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モンスターですか?

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東さんたちが出て行ってしまい、残ったのはクソ忍者たちと俺のみになった。
 こうなったら、きっと始まる反省会タイム……結構上手くいったと思うんだけど、どうなのかな?

「横川、今回の動きはなかなかよかったぞ。冷静に相手の特性を見極めておったし、危なげない戦い方だった」
「そうじゃな、成長したの」
「若の仰る通りよ」

 えっ!?
 まさかのダメ出しなしの全褒めですかっ!?
 これは初めてのパターン……
 どうしようめちゃくちゃ嬉しい!!

「我らの指導が成ったと嬉しく思う」
「そうですな、明日より更に成長出来るように鍛えましょうぞ」
「えぇ、どこまで成長するか楽しみですわ」

 あれれ~!?
 どうしてそうなるのかな??
 せめて、せめて今のままの修行でいいと思うんだけどっ!
 ヤバい、放っておくと大変な事になりそうだ……

「あっ、そういえば突発型ダンジョンは攻略し終わるとどうなるんですか?……ってあれ?いつの間にか何もない」

 話を変えようとして振り向いたら、ダンジョンはどこにもなかった。見えたのは、崩れた施設の一部を覆い隠すようにあるブルーシートだけだ。

「攻略が終わり中に入った人間が全員外に出ると同時に、生成時とは違い音もなく、また何かを巻き込む事もなく消えるのが特徴だ」

 そうだったんだ……
 出来れば消える瞬間も見たかったよ。

「そうなんですね……えっといつまでここで待機しているんですか?」
「マスコミが東たちの写真を撮ったりインタビューを心ゆくまで行って、飽きて帰るまでだ。そうなったら風間が迎えに来る」

 具体的にはわからないと……
 それにしても所々でマスコミ等メディアに対して言葉がキツイような気がするんだけど、何か思う事であるのだろうか。
 まぁ下手な事言って、機嫌が悪くなったら面倒なので何も聞きはしないけどね。

「それと横川よ、先ほどの宝箱の中身だかな、売却益はこの度の褒美としてお前に与える」
「えっ!?マジっすか!?いいんですか?」
「あぁ、先ほど東の所のが言った通り、今回はお前だけの働きだった故な」
「おおっ!ありがとうございますっ!!」

 まさか本当に貰えるなんて!!
 ヤバい……何買おう……そう言えば新しい財布欲しいって思ってたんだよね、いやそれよりも動画とか見るのにタブレットとかもいいな……あっ、それよりもキャバクラのお姉さんたちに会いに行く事も可能なんじゃ?
 って、違う!ちゃんと貯めて奨学金返さなきゃだよ。
 危ない危ない……これが泡銭の魔力というやつか!?

「どれ、ちょっと見せてみろ」

 えっ……この流れはもしかして……喜ばせておいて取り上げるやつですかっ!?
 いつものやつですよね!?
 くっ……やはり鬼かっ!!

「そんな悲しそうな顔をせんでも取り上げんわ」
「あっ……はい」

 クソ忍者が苦笑といった表情で俺の頭を軽く叩いてきた。
 珍しい……
 ダンジョンから出てから今まで、こんなに優しい事があっただろうか、いや、ない。それ故に恐ろしい事が起きる前触れのような気がするのは、気のせいだろうか。

「ふむ……以前にこれの少し小さいのがオークションに出たのを見た覚えがあるな……その時は確か600万ほどで落札されたはずだ。これだと、大きさと宝石の質から見て、高く売れて1000万くらいか?2人ともどう思う」
「そうですな、中東の王族辺りが買いそうですのでそれぐらいいくかと思われますな」
「えぇ、宝飾の質も良く数も多いですし……失礼致します、刀身は……そうですね、1000よりもう少し高く売れるかと思われます」
「と、いう事だ。横川よかったな、お前は奨学金の返却があるだろう、ちゃんと貯金しておけよ」
「はいっ!ありがとうございますっ!」

 おずおずと差し出した宝剣を師匠たちが見て出した結果が……
 1,000万円って!!
 師匠たちは軽く言ってますけど、1,000万円ですよ?1,000万円!!
 やっぱりキャバクラにちょっとお邪魔しても大丈夫なんじゃないんですかっ!?
 いや、ここは岐阜の金津園の高級泡風呂へと、大人になりに行く手もありかも!?
 可哀想だからアマとキムも誘っちゃってさ!!

「ぐふふふふふふふっ」

 いかん、笑いが止まらない。

「落ち着け、気持ちはわかるが浮かれるな」
「気持ち悪い笑い方をしおって」
「そんなんじゃあ、女の子にモテないわよ」

 う、うるさいっ!
 喜んでいるというのに、女の子にモテないとか冷静に言わないでっ!
 言われなくてもそんな事わかってるんだからさっ……

 うん、ちょっと落ち着いた。

「高校卒業までこれまで以上に頑張ったら、俺が奨学金は全て肩代わりしてやろうかと思っていたが必要なさそうでよかったわ」
「えっ……」
「やはり自力で稼いだ方がいいな、お前自身のためにもな」

 ええっ!?
 何それ!?
 もしかして、もしかして、これ貰わない方がよかったんじゃないの!?
 いや、でも初宝箱のドロップだしな……
 ってか、そんな褒美があるならもっと前に言ってよっ!そしたらもっと修行頑張れたのにさ……まぁ今も精一杯頑張らないと死にそうだから、これ以上は無理なんだけどね。

 それにしてもおかしい。
 今日の師匠はどうしたというのだろうか……
 もしかして偽物?影武者だとか?

「さて、ここで無駄に喋っていても仕方ない。いつシートの隙間からマスコミが入ってくるやもしれんから、スキルなしでの手合わせを行うぞ」

 おおうっ、やはりそうなりますか……

「偽物や影武者かどうかはその身で確かめろ」

 えっ!?
 もしかしてまた顔に全部出ていましたか?
 その笑みは……ぎゃああああっ!!


 ☆☆☆
 ――世界的TOPパーティー東視点――

 詮索するなとは言われてはいたが、勇者さえ凌ぐというスキルはどんなものかと気にはなっていた。
 それが見れるとなれば、嬉しくは思うのだが……まさか初見のボスを1人で討伐せよと命じるとは思いもしなかった。
 横川くんも一応反論はしていたが、すぐに諦めたみたいだ……まぁ1度口にした事をすぐに翻すような事をされる方ではないからね。
 ただこんな無茶ぶりとも受け取れる命令を下すだけの実力を兼ね添えているという事でもあるだろう。

 鼠や烏が出てきた事にも驚いたが、分身とは一体何なんだ?後ろ姿だけだが、横川くんと全く同じ実体が8人も突然生まれでた。
 更に魔法だろうが……何だあの圧倒的な数は……うちの魔法使いでも、いや、これまで見た事のある魔法スキル持ちよりも遥かに凌駕している。
 そして「闇遁・影潜り」と言っていたか?本体の姿が突然消えた。言葉からして影へと潜ったのだろうとは推測出来るが……こんなスキルは見た事も聞いた事もない。その上ボスとお供に何もさせずに一方的に終了させるなんて……開始から5分ほどなんて……

 若は大したことのない敵だと仰ったが、かなりのステータスだ。
 もし俺たちパーティーだけで挑んでいたら、少なくとも数倍の時間は要しただろうし、無傷で終えれたかどうか怪しいだろう。

 誰が言ったか覚えてはいないが、本当に人なのか?
 これで本当に17歳なのか?
 確か出生はダンジョンで拾われた子と聞いたが……モンスターの子だと言われても納得出来てしまう。

 たった半年やそこらでここまでになるなんておかしいだろっ!

 もし今パーティー対横川くんで手合わせをしろと言われたら……
 俺は全力で拒否するっ!
 アレは敵にしてはダメな相手だ……
 若や組長たちと同じ、いや、未だ17歳という事を考えたらそれよりも危険過ぎる。
 パーティーメンバーからも、「ヤバい」「人間なの?」「勝てない」「どうなってんだ」と震えるような呟きが聞こえてくるのも無理はない、全く同感だからな。

 突入前よりも、ある種の緊張感に包まれながら外へと戻った。
 いつもならば、マスコミ対応など面倒だと思うところだが、今はこの場から早く、横川くんたちからいち早く離れたいのが本音だ。

 マスコミは思った以上に集まっており、夜の帳が降りているというのに、昼間以上に明るくなるほどにフラッシュや投光器に照らされる中、マシンガンのように繰り出されつづける質問に答える。
 知事たちの話、息子たちの話、ボスの話等など……
 若たちや横川くんの存在を感じさせないように、スムーズに答え続ける。

 早く帰りたい……
 早くホテルへと帰って、熱い風呂に身を沈めたい……

「大木知事が底辺職だとか罵倒し、一方的に戦いを仕掛けた事についてはどう思われますか?何故お止めにならなかったのでしょうか?」

 止めれるわけないだろうがっ!
 何も知らないくせに勝手な事を言いやがって!
 ……なんて言えたら楽なんだけどな。

「まず最近よく底辺職だとか耳にしますが、確かにシーカージョブのスキル特性の少しの善し悪しがある事は認めますが、ステータスという物が存在する以上、努力すればそれだけの力を持つ事が出来ます。現に今回知事が罵り愚弄した対戦者ですが、知事の息子さん率いるパーティーを圧倒的に完膚なきまでに叩き伏せました」
「その人たちはどこにいるんでしょうか!?」
「さあ?……突発型の発生への対応に忙しくしていたためにわかりません」
「知事一行の安否ですがっ!」
「残念ながら、突発型の発生に巻き込まれました、私たちの力不足ゆえに救出は間に合いませんでした」

 まぁ並大抵の努力じゃ無理なんだがね……
 ただ世間ではヒーローと呼ばれているからね、こういう事も言わないと。
 っと、悲痛で泣いているように顔を歪ませないと……全く泣けないが、あれは自業自得だし、若や伊賀の幹部たちの報復を考えたら、もしかしたら死んだ方がマシだと思えたかもしれんしな。

 あぁ、まだ質問は続くようだ……


 んっ?
 今悲鳴と剣戟の音が聞こえてきたような?

 あれだけの事をしておいて、また訓練施設で修行を始めたのか……
 そりゃあ、あれほどにもなるか……
 ただなぁ、それでもやはり……異常だろ、彼は一体どうなるんだろうか、見てみたいような、怖いような……

 あぁ、早く帰りたい。
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