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Chapter# : World is the unreasonable.
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PVPが世界から発生しなくなってから一ヵ月。
未だ油断することはできないと、峰越達は隔離施設の調査や、世界PVP検疫官会議の身元調査や感染者の肉片持出などが万が一にもないかどうかなど、やれるだけのことの全てに着手していた。感染者の爆発した脳髄から次の感染が起こるとは限らない。だがそれでも、遂に封じ込めを果たした最後のケジメを、峰越には怠るつもりなど毛頭なかった。
それらの確認作業を全て終えてから更に一ヵ月。世界から、PVPの撲滅を完了したとの結論が、世界中の専門機関からもくだった。
PVP撲滅を果たしたことを世界中に伝える役目を仰せ使ったのは、最大の貢献を果たしたと言っても過言ではない、PVP感染者特定法を発見した笹賀だ。
「長きに渡る、量子ウイルスとの闘いが遂に終わりました。皆さん、もうこれ以上、我々はPVPの脅威を恐れることはないのです! 我々の勝利です!!」
PVP検疫官達から、そして世界中の人々から歓声が上がった。
笹賀からは、PVP検疫職員になって直ぐに見られた若さも、PVP感染者特定を幾度も繰り返し、PVPを巡る政治内外の闘いにすら峰越と共に身を投じる内に成熟し、消えていた。
彼こそが世界を救った英雄であると自他共に認められる威厳すらも感じられ、世界中にPVPとの闘いの終焉を告げる笹賀に対し、大勢の職員達が、敬礼を捧げた。
PVP収束宣言を終え、息を吐いた笹賀は、横で誇らしげにその様子を見届けていた峰越に笑いかけた。それは笹賀が久しぶりに見せる笑顔であった。
遂に闘いを終え、世界を未曾有の危機から救った感慨に耽る。峰越に、ただの若輩であった自分とこれまで共に闘ってくれたことに笹賀が感謝を告げようとしたその瞬間。
峰越の頭が肥大した。
「……え」
思わず息を止めた笹賀が、声を出すよりも早く、峰越の頭が爆発する。血飛沫が飛び散る。
血飛沫を受けた職員の頭が、間髪いれずに肥大した。
何が起こっているかを理解する余裕はなかった。
爆発は連鎖する。
パンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッ!
乾いた破裂音が連続する。
その音の発生源は職員達からだけではない。
笹賀のPVP収束宣言の様子を映していたテレビの映像からも。
世界中で、人間の脳髄が爆発していた。
「笹賀……さん」
笹賀の名前を呼んだ職員の頭が、その瞬間に肥大した。
肥大した頭は、今度は破裂することなく、膨張を続ける。部屋中の全てを押し退けた。
このままだと圧死だ。
『発想自体は悪くなかったよね』
何とか逃げ出そうとした笹賀の脳内に、急に響く声があった。
『でもさー、爆発する感染者を隔離して、ただそれを待つ、とかちょっと、何て言うか、ズル? 1週間とか1キロメートルとかは、そっちの方が面白いかなー、と思って設けたルールなわけよ。なのに、ねえ。ハメ技というか、わかってないよね。ムカついちゃったし、もういいや』
パンッ!!
部屋全体を覆う程に膨張した最後のPVP検疫職員の脳髄が爆発した。
部屋も笹賀も真っ赤に染まる。
「うわあああああああ!」
笹賀は叫び声を上げて、外に出た。
そこでまた頭を殴られたような衝撃を覚える。
世界中が、赤い。
地面も、空も、木々も、建物も。
ドロリと垂れる血液と脳髄で、全てが染まっている。
何もかもが無意味だったのか?
笹賀がそう自問した時には既に、彼の頭もまた大きく肥大して──。
未だ油断することはできないと、峰越達は隔離施設の調査や、世界PVP検疫官会議の身元調査や感染者の肉片持出などが万が一にもないかどうかなど、やれるだけのことの全てに着手していた。感染者の爆発した脳髄から次の感染が起こるとは限らない。だがそれでも、遂に封じ込めを果たした最後のケジメを、峰越には怠るつもりなど毛頭なかった。
それらの確認作業を全て終えてから更に一ヵ月。世界から、PVPの撲滅を完了したとの結論が、世界中の専門機関からもくだった。
PVP撲滅を果たしたことを世界中に伝える役目を仰せ使ったのは、最大の貢献を果たしたと言っても過言ではない、PVP感染者特定法を発見した笹賀だ。
「長きに渡る、量子ウイルスとの闘いが遂に終わりました。皆さん、もうこれ以上、我々はPVPの脅威を恐れることはないのです! 我々の勝利です!!」
PVP検疫官達から、そして世界中の人々から歓声が上がった。
笹賀からは、PVP検疫職員になって直ぐに見られた若さも、PVP感染者特定を幾度も繰り返し、PVPを巡る政治内外の闘いにすら峰越と共に身を投じる内に成熟し、消えていた。
彼こそが世界を救った英雄であると自他共に認められる威厳すらも感じられ、世界中にPVPとの闘いの終焉を告げる笹賀に対し、大勢の職員達が、敬礼を捧げた。
PVP収束宣言を終え、息を吐いた笹賀は、横で誇らしげにその様子を見届けていた峰越に笑いかけた。それは笹賀が久しぶりに見せる笑顔であった。
遂に闘いを終え、世界を未曾有の危機から救った感慨に耽る。峰越に、ただの若輩であった自分とこれまで共に闘ってくれたことに笹賀が感謝を告げようとしたその瞬間。
峰越の頭が肥大した。
「……え」
思わず息を止めた笹賀が、声を出すよりも早く、峰越の頭が爆発する。血飛沫が飛び散る。
血飛沫を受けた職員の頭が、間髪いれずに肥大した。
何が起こっているかを理解する余裕はなかった。
爆発は連鎖する。
パンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッ!
乾いた破裂音が連続する。
その音の発生源は職員達からだけではない。
笹賀のPVP収束宣言の様子を映していたテレビの映像からも。
世界中で、人間の脳髄が爆発していた。
「笹賀……さん」
笹賀の名前を呼んだ職員の頭が、その瞬間に肥大した。
肥大した頭は、今度は破裂することなく、膨張を続ける。部屋中の全てを押し退けた。
このままだと圧死だ。
『発想自体は悪くなかったよね』
何とか逃げ出そうとした笹賀の脳内に、急に響く声があった。
『でもさー、爆発する感染者を隔離して、ただそれを待つ、とかちょっと、何て言うか、ズル? 1週間とか1キロメートルとかは、そっちの方が面白いかなー、と思って設けたルールなわけよ。なのに、ねえ。ハメ技というか、わかってないよね。ムカついちゃったし、もういいや』
パンッ!!
部屋全体を覆う程に膨張した最後のPVP検疫職員の脳髄が爆発した。
部屋も笹賀も真っ赤に染まる。
「うわあああああああ!」
笹賀は叫び声を上げて、外に出た。
そこでまた頭を殴られたような衝撃を覚える。
世界中が、赤い。
地面も、空も、木々も、建物も。
ドロリと垂れる血液と脳髄で、全てが染まっている。
何もかもが無意味だったのか?
笹賀がそう自問した時には既に、彼の頭もまた大きく肥大して──。
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