に続けー!!」

 まるで旅行の添乗員が旗を振って先導するかのように、腕を振りながらスキップするかのように神殿への階段を登るじいちゃんが可愛い……反対の腕はずっと刀を握ってるけど。
 奥へと続く高さ20m横幅15mはある巨大な扉を開いたそこには所狭しと巨大な武器防具が並び、その奥には金銀財宝が入っていそうな煌びやかな宝箱が並んでいた。

「どこじゃ!!儂の敵はどこにおる!!」

 叫びながら奥まで走って行ったじいちゃんが、しょんぼりと肩を落として戻ってきた。

「何にもおらんかったわ……ずっと奥まで色んなもんが並んでおるだけじゃ。最奥には転移陣があったから、あれに乗って脱出するんじゃろ」

 どうやらもう敵はいないらしい。張り切って喜んでいた分ショックも大きいようで、あからさまに肩を落とし顔を悲しそうに染めているよ。

「ではここは倉庫といったところか……武器防具は巨大過ぎてそのまま使用は出来んが、鋳潰せば利用する事も可能だろうから、全て横川の次元世界へと運び込むぞ。見分は運び終わってからにしよう」

 宝石に目を輝かせる鬼畜治療師や召喚獣たちに言い聞かせるような師匠の言葉により、分身を使ってせっせと運び込む事2時間……2時間も掛かるほど大量にあった。
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