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終話 ゴンリクの祝福
しおりを挟むゴンリクは、19世紀頃にドイツがネブッアーを植民地として支配していた頃に何処かから運びこまれたフルーツだ。
原産地の特定はできていないが、ゴンリクとの近似種が、バヌアレブ島近くで見つかったという話もあり、種が船や船員の靴などに付着して、かなり南の方から渡ってきたものと考えられている。
見た目通りマンゴーに近い種であるが、他のマンゴー種にはない特徴として、ゴンリクは果実として実ると他の生き物を取り込み、その栄養分をもとに実を成長させるというものがある。
大きな果実では人間大ほどになる個体も報告されているが、表向きは現在、そこまで成長したゴンリクの果実は存在していない。
ゴンリクの果実は他の生き物を取り込む際、多幸感を与える物質を、取り込んだ生物の脳内に送り込む。そして実り熟した果実が種を落とし、新たに実る時、取り込んだ生物の方から進んで果実の栄養になるように導く──。
私は、神高原夫妻がネブッアー島に建造した研究施設で、ゴンリクとネブッアー島との関連を研究することになった。
日本に残した妻も島に呼び寄せた。
初めは不平たらたらで私を詰るばかりだったが、妻もすぐにゴンリクの魅力にハマり、今では毎日笑顔でガーデニングなんかをしながら、日々を楽しく過ごしている。
日本にいた時には、考えられなかった幸せな日常を、私達は手に入れたのだ。
研究施設では他にも、ゴンリクの栽培や加工を行う施設も隣接されていて、今まで以上にゴンリクを世に広めることのできる環境が、この島に整ったと言える。
ゴンリクの果実は素晴らしく、この実を人々に伝道することこそ、私の生きる目標であると、今は固く信じている。
今日もまた、私はゴンリクの祝福が世界に広がるように祈り、研究を続ける──。
「神高原サン! コノア! 恵之介! この間の式で亡くなった方の葬式の日取りが決まったんや! 参加するやろ?」
「勿論!!」
私達は声を揃えて、その誘いに応じた。
了。
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