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それは切り取ったらダメなやつです

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日間賀島ダンジョンに来てから12日目になった。
 そう12日目だ。
 当初の予定では10日の予定だったのに、なぜか越している。
 その理由は武術班の人たちが来たはいいけれど、最初に来たのが若い人たちが多いせいもあってなかなか上手くように漁猟が出来なく市場に卸せないので、ハゲヤクザと鬼畜治療師、俺と先輩も手伝っているってわけだ。クソ忍者は御館様就任でその仕事が溜まっているらしく、2日目に戻って行って以来まだこちらには来ていない。

 1日目はなんとなーくしかわからなかった。ぼんやりと周りの雰囲気がわかるが、魚の突っ込んでくるスピードに対応しきれないままに終わってしまった。
 2日目には少しマシになった、目を閉じていても耳を塞いでいても、半径5mほどだがぼんやりと周りの雰囲気や形がわかるようになった。なので小型魚であればスピードにも対応する事が出来るようになり、9割の確率で斬り伏せる事も出来るようになった。

 たった2日でここまで出来るようになったとクソ忍者は驚いていた。

「よく短期間でここまでにした」

 って珍しくお褒め頂いた。
 うん、頑張ったよ、2日目ほぼ寝ずにずっと修行続けてたからね。
 その理由はたった1つ、早く先輩と一緒にご飯を食べたり行動をしたりしたかったからのみだ。その念叶って、2日目夕食には何とか一緒に食事をとる事が出来た。めちゃくちゃ美味しかったよ。
 悔しい事に10日間ほとんどハゲヤクザが調理してくれていたんだけど、以前のプロ調理人ばりに美味かった。包丁を握る姿もめちゃくちゃ似合っていたしね。あとクソ忍者も1食……2日目の夕食だけ調理というか寿司を握ってくれたんだけど、以前日間賀島で食べた時よりも美味かった……口の中でのシャリのほどけ具合っていうのがちょうどいいというか?……ってたった2回目しか寿司なんて食べた事ないくせに、偉そうに言っちゃったけど、それほどまでに美味かった。

 うどんも喜んで食べていた、「数千年間古今東西の料理に舌鼓を打ってきましまが、これ程のものはなかなか!皇帝の食していた物よりも数段上です」とか言ってたよ、キツネのくせに。どうやら召喚獣は食べなくても生きていけるらしいのだが、どうせなら食べたいとの事だった。これは全ての召喚獣共通ではなく、ずっと顕現し続けているうどんだけの話のようだ。

 ってか、うどんの話はどうでも良くて、なんで2人ともプロばりに出来るの!?人として完璧過ぎるだろ!!
「強くて料理も出来るなんて凄い」とか先輩はめちゃくちゃ感心しちゃってるしさ!!

 ちなみに鬼畜治療師の料理は……うん、何も語るまい。いや、不味いわけじゃないんだよ、うん。ただなんと言うか……微妙?他の師匠2人と比べてしまう事になったからだとは思うけどね。
 まぁ、俺も料理なんてほとんどした事もないから他人の事をとやかく言えないんだけどもさ。
 先輩?「最近のレーションとかレトルトって美味しいよね。アイテムボックスあるし」この言葉が全てを物語っているだろう。まっ、先輩は他の事が秀でているからね、うん、ちょっと料理が出来ないくらいは問題ないと思う。

 よし、俺は料理を覚える!!
 そして先輩に手料理をご馳走するんだ!!
 って決意して、ハゲヤクザに師事しようと思ったんだけど、「jobやスキルが全てMAXになったら教えてやる。今は武を磨く事に専念しろ」と言われてしまったよ……まだjobレベルは3から上がっていないし先は遠そうだ……
 それに今回はほとんどスキルを使わず修行をしているから、スキルレベルは全然上がっていないしね。ただキツネのうどんだけは先輩にベッタリとくっ付いていたせいか、11日間でレベル4にまでなっていた。
 火魔法しか使えなかったうどんは、今や火・水・風魔法のいくつかを使いこなし、身体の大きさをゾウ程度まで大きくなる事が出来るようになった。もちろん先輩は大喜びですよ、うどんがメス……これを言ったら怒られたんだった、女の子だという事もあって風呂も寝る時もずっと一緒にしているんだよね。

 クーッ!!羨ましい!!
 その感覚視覚を共有したいっ!!
 まぁさ、俺も男の子なわけですよ。大好きでスタイルビジュアル抜群の女性がすぐ近くでお風呂に入っているとか寝ているとかってなればさ、やっぱりちょっと覗いて見たいなっと思ったりするわけですよ。で、影へと潜ろうとか思ったりしたんですが……

「もし余計な事をするようだったら、もし覗くとかそんな余分な力があると言うならば、どうしてくれようかね……いや、いっそ不埒な事を考えられないように切り取ろうかね、アレを……どうだい?あぁそうか、切り取って女の子になりたいのかい?」

 なんて、鬼畜治療師に笑っていない目で言われたので断念しました。
 怖かったマジで……ヒュンってなったよ、どこがとは言わないけどさ。

 話は戻って、3日目からはまたアイマスクと魚の切り身を耳に詰められ、今度は走りながら気配察知をしろという難題。
 モンスターだけじゃなくて、地形にも気を配りながらだから、難しすぎる。座って出来たからとって少し軽く考えていたけれど、全然話にならなかった。転びまくり壁にぶつかりまくり、魚たちに攻撃されまくる。あまりにもボロボロになるせいで、最初はハゲヤクザが監督として付いていたのが、途中から鬼畜治療師や先輩の回復魔法の練習台にされていたからね。
 体力的にキツくなったり食事の間は、分身に全く同じ事をさせ続けるという事をしていた。そのおかげか、何とか7日目には目隠し耳栓ありでも通常ほどではないが動けるようになった。
 そしてこの3日間は、目隠しなど全てない状態で、ここまでやってきた気配察知などを活用するという修行となった。
 そしてこれがまた難しい……振り出しに戻ったような……それほどまでに視覚聴覚情報の存在は大きいのだ。
 どちらも併用しつつ、死角になる場所や離れた場所のモンスターを察知するのがベストらしいのだが、どうしても視覚聴覚に惑わされてしまう。これを行えるようになれば、幻覚などに惑わされる事もなくなるらしいのだが……
 ここまでで培った半径20mほどの球体に包まれているイメージを維持しつつ、そこから得られる情報と他の情報を統合しながら行動し続けるという修行をする事4日、11日目……つまり武術班の皆さんが来た昨日になってようやく何とか形になったというわけだ。

 見えるというか感じるというか、わかるようになったらなかなかこれが楽しい、めちゃくちゃ楽しい。
 モンスターがリポップするのは、空間が歪んだような場所から突然生まれるのだが、それすら感知出来るのた。これまでは視覚に入ったモンスターへと向かって行って倒していたが、先を見て予想しながら動けるので効率が良くなったし、罠も掛けやすくなったからね。
 あとはこの空間?感知する範囲を地道に拡げていくだけだ。そうすればクソ忍者たち師匠組に近付ける気がするんだよね。ただその範囲はめちゃくちゃ広いような気がしないでもないんだけどね……
 届くのかな?あの場所に……うん、なんか無理な気がする。だって俺のような普通の人間と違って、3人とも正真正銘の化け物だしね、うん。
 何か先輩は俺が目隠ししたまま戦闘しているのを見て、「私の気配察知とは違う気がする」とか言っていたけれど、多分俺の出来るの範囲が小さいからだと思うんだよね、だからせめて同範囲……先輩の気配察知スキルのレベルは4で400mだったから、最高は1kmだと推測出来るので、それくらいの範囲までは頑張ろう。そうしたら先日の名古屋北ダンジョンでの時のように、気配察知を任せっきりにしてしまう事もなく、もっと余裕をもって戦闘出来るようになると思うし、そうなればもっと会話をする時間も取れるようになると思うんだ。

 さて、ダンジョン漁猟をしてきますか……
 ってかいつ帰れるんだろ?
 もう新学期始まってるんですけど!?

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