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プティ・フレールの愛し子
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「起こしてくれても、良かったのに…」
「申し訳ございません。とてもよくお休みでいらっしゃいましたので…」
バルドル神との対面を果たした翌日、朝の身支度を整えてもらいながら不満を漏らせば、エルダが眉を下げて微笑んだ。
バルドル神の離宮から帰ってきたのは、昨日の昼日中のことだ。
陽の光が燦々と降り注ぐ空は青く、ベッドに横になっても、きっと夕暮れ時には目が覚めるだろう、と眠い頭で思っていた。
ところが、次に目を開けた時、辺りはほんのりと薄暗く、それが早朝の部屋の空気だと気づいた瞬間、慌てて飛び起きた。
腕の中にいたはずのエルダの姿はなく、イヴァニエやルカーシュカもいない。
自分だけがポツンと取り残された部屋の中、半日以上眠ってしまったことに茫然としながら、ベッドの上に座り込んだ。
じっとしたまま耳を澄ませるも、隣室にも誰かがいる気配はなく、静けさの中になんともいえない寂しさが混じった。
もう一度眠ることもできず、温かな羽毛に包まって待つこと暫く、部屋の中が明るくなり始めた頃に、遠くで部屋の扉が開く音がした。
「失礼致しま───! アドニス様、お目覚めで…!」
どこか慌てた様子で駆け寄ってきたエルダに、置いてけぼりにされたような感覚から、勝手に頬が膨れた。
「アドニス様?」
「……どこ、行ってたの…」
つい漏れてしまった言葉は非難めいていて、即座に後悔するも、エルダは驚いたように目を見開いた後、なぜか嬉しげに表情を和らげた。
そこからはエルダに宥められ、あやすような声で甘やかされるまま、ぽつり、ぽつりと胸の内を呟き続け、今である。
「起きたら、みんな、いなかった…」
「ごめんなさい、アドニス様」
「…みんな、何してたの?」
「イヴァニエ様達とお話しをした後、私は自室に戻って休んでおりました」
「……自分も、お話ししたいって、言ったのに…」
「ええ、左様でございますね。忘れていた訳ではないのですが……本当にごめんなさい」
恨みがましい声が漏れるも、エルダは困り顔で微笑むだけだった。それでも謝罪する声は真摯で、だからこそ怒っている訳でも、非難している訳でも、ましてや謝ってほしい訳でもないことに、罪悪感が滲み出す。
「…ごめんなさい。起こさないでいてくれたのに…我が儘言って、ごめんね」
早い話が、拗ねていただけだ。
ルカーシュカ、イヴァニエ、エルダは、よく三人だけで話し込んでいることがある。そういう時は、大抵自分に関することを話していて、あえて聞かせないようにしているのだと、最近になってなんとなく分かるようになった。
それ自体はいいのだ。恐らく自分が聞いても分からないことか、三人が聞かせるべきではないと判断したことなので、彼らの会話に割って入るつもりはない。ないのだが…
(置いてけぼりは、寂しい…)
内緒の話に混ぜてくれとは言わない。ただせめて、「こっちでお話ししてるよ」ということだけでもいいから教えてほしいと思ってしまうのだ。
「アドニス様、そのお気持ちは我が儘などではございません。どうかそのように仰らないで下さいませ」
支度を整え終えたエルダが、両手をぎゅっと握り締めてくれる。
その表情は、爽やかな朝に似つかわしくない憂いを帯びていて、このまま悄気ていてはダメだと、僅かに残っていた寂しさは無理やり振り払った。
「…ごめんね。起きたら朝で…みんな、いなくて、びっくりしちゃって…」
「私もアドニス様がお目覚めになる前には戻るつもりだったのですが、遅くなってしまい……お寂しいお気持ちにさせてしまい、申し訳ございませんでした」
「もう、大丈夫だよ。大丈夫だから、エルダも謝らないで…?」
繋がっていた手を解き、まだ心配そうなエルダの体を抱き締めると、ふわふわとした髪の毛に指先を埋めた。
「おはよう、エルダ」
「…おはようございます、アドニス様」
腕の中の体温を閉じ込めるように、細い体をじっくりと抱き締める。毎朝の挨拶を告げ、ゆっくりと体を離せば、綺麗な顔に浮かんでいた翳りは消えていた。
「あーぅ!」
「んぁ」
「おはよう、みんな」
日課である朝のミルクを飲んでいると、ちらほらと赤ん坊達がやって来る。まだ眠いのか、小さな手で目を擦りながら、ソファーの上や絨毯の上に思い思いに寝転がった。
「ふあ……ふっ」
「ふふ、まだ眠いね」
膝の上に上体ごと頭を乗せ、大きく欠伸をする赤ん坊の背を撫でながら、甘いミルクを味わう。
いつもと変わらない、いつもと同じ一日の始まり。それが妙に新鮮に思えて、見慣れた室内をゆるりと見渡した。
(なんだか、変な感じ)
バルドル神の元を訪れた昨日が、いつもと違う非日常的な時間だったからか、妙にふわふわとした感覚が体に残っていた。
少しだけ落ち着かなくて、でも心地良い。そんな不思議な感覚に浸りながら、ミルクを飲む。
エルダが作ってくれた蜂蜜ミルクは安心の味がして、落ち着かない気持ちごと、ほぅっと息を吐けば、緩やかに自分がいつもの日常に溶け込んでいくのが分かった。と、そこでふとあることに気づき、室内の扉へと視線を向けた。
「…ルカとイヴ、来ないね」
いつもなら隣にいるはずの二人の姿が、まだない。
その疑問をそのままエルダに伝えれば、申し訳なさそうな返事が返ってきた。
「そのことなのですが、本日はお二人とも、朝はこちらには来られないそうで…」
「そうなの?」
「はい。その代わり、お昼過ぎにはこちらにいらっしゃるので、その後は長くご一緒に過ごせるはずです」
「…ん、分かった。教えてくれて、ありがとう」
今日はフレールの庭に向かう日なのだが、どうやらそちらにも二人は来れないらしい。
彼らがフレールの庭に同行できないことは、珍しいことではない。それでも昨日との差のせいか、いつも以上に寂しく思ってしまうことに少しだけ気持ちが沈んだが、即座に沈んだ気持ちを振り払うと、カップを持つ手に力を込めた。
(二人には、二人のやることがあるんだから)
自分がフォルセの果実としての役目を担うように、イヴァニエにはイヴァニエの、ルカーシュカにはルカーシュカの役目がある。そのことをきちんと胸に留めると、傍らに立つエルダを見上げた。
「エルダは、いてくれる…?」
「勿論でございます。私はアドニス様のお側を離れません」
「ふふ…ありがとう。じゃあ、今日はエルダもみんなと一緒に、フレールの庭で遊ぼうね」
普段は見守るように側に控えているエルダだが、もう少しだけ、気を緩めてくれてもいいと思う。
昨日の甘えん坊だったエルダのことを思い出し、言外に「赤ちゃんの姿になっていいよ」という気持ちを込めて伝えれば、翠色の瞳が僅かに揺れた。
「いえ、私は…」
「昨日、一緒にいられなくて、寂しかったでしょう? 私も寂しかったから、今日は昨日の分も、くっついてよう?」
「……畏まりました」
ほんのりと頬を染めながら、それでも頷いてくれたエルダ。
普段ならこうして誘っても「いけません」と断られてしまうのだが、すんなり了承してくれたということは、きっとまだ甘え足りなかったのだろう。
それがなんだか嬉しくて、ふへりと頬を緩めれば、膝の上や足元に集まった赤子達が、クイッと服の裾を引っ張った。
「あぅ、だ!」
「んあ」
「…みんなとも遊べなくて、寂しかったよ」
「あぶ!」
「そうだね。今日はいっぱい、遊ぼうね」
「ぼく達も寂しかったよ」と言わんばかりの眼差しは、ただただ愛しくて、ほわりと胸が温かくなる。
バルドル神との再会も、オリヴィアと結んだ友誼も、とても素晴らしく、喜ばしいものだった。
それでも、いつもと変わらぬ日常は、きっとそれ以上に特別で、ずっとずっと得難いものなのだろうと、深く実感した。
まったりと朝の時間を過ごすと、エルダと赤子達と共にフレールの庭へと向かった。
ポカポカとした陽気の中、双樹の根本に腰を下ろし、フォルセの果実を実らせると、次から次へと訪れる赤子達の小さな口の中に、赤い実を転がしていく。
楽しそうに飛び回る赤子達を眺め、時に頬や頭を撫でながら、穏やかな時間を満喫した。
膝の上には赤ん坊の姿になったエルダがちょこんと座り、ぴったりとくっついている。
時たまこちらを見上げる翠色は雄弁で、それに応えるように薔薇色の頬を撫でれば、気持ちよさげに目を瞑り、満足気に腹部に頬を擦り寄せた。
「エルダは可愛いね」
「……ん」
素直な反応は堪らなく愛らしく、綿毛のような髪の毛をそっと撫でれば、エルダが小さなおでこをグリグリと腹部に擦りつけた。
「ふふ、擽ったいよ」
「うー!」
「あぅあー?」
「みんなも可愛いよ」
照れるエルダの頭を撫でていると、周りに赤ん坊達が集まってくる。
「ぼくは?」「ぼくは可愛い?」と言いたげに小首を傾げる愛らしさに笑みを零しつつ、同じように頭を撫でれば、きゃっきゃっと楽しげな声が響いた。
───とその時、はたとあることを思い出し、「あ」と呟きが零れた。
(そういえば、今度からみんなと一緒に、バルドル様の離宮にも行けるようになったんだ)
この場で話したら、皆喜んでくれるだろうか?
ワクワクとした気持ちで口を開きかけ───瞬時に閉じた。
(……違う。エルダは、行けないんだ…)
バルドル神の離宮に入れるのは、『鍵』を持つ自分だけ。供をしてくれるのはオリヴィアだ。
昨日、数時間側を離れただけでも寂しがり、甘えん坊になってしまったエルダ。恐らく、いや確実に、このことを話したら、エルダはひどく寂しがり、落ち込むだろう。
(……今は、言わない方がいいかな)
腹部に抱きつくエルダに視線を落とし、口を結ぶ。
イヴァニエとルカーシュカもいる場で、きちんと話すべきかもしれない…うっかり口にしなくて良かった、とホッとしていると、不思議そうにこちらを見上げるエルダと目が合った。
「う?」
「…なんでもないよ」
すべらかな頬に両手を添え、まろい輪廓をふにふにと優しく押せば、翠の瞳が嬉しげに煌めいた。
眩しいほどの煌めきに頬が緩む中、不安にも似た焦りがこそりと顔を出す。
「遊びにおいで」と言ってくれたバルドル神の離宮へ、遊びに行きたいとは思っている。だがその為には、エルダとルカーシュカ、イヴァニエと一時的に離れなければいけない。
自分とて、寂しくない訳じゃない。側を離れる不安だってある。
それでも、純粋にバルドル神に会いたい。喜んでくれる顔が見たい。その為に、あの暖かな庭に行きたい…そう思ったのだ。
(…ちゃんと話せば、きっと大丈夫)
じわりと滲んだ不安を、期待のような願望で包み込むと、甘えるエルダと赤子達に向けて微笑んだ。
「ああ、起きたか」
「よく休みましたか?」
「ルカ、イヴ」
フレールの庭から自室へと戻り、休息の為に一眠りして起きると、イヴァニエとルカーシュカの姿があった。
寝室を出て、ソファーで寛ぐ二人にほてほてと近づけば、イヴァニエが立ち上がり、ぎゅうっと体を抱き締めてくれた。
「会いたかったです、アニー」
「…? 自分も、会いたかった」
「ふふ、嬉しいです」
まるで久方ぶりの再会を喜ぶようなイヴァニエの態度に首を傾げつつ、全身を包み込む温かな抱擁に身を任せる。
「アニー、昨日は寝てる間にいなくなってごめんな」
「…うぅん。起こさないでくれて、ありがとう」
イヴァニエの背後から顔を出したルカーシュカの言葉に、ふるふると首を振ると、彼が広げた腕の中に自ら収まった。
「エルダには拗ねるのに、俺達には拗ねてくれないのか?」
「す、拗ねてないよ…」
「そうか? もし言いたいことがあれば、いつでも言ってくれ。ちゃんと聞くから」
「…うん。ありがとう」
きゅうっと優しく抱き締められながら、白銀の髪に鼻先を寄せる。
彼らの内緒話については、また折を見て話してみよう。それよりも、今はこれから話すことの方が、もっと大事だろう。
(…伝えたいことは、ちゃんと伝えよう)
ルカーシュカの言葉に勇気をもらいつつ、二人の腕の中からゆっくりと体を離すと、ルカーシュカとイヴァニエの間に腰を下ろした。
「エルダは…」
「私はこちらで聞いておりますので、大丈夫ですよ」
先ほど赤ん坊の姿で存分に甘えた後だからか、心なしかいつもよりも一歩引いた態度のエルダだが、その表情は柔らかく、会話には加わってくれそうな雰囲気にホッとする。
「さて、それじゃあ、遅くなって悪かったが、奥の宮でバルドル様とどんな風に過ごして、どんなお話しをしてきたか、教えてくれるか?」
「うん…!」
微笑むルカーシュカの声は穏やかで、優しく手を引かれるような言葉に、それまでの小さな不安は瞬く間に姿を消した。
「んと…、どこからお話ししよう…」
「最初からでいいですよ。私達と別れてから、奥の宮で見たもの、感じたもの、なんでもいいから教えて下さい」
「うん!」
そうして言われるがまま、転移門から瞬時に移動した驚きから、奥の宮の独特の雰囲気、風景の違いまで、思い出せる限りを語っていった。
オリヴィアとどんな話をして、何を知ったか。バルドル神と対面した時、何を思い、どんな言葉を交わしたか。記憶を解いていくように丁寧に丁寧に話した。
たくさん褒めてもらえたこと、優しく笑ってくれたこと、バルドル神が安心してくれたこと、それらすべてが嬉しかったこと…自分が抱いた感情も言葉に変え、必死に記憶を紡いだ。
「それでね、お庭をお散歩しようってなって、バルドル様が、抱っこしてくれて…」
「…抱っこ、ですか?」
「えっと、自分が…靴、履いてなくて、危ないからって、抱っこして歩いてくださったんだよ」
「……そうですか」
「…やっぱり、神様に抱っこしてもらうの、ダメだった…?」
「いや、いいんだよ。イヴァニエは気にしなくていいから、続きを聞かせてくれ」
「う、うん」
少しだけ不穏な空気を感じながら、庭を散歩して、初めて船に乗ったこと、湖の美しさに見惚れ、湖面に触れたことを語った。
「途中で、船から落っこちちゃいそうになったんだけど───」
「なっ!?」
「あ、だ、大丈夫だよ! オリヴィアが、すぐに助けてくれたから、落ちてないし…! その後は、ずっとバルドル様に抱っこされてたから、危ないことはしてないし…」
話の流れで、つい言わなくても良かったことまで言ってしまい慌てる。
途端に表情を険しくしたエルダとイヴァニエに焦りつつ、あわあわと弁明と弁解の言葉を付け足した。
「湖には落ちてないから、大丈夫だよ…!」
「……本当に、何もございませんでしたね?」
「うん!」
「…アニー、もしやバルドル様は、ずっと貴方を抱いていたのですか?」
「? うん」
「……そうですか」
「あの、えっと、バルドル様には、私が、小っちゃい子達とおんなじに見えてるみたいで…だから、ずっと、抱っこしてて、くれて…」
「そうだな。バルドル様にとっては、アニーもプティも、等しく愛しい子だ。愛でたいというお気持ちが強いんだろう」
同意してくれたルカーシュカの言葉に、安堵の息を吐く。それでも心配で、チラリとイヴァニエの様子を窺えば、困り顔で微笑む彼と目が合った。
「…すみません。少し過敏になってしまいました。アニーは、バルドル様に抱っこしてもらえて、嬉しかったですか?」
「…嬉しい…けど、でも、ちょっとだけ、困ったかもしれない…」
「ふふ、そうですか」
表情を和らげたイヴァニエにホッとしながら、話を再開する。
湖の上に浮かぶ建物から眺めた景色、湖面を撫でる風、初めて食べた果実の味。五感で感じたすべてを伝え、バルドル神と過ごした時間を語った。
毎日食事を摂っていることを褒められ、元気に過ごしていることを喜んでもらえて、頭を撫でてもらった。それが嬉しくて、嬉しくて…
「それから……」
他の大天使達について、バルドル神から教えてもらった───順調に話を進め、その話題に触れようとした刹那、喉の奥で声が詰まった。
話そうとしただけでドキドキと鳴り出した心臓は、自分の感情に正直で、鼓動に合わせて膨張し始めた緊張感に、コクリと息を呑む。
怖くはない。ただ、今まで彼らの話題に自分から触れることがなかったせいか、どうしても身構えてしまうのだ。
(……後で、話そうかな)
恐らく自分にとっても、彼らにとっても、重要な話になるはずだ。
気持ちを落ち着けて、最後に話すべきかもしれない…そんなことを考えていると、隣に座るルカーシュカに顔を覗き込まれた。
「アニー? どうした?」
「えっ、あ、うぅん…っ」
知らぬ間に俯いてしまっていた顔を上げ、背筋を伸ばす。
何も恐れることはない…そう自分に言い聞かせながら、大天使の話題を飛ばして、オリヴィアと友になったことを伝えた。
「えっと…それでね、オリヴィアと、お友達になったよ」
「…友、ですか?」
「うん。お話ししたり、してくれるの」
未だに『友』という関係が掴めていないが、仲良くしてもらえるのだということは分かった。
オリヴィアと仲良くなれるのは嬉しい。その喜びを混ぜて告げれば、三人とも笑みを浮かべてくれた。
「良い縁を結べたな」
「うん」
「…アドニス様にとって、オリヴィアは友なのですね?」
「うん!」
「…それは、良うございました」
「…?」
なぜかホッとした様子のエルダを不思議に思いながら彼を見つめていると、横からイヴァニエの手が伸びてきて、鎖骨を撫でた。
「オリヴィアとのことは喜ばしいのですが…そろそろコレについて、教えてもらえませんか?」
イヴァニエの指先が撫でた鎖骨の上、着けていることを忘れてしまうほど馴染んでいた首飾りの存在を思い出し、「あ」と声が漏れた。
「イヴァニエ、アニーが話してくれるまで待て」
「あ、い、今から、お話ししようと思ってたから、大丈夫だよ…!」
眉間に皺を寄せるルカーシュカを宥めつつ、羽を模した金の飾りにそっと触れた。
「えっと、これは、バルドル様がくれた物で───」
バルドル神から聞いたまま、言われたままの言葉を彼らに伝えた。
『鍵』と呼ばれる物で、自由に奥の宮に出入りできること、そこで自由に遊んでいいと言われたこと。
これを与えてくれたバルドル神の思い遣りと、せめて皆と同じ経験をと願ってくれた優しさと温もり。
それらの御心を一つも零してしまうことがないように、きちんと皆にも伝わるように、懸命に言葉を紡いだ。
そしてできることなら、バルドル神が「遊びにおいで」と言ってくれた願いを叶える為に、遊びに行きたい…その想いを切々と語った。
「『鍵』が使えるのは、自分だけだから、みんなは、入れないんだけど…でも、行く時は、オリヴィアがみんなの代わりに、一緒にきてくれるって、言ってくれてて…! だから、たまにでいいから、バルドル様の離宮に、遊びに行きたいなって…思って、るん、だけど…」
興奮気味に話したせいか、少しばかり息が上がっていた。はふりと息を吐きつつ、三人を見回せば、なんとも言えない表情を浮かべた顔が視界に映った。
「なるほど…うん…なるほどな…」
「アニーを一人でなんて…」
「私の代わりに、オリヴィアが…」
三者三様の沈んだ表情に、願ってはいけないことだっただろうかと縮こまる。
「ご、ごめんね。…でも、おいでって、言ってもらえて、嬉しかったから……」
「アニー、謝らないでいいんだよ。アニーが嬉しいことなら、俺達も嬉しいよ。ただちょっと……少し、心配なだけだ」
「…なにが、心配なの?」
「まぁ、色々な」
「…オリヴィアが、いてくれるよ?」
「…アドニス様、私を供に連れていって頂けないのでしょうか?」
悲しげに瞳を潤ませるエルダに、グッと拳を握り締める。昼間の懸念がそのまま現実となっていることに、胸が痛んだ。
「…ごめんね。オリヴィアと、小っちゃい子達以外は、入っちゃいけないみたいで……でも! あの、エルダが寂しくないように、ちょこっと行って、すぐ帰ってくるから…!」
「……はい」
(ど、どうしよう…)
瞳を伏せたまま、肩を落とすエルダ。その姿に、焦燥感がぐるぐると渦巻き始める。
悲しませたかった訳じゃない。寂しい思いをさせたい訳でもない。ただ、バルドル神から受け取った温かな御心も、大事にしたかった。
どちらも大切な存在だからこそ、両者に対して罪悪感が積もっていく中、隣から小さな溜め息の音が聞こえた。
「大丈夫だよ、アニー。アニーは、バルドル様のお気持ちが嬉しくて、だからこそ奥の宮に行きたいと思ってるんだよな?」
「……ぅん」
「うん。アニーが自分の意思で行きたいと思ってるなら行くべきだ。…そうだろう? エルダ」
「……はい」
「で、でも…」
「ずっと離れ離れになる訳じゃない。オリヴィアがアニーの側にいるのも、一時的なものだ。エルダも、それくらい分かってるはずだ」
「…はい」
ルカーシュカの言葉に、力無く頷くエルダに、ツキリとした痛みが胸を刺す。
もっと悲しませないで話すには、どうしたら良かったのか…後悔と共に押し寄せる不安に、次の言葉を探していると、ルカーシュカの手の平が指先を包み込んだ。
「ただな、アニー。オリヴィアが側にいるとはいえ、やっぱり心配だ。アニーは、すぐにでも奥の宮へ行きたいと思ってるのか?」
「う、うぅん」
「そうか。それじゃあ、行きたいと思った時は、まず俺達に教えてくれないか?」
「ちゃんと、言うよ…?」
「そうだな。アニーはいつもちゃんと教えてくれるもんな。これについては、俺達の方でも話し合いたい。少し時間をくれないか?」
「…うん。私は、大丈夫だから、お話しして?」
「ん、ありがとな」
淡く笑んでくれたルカーシュカに、ふっと体から力が抜けるも、チラリと見遣ったエルダの視線は下がったままで、目が合わない。
「エル───」
「アニー」
エルダに声を掛けようとして、横から体を抱き寄せられ、声が途切れた。
「イヴ?」
「アニー、本当に奥の宮に行くのですか?」
「…うん。行きたい」
「そんな…、私達がいないところで、何かあったら…!」
「イヴァニエ、オリヴィアがいる。必要以上に不安にさせるな」
「ですが…!」
剣呑な雰囲気に徐々に不安が込み上げる。
(バルドル様の所…行っちゃダメなのかな…)
だが「遊びにおいで」と言ってくれたバルドル神は、我が子の来訪を心待ちにしている『父』の顔をしていた。
エルダに寂しい思いをさせたくない。イヴァニエやルカーシュカを不安にさせたくない。
でも、バルドル神との約束を違えて、悲しませるのも嫌だ。
どちらかを選べば、どちらかが悲しむことになる選択に、心臓がドクリと嫌な音を立てた。
「ああ…アニー、ごめんなさい。そんな泣きそうなお顔をしないで下さい」
自分でも泣きそうな顔になっているのが分かる。
唇を引き結び、顔を隠すように俯けば、イヴァニエに強く抱き締められた。
「ごめんなさい。心配が過ぎましたね」
「…ん…」
背に回された腕に囲われている安心感から、また涙腺が緩みそうになるのをなんとか堪える。
掠れてしまった声を誤魔化すように、イヴァニエの胸元に顔を擦り寄せれば、チュッという音を立てて額に口づけが落ちた。
「まったく…すぐどうこうって話じゃないんだ。少し落ち着け。エルダもな」
「…はい」
ルカーシュカの落ち着いた声音に、室内の空気も元に戻っていく。
後で、もう一度きちんとエルダと話そう…そんなことを考えながら、気を緩めた時だった。
「アニー、お話しは終わりかな?」
「あっ、ま、まだ…!」
ルカーシュカに促され、ハッとする。一番大事な話を後回しにしていた。
(どうしよう……また、心配させちゃうかも…)
今の今で、この話をしてもいいものか…口籠ったままでいると、頭上から吐息と共に笑みを含んだ声が落ちてきた。
「アニー、大丈夫ですから、お話しして下さい」
間近で見つめたイヴァニエの瞳は凪いでいて、その表情にも嘘はないように見えた。
(…バルドル様の所に行くのとは違うから…大丈夫かな?)
他の大天使達と、会ってみたい───ほんの少しだけ湧いた勇気は、本当に些細な願いだと、自分が一番よく分かっていた。
大勢の大天使達の前に出られる訳じゃない。
いきなり会話ができるとも思っていない。
一対一で対面することだって無理だ。
ただちょっと、ほんの少しだけ、離れた所から眺めるだけでもいいから、近づいてみたい…そんな、ささやかな願望だった。
(どこかに行く訳じゃないし…みんなと一緒にいるのは変わらないし…)
隣にイヴァニエとルカーシュカ、エルダがいることを前提で想像しているが、不思議と想像で終わることはないだろうという確信があった。
皆と一緒にいる。それならば、バルドル神の離宮に一人で向かうほどの心配はされないのではないだろうか…そんな考えに、気持ちが上向いた。
「アニー? どうしました?」
「う、と…」
いつの間にか黙り込んでしまったのか、イヴァニエに声を掛けられ、慌てて頭の中に散らばっていた思考を掻き集める。
まだ残る緊張をコクリと飲み込むと、気持ちを固めた。
大天使達が自分に対して嫌悪や憎悪を抱いていないことは、彼らも知っているはずだ。それならば、きっと過剰に心配されることはないだろう。
(…大丈夫、だよね)
なにより、これまでずっと避けていた大天使達について、自ら口にすることで、皆の心配の種も減るのではないか…そんな淡い期待があった。
微々たる心境の変化だ。それでも、ほんの少しだけ成長した自分を、三人共喜んでくれるかもしれない───ほわりと浮き立った感情に、緊張感は薄れ、胸の鼓動も落ち着いていった。
「えっと…」
トクトクと鳴る心臓は、どこか誇らしげで、その音に背を押されるように、ゆっくりと口を開いた。
「バルドル様から、他の大天使様達について、聞いたの…」
もじもじと遊ぶ指先に視線を落としながら、言葉を続ける。
「みんな…もう、私のこと嫌いじゃないよって、教えてくださって……自分も、それはなんとなく、分かってて…」
静まり返った部屋の中、自分の声だけが響いた。
「アドニス…様と、自分は違うって…大天使様達も、知ってくれて…私も、みんなが怒ってた理由を、ちゃんと知れて……だから、もう、怖くなくて…」
怖くはないが、怯えはある。ただ今は、その気持ちには蓋をした。
「それにね、大天使様が、私のこと心配してるよって、バルドル様が、教えてくれて……だから、だからね」
残っていた緊張のせいか、まとまりのない発言になってしまったが、言いたいことは言えた。
達成感にも似た満足感が胸を満たす中、大きく息を吸い込むと、伝えたかった最後の一言を告げた。
「みんなが、自分のことを知ってくれたみたいに、私も、大天使様達のこと、ちゃんと知りたい。会って、お話ししてみた───」
勿論、イヴァニエとルカーシュカ、エルダと一緒に…
「───嫌ですッ!!」
そう続けるはずだった言葉は、静寂を割くような叫びによって掻き消された。
--------------------
全然大丈夫じゃなかったイヴァニエさん。
ここでささやかなお知らせです。
キャラ設定画その②の下に、イラスト倉庫を作りました。これまでお話の末尾に入れていたイラストについては、一定期間を置いた後、そちらに格納していこうと思います。
たまに格納し忘れるかもしれませんが、いつか思い出すはずですので、生温く見守って頂けましたら幸いです(*´∀` ;)
「申し訳ございません。とてもよくお休みでいらっしゃいましたので…」
バルドル神との対面を果たした翌日、朝の身支度を整えてもらいながら不満を漏らせば、エルダが眉を下げて微笑んだ。
バルドル神の離宮から帰ってきたのは、昨日の昼日中のことだ。
陽の光が燦々と降り注ぐ空は青く、ベッドに横になっても、きっと夕暮れ時には目が覚めるだろう、と眠い頭で思っていた。
ところが、次に目を開けた時、辺りはほんのりと薄暗く、それが早朝の部屋の空気だと気づいた瞬間、慌てて飛び起きた。
腕の中にいたはずのエルダの姿はなく、イヴァニエやルカーシュカもいない。
自分だけがポツンと取り残された部屋の中、半日以上眠ってしまったことに茫然としながら、ベッドの上に座り込んだ。
じっとしたまま耳を澄ませるも、隣室にも誰かがいる気配はなく、静けさの中になんともいえない寂しさが混じった。
もう一度眠ることもできず、温かな羽毛に包まって待つこと暫く、部屋の中が明るくなり始めた頃に、遠くで部屋の扉が開く音がした。
「失礼致しま───! アドニス様、お目覚めで…!」
どこか慌てた様子で駆け寄ってきたエルダに、置いてけぼりにされたような感覚から、勝手に頬が膨れた。
「アドニス様?」
「……どこ、行ってたの…」
つい漏れてしまった言葉は非難めいていて、即座に後悔するも、エルダは驚いたように目を見開いた後、なぜか嬉しげに表情を和らげた。
そこからはエルダに宥められ、あやすような声で甘やかされるまま、ぽつり、ぽつりと胸の内を呟き続け、今である。
「起きたら、みんな、いなかった…」
「ごめんなさい、アドニス様」
「…みんな、何してたの?」
「イヴァニエ様達とお話しをした後、私は自室に戻って休んでおりました」
「……自分も、お話ししたいって、言ったのに…」
「ええ、左様でございますね。忘れていた訳ではないのですが……本当にごめんなさい」
恨みがましい声が漏れるも、エルダは困り顔で微笑むだけだった。それでも謝罪する声は真摯で、だからこそ怒っている訳でも、非難している訳でも、ましてや謝ってほしい訳でもないことに、罪悪感が滲み出す。
「…ごめんなさい。起こさないでいてくれたのに…我が儘言って、ごめんね」
早い話が、拗ねていただけだ。
ルカーシュカ、イヴァニエ、エルダは、よく三人だけで話し込んでいることがある。そういう時は、大抵自分に関することを話していて、あえて聞かせないようにしているのだと、最近になってなんとなく分かるようになった。
それ自体はいいのだ。恐らく自分が聞いても分からないことか、三人が聞かせるべきではないと判断したことなので、彼らの会話に割って入るつもりはない。ないのだが…
(置いてけぼりは、寂しい…)
内緒の話に混ぜてくれとは言わない。ただせめて、「こっちでお話ししてるよ」ということだけでもいいから教えてほしいと思ってしまうのだ。
「アドニス様、そのお気持ちは我が儘などではございません。どうかそのように仰らないで下さいませ」
支度を整え終えたエルダが、両手をぎゅっと握り締めてくれる。
その表情は、爽やかな朝に似つかわしくない憂いを帯びていて、このまま悄気ていてはダメだと、僅かに残っていた寂しさは無理やり振り払った。
「…ごめんね。起きたら朝で…みんな、いなくて、びっくりしちゃって…」
「私もアドニス様がお目覚めになる前には戻るつもりだったのですが、遅くなってしまい……お寂しいお気持ちにさせてしまい、申し訳ございませんでした」
「もう、大丈夫だよ。大丈夫だから、エルダも謝らないで…?」
繋がっていた手を解き、まだ心配そうなエルダの体を抱き締めると、ふわふわとした髪の毛に指先を埋めた。
「おはよう、エルダ」
「…おはようございます、アドニス様」
腕の中の体温を閉じ込めるように、細い体をじっくりと抱き締める。毎朝の挨拶を告げ、ゆっくりと体を離せば、綺麗な顔に浮かんでいた翳りは消えていた。
「あーぅ!」
「んぁ」
「おはよう、みんな」
日課である朝のミルクを飲んでいると、ちらほらと赤ん坊達がやって来る。まだ眠いのか、小さな手で目を擦りながら、ソファーの上や絨毯の上に思い思いに寝転がった。
「ふあ……ふっ」
「ふふ、まだ眠いね」
膝の上に上体ごと頭を乗せ、大きく欠伸をする赤ん坊の背を撫でながら、甘いミルクを味わう。
いつもと変わらない、いつもと同じ一日の始まり。それが妙に新鮮に思えて、見慣れた室内をゆるりと見渡した。
(なんだか、変な感じ)
バルドル神の元を訪れた昨日が、いつもと違う非日常的な時間だったからか、妙にふわふわとした感覚が体に残っていた。
少しだけ落ち着かなくて、でも心地良い。そんな不思議な感覚に浸りながら、ミルクを飲む。
エルダが作ってくれた蜂蜜ミルクは安心の味がして、落ち着かない気持ちごと、ほぅっと息を吐けば、緩やかに自分がいつもの日常に溶け込んでいくのが分かった。と、そこでふとあることに気づき、室内の扉へと視線を向けた。
「…ルカとイヴ、来ないね」
いつもなら隣にいるはずの二人の姿が、まだない。
その疑問をそのままエルダに伝えれば、申し訳なさそうな返事が返ってきた。
「そのことなのですが、本日はお二人とも、朝はこちらには来られないそうで…」
「そうなの?」
「はい。その代わり、お昼過ぎにはこちらにいらっしゃるので、その後は長くご一緒に過ごせるはずです」
「…ん、分かった。教えてくれて、ありがとう」
今日はフレールの庭に向かう日なのだが、どうやらそちらにも二人は来れないらしい。
彼らがフレールの庭に同行できないことは、珍しいことではない。それでも昨日との差のせいか、いつも以上に寂しく思ってしまうことに少しだけ気持ちが沈んだが、即座に沈んだ気持ちを振り払うと、カップを持つ手に力を込めた。
(二人には、二人のやることがあるんだから)
自分がフォルセの果実としての役目を担うように、イヴァニエにはイヴァニエの、ルカーシュカにはルカーシュカの役目がある。そのことをきちんと胸に留めると、傍らに立つエルダを見上げた。
「エルダは、いてくれる…?」
「勿論でございます。私はアドニス様のお側を離れません」
「ふふ…ありがとう。じゃあ、今日はエルダもみんなと一緒に、フレールの庭で遊ぼうね」
普段は見守るように側に控えているエルダだが、もう少しだけ、気を緩めてくれてもいいと思う。
昨日の甘えん坊だったエルダのことを思い出し、言外に「赤ちゃんの姿になっていいよ」という気持ちを込めて伝えれば、翠色の瞳が僅かに揺れた。
「いえ、私は…」
「昨日、一緒にいられなくて、寂しかったでしょう? 私も寂しかったから、今日は昨日の分も、くっついてよう?」
「……畏まりました」
ほんのりと頬を染めながら、それでも頷いてくれたエルダ。
普段ならこうして誘っても「いけません」と断られてしまうのだが、すんなり了承してくれたということは、きっとまだ甘え足りなかったのだろう。
それがなんだか嬉しくて、ふへりと頬を緩めれば、膝の上や足元に集まった赤子達が、クイッと服の裾を引っ張った。
「あぅ、だ!」
「んあ」
「…みんなとも遊べなくて、寂しかったよ」
「あぶ!」
「そうだね。今日はいっぱい、遊ぼうね」
「ぼく達も寂しかったよ」と言わんばかりの眼差しは、ただただ愛しくて、ほわりと胸が温かくなる。
バルドル神との再会も、オリヴィアと結んだ友誼も、とても素晴らしく、喜ばしいものだった。
それでも、いつもと変わらぬ日常は、きっとそれ以上に特別で、ずっとずっと得難いものなのだろうと、深く実感した。
まったりと朝の時間を過ごすと、エルダと赤子達と共にフレールの庭へと向かった。
ポカポカとした陽気の中、双樹の根本に腰を下ろし、フォルセの果実を実らせると、次から次へと訪れる赤子達の小さな口の中に、赤い実を転がしていく。
楽しそうに飛び回る赤子達を眺め、時に頬や頭を撫でながら、穏やかな時間を満喫した。
膝の上には赤ん坊の姿になったエルダがちょこんと座り、ぴったりとくっついている。
時たまこちらを見上げる翠色は雄弁で、それに応えるように薔薇色の頬を撫でれば、気持ちよさげに目を瞑り、満足気に腹部に頬を擦り寄せた。
「エルダは可愛いね」
「……ん」
素直な反応は堪らなく愛らしく、綿毛のような髪の毛をそっと撫でれば、エルダが小さなおでこをグリグリと腹部に擦りつけた。
「ふふ、擽ったいよ」
「うー!」
「あぅあー?」
「みんなも可愛いよ」
照れるエルダの頭を撫でていると、周りに赤ん坊達が集まってくる。
「ぼくは?」「ぼくは可愛い?」と言いたげに小首を傾げる愛らしさに笑みを零しつつ、同じように頭を撫でれば、きゃっきゃっと楽しげな声が響いた。
───とその時、はたとあることを思い出し、「あ」と呟きが零れた。
(そういえば、今度からみんなと一緒に、バルドル様の離宮にも行けるようになったんだ)
この場で話したら、皆喜んでくれるだろうか?
ワクワクとした気持ちで口を開きかけ───瞬時に閉じた。
(……違う。エルダは、行けないんだ…)
バルドル神の離宮に入れるのは、『鍵』を持つ自分だけ。供をしてくれるのはオリヴィアだ。
昨日、数時間側を離れただけでも寂しがり、甘えん坊になってしまったエルダ。恐らく、いや確実に、このことを話したら、エルダはひどく寂しがり、落ち込むだろう。
(……今は、言わない方がいいかな)
腹部に抱きつくエルダに視線を落とし、口を結ぶ。
イヴァニエとルカーシュカもいる場で、きちんと話すべきかもしれない…うっかり口にしなくて良かった、とホッとしていると、不思議そうにこちらを見上げるエルダと目が合った。
「う?」
「…なんでもないよ」
すべらかな頬に両手を添え、まろい輪廓をふにふにと優しく押せば、翠の瞳が嬉しげに煌めいた。
眩しいほどの煌めきに頬が緩む中、不安にも似た焦りがこそりと顔を出す。
「遊びにおいで」と言ってくれたバルドル神の離宮へ、遊びに行きたいとは思っている。だがその為には、エルダとルカーシュカ、イヴァニエと一時的に離れなければいけない。
自分とて、寂しくない訳じゃない。側を離れる不安だってある。
それでも、純粋にバルドル神に会いたい。喜んでくれる顔が見たい。その為に、あの暖かな庭に行きたい…そう思ったのだ。
(…ちゃんと話せば、きっと大丈夫)
じわりと滲んだ不安を、期待のような願望で包み込むと、甘えるエルダと赤子達に向けて微笑んだ。
「ああ、起きたか」
「よく休みましたか?」
「ルカ、イヴ」
フレールの庭から自室へと戻り、休息の為に一眠りして起きると、イヴァニエとルカーシュカの姿があった。
寝室を出て、ソファーで寛ぐ二人にほてほてと近づけば、イヴァニエが立ち上がり、ぎゅうっと体を抱き締めてくれた。
「会いたかったです、アニー」
「…? 自分も、会いたかった」
「ふふ、嬉しいです」
まるで久方ぶりの再会を喜ぶようなイヴァニエの態度に首を傾げつつ、全身を包み込む温かな抱擁に身を任せる。
「アニー、昨日は寝てる間にいなくなってごめんな」
「…うぅん。起こさないでくれて、ありがとう」
イヴァニエの背後から顔を出したルカーシュカの言葉に、ふるふると首を振ると、彼が広げた腕の中に自ら収まった。
「エルダには拗ねるのに、俺達には拗ねてくれないのか?」
「す、拗ねてないよ…」
「そうか? もし言いたいことがあれば、いつでも言ってくれ。ちゃんと聞くから」
「…うん。ありがとう」
きゅうっと優しく抱き締められながら、白銀の髪に鼻先を寄せる。
彼らの内緒話については、また折を見て話してみよう。それよりも、今はこれから話すことの方が、もっと大事だろう。
(…伝えたいことは、ちゃんと伝えよう)
ルカーシュカの言葉に勇気をもらいつつ、二人の腕の中からゆっくりと体を離すと、ルカーシュカとイヴァニエの間に腰を下ろした。
「エルダは…」
「私はこちらで聞いておりますので、大丈夫ですよ」
先ほど赤ん坊の姿で存分に甘えた後だからか、心なしかいつもよりも一歩引いた態度のエルダだが、その表情は柔らかく、会話には加わってくれそうな雰囲気にホッとする。
「さて、それじゃあ、遅くなって悪かったが、奥の宮でバルドル様とどんな風に過ごして、どんなお話しをしてきたか、教えてくれるか?」
「うん…!」
微笑むルカーシュカの声は穏やかで、優しく手を引かれるような言葉に、それまでの小さな不安は瞬く間に姿を消した。
「んと…、どこからお話ししよう…」
「最初からでいいですよ。私達と別れてから、奥の宮で見たもの、感じたもの、なんでもいいから教えて下さい」
「うん!」
そうして言われるがまま、転移門から瞬時に移動した驚きから、奥の宮の独特の雰囲気、風景の違いまで、思い出せる限りを語っていった。
オリヴィアとどんな話をして、何を知ったか。バルドル神と対面した時、何を思い、どんな言葉を交わしたか。記憶を解いていくように丁寧に丁寧に話した。
たくさん褒めてもらえたこと、優しく笑ってくれたこと、バルドル神が安心してくれたこと、それらすべてが嬉しかったこと…自分が抱いた感情も言葉に変え、必死に記憶を紡いだ。
「それでね、お庭をお散歩しようってなって、バルドル様が、抱っこしてくれて…」
「…抱っこ、ですか?」
「えっと、自分が…靴、履いてなくて、危ないからって、抱っこして歩いてくださったんだよ」
「……そうですか」
「…やっぱり、神様に抱っこしてもらうの、ダメだった…?」
「いや、いいんだよ。イヴァニエは気にしなくていいから、続きを聞かせてくれ」
「う、うん」
少しだけ不穏な空気を感じながら、庭を散歩して、初めて船に乗ったこと、湖の美しさに見惚れ、湖面に触れたことを語った。
「途中で、船から落っこちちゃいそうになったんだけど───」
「なっ!?」
「あ、だ、大丈夫だよ! オリヴィアが、すぐに助けてくれたから、落ちてないし…! その後は、ずっとバルドル様に抱っこされてたから、危ないことはしてないし…」
話の流れで、つい言わなくても良かったことまで言ってしまい慌てる。
途端に表情を険しくしたエルダとイヴァニエに焦りつつ、あわあわと弁明と弁解の言葉を付け足した。
「湖には落ちてないから、大丈夫だよ…!」
「……本当に、何もございませんでしたね?」
「うん!」
「…アニー、もしやバルドル様は、ずっと貴方を抱いていたのですか?」
「? うん」
「……そうですか」
「あの、えっと、バルドル様には、私が、小っちゃい子達とおんなじに見えてるみたいで…だから、ずっと、抱っこしてて、くれて…」
「そうだな。バルドル様にとっては、アニーもプティも、等しく愛しい子だ。愛でたいというお気持ちが強いんだろう」
同意してくれたルカーシュカの言葉に、安堵の息を吐く。それでも心配で、チラリとイヴァニエの様子を窺えば、困り顔で微笑む彼と目が合った。
「…すみません。少し過敏になってしまいました。アニーは、バルドル様に抱っこしてもらえて、嬉しかったですか?」
「…嬉しい…けど、でも、ちょっとだけ、困ったかもしれない…」
「ふふ、そうですか」
表情を和らげたイヴァニエにホッとしながら、話を再開する。
湖の上に浮かぶ建物から眺めた景色、湖面を撫でる風、初めて食べた果実の味。五感で感じたすべてを伝え、バルドル神と過ごした時間を語った。
毎日食事を摂っていることを褒められ、元気に過ごしていることを喜んでもらえて、頭を撫でてもらった。それが嬉しくて、嬉しくて…
「それから……」
他の大天使達について、バルドル神から教えてもらった───順調に話を進め、その話題に触れようとした刹那、喉の奥で声が詰まった。
話そうとしただけでドキドキと鳴り出した心臓は、自分の感情に正直で、鼓動に合わせて膨張し始めた緊張感に、コクリと息を呑む。
怖くはない。ただ、今まで彼らの話題に自分から触れることがなかったせいか、どうしても身構えてしまうのだ。
(……後で、話そうかな)
恐らく自分にとっても、彼らにとっても、重要な話になるはずだ。
気持ちを落ち着けて、最後に話すべきかもしれない…そんなことを考えていると、隣に座るルカーシュカに顔を覗き込まれた。
「アニー? どうした?」
「えっ、あ、うぅん…っ」
知らぬ間に俯いてしまっていた顔を上げ、背筋を伸ばす。
何も恐れることはない…そう自分に言い聞かせながら、大天使の話題を飛ばして、オリヴィアと友になったことを伝えた。
「えっと…それでね、オリヴィアと、お友達になったよ」
「…友、ですか?」
「うん。お話ししたり、してくれるの」
未だに『友』という関係が掴めていないが、仲良くしてもらえるのだということは分かった。
オリヴィアと仲良くなれるのは嬉しい。その喜びを混ぜて告げれば、三人とも笑みを浮かべてくれた。
「良い縁を結べたな」
「うん」
「…アドニス様にとって、オリヴィアは友なのですね?」
「うん!」
「…それは、良うございました」
「…?」
なぜかホッとした様子のエルダを不思議に思いながら彼を見つめていると、横からイヴァニエの手が伸びてきて、鎖骨を撫でた。
「オリヴィアとのことは喜ばしいのですが…そろそろコレについて、教えてもらえませんか?」
イヴァニエの指先が撫でた鎖骨の上、着けていることを忘れてしまうほど馴染んでいた首飾りの存在を思い出し、「あ」と声が漏れた。
「イヴァニエ、アニーが話してくれるまで待て」
「あ、い、今から、お話ししようと思ってたから、大丈夫だよ…!」
眉間に皺を寄せるルカーシュカを宥めつつ、羽を模した金の飾りにそっと触れた。
「えっと、これは、バルドル様がくれた物で───」
バルドル神から聞いたまま、言われたままの言葉を彼らに伝えた。
『鍵』と呼ばれる物で、自由に奥の宮に出入りできること、そこで自由に遊んでいいと言われたこと。
これを与えてくれたバルドル神の思い遣りと、せめて皆と同じ経験をと願ってくれた優しさと温もり。
それらの御心を一つも零してしまうことがないように、きちんと皆にも伝わるように、懸命に言葉を紡いだ。
そしてできることなら、バルドル神が「遊びにおいで」と言ってくれた願いを叶える為に、遊びに行きたい…その想いを切々と語った。
「『鍵』が使えるのは、自分だけだから、みんなは、入れないんだけど…でも、行く時は、オリヴィアがみんなの代わりに、一緒にきてくれるって、言ってくれてて…! だから、たまにでいいから、バルドル様の離宮に、遊びに行きたいなって…思って、るん、だけど…」
興奮気味に話したせいか、少しばかり息が上がっていた。はふりと息を吐きつつ、三人を見回せば、なんとも言えない表情を浮かべた顔が視界に映った。
「なるほど…うん…なるほどな…」
「アニーを一人でなんて…」
「私の代わりに、オリヴィアが…」
三者三様の沈んだ表情に、願ってはいけないことだっただろうかと縮こまる。
「ご、ごめんね。…でも、おいでって、言ってもらえて、嬉しかったから……」
「アニー、謝らないでいいんだよ。アニーが嬉しいことなら、俺達も嬉しいよ。ただちょっと……少し、心配なだけだ」
「…なにが、心配なの?」
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「…オリヴィアが、いてくれるよ?」
「…アドニス様、私を供に連れていって頂けないのでしょうか?」
悲しげに瞳を潤ませるエルダに、グッと拳を握り締める。昼間の懸念がそのまま現実となっていることに、胸が痛んだ。
「…ごめんね。オリヴィアと、小っちゃい子達以外は、入っちゃいけないみたいで……でも! あの、エルダが寂しくないように、ちょこっと行って、すぐ帰ってくるから…!」
「……はい」
(ど、どうしよう…)
瞳を伏せたまま、肩を落とすエルダ。その姿に、焦燥感がぐるぐると渦巻き始める。
悲しませたかった訳じゃない。寂しい思いをさせたい訳でもない。ただ、バルドル神から受け取った温かな御心も、大事にしたかった。
どちらも大切な存在だからこそ、両者に対して罪悪感が積もっていく中、隣から小さな溜め息の音が聞こえた。
「大丈夫だよ、アニー。アニーは、バルドル様のお気持ちが嬉しくて、だからこそ奥の宮に行きたいと思ってるんだよな?」
「……ぅん」
「うん。アニーが自分の意思で行きたいと思ってるなら行くべきだ。…そうだろう? エルダ」
「……はい」
「で、でも…」
「ずっと離れ離れになる訳じゃない。オリヴィアがアニーの側にいるのも、一時的なものだ。エルダも、それくらい分かってるはずだ」
「…はい」
ルカーシュカの言葉に、力無く頷くエルダに、ツキリとした痛みが胸を刺す。
もっと悲しませないで話すには、どうしたら良かったのか…後悔と共に押し寄せる不安に、次の言葉を探していると、ルカーシュカの手の平が指先を包み込んだ。
「ただな、アニー。オリヴィアが側にいるとはいえ、やっぱり心配だ。アニーは、すぐにでも奥の宮へ行きたいと思ってるのか?」
「う、うぅん」
「そうか。それじゃあ、行きたいと思った時は、まず俺達に教えてくれないか?」
「ちゃんと、言うよ…?」
「そうだな。アニーはいつもちゃんと教えてくれるもんな。これについては、俺達の方でも話し合いたい。少し時間をくれないか?」
「…うん。私は、大丈夫だから、お話しして?」
「ん、ありがとな」
淡く笑んでくれたルカーシュカに、ふっと体から力が抜けるも、チラリと見遣ったエルダの視線は下がったままで、目が合わない。
「エル───」
「アニー」
エルダに声を掛けようとして、横から体を抱き寄せられ、声が途切れた。
「イヴ?」
「アニー、本当に奥の宮に行くのですか?」
「…うん。行きたい」
「そんな…、私達がいないところで、何かあったら…!」
「イヴァニエ、オリヴィアがいる。必要以上に不安にさせるな」
「ですが…!」
剣呑な雰囲気に徐々に不安が込み上げる。
(バルドル様の所…行っちゃダメなのかな…)
だが「遊びにおいで」と言ってくれたバルドル神は、我が子の来訪を心待ちにしている『父』の顔をしていた。
エルダに寂しい思いをさせたくない。イヴァニエやルカーシュカを不安にさせたくない。
でも、バルドル神との約束を違えて、悲しませるのも嫌だ。
どちらかを選べば、どちらかが悲しむことになる選択に、心臓がドクリと嫌な音を立てた。
「ああ…アニー、ごめんなさい。そんな泣きそうなお顔をしないで下さい」
自分でも泣きそうな顔になっているのが分かる。
唇を引き結び、顔を隠すように俯けば、イヴァニエに強く抱き締められた。
「ごめんなさい。心配が過ぎましたね」
「…ん…」
背に回された腕に囲われている安心感から、また涙腺が緩みそうになるのをなんとか堪える。
掠れてしまった声を誤魔化すように、イヴァニエの胸元に顔を擦り寄せれば、チュッという音を立てて額に口づけが落ちた。
「まったく…すぐどうこうって話じゃないんだ。少し落ち着け。エルダもな」
「…はい」
ルカーシュカの落ち着いた声音に、室内の空気も元に戻っていく。
後で、もう一度きちんとエルダと話そう…そんなことを考えながら、気を緩めた時だった。
「アニー、お話しは終わりかな?」
「あっ、ま、まだ…!」
ルカーシュカに促され、ハッとする。一番大事な話を後回しにしていた。
(どうしよう……また、心配させちゃうかも…)
今の今で、この話をしてもいいものか…口籠ったままでいると、頭上から吐息と共に笑みを含んだ声が落ちてきた。
「アニー、大丈夫ですから、お話しして下さい」
間近で見つめたイヴァニエの瞳は凪いでいて、その表情にも嘘はないように見えた。
(…バルドル様の所に行くのとは違うから…大丈夫かな?)
他の大天使達と、会ってみたい───ほんの少しだけ湧いた勇気は、本当に些細な願いだと、自分が一番よく分かっていた。
大勢の大天使達の前に出られる訳じゃない。
いきなり会話ができるとも思っていない。
一対一で対面することだって無理だ。
ただちょっと、ほんの少しだけ、離れた所から眺めるだけでもいいから、近づいてみたい…そんな、ささやかな願望だった。
(どこかに行く訳じゃないし…みんなと一緒にいるのは変わらないし…)
隣にイヴァニエとルカーシュカ、エルダがいることを前提で想像しているが、不思議と想像で終わることはないだろうという確信があった。
皆と一緒にいる。それならば、バルドル神の離宮に一人で向かうほどの心配はされないのではないだろうか…そんな考えに、気持ちが上向いた。
「アニー? どうしました?」
「う、と…」
いつの間にか黙り込んでしまったのか、イヴァニエに声を掛けられ、慌てて頭の中に散らばっていた思考を掻き集める。
まだ残る緊張をコクリと飲み込むと、気持ちを固めた。
大天使達が自分に対して嫌悪や憎悪を抱いていないことは、彼らも知っているはずだ。それならば、きっと過剰に心配されることはないだろう。
(…大丈夫、だよね)
なにより、これまでずっと避けていた大天使達について、自ら口にすることで、皆の心配の種も減るのではないか…そんな淡い期待があった。
微々たる心境の変化だ。それでも、ほんの少しだけ成長した自分を、三人共喜んでくれるかもしれない───ほわりと浮き立った感情に、緊張感は薄れ、胸の鼓動も落ち着いていった。
「えっと…」
トクトクと鳴る心臓は、どこか誇らしげで、その音に背を押されるように、ゆっくりと口を開いた。
「バルドル様から、他の大天使様達について、聞いたの…」
もじもじと遊ぶ指先に視線を落としながら、言葉を続ける。
「みんな…もう、私のこと嫌いじゃないよって、教えてくださって……自分も、それはなんとなく、分かってて…」
静まり返った部屋の中、自分の声だけが響いた。
「アドニス…様と、自分は違うって…大天使様達も、知ってくれて…私も、みんなが怒ってた理由を、ちゃんと知れて……だから、もう、怖くなくて…」
怖くはないが、怯えはある。ただ今は、その気持ちには蓋をした。
「それにね、大天使様が、私のこと心配してるよって、バルドル様が、教えてくれて……だから、だからね」
残っていた緊張のせいか、まとまりのない発言になってしまったが、言いたいことは言えた。
達成感にも似た満足感が胸を満たす中、大きく息を吸い込むと、伝えたかった最後の一言を告げた。
「みんなが、自分のことを知ってくれたみたいに、私も、大天使様達のこと、ちゃんと知りたい。会って、お話ししてみた───」
勿論、イヴァニエとルカーシュカ、エルダと一緒に…
「───嫌ですッ!!」
そう続けるはずだった言葉は、静寂を割くような叫びによって掻き消された。
--------------------
全然大丈夫じゃなかったイヴァニエさん。
ここでささやかなお知らせです。
キャラ設定画その②の下に、イラスト倉庫を作りました。これまでお話の末尾に入れていたイラストについては、一定期間を置いた後、そちらに格納していこうと思います。
たまに格納し忘れるかもしれませんが、いつか思い出すはずですので、生温く見守って頂けましたら幸いです(*´∀` ;)
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