上 下
89 / 154

反動なんかじゃない!

しおりを挟む
       気を失ってから目が覚めたのは4日後だった。
 そしてまた気を失って6時間で復活した。

 俺は当然ながら全く知らないし、気を失った事でさえよくわかっていなかったのだが、師匠たちや先輩、そしてうどんに説明を受けた事で自分がどうなっていたのかを知った。

 まず出していたトラが全て消えたそうだ。そして同時に俺は突然白目を剥き、血を吐きながら後ろへとひっくり返ったらしい。それを受け止めたのは、いち早く異変に気が付いたクソ忍者で、すぐさまテント内に運び込まれたらしい。近松さんと先輩が回復魔法を掛けるも、脈は遅いままで今にも命の灯火が消えてしまいそうになっていた。そこで心臓への圧を加えたり様々な事をしたが反応なく、これはもうダンジョンから外に出て病院へと担ぎこもうかと話している時だった……

「主様はお師匠様が仰った通りに、スキルの反動がきているだけですので、ご心配されずとも幾日かしたら自然に目を覚まします」

 と、聞き慣れた声色の、だが見知らぬ10歳ほどの着物姿の少女が突然話し始めたらしい。
 もちろん「お前は誰だ?」となるのだが、驚く事にその少女はうどんと名乗った。そう、キツネが化けた存在だったのだ。

 うどんが獣姿ではなく、なぜ少女姿になっているかも問題だが、今はそれよりも俺の事だとなった。そしてなぜトラたちは消えたのに、同じ召喚獣であるうどんが存在しているのか?なぜ危険性を先に言わないのか?そしてなぜ直ぐにその話をしなかったのか?を師匠が問いただしたところ、うどんはその顔にバツが悪そうな表情を浮かべ語った。

 まず俺の状況なのだが、人間は誰しもが体内に魔力を保管する目に見えない臓器のような物を持っているらしい。そして魔力依存スキルを発動する際にはそこから放出されている。魔力とは人間の生命活動を支える源の1つでもある為に、それを全て使用し切ってしまう事は死に繋がってしまう。そのために魔力庫にはリミッターが存在し、それに近付くと倦怠感や頭痛など様々な症状となって表れるし、限界に近付くと使用出来ないようになっている。また、先輩のようなスキルとしては発現はしていないが、俺にも体内にもう1つの魔力庫のような貯蓄用器官が存在しているらしい。
 そしてレベル10の炎獄のような人智を超えるスキルは、全てのリミッターを外し魔力を一気に放出する事で成し遂げる技らしい。
 リミッターが外れている為に、倦怠感など身体に異変を知らせるものもなく、俺は平気な顔をしていられたと。その為にそのまま俺は氷壁を幾つも発動したり、トラたちを顕現させる事も出来ていた……残り少ない魔力庫から魔力を引き出しながら。

 だが俺はトラを出しても倒れなかったのに、なぜ突然その時が来たのか?
 それは全てうどんのせいだった!!
 どうやら俺が倒れる寸前にレベル10へとなったらしい、そして同時に出来るようになった人化を行った……まだレベル10になったばかりで魔力が足りなかったために、パスの繋がる俺から無理やり引き出して。それでも魔力が足りずに、予定では妙齢の女性に化けるはずが、少女姿になるのが限界だったらしいが、そんな事はどうでもいいだろう。
 結果、トラたちの魔力を強制的に体内に戻して生命維持活動を続けさせようと、身体が勝手に反応したが足りずにぶっ倒れたとの事だった。
 つまり俺は自分のスキルに殺されそうになり、助かりもしたという事だ。

 ではなぜ事前に説明をしなかったのか、それはすっかり忘れていたらしい。そしてなぜトラたちは消えたのにうどんは顕現したままなのかは、うどんだけは特別な存在、それはずっと顕現している事からも、話す事が出来る事などと同じらしい。ドヤ顔で語って師匠にゲンコツでしこたま殴られて先輩に泣きついたらしい……これは鬼畜治療師に聞いたんだけどね。

 これから炎獄のようなスキルを使用する度に、このような状態になるのかという話だが、連発しない限り大丈夫だろうとの事だ……まぁ封印と言われてるし、連発とかありえないとは思うんだけどね。
 今回の事で、体内の魔力庫が強化されたので一気に魔力貯蓄量が一気に増えるらしい。あとうどんも以降は自力での変化は可能なので、俺に負担が来る事はないそうだ……まっ、当分外に出してやる気はないけれどね!!

 うどんの見立てでは、当初約10日は眠ったままだろうと予測だったらしいのだが、なぜたった4日で目覚める事が出来たか?これもまたうどんが原因だ。魔力の欠乏状態で倒れているならば、外に出ている魔力《うどん》を中に戻せば早まるのでは?という推測を元に、無理やり押し込んで魔力を俺に供給するように師匠が命じた事が功を奏したのだろうという話だ。
 ただ先輩に聞いたところ、うどんが獣化すると魔力を使用する事が目に見えているために、少女姿で俺の中に戻る事を強制したのだが、寝ている俺の腹に少女の首を掴み押し込んでいく姿は、とてもとても猟奇的というかホラーのようだったらしい。

 で、1度目が覚めたのになぜまた気を失ったのかだけど……
 初めに目を覚ました時に、1番最初に目に飛び込んで来たのは先輩の姿だったんだ。どうやら先輩は自分のためにうどんやトラたちを顕現させていたために起きたと気に病んだらしく、ずっと付きっきりで看病してくれていたらしい。そしてたまたま俺が目を開けた時は、床ずれが起きないようにとか細い腕でひっくり返そうと身体に腕を回した時だったのだ。
 すぐそこに先輩の綺麗な顔が!!
 状況がわからず、でもその状態に興奮して思わず「うわあああああっ!」と叫んで、興奮が過ぎて気を失ったようです……お恥ずかしい。
 でもでも……看病して貰っていた記憶がないのが悔しい!!

 そして6時間後、再び目を覚ました時に近くに居たのは師匠たちと先輩の全員が俺を囲んで見守っている姿だった。
 その後今回の気を失った理由などの顛末を話され聞かされたってわけだ。

「目を覚まして良かった。後ほど身体を動かして、不具合がないかゆっくり確かめてみろ。あとな、もしお前が望むなら腕のいい陰陽師を紹介するがどうする?」

 と、師匠に真剣な表情で問われたよ。
 うん、それは全ての話を聞いて俺も思ってたんだよね……本当に封印した方がいいんじゃないかってさ。

『それだけは!!それだけは何卒ご勘弁を~!!これからはちゃんと事前に全て説明しますし、伝えますので!!』

 って必死に中で叫ぶから、とりあえずは保留という形にした。
 ただね、何でレベル10になってすぐに人化する事を考えた理由がさ……食事をする際に鼻を突っ込んで食べるのが嫌だったから、スープなども楽しみたかったからとかそんな下らない理由だったのがね……
 もうさ……
 そんな下らない事で、宿主を殺そうとしたのかよっ!?って思わず叫びたくなるよね。

 ちなみに俺が死ぬと、うどんの存在も消えるらしい。現在のうどんはあくまでも俺のスキルとしてのためなのが理由だ。その為に今回俺が倒れた時も、死ぬ事はないとわかっていたので安心していたので、師匠たちの救護の様子を黙って見ていたらしい。少し慌てっぷりを楽しんでいたとも……
 本当に性悪キツネだよ。
 うどんは歴史上の伝聞は、全て権力者に擦り付けられたとか言っていたけれど、やっぱり真実なんじゃないかって思うよね。傾国の美女かどうかは、俺は姿を見てないからわからないけれどね。

 4日眠っていたわけだけれど、東さんたちは未だにダンジョンを出ていなかった。それどころか、未だに道程の半分にも達していなかったのだ。
 俺の件で師匠は金の斧や魔晶石を渡し忘れていたために、稼ぎがないとという事で狩りまくっているんだろうね。

 なので、俺も身体の調子を確かめるついでに修行する事となった。主には魔力に頼らず身体能力のみで戦闘出来るようになる事という、これまでの修行方針を再確認しながら、魔力庫を鍛え大きくする必要もあると、分身たちには魔法スキルをぶっ放し続けるという、結局はいつもと変わらない日常に戻った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~

飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。 彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。 独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。 この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。 ※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。

処理中です...