上 下
115 / 154

いつから気付いていたんですか?

しおりを挟む
 うぅ……脛が痛い。
 そして顔が熱い……

 俺たちはあのまま寝落ちしたらしい……つまり正座したまま前に突っ伏して。
 それを起こしに来たのは香織さん、俺は寝ぼけたままに、隣に座って俺を揺り起こそうとする香織さんの膝を捕まえ頭を置いた……そう、無理やり膝枕をしたというわけだ。そしてふと目を開けたら、真っ赤な香織さんの顔があったわけで、俺も事態に気が付いて顔が一気に熱くなっているというわけだ。

「香織っ!起こして来いと言ったのに、何をイチャイチャしてるんだいっ?」
「えっ?あっ……いやっ」

 俺が原因だとはわかっているけれど、無理やり振り落としたりせずに顔を赤くして困る香織さん、可愛い。

「横川っ!とっとと起きろ!これからの予定を話し合うぞっ」

 ああっ……
 師匠の声が掛かってしまったよ。名残惜しいけれど、起きなきゃだ。

「香織さん、すみません」
「あっ……ううん」

 ヤバい!!
 可愛すぎるって!!
 何この生物!?本当に俺と同じ人間なの!?クラスメイトの女子たちと同じ性別だとは、とても思えないよ!!
 心のシャッターを押しまくって、アルバムに永久保存だねっ!!

「コラっ!早う来んかっ!!」

 あまりの可愛さに見蕩れて身悶えしていたら、ハゲヤクザから小石が飛んできたよ。

 2人揃って師匠たちの元へ行くと、また片手に酒を飲んでいた。昨日あれだけ……文字通り浴びるほど飲んだというのに、未だ飲み足りないらしい。それに要請通り空き瓶という空き瓶、それにスープが入っていた鍋とかにも酒を詰めたというのに……どんだけ好きなんだよ。確かに美味しかったけどさ。

「ようやく来たか。飯を食いながらでいい、今日の予定を話すぞ」

 ここは7800階層、ちょうど100階層区切りなので1階に戻ってから、また走って行くのだろう。きっと予定というのは、1階層に出たら1度探索協会に顔を出すとか、その際に配下の方たちに指示を出すとかそんな事だろう。

「横川よ、昨日は頑張ったな。考えればここ最近ずっと毎日修行ばかりで楽しくなかっただろう。故に本日は休みとする。出発は18時間後、1階層に出たら俺はそのまま本部へと戻るが、お前たちは東たちを助けに行ってやってくれ」

 うん、まるで俺のためみたいに言っているけれど、どう考えても酒を飲むためだね。まぁ師匠たちも色々ストレスとか溜まってそうだしね……更にここを出たら東さんたちの問題が目に見えているわけだし。たまにはいいと思う。
 それにここはボス部屋、中に生存している人がいる限り新たなボスが出現する事もないから、久しぶりに見張りとか必要なく気ままに過ごせるんだよね。

「ありがとうございます」
「うむ、如月くんも好きに過ごして構わないからな」
「はいっ」
「よしっ、では解散だ」

 突然の休日は困るね。
 地上でならアマやキムに連絡て予定を合わせてみたり、テレビ見たりなど色々やれる事はあるけれど、ここはあくまでもダンジョンのボス部屋だもんな。

「香織さんはどうしますか?」
「うーん、うどんちゃんたちの毛皮に埋もれて寝ようかな~」

 未だうどんを筆頭とした召喚獣たちは獣形態のままだ。どうやら本来の姿の方が楽らしい。そしてそんな毛皮たちに埋もれてのモフパラか……ブレないね。って早速うどんの9つのモフモフした尻尾に包まれているし。

「一太くんは?」
「うーん、どうしようかな」
「あっ、お酒はダメだからねっ!?」
「あっ、はいっ」

 ちょっと考えていたんだよね。少し飲ませて貰おうかな~なんて……

「昨日の主様は大変でしたからね、香織の腕を掴んで延々と、延々と語ってましたもん」
「そうですね、初めて出会った幼き日の想い出から、今まで抱いてきた熱い想いを繰り返し語っていましたし」

 えっ!?
 一切そんな事覚えてるいないんだけど!?
 そして俺は一体何を語ったんだろう!?
 聞かれちゃマズイ事言ってないよね?あんな事とかこんな事とか……

「また香織は顔を赤くして……本当にウブですね~。こんなんじゃ先が思いやられますよ」
「そうだな……我らが男に変化して耐性をつけさせようか?」

 うどんの言葉には頷くところがあったけど、つくねよ、ちょっと待て。

「お前たち男に変化出来るの?」
「ええ出来ますよ」
「じゃあなんで女性に変化したの?」
「うどんは元々メスの狐からの妖《あやかし》になったのですが、我ら四神にはそもそも性別はございませんので。主様が男性であるが故に、親しみを持って頂くために女性へと変化したのでございますよ」
「それって一太くんが女の子望んでいたって事?」

 ちょっと!?
 まるで俺が女好きみたいな感じになっちゃってない?少なくとも香織さんの質問はそんなニュアンスだし!!

「望んでなんていませんよ!?」

 冤罪、冤罪だ!!
 ここは断固としてその考えには抗議しますっ!
 まぁ確かに男で、更にイケメンとかだったら親しみは持てなかっただろう事は否めないけれどさ。

「いえ……我らを呼ぶ者が男性の場合は女性型という事です。もしも香織が主様だったとしたら、我らは男性の型になっていたと思いますよ」
「そうなんだ?」
「はいっ、主様がどうしてもと望むのなら男性になりますが……せっかく買って頂いた洋服が無駄になるのもですし」
「端末の事もあるからもう男性型になるのは無理だろうけれど、1度変化してみてよ」

 ちょっと見てみたい。
 でも嫌な予感もするんだよね……だって、美女に化けるって事は、イケメンじゃない?

「では……」
「やっぱりイケメンになるんだね」
「我らはあくまでも主様のスキルの1つでございますので、この姿は主様が望む理想の姿でございます」

 つくねは細身のイケメン、ハクは体格のいい男っぽいイケメン、あられは2人の中間といった感じだ。
 チッ……やはりイケメンは敵だな!!香織さんの視線を奪いやがって!!
 それに俺の理想って……別に男には興味ないんだけど!?そしてその言い方だとまるで俺が、イケメンに憧れているみたいに聞こえるから抗議したいところだ。

「香織さんの好み……あっ、なんでもないです」

 聞きたくないけれど聞いてみたい……と、つい口にしちゃったよ。「男はやっぱり顔だよね」とか言われたらショックだから、途中で止めた。

「うーん、私は別に顔とかはどうでもいいけど。3人の姿を見たら、友達とか大騒ぎしそうだなって思っただけ」
「そうなんですね」

 ほっとしたよ。
 別に答えが俺を指して言っているんじゃなくてもさ。

「主様の女性の好みは香織一択でしたので、中々難しいところでしたね」

 おっ、いい事言ったぞハクよ。後でさりげなく物欲しそうに見ていた宝石を俺の取り分の中から1つを上げよう。

「そうなんですよっ!俺は香織さんしかずっと見てませんからね!!」
「あっ……ありがと」

 ハクの発言に乗って、しっかりと告白させて貰いましたっ!!
 そしてまた顔を赤くする香織さん……可愛すぎるっ!!

「あのね……一太くん」
「はっ、はいっ!!」

 ますますうどんの尻尾に身を沈めて、モジモジしながら顔を更に赤くする香織さん……こ、これは期待していいんですかっ!?

「気持ちは嬉しいし、伝わって来ているんだけど……」

 えっ?
 けど?けど?
 けどってなんですか?その言葉に続く場合は否定ですか!?

「答えはもう少し待ってね」
「はいっ」

 良かった、良かったよ……否定じゃなくて。

「それとお願いがあるんだけどいいかな?」
「何でしょうか!?」
「うん、あのね……最近はないけれど、以前は良く家の前を何度も通ったりしたよね?あと、庭先に烏を飛ばすのは止めて欲しいかな」
「……えっ?」

 も、もしかして俺は昨日言ってしまったのか!?
 いや、今の口調だと、家の前の散歩とか気付いていた!?

「こうやって話すようになったし、一緒に探索もするんだから……ねっ?」

 あわわわわわわわわわ……

「すみませんでしたーーー!!」

 ジャンピング土下座です。
 昨日の正座で脛が痛いとか言ってられませんよ!!

「本当にすみませんでしたーーー!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

黒き魔女の世界線旅行

天羽 尤
ファンタジー
少女と執事の男が交通事故に遭い、意識不明に。 しかし、この交通事故には裏があって… 現代世界に戻れなくなってしまった二人がパラレルワールドを渡り、現代世界へ戻るために右往左往する物語。 BLNLもあります。 主人公はポンコツ系チート少女ですが、性格に難ありです。 登場人物は随時更新しますのでネタバレ注意です。 ただいま第1章執筆中。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...