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そこはもっと考えましょうよ!

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「長野県に住む人の家には必ず野沢菜があるって本当ですか?」

 現在居るのは長野県の北の方にある野沢温泉の旅館だ。なぜかというと、スキー場の中腹に突発型ダンジョンが発生したためだ。
 本来この辺りで突発型などが発生した場合は、戸隠流に連絡されてシーカーが派遣されるといいった状態だったらしい。今回ももちろんその過程をなぞったのだが、ボス部屋に辿り着くまでのモンスターが空にワイバーン、地には名古屋北ダンジョン100階層にいるような肉食恐竜型モンスターで、先日の1件で武力を持つ者たちの多くを失った戸隠流では手に負えないと判断し助けを求めてきたという流れだ。
 もちろんシーカーには各流派に属さない一般の人も多くいる。今回このダンジョンが発生した直後に探索者協会の推すパーティーがた5組ほど進入したらしい。それはちょうど戸隠流の本隊が名古屋に来ていた頃……つまり約1か月前という事だ。そして現在に至ってもその5組のパーティーの安否確認が取れないために戸隠へのヘルプ要請が入り、そしてそのまま一全へのヘルプ要請へと変わったという事だ。

 正直なところ先日の一件があるから、今回の件は罠なんじゃないかな?って疑っていた……いや、今もまだ疑惑は捨てきれていない。師匠曰く「戸隠や風魔には、もうそのような事を仕組む耐力はないだろう」って言っていたんだけどね。とりあえず探索者協会からのヘルプ要請は本物で、GWは過ぎたものの初夏の観光……そして夏休みに温泉旅行に来る観光客への影響が出かねないと地元の方々が不安になっているという事でやって来る事となった。
 で、来てすぐに探索者協会へと赴くと、諸手を挙げての歓迎っぷりで、温泉街で1番高そうな旅館へと案内されて、まるで接待のような宴席が設けられている。
 協会の偉い人が必死な形相で師匠たちに話し掛けている内容に耳を傾けてみたところ、どうやら戸隠&風魔と探索者協会の関係が上手くいってなかったようだ。本来突発型ダンジョンが発生した場合において進入するパーティーを選ぶ権限は協会が持つ。発生後の通行や取材など様々な事柄を規制したり取り仕切り、先遣隊というか斥候的な存在を内部に派遣しどのような場所で、どのようなモンスターが存在するかを確かめた後に、対応出来るパーティーへ要請をかけるのだそうだ。その際にすぐに動けるパーティーが居なかったり、そもそも対応出来るパーティーが居ない場合に各流派のような武力集団に要請となる。例えば一全の場合は要請に関しては即対応するし、協会に対して何かを過剰に求めたりする事はない。だが風魔や戸隠は協会の足元を見るというか……食糧やポーション類の用意どころか、1人当たりいくらといったような金銭を求めてくるらしいのだ。しかもそれは予想外の量の資材だったり、かなりの高額を求めてきていたそうだ。それ故に今回も要請を躊躇して、5組ものパーティーを送り込んでしまったとの事らしい。

「お話はわかりましたが……そもそも我らは名古屋を本拠地としておりますので、即対応は難しいかと」
「ええ、ええ、ええ、ええ、わかります。わかりますが、そこを何とか……いえ、毎回とは言いませんので気にして頂ければ。あっ!もしこちらに本拠地を移す、もしくは分所でも作って頂けるならば、私どもの方から役所には話を通しますので、税金などの面でもかなりお力になれると思いますよ。おっと、これはいいっ!そうしましょう!いかがですかっ!?」
「いや……お気持ちは嬉しいのですが、我らにも代々受け継いできたものもございますので。風魔や戸隠の長にはその件伝えておきますので」
「……そうですか……いや、無理を申し上げました。では是非お伝え下さいますようお願い致します」

 協会の人が必死すぎて怖い。師匠がめちゃくちゃ面倒そうな顔になっているのに、すごい押してるよ。
 内容を聞いたら確かにそうなってしまうのも理解は出来るけどね。ただそういった要請の仕組みとかがあるなら、金銭の要求などが出来ないような法律なりなんなりを作れないのかなって思ったんだけど、それは無理らしい。要請には対価があるのが当たり前なんだって……まぁそう言われたらそうかもしれないね。一全のような対応をするのは、他に伊賀と甲賀、そして柳生といった大きな組織ばかりなのだそうだ。探索にはお金が掛かる事は協会も十分承知しているので、支援やら協力金という形で渡す事には何も思う事はないが、戸隠や風魔が求めてくるものがあまりにも……って事だ。

「君はテイマーか何かかな?」

 師匠が協会の人に捕まっているのを横目に、香織さんや召喚獣たちと食事に舌づつみを打っていたら、突然話しかけられた。どうやら俺が自分の料理を時折腰に着けた布袋から頭だけ出しているロンに与えている事が気になったようだ。

「まぁそうですね」
「ほぉ……ヘビなんてテイムしてどのような役に立つのかな?」

 あっ、そのまんまヘビだと思っているのか。まぁ誰も龍だなんて思わないよね。

「我をヘゴゴゴゴ……」
「んっ?今何か……」
「いえ?」
「そうですか、それでそのヘビは何を?」

 ヤバイヤバイ。
 ヘビに間違われたのが嫌だったらしく、ロンが突然喋り始めたから焦ったよ。おやきとかっていう饅頭みたいなのを無理やり口に突っ込んで黙らせたけど。
 それにしてもしつこいな……なんか少しバカにしているような目をしてるし。うん、バカにしているね、そのくせ香織さんや召喚獣たちを見る目は好色が浮かんでるし……ってなんかこんな視線を以前に感じた事があるなって思ったら、本部で会った時の先代の戸隠&風魔の長だ。あれかな?この人と戸隠&風魔が上手くいかなかったのって似たもの同士だからとかかな?先ほどまでの話だと、一方的に戸隠&風魔が悪いかと思ったけど、そうじゃないのかも?

「織田さん、この子たちはダンジョン見学か何かですか?」

 なんて答えたらいいだろうって悩んでいたら、明らかに嘲りの表情を浮かべて師匠に質問しだしたよ。そのせいでうどんたちの顔がヤバイ事になってる……詳しく言うと、OKを出したら今にも飛びかかって殺しちゃいそうなほどに睨みつけてる。

「今回の探索の主力だが?」
「主力?……あぁ、修行の一環とするわけですか、さすがですね」
「何がさすがかは知らんが、そろそろ我らは部屋に戻りたいのだがいいかな?」
「それは失礼致しました。ではまた明日に」

 面倒くさいなー
 なんで俺はこんなのにばっかり絡まれるんだろうか。問題だよ。
 後からうどんに言われたのは「主様は先日のあの修行をお忘れで?魔力を多く纏えば圧も増しますので、あのように侮られる事もないかと思いますよ」っと。
 そう言われたらそうなんだけど、まだ厚く纏うのは苦手なんだよね……だから、この遠征探索が終わっても柳生夫妻によるスパルタが待っているし。

 宴会場から出て部屋に戻る途中、師匠に次元世界を開けて全員で移動する旨を伝えられた。
 ここは旅館で、しかも一人一人に豪勢な部屋まで与えられているのに何故かって思ったら、どうやらこれから起こる騒動を回避するためらしい。

「騒動ですか?」
「あぁ、ご丁寧に酒に睡眠薬まで仕込んで合ったからな、確実にこの後我らの部屋には綺麗どころの女性や男性が押し掛けてくる事になる」
「そんなのを喜ぶのは爺さんだけだからね、安く見られたもんだよ」
「儂かて喜ばんわ!」
「そういう事だから今夜はこちらで過ごす。お前の修練のお陰でこちらの屋敷も広くなり、一人一部屋はあるからな」

 元々は協会に寄ったらそのままダンジョンに突入する予定だったんだけどね、既に用意してあると言ってやや強引に温泉旅館に連れてこられて、一人一部屋な上に誰がどの部屋に泊まるのかを指定してきた理由がわかったよ。

 翌朝各部屋へと繋がる廊下を張っていた近衛の方たちに話を聞いたところ、8人の美男美女がぞろぞろとやってきたそうだ。どんな人たちが来たのだけでもちょっと見たかったなって思ったんだけど……
 えっ?女性が2人と男性が6人?
 ここに来ているのは師匠・ハゲヤクザ・鬼畜治療師・香織さん・うどん・ハク・つくね・あられ、そして俺だ。ロンは人型じゃないから外されるとしても、1人女性足りなくない?

 クソー!!
 何もしないけど、何もしないけどそこは俺にも誰か宛てがうべきじゃないですか!?
 俺を軽く見たのなら、簡単に落とせるとそこは是非に宛てがうべきだと思うんです!!
 まぁ、だからどうなるわけでもないんだけどさ……納得いかないっ!!
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