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第3話 シン・ウルトラマン
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◯登校中の道路。
車の行き交う音が聞こえる。
▼は姿勢良く、前を向いて歩いている。
▼の後ろから▽が走ってきて、▼の背中を叩く。
▽「おっはよー!」
驚いてよろめきそうになる▼。
後ろを睨みつけるが、▽の姿を視認して溜息をつく。
▼「何。あなただったの。ビックリするから、次からそれ、やめてくれないかしら」
▽「ごめんごめん。▼ちゃんが見えたもんだからつい」
▼「ついじゃないわ、全く……。それより、登校中に会うなんて珍しいわね。部活はどうしたのかしら?」
▽「あー。顧問が腰を痛めたとかで休んでてさ。暫くは朝練はお休みなんだ」
▼「そうだったの」
▽「それより、インスタ見たよ! シン・ウルトラマン、観に行ったんだ!?」
▼、バツが悪そうに髪に手をかける。
▼「弟の付き添いでね」
▽「どうだったどうだった?」
▼「特撮ヒーローなんて子供騙しと思っていたけれど、SFでもよく聞く用語が作劇を邪魔しない程度に入っていて、驚いたわ」
▽「あー、あれか。プランクブレーンがどうこうとか、余剰次元がどうこうとか。確かにSF小説読んでるとよく出てくるね。シュレディンガーの猫? とか?」
▼「いつも思うけれど、私はあなたがどうしてそんな認識のまま、何冊ものSFを読破しているのか疑問だわ」
▽「いや、だってほとんどの作品の本質って、そこじゃないし?」
▼「そうだけど。普通、もうちょっと科学の素養が身に付いてもおかしくないんじゃない? と思っただけ」
▽「って、そうじゃないんだって」
と、▼を手で突っ込む。
▽「ウルトラマン! ウルトラマンの話を聞いてたの!」
▼「そうだったわね。悪くなかったわ。私、あれだけの量子物理学の用語を一つの映画で聞いたの、初めてかもと思ったもの」
▽「それはどうだろ。確かに他ではあんま聞かない用語は使ってたけど、割と海外のSF映画だと出てくるよ」
▼「私、あなたほど映画は観ていないもの」
▽「だよねー。▼ちゃんももっといっぱい観たらいいよ。面白いのいっぱいあるし。『アントマン』とかどう? あの映画も、量子物理学の話出てきたよ。それどころか、アントマンって、名前の通り蟻くらいの大きさになれるんだけど、能力を限界まで使うと量子の大きさまで縮めるの。それで量子世界の映像表現とかがあって、クマムシとかがめちゃくちゃ大きくてさ」
▼「だからそこまで認識していてどうして……いいわ。でも量子の大きさでクマムシ? まあそれもいいわ。人間が瞬時にウルトラマンみたいな巨人になるなんて変よね、どこからその質量持って来てるのかしら、なんて弟がテレビを観ている時に思ったことがあったけれど、余剰次元に閉まっていたのね。確かに、テレビでもウルトラマンだけがぼんやり存在している謎の空間があった気がするわ」
▽「余剰次元ってのがあたしよくわかんないけどね」
▼「超ひも理論は聞いたことあるでしょ」
▽「あるある。世界は三次元じゃなくてもっといっぱいあるとかなんとか」
▼「それね。私達には認識できないけど、三次元を超えた次元に折り畳まれてたりとか、三次元を包む膜上の次元があるとか、色々考えられているんだけど、あなたに言っても仕方ないわね」
▽「また馬鹿にされた」
▼「事実でしょ。でも一応、劇中の禍特対の物理学者の人も、五次元とか六次元って言ってたでしょ」
▽「覚えてない」
▼「三次元の外側には五次元があって、素粒子や重力といったものはその壁をすり抜けられるって言われてるのよ。ウルトラマンは、M87の科学力によって、その壁をどうにか飛び越えているわけね」
▽「あー、何か他の小説読んでる時にも出てきたな。だからD4Cの開いた並行世界に、タスクの能力は着いて行けたのかーって思った」
▼「待って。それ何の話」
▽「ジョジョ」
と、ジョジョ(モデル)立ち。
▼「ホントに幅広いわね……」
▽「D4Cってのがスタンド……敵の能力なんだけど、並行世界を行き来することができるの。だから、死にそうになったら並行世界の別の自分を連れてきて、後は任せた! ってバトンタッチができる能力」
▼「滅茶苦茶厄介ね」
▽「そうそう。並行世界を行き来できるのは能力者の人だけなんだけど、主人公のジョニィが途中から修行の末、重力を操る力を手に入れてね。その力を並行世界に飛ばして、敵の能力者を倒すの」
▼「ああ。五次元のブレーンの上にある並行世界を行き来できる能力だから普通は勝てないけど、重力なら行き来可能だから勝利できるってこと……。よく考えてあるのね。というか、ジョジョってそんな話だったの?」
▽「そんな話というわけではないけど、そんな話をしている時もある」
▼「ちょっと興味出てきちゃったじゃない」
▽「マジ!? 良ければ貸すよ! あ、学校着いちゃった」
と、少し肩を落とす。
▼、小さく笑みをこぼす。
登場作品
『シン・ウルトラマン』樋口真嗣監督作品
『アントマン』ペイトン・リード監督作品
『ジョジョの奇妙な冒険 Part7 スティール・ボール・ラン』荒木飛呂彦
車の行き交う音が聞こえる。
▼は姿勢良く、前を向いて歩いている。
▼の後ろから▽が走ってきて、▼の背中を叩く。
▽「おっはよー!」
驚いてよろめきそうになる▼。
後ろを睨みつけるが、▽の姿を視認して溜息をつく。
▼「何。あなただったの。ビックリするから、次からそれ、やめてくれないかしら」
▽「ごめんごめん。▼ちゃんが見えたもんだからつい」
▼「ついじゃないわ、全く……。それより、登校中に会うなんて珍しいわね。部活はどうしたのかしら?」
▽「あー。顧問が腰を痛めたとかで休んでてさ。暫くは朝練はお休みなんだ」
▼「そうだったの」
▽「それより、インスタ見たよ! シン・ウルトラマン、観に行ったんだ!?」
▼、バツが悪そうに髪に手をかける。
▼「弟の付き添いでね」
▽「どうだったどうだった?」
▼「特撮ヒーローなんて子供騙しと思っていたけれど、SFでもよく聞く用語が作劇を邪魔しない程度に入っていて、驚いたわ」
▽「あー、あれか。プランクブレーンがどうこうとか、余剰次元がどうこうとか。確かにSF小説読んでるとよく出てくるね。シュレディンガーの猫? とか?」
▼「いつも思うけれど、私はあなたがどうしてそんな認識のまま、何冊ものSFを読破しているのか疑問だわ」
▽「いや、だってほとんどの作品の本質って、そこじゃないし?」
▼「そうだけど。普通、もうちょっと科学の素養が身に付いてもおかしくないんじゃない? と思っただけ」
▽「って、そうじゃないんだって」
と、▼を手で突っ込む。
▽「ウルトラマン! ウルトラマンの話を聞いてたの!」
▼「そうだったわね。悪くなかったわ。私、あれだけの量子物理学の用語を一つの映画で聞いたの、初めてかもと思ったもの」
▽「それはどうだろ。確かに他ではあんま聞かない用語は使ってたけど、割と海外のSF映画だと出てくるよ」
▼「私、あなたほど映画は観ていないもの」
▽「だよねー。▼ちゃんももっといっぱい観たらいいよ。面白いのいっぱいあるし。『アントマン』とかどう? あの映画も、量子物理学の話出てきたよ。それどころか、アントマンって、名前の通り蟻くらいの大きさになれるんだけど、能力を限界まで使うと量子の大きさまで縮めるの。それで量子世界の映像表現とかがあって、クマムシとかがめちゃくちゃ大きくてさ」
▼「だからそこまで認識していてどうして……いいわ。でも量子の大きさでクマムシ? まあそれもいいわ。人間が瞬時にウルトラマンみたいな巨人になるなんて変よね、どこからその質量持って来てるのかしら、なんて弟がテレビを観ている時に思ったことがあったけれど、余剰次元に閉まっていたのね。確かに、テレビでもウルトラマンだけがぼんやり存在している謎の空間があった気がするわ」
▽「余剰次元ってのがあたしよくわかんないけどね」
▼「超ひも理論は聞いたことあるでしょ」
▽「あるある。世界は三次元じゃなくてもっといっぱいあるとかなんとか」
▼「それね。私達には認識できないけど、三次元を超えた次元に折り畳まれてたりとか、三次元を包む膜上の次元があるとか、色々考えられているんだけど、あなたに言っても仕方ないわね」
▽「また馬鹿にされた」
▼「事実でしょ。でも一応、劇中の禍特対の物理学者の人も、五次元とか六次元って言ってたでしょ」
▽「覚えてない」
▼「三次元の外側には五次元があって、素粒子や重力といったものはその壁をすり抜けられるって言われてるのよ。ウルトラマンは、M87の科学力によって、その壁をどうにか飛び越えているわけね」
▽「あー、何か他の小説読んでる時にも出てきたな。だからD4Cの開いた並行世界に、タスクの能力は着いて行けたのかーって思った」
▼「待って。それ何の話」
▽「ジョジョ」
と、ジョジョ(モデル)立ち。
▼「ホントに幅広いわね……」
▽「D4Cってのがスタンド……敵の能力なんだけど、並行世界を行き来することができるの。だから、死にそうになったら並行世界の別の自分を連れてきて、後は任せた! ってバトンタッチができる能力」
▼「滅茶苦茶厄介ね」
▽「そうそう。並行世界を行き来できるのは能力者の人だけなんだけど、主人公のジョニィが途中から修行の末、重力を操る力を手に入れてね。その力を並行世界に飛ばして、敵の能力者を倒すの」
▼「ああ。五次元のブレーンの上にある並行世界を行き来できる能力だから普通は勝てないけど、重力なら行き来可能だから勝利できるってこと……。よく考えてあるのね。というか、ジョジョってそんな話だったの?」
▽「そんな話というわけではないけど、そんな話をしている時もある」
▼「ちょっと興味出てきちゃったじゃない」
▽「マジ!? 良ければ貸すよ! あ、学校着いちゃった」
と、少し肩を落とす。
▼、小さく笑みをこぼす。
登場作品
『シン・ウルトラマン』樋口真嗣監督作品
『アントマン』ペイトン・リード監督作品
『ジョジョの奇妙な冒険 Part7 スティール・ボール・ラン』荒木飛呂彦
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