上 下
69 / 154

モフる眼福揺れる眼福

しおりを挟む
 やっと戻って参りました!
 63階層の途中で既に1,000は達成していたけれど、60階層に戻ってくるまでにも倒し続けてていたので、合計1,200ほどにまでなった。

 ちなみにこのダンジョンは10階層毎にボスがいるんだけれど、下から上に上がって来る時にはボス部屋を経由しない。下の階層からはボス部屋の扉を開ける事が出来なくなっていて、別ルートで一方通行の扉を通って戻る事になる。だから潜って来るパーティーとボス部屋でこんにちはなんて事にはならない。
 もしそんな事になったら、ボスを苦労して倒し、期待のドロップを確認しようとしたら別扉から入ってきたシーカーに横取りされるとかの問題も起きそうだ。

「スキルは上がったか?」
「はい、色々上がりました」
「どれ、見せてみよ」

 ガキンガキンと剣がロックゴーレムに当たる音が響く中、如月先輩を探しながら歩いているとクソ忍者に見つかって声を掛けられた。
 なのでステータスを開いて見せ説明すると、満足気に頷いた。

「それなりに順調だな、よし5時間ほど睡眠を取れ」
「ご、5時間もいいんですか?」
「あぁ、構わん。真面目にやっていた褒美だ」
「ありがとうございますっ!」

 やった!!
 真面目にやっていて良かった~
 って、そういえば多分2日ほど寝ていないじゃん!!
 ヤバイヤバイ、褒美とかいう言葉に危うく騙される所だったよ。
 今度こそトラに囲まれて寝よう……もしかしたら休憩時間に先輩がトラを撫でに来るかもしれないしね!!
 そうとなれば……あっ、先に聞いておかないと。

「トラ出しますけど、乗りますか?」
「んっ?あぁ、では我らの分3頭を寄越してくれ」
「了解しました」
「召喚トラ!3頭は師匠と山岡さん、近松さんの指示に従うように」

 寝ているところを奪われるのも嫌だしね。お前の指示なんて必要ないだろって?これは召喚獣主のプライドですよ、プライド!

 っと、今回もテントは要らないな、雨が降るわけでもないしね。それにテントに入っちゃったら先輩が入って来れないだろうし……よし、先輩たちのテントの近くに移動して寝ますっ!

 ………………
 …………
 ……

「痛っ」

 トラ2頭を並べて、その隙間に挟まれるようにして寝ていたんだけれど、召喚時間が終わって消えた為に地面に落ちたようだ。
 うん、ちょうど5時間だ。

「あっ、起きたみたいだね」
「これ食べる?」

 近くで火に鍋をかけている金山さんと先輩に声を掛けられた。
 どうやら修行は終わったのか、休憩しているみたいだ。みんな鎧を外してお揃いの赤と白のジャージ姿になっている。

「これ?」
「うん、昼食?夕食?わかんないけど、織田さんから横川くんにもついでに食べさせてやってくれって言われてるの」
「せ、先輩の手作りですかっ!?」
「あぁーごめん、私が作ったっていうかレトルト品を入れて温めただけのすいとん入り豚汁だけど」

 田中さんだったか……まぁこれはこれでアリだ!巨乳美少女の豚汁なんてね。

「いえ、ありがとうございます。頂きます」
「じゃあ、はい」

 先輩自らドンブリによそっての手渡しとか……これが本当のご褒美ですかっ!?

「美味しいですっ」
「良かった」
「おかわりもあるから、沢山食べてね」

 うん、本当に美味しい。レトルトだから間違いないんだろうけど、憧れの先輩と共に食べるとか、普通に食べるより更に美味しく感じる不思議。

「聞きたいんだけどさ、いつもあんな修行しているの?」

 早速おかわりをお願いしてがっつく俺に、金山さんが興味津々といった表情で話しかけてきた。

「あんなとは?」
「ロックゴーレムに対して、スキル無しで剣だけでとか、素手でだとかそういうやつ」
「いつも通りですね」
「……そ、そっか」

 自分で聞いてきたくせに、答えたら引かれてしまったよ……
 やはり普通に考えたら、常軌を逸した修行に見えるよね!?

「切れるようになりました?」
「あっと、私たちはまずは基礎体力が足りないって言われて、ずっと筋トレとかがメインだったんだ」
「そうなんですね……秋田さん、もしかして結構楽でした?」

 秋田さんといえば、以前訓練施設での涙などに塗れた様子が思い出されるけれど、今日は結構余裕そうな顔なんだよね。

「っ!そ、そんな訳ないじゃん。もう泣きそうだったよ」

 うん、これは図星だったようだね。

「大丈夫です、告げ口はしませんので」
「……本当にお願いね、ほんっとうにね」
「大丈夫です、気持ちはよく分かりますので」

 ただ俺が気付くくらいだから、担当していた鬼畜治療師が気付かないはずないと思うんだけどな~

 まぁそんな事よりも今は……先輩がめちゃくちゃチラチラこちらを見てくる。
 どうしたんだろ……もしかしてアンデッドの臭さがまだ服に残ってる??散々水を被りまくったんだけど。

「あの……」

 このソワソワしている感じは……

「トラですか?」
「う、うん、いいかな?」
「もちろんです」

 こくんと頷く表情が可愛いです。こんな場所でクソ忍者をはじめとして色んな人がいるからあれだけど、もし2人っきりの時にそんな事されたら、抱きしめたくなる事間違いなしですよ。

「召喚トラ!」
「5頭!!」

 鍋とか他の人に迷惑が掛からないように、少し離れたところで召喚した。
 うん、やっぱり好きなんだね~
 すぐさまトラに埋もれるように入っていったて、「フワッフワ」とか「至福至福」とか少しとろけた顔でモフモフしまくっている。
 うーん、眼福眼福。

「ねぇねぇ、召喚って他にも出せるの?あとあの分身ってどうなってるの?火魔法とか凄かったけど、他どんな魔法使えるの??」

 うおっ、田中さんが身を乗り出して凄い食い付いてきた。
 ジャージを大きく押し上げているマシュマロが、ぶるんと揺れるのがハッキリ見えてしまったよ……これはこれで眼福眼福!

「召喚は「おーい横川よ、修行を再開するぞ」か……」
「すみません、呼んでいるみたいなので」
「あっ、うん……頑張って」
「……もう行っちゃうの?」

 先輩が目をうるうるさせて、めちゃくちゃ悲しそうな顔をしているよっ!
 これはもしかして俺の事を……ってそんなわけないよね、明らかにトラの事だよね。現にギュッと抱きしめて頬擦りしながらだし。

「もし用があったら呼び戻しますので、それまではご堪能下さい」
「やった!あっ、呼び止めてごめん、行ってらっしゃい」

 小さく拳を握って喜んでる先輩。
 その姿、今しっかりと目に焼き付けさせて頂きました。
 そして聞きました?「行ってらっしゃい」だって!!これはたまらん!!最高じゃないですかっ!

「よし、英気は養えたようだな」

 走ってクソ忍者の元へと戻ると、俺を見て大きく頷きながら言ってきた。
 ええ、養えましたとも。
 師匠の差配ですかね?ありがとうございます!

 そういえば未だガキンガキンと剣がロックゴーレムに当たる音が響いているな。もしかして東さんたちって切れないの?いや、そんな訳ないよね、きっと何か大きなハンデを背負わされているに違いない。パッと見何もなさそうだけど。

「他の者の修練の様子などどうでもいい、自分自身の事だけにしておけ」

 キョロキョロしていたら注意されてしまったよ。
 まぁ確かにその通り、他人の事なんて気にしている余裕なんてないだろう、また激しい修行が始まりそうだし。

「またロックゴーレムを素手でやりますか?」
「それもやるが、もうあの柔らかいのじゃつまらないだろう?なので俺と手合わせをする」

 つまらないとかないんですけど?未だ油断したら1発でノックアウトになりそうだしね。ただもう硬いとは思わなくなったけど。
 それにしても手合わせですか……意外に普通だったな。

「ほら、これを持て」

 渡されたのは馴染み深い木刀2本。

「では参るぞ」

 くっ!
 いつもより動きのスピードが早いっ!
 まだスピードが上がるとは思ってもいなかったよ……
 って、ゴーレムも襲ってくるのね……
 1対1での修行なわけないか、そりゃそうだよ、うん。
 えっ?木刀でのみゴーレムを相手しろ?そんなまさか……斬れってまた無茶言い出したよ!

 あとゴーレムさん、どうして俺だけを襲うんですか?
 クソ忍者に襲いかかろうとするのは一瞬だけで、直ぐに突然俺に標的を変えるのは何でですか??
 もしかしてお友達だとか?モンスター的な。

「ほぉ、俺を化け物と思うか」

 しまったー!
 一瞬交互に見比べてしまったのを見られていたようだ……

「ならばそのようにしてやろう」

 ぎゃああああっ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

黒き魔女の世界線旅行

天羽 尤
ファンタジー
少女と執事の男が交通事故に遭い、意識不明に。 しかし、この交通事故には裏があって… 現代世界に戻れなくなってしまった二人がパラレルワールドを渡り、現代世界へ戻るために右往左往する物語。 BLNLもあります。 主人公はポンコツ系チート少女ですが、性格に難ありです。 登場人物は随時更新しますのでネタバレ注意です。 ただいま第1章執筆中。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...