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いくつになっても女の子

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 ピンポーン

 俺は今、名古屋でも有名なあの芳光のわらび餅六個入りの箱を持ってあるお宅の前にいる。
 あるお宅とは……
 なんと!先輩のご自宅なのです!!

「明日お父さんとお母さんいないんだ……だから来ない?」

 とか、どこかの小説や漫画で読んだようなシュチュエーションがあった訳ではない、残念ながら。お母さん……いや、いつかのお義母さんがいるのはわかっているしね。

 事の発端は3日前まで遡るのだが、まずはあのエグいと言われた炎獄スキルはでボス戦を終えて外に出てきた所から話は始まる。

 外に出た所、東さんたちは未だすぐそこにいた。確かに戦闘にはほとんどの時間が掛かってはいなかったけれど、理由はそれだけじゃない。ボスを倒したにも拘わらず、森の中からオーガが出現して襲いかかってきていたのだ。まぁ軍団やボスの取り巻きのパレスガードとかと違って、防具など着けてはいない普通?普通のオーガだけどね。
 突発型ダンジョンってボス倒せば終わりなんじゃないの?って不思議に思ってクソ忍者に聞いたところ

「遠足は家に帰るまでか遠足と言うだろう、そういう事だ」

 と言われたよ。
 いや、言いたい事はわかるけど、命を掛けての探索を遠足扱いされても……ね?

「確かにそうですね」

 ほら先輩も引いてい……ない?
 何で理解しましたといった表情でこくこくと頷いているんですか?そして何でちょっと俺から離れているんです!?
 何だろう……まるでこの俺以外で団結している感じは。

「あのスキルは強力過ぎる、何らかの反動がきてもおかしくないために今日はここで身体を休めるぞ」

 クソ忍者の提案でオーガたちに襲われるのも一々面倒だという事で、寒さが伝わって来ないように広い範囲を氷壁でぐるりと円を描くように立ててから、その中にテントをはって休む事となった。

 クソ忍者何だかんだ言っても、時折こうやって優しいんだよな~なんて気遣ってくれた事を感謝した。

「これは美味い!中々の味ですな」
「うむ、前に出たのを飲んだ時は酸っぱくて飲めるもんじゃない酢のような物だったが、これは正しくワインだ、しかも高級な」
「これは売るのは勿体ないですね~」

 なんて直ぐに酒盛りを始めた。
 奴らの狙いはワインが無限に出てくる革袋だったようですよ!!
 俺の感謝の気持ちを返せ!!

 そして更に今回のドロップ全てを出す事を命じられた、軍団が落とした魔晶石全てと合わせて。どうやら今回の探索の成果をどのように分けるかを話すようだ。
 まずは3人が夢中になって飲んでいるワインの革袋はクソ忍者たちの取り分となった。それを売るとか、そんな話には一切ならなかったし、もし俺がそんな事を言おうものなら物理的に口を閉ざされそうな雰囲気だった。まぁそれほど美味しいワインだって事なんだろうけど……お酒は人間を狂わせるね、うん。怖い怖い。
 次に宝石の原石なのだが……

「これほど大きい塊は見た事ないね、世界最大級を更新したかもしれないよ」

 なんて鬼畜治療師の言葉に、幾らほどの値が付くのかと期待しちゃうわけですよ。

「ただこれほど大きいと話題になりすぎるかもね……」
「だな、問題になるだろう」

 何が問題なのか?
 探索に夢があっていいじゃないかって思ったんだけど、あまりにも過ぎた宝はやっかみなどを大きく産む結果となるらしい。つまり実力もないのに突発型に突っ込んだり、文句を言う奴が現れるようになるそうだ。

 ではどうしようかと思っていたんだけど、先輩の目がキラキラ光っているしね。俺も男だここはドーンと……

「先輩は女の子ですからね、宝石に興味ありますよね。良かったら3種類の原石をどうぞ。あっ……カットとかはご自分でってなりますけれど」
「えっいいの!?……いやでも……」
「宝石はやはり綺麗な女性が持ってこそ輝くものですから、遠慮なくどうぞ」
「うーん……」

 宝石と俺を交互に見て悩む先輩が可愛い。

「じゃあお言葉に甘えて、1個だけいいかな?」

 散々の押し問答の挙句、おずおずと少し上目遣いで言ってきた。1個だけだなんて、遠慮深いな~

「いいんだよ、全部貰っておきな。ところで横川、「先輩は女の子」ってどういう意味だい?まるでここには女が他に居ないような言いっぷりだね?」

 あれ?氷壁近すぎたのかな?寒気がするんですけど!?
 ヤバい、鬼畜治療師の後ろに般若が見えるようだ。

「そういう意味ではないです!」
「じゃあ一体どういう意味なんだろうね~よっぽど切り落とされたいとみえる」

 な、何を切り落とす気なんですか!?
 日間賀島で感じた、ヒュンッって感じか再び襲ってきたんですけど!!

「良かったら近松さんも宝石をどうぞ、3種類の3つを」
「女じゃない私が貰ってもいいのかね?」
「いえ、女性である近松さんにこそ貰って頂きたいのです!!」
「まぁ今回は許してやろうかね、じゃあ貰っておくよ。香織、あんた宝石店の知り合いとかあるかい?ないんだったら紹介するから、そこで磨かせないかい?」

 助かったようだ……
 若干してやられた感があるけれど、文句を言えるわけもなく……
 まぁ先輩も3つ受け取ってくれる事になったし、よかったとしよう。鬼畜治療師も宝石店紹介しているようだし。

 こうなると俺の取り分は金の斧となるのか?
 金の値段は現在600円くらいらしく、金の斧は体感で約10kg程なので、600万円!?
 ダンジョンが出来る前はもっとグラム単価は高かったらしいんだけど、今はある程度採れる為に600円位で落ち着いているらしい。

「横川、魔晶石だが軍団の分はまず800個をより分けろ、それとジェネラルとボスと取り巻きのの分もそこに入れろ」

 多分東さんたちの分だろう。すっかり忘れていたけれど、あくまでも東さんたちがメインパーティーなんだよね、表に出るのは。それ故にボスやらの魔晶石を持ってないとおかしいからだろう。

 そして時間を掛けて分け、提出した所で更なる衝撃の言葉があったのだ。

「それとな今回の金の斧はあれらにくれてやれ」
「えっ!?」
「あれらも一定の成果を見せんと、世間が納得せんしな」

 世間が納得!?
 理解出来なくて話を更に聞いたところ、今度は宝石の話と反対で、成果が少なすぎれば今度は探索者になる事に夢が無さすぎてダメらしい。
 うーん、まぁ納得は出来たけど……社会って難しい。

 ってあれ?
 そうなると俺の取り分って軍団の魔晶石だけ!?

「お前不服そうだがな、軍団の魔晶石の大きさからいうと1つ約700円くらいだぞ?それが4,000個だと280万円だ。それなりの金額になるだろう」
「えっ?全部貰えるんですか?」
「あぁ、構わん。如月くんもそれでいいかな?」
「はいっ!ですが何か私の方が貰いすぎのような気もするんですけど」
「横川は如月くんに宝石を渡す事を納得しているし、本人が言い出したんだから気にする事はない」
「横川くん、ありがとう!大切にするねっ!」
「はいっ!」

 先輩の頬を赤らめた感謝の気持ちも頂けた事ですし、これでいい事にしよう。先程まで距離を感じてたけれど、少し近寄って来てくれたし!!
 それに最近の報酬やらお年玉などで感覚が狂っていたのかわからないけれど、確かに280万円ってかなりの高額だよね。
 お金は人を狂わせてしまうようだ……気を付けないと。

 その後食事をとりながらのプチ宴会へと突入した、主に師匠たち3人のね。よほどワインが美味しいらしい。
 俺と先輩はその横で色々話していたんだけれど……もちろんうどんやトラたちを出して気を引きながらなんだけどね。まぁ目論見は上手くいったようで、先輩の距離は更に近くなったよ。
 俺にとっての至福の時間だったんだけど……だけど、それは唐突に終了した。
 なぜなら突然トラが召喚を解除していないのに消えたのだ。そして俺は突然気を失って倒れた……


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