憧れのあの子はダンジョンシーカー〜僕は彼女を追い描ける？〜

その力は誰のもの？

　――世界的TOPパーティー東視点――

　今回の探索は150階層までの探索を、約2ヶ月掛けて行うというかなり危険なものだ。なぜなら100階層までと、それ以降ではモンスターの強さが天と地ほど違うからだ。
　正直不安しかないが、既にメディアには「とりあえず軽く慣らしで150階層まで行ってきますよ」だなんて言ってしまっているから、怖気付いていられないのだが……更にはいくつかの依頼も受けてきてしまっているしな。
　全く俺たちのバカさ加減には呆れてくる。メディアが求めている事がわかってしまうだけに、ついつい大口を叩いてしまうのは悪い癖だ。御館様や組長たちが御一緒だから大丈夫だとは思うが、もし俺たちだけで行ってこいだなんて言われたら、今すぐに両手を着いて泣いて謝って、許しをこうところだね。

　ただその御館様たちだが、今回は100階層で待っているという話だ。
　しかも要求はたった5日で到達しろとの事。
　単純計算では1日当たり20階層攻略すればいいのはわかる。だが話はそんなに簡単ではないんだ。たった1日で60階層まで走り抜ける人たちにとっては、欠伸をしていても可能かもしれないが、俺たち普通の人間にとっては、特に61階層から100階層は熾烈極まる所だ。前回横川くんが先行してモンスターを粗方倒してくれていたけども、それでもリポップモンスターの対処に時間が掛かり、それなりの時間を要したというのに…… しかも今回は勇者である如月くんがいない、勇者パーティーを引き連れて行かないと行けないんだよね。
　だけど、これも泣き言を言っていても始まらない。上層をいかに早く抜けるかしかない。
　あぁ胃が痛い…… 

　………………
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　……

　意外にも順調に進んできている。
　なぜなら今回は他の探索者が多いために、モンスターが少ないからだ。本当にありがたい。時折掛けられる声援に手を振りながら、早足で60階層まで来れた、しかもたった2日でだ。このまま行けばギリギリ間に合いそうだ。
　あと、如月くんがいない事は戦力的にも、気分的にも少々寂しくツラいと予想していたが、全く問題なかった。美少女3人は中々話せば素直で楽しい子たちだ。しかも自分たちから色々話し掛けて来てくれるしね。しかも彼女たちの凄いところは、男だけにではなく、ちゃんと女性組の方にも心配りをしている事だ。そろそろシワが気になりだす年頃のメンバーが、「お肌綺麗ですね」とか「憧れています」なんてわかりやすいお世辞を言われて上機嫌になっているお陰で、パーティーはいつも以上に雰囲気がいい。
　それに言葉に力があるというか……色々納得せざるを得ない話もしてくるから恐れ入る。特に誰が言ったかは忘れたが、御館様たちは異常だって話や、それに巻き込まれている横川くんや如月くんが可哀想だって話には、大きく頷いてしまったよ。
　一回り近く年下だから、恋愛対象になるのは難しいところだろうが、好感度は高いからもっと仲良くしたいところだ……如月くんもだが、ここまでの美少女が揃っているのは、将来的にも楽しみだしな。ただ、競争率は高そうだ……少なくともこの3人に好意を持っているのは、ここに俺を含めて6人いる訳だしな。

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　…………
　……

　何とか100階層に着いた、1日遅れだが。まぁ御館様たちはそれについて何も仰らなかったので良しとしよう。
　御館様たちは可哀想な横川くんと如月くんを連れて、3日遅れで進入して、たった2日で到着して待っていたらしい……横川くんだけではなく、遂に如月くんもそちら側へと引き込まれてしまったという衝撃。可哀想に……よほど過酷な修行を課せられているに違いない。

　それと、知らない内に美少女1人と美人2人のシーカーがいる。話を聞いたところ、どうやら御館様がスカウトしてきたらしいのだが……あれほど美しくて強いシーカーなら、これまでに俺たちの耳に入ってもいいように思うのだが、全く知らない顔なのが不思議だ。御館様たちに染まり切る前に目を覚まさせてあげたいが、なぜかこちらには近寄って来てくれないし、話し掛けるタイミングもないのが残念だ。早くしなければ……早くしなければ……いや、今は我慢だ、その時まで待とう……んっ？その時ってなんだ？……とりあえず、お近付きになれるタイミングをはかる事にしよう。

　えっ？
　俺たちは基本的に戦はなくていい？
　戦闘は全て御館様たちが行ってくれるので、着いて行けばいいだけ？
　しかも山岡元組長と近松元組長が護衛として、前後に着いてくれる？
　良かった……それでも油断なんて出来ないが、命の危険は大きく減る。

　それにしても横川くんは、何であんな人形を背負って戦闘しているのだろう？しかも日に日に大きくなっているし、休憩時に外す際に落ちる音を聞いていると、重さも増えていっているんだけど……
　はっ？しかも数百ｋｇの重りを身体に巻き付けている？全く頭がおかしいとしか言えないな……

　如月くんはここまでに何があったんだろうか……
　以前と見違えるほどに強くなっている。以前はスキル頼りな戦闘といった感じが否めなかったが、今や全然違う。

　新人3人組も中々に強い。横川くんもそうだが、まるで獣のように飛び回っては屠り続けている。あんな新人、本当にどこで見つけてきたのだろうか……

　それに比べて御館様たちは、休憩毎に宴会じみた酒盛りをし続けている。横川くんや彼女たちを戦わせるだけ戦わせて、自分たちは何もせず酒盛りばかりだなんて、本当に異常だ。

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　……

　ようやく150階層まで到着した。
　ここまで何度ヒヤッとした事か……ここからまた100階層まで戻る事を考えると、気が重くなるな。
　でも、金山くん田中くん秋田くんと話すのは楽しい。山岡様や近松様が近くにいるせいで、休憩時にしか話せないけれどね。特にあの子の言葉は聞いていて気持ちがいい……これはもしかして恋なのか？男共だけではなく、女共まで 同じような顔をしてあの子の事を見ているから、恋の成就には前途多難っぽいけれど。あとそれと「その時まで力を貯めておく」という提案は素晴らしい。彼らを解放して上げる力をしっかりと貯め込んでおかないとな。
　まぁとりあえずは金塊拾いに精を出すか。
　ゴールドゴーレムは、硬いし、土魔法を使用してくるから厄介だが、ドロップはかなりの収入になるからな。

　7人と8人に別れて、土魔法などの攻撃を盾で防ぎながら、隙を見てはハンマーで叩きまくる。中々に硬いために1時間に1体倒せればいい方だが、それでも100ｇほどの金塊が出るから儲けもんだ。時給にすれば60,000円程度だからな……まぁ割れば10,000円を切るが、それでも中々割がいい。時折2、300ｇ程が落ちる時もあるわけだからな。2日あればそれなりに稼げるだろう。

　はっ？
　横川くんは何故素手で戦っているんだ？しかも1体あたり数十秒だし、しかも明らかに1ｋｇを超えるであろう塊ばかりだし……

　あの力があれば、俺たちはもっと楽が出来るのに……あいつらが独り占めしているせいで……
　その時よ、早く来てくれ……