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TPOを弁えましょう

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 俺が必死でスキルの練度上げに精を出している頃、師匠たちは俺の分身1人を囲んで、何やら密談をしていた。そう、東さんたちの会話内容を書きとめたメモについての話し合いだ。どうやら事態……つまり魅了はかなり進行してしまっていて、既に誰が行っているのかはわかりにくいほどになっているとの事らしい。
 ただそれでもわかった事はいくつかある。まずはその時というXデーは、次回東さんたちと俺たちが全員で探索する日だ。次に狙いは俺と香織さんの確保で、師匠たちの抹殺。風魔と戸隠が思いっきり噛んでいるらしい事だ。どうやら風魔戸隠の現在同行しているパーティーメンバーは、現在の各流派TOPの親族らしく、一派の声を纏めると言っているらしい。
 纏めてみると、まるで風魔戸隠が先導しているかのように見えるが、これまで俺に魅了を掛けてきた様子や、他の者の掛かり具合などなら考えると、極めて金山さん田中さん秋田さんの3人が怪しい事に変わりないらしい。
 東さんたちがどうしてこうも簡単に魅了されて誘導されてしまったか……その理由はどうやら俺と香織さんが大きいとの事だ。俺たちの成長、後輩に抜かされてプライドが傷付けられた事が原因だというのだが……じゃあ、一緒に師匠たちの修行を受ければいいのにって思うんだけどね。まぁ勇者やNINJAという珍しいjobなのも原因のようだから、そこは何とも言えないけれど。

 当初香織さんには内緒にしていたが、このままではその身に危険が及ぶという事で、説明をする事になった。それと同時にパーティーメンバーである3人の普段の発言などの聞き取りを行い、裏で暗躍する存在を導き出そうとう事だ。
 結果は……誰もが怪しいまま変わらなかった。金山さんは去年の秋頃から突然外国への旅行を推して来ていたそうだ。卒業旅行?とかなんだと言ってね。ただ勇者である香織さんは、国から渡航制限が掛かっていて、気軽に外国へは出掛けられないらしいんだけれど、それも何とか出来るって豪語していたらしい。国の渡航制限をかいくぐっての外国行きは、外国勢力に何か関係しているのでは?という疑いが持ち上がった。
 田中さんも旅行関連だが、こちらは長野の山奥にある温泉に行こうと誘ってきていたらしい。両親の出身地で、更に田中さん自身も高校2年の夏まで長野に住んでいたようなのだ。つまりjobが出てからの転校という事で、勇者に近付くために来た可能性が高い事が疑われる。
 秋田さんだが、こちらは旅行関連は何も言っていない……まぁ一全だしね。ただ驚くべき事がわかったのだ、それは年下の彼氏の名前が綺羅だった事だ。綺羅といえば若狭の下の名前だ。しかも小さい頃からの許嫁で、仲も良かったらしい。若狭から自分に都合のいい話を聞かされて、勘違いから逆恨みしているのかもしれないって事だ。

 聞けば聞くほどわからなくなってくる!


 さて、全ての準備は整った。
 召喚獣たちは全てが別空間で見た時の大きさ……つまりビル並の大きさへと戻っているし、うどんも似たような大きさへと変化している。また師匠のスキルで身体能力を上げた上に、更に鬼畜治療師の支援魔法も重ね掛けして貰っている状態だ。

 戦いに挑むのは、基本的に召喚獣たちと俺のみという形に決まった。今回は師匠たちも最初から参戦すると言っていたのだが、俺が断ったのだ。理由は簡単、怪獣大戦争のようになりそうなのと、分身も今や130体いるからでもある。師匠たちはまず封印を解いて貰い、その後は玄武の上で香織さんと共に待機しながらの後詰だ。
 うどん・つくね・ハク・あられ・ロンは攻撃要員。玄武は守りに特化しているらしく、甲羅の上を結界で包めるらしいので師匠たちの避難場所となった。不安だから香織さんも結界を重ね掛けするらしいけどね。
 召喚獣たちの試練での様子を知っている俺と師匠は、彼女たち?の能力に疑いを持っているんだけれど、彼女たち曰く「あれは人間に対する試練用であって、本来の力とは大きく異なる」らしいので、せいぜい期待したい所だ。

「では配置に着くぞ。横川、絶対に無理をするな、いいな?」
「はい、無理はしませんが全力を尽くします」
「一太くん頑張ってね」
「小僧、無理はするんじゃないぞ。終わったならば、前から言っていたいいところに連れて行ってやるからな」

 ちょっと!?
 香織さんも居るのに何言ってくれちゃってるのさ!!
 ほら、香織さんがいい所ってなんだろう?って顔してるじゃん!!

「爺さん、こんな時まで何言ってるんだい」

 よく言ってくれました!!
 もっと言ってやって下さい、TPO?を弁えるように叱って下さい!

「何を言うか、男なんてものはそういう楽しみがあってこそ生き延びる確率が高くなるってもんだ……なぁ小僧」

「なぁ」じゃないんだよ!
 香織さんが「あっ」って感じで、ちょっと気が付いたというか目が冷たい気がするんですけど!?

「……ちょっと何言っているかわからないです」
「んっ?ほれ、お前が行きたいと思っている、キレイどころがいっぱいいる夜の店だぞ?」

 わからないって言っているのに、何を言ってくれてんの!?
 空気を呼んでよっ!!
 ほらっ!更に香織さんの視線が冷たくなった気がするじゃん!!

「な、何を言っているか意味がわからないです。僕は未成年なのでそんなお店には行ったこともないですし、行けませんし、行きたくもないですし」
「何を言っておる、前に御館様と行った事は聞いておるぞ?」
「御館様も何やってるんだい……まぁ男だからしょうがないとはいえ、小僧はまだ未成年なんだからね」
「それはだな……」

 ぎゃあああっ!
 どんどんと深みにハマっていく感じがする~!
 ハゲヤクザめっ!覚えておけよっ!!

「よ、横川、い、行きます!」
「おうっ!配置に着いたら連絡しろ」

 逃げるように俺は走り出し、全120体の分身で封印の外から八岐大蛇を囲むようにし、召喚獣たちは封印4箇所横にそれぞれ着く。

 俺の合図と共に師匠が封印の1つに斬撃を与えると、大きくパリンっと何かが割れる音がした。そして同時にそれを察知した八岐大蛇の、つんざくような咆哮がダンジョン内の空間を震わせた。

 俺たちは全力で走り、八岐大蛇を技の射程距離へと詰める。

「合技!炎爆台風!」
「合技!氷爆台風!」
「合技!雷爆台風!」
「合技!闇球台風!」

 30体つづが1番威力のある合技を放つ。
 121の赤・白・黄色・黒の台風が八岐大蛇の着弾する直前に、空斬を8つの首へと向けて連続で放つ。召喚獣たちもそれぞれ持ちうる最大の魔法を放ったようだ。

 空斬を連続で放ち続けながら様子を見ると、8つの口は大きく開き、その中は様々な色のエネルギーのような塊が渦を巻いていた。
 そして頭を少し引いたと思ったら、ゴオッウっと音をさせながらエネルギーが一直線の光となり飛び出した。

 光の奔流は台風の3分の2を消して消えた。更に台風とぶつからなかった、台風の隙間から溢れ出たブレスに分身が数十体が消し飛ばされたようだ。

 残った台風は着弾した……したが、ほとんどダメージを与えていないようだ。1番の本命である闇球入りも効果を発していない、表皮に当たった瞬間に掻き消されているように見える。魔法耐性が高いという事だろう、そして闇球で削るなんて考えは甘かった。
 こうなれば物理しかない。分身を再度顕現させ、半分ほどの分身と共に首元へと取り付き刀を振るうが、1つの首あたり直径30mほどあるために、3分の1ほどまでしか傷が与えられない。
 もちろん八岐大蛇も俺たちの攻撃をただ黙って受けてくれるわけもなく、振り落とそうとしてきたり、噛み付いて来たりする。

 これ……どうしたらいいんだ?
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