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プティ・フレールの愛し子
87 *R18*
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シュルリ───軽やかな衣擦れの音が聞こえたのと同時に、ふっと腰の辺りが緩んだ気配がして、ハッとして視線を落とした。
「…ッ! ま、まって…っ、ルカ…!」
反射的に下げた視線の先では、案の定ルカーシュカの手が腰紐の端を掴んでいて、慌ててその手を押さえる。
ルカの発言や行動から、性行為を求められているのは分かったが、それにしてもいきなり過ぎて、焦りと動揺が先に立ってしまった。
「ル、ルカ…? …え、えっちなこと…するの…?」
「うん。したいな」
「き…っ、急に…どうし…」
「…ダメか?」
「ダ、メじゃないけど…」
一体何が彼の琴線に触れたのか。あまりにも率直に求められ、落ち着かなさから視線が彷徨った。
先ほどまで膝枕をしていた穏やかな空気から一変、突然雄の顔になったルカーシュカの豹変ぶりに戸惑うも、ドキドキと高鳴る胸は正直だった。
「イヴァニエとは、エッチなことしたんだろう?」
「う……し、した…けど…」
「うん。じゃあ、俺ともエッチなことしてほしいな」
「…っ!」
そう言って小首を傾げるルカーシュカに、キュンと胸が鳴る。
いつもと雰囲気が違うせいか、それとも甘えるような声の響きのせいか、ルカーシュカであることは変わりないのに、どうしてか妙にドキドキしてしまう。
(え、えっちなことするのは…いいけど、でも…っ)
ともすればこのまま流され、頷いてしまいそうな自分を慌てて引き止めると、握っていたルカーシュカの手をやんわりと押し返し、こちらを見つめる瞳を真っ直ぐ見つめ返した。
「こ、ここじゃ、ダメ…!」
込み上げる恥ずかしさをグッと堪え、唇を引き結ぶも、対するルカーシュカからはキョトンとした表情が返ってきた。
「なんでだ?」
「だ…だって、ここ…外…!」
そう、外なのだ。上を見上げれば青空が広がる、紛う事なき屋外。
まさかそんな場所で性行為を求められるとは思わず、そのせいで余計に動揺してしまった。
自分の主張はそうおかしいことではないはず…そう思うのに、なぜかルカーシュカの表情は不思議そうなままだった。
「外と言えば外だが…結界を張ってるから、上から覗かれることもないし、誰かが通ることもないぞ?」
「で、でも、…や…!」
「…誰にも見られないのに?」
「だって…お、お部屋からも、見える…っ」
「誰も入ってこないよ」
「で、でも…でも……だって…!」
あまりにも開放的すぎるのだ。
すぐそこでサワサワと草木の揺れる音が聞こえる空間は、周囲からの視線を遮断する物が無い。
確かに離宮の中と言えば中で、他の誰かに見られることはないのかもしれないが、駆け回れそうなほど広い庭の真ん中で、ましてや陽の光が燦々と差し込む中で、どうして裸になれるだろう。
性行為云々の前に、ただただ純粋に恥ずかしい───その気持ちを滲ませ、睨むようにルカーシュカを見つめるも、その表情は柔らかに微笑んでいるだけだった。
「アニーは恥ずかしいんだな?」
「うっ…、だ、だって…」
「いや、良かったよ。アニーもちゃんと、裸を見られるのは恥ずかしいっていう感覚があって、安心した」
「…? なんで…? ちゃんと、ある…っ、あっ、や…、ルカ…!」
一応それくらいの羞恥心はある…と唇を尖らせた一瞬の隙を突かれ、緩んでいた腰紐は簡単に解かれてしまった。
ハラリと解けた合わせを慌てて手で押さえるも、今度はその手を取られ、隠す物の無くなった素肌はルカーシュカの前に呆気なく晒された。
「ああ……綺麗な体だ」
「や、やぁ…っ、やだ!」
うっとりと呟かれた声と共に向けられた視線は、はだけた胸元や腹部に注がれていて、途端に溢れ出した羞恥が体内を駆け上った。
「や、やだ! お外やだ…!」
「部屋の中も外も、ここでは一緒だよ」
「ひぅっ」
ルカーシュカの低い声が鼓膜を揺らし、同時にチュッと首筋に口づけられ、体が跳ねる。
外という場所のせいか、いつも以上に恥ずかしく感じてしまうそれに、つい声に泣きが混じった。
「なんで…っ、お外やだって…言ってるのに…、なんでぇ…っ」
いつものルカーシュカなら、自分の嫌がるようなことは絶対にしない。それがなぜだか今日は意地悪で、まだ何もされていないのに、目尻には涙が滲んだ。
「可愛いよ、アニー」
「やだ…っ、ルカ…!」
「…此処でしたい」
「…っ!」
囁くように紡がれた言葉に、ドキリと胸が鳴った。
「ダメ? お外でエッチなことされて、恥ずかしがってるアニーがたくさん見たいな」
「ぅ……っ」
「…アニー? ダメ?」
「うぅ…っ」
(ず、ずるい…! そんな言い方されたら…!)
…断れない。
許してはいけないのに、その声音に多分に含まれた「ダメ」と言って跳ね除けられない愛らしさに、ぐぅ…と小さく唸った。
いつものルカーシュカの雰囲気とは違った顔に戸惑うも、甘えているようなその仕草と声の響きに、ドキドキと心臓は脈打ち、自分の意思がふにゃふにゃと溶かされていくのが嫌でも分かった。
「可愛いアニーをいっぱい見せて?」
「んぐっ…」
「ね?」
「~~~っ、……ほ…本当に、誰にも、見られない…?」
「見られないし、見せないよ」
「…ルカだけ…? 恥ずかしいの、本当に…他の人に、見られない…?」
「俺だけだよ。アニーの恥ずかしくて可愛い姿は、俺しか見ない」
「…っ」
「…此処で、エッチなことしてもいい?」
「…うぅ…っ」
ダメと言えない───迫り上がるような羞恥を飲み込み、震えながらコクリと小さく頷けば、一瞬だけルカーシュカの微笑みが途切れ、直後に嬉しげに破顔した。
「ふっ…、ありがとう。嬉しいよ、アニー」
「ん…っ」
ゆっくりと互いの唇が重なり、掴まれていた両手が離される。それと同時に、体を隠していた布をすべて除けられてしまった。
「くぅ…っ」
全身を陽の下に晒す背徳感に、ぶるりと肌が粟立つ。
改めて外の世界で裸になっていることを実感し、意味もなくモジモジと左右の足が絡み、忙しなく心臓が脈打った。
あまりの恥ずかしさから喉の奥で小さな悲鳴が漏れるも、その声はルカーシュカの咥内に飲み込まれ、消えていく。
口の中に入り込んだ舌が優しく口の中を撫で、ぞくりとしたものが背中を抜ける。羞恥と混じったその感覚に、堪らずルカーシュカの体を押し返せば、意外にもあっさりと唇は離れていった。
「ふはっ……は…」
「……アニー、可愛いからって、なんでも許してたらダメだぞ」
「…?」
苦笑気味のルカーシュカにパチリと目を瞬くも、その表情はいつもの彼に戻ったようで、少しだけホッとする。
「本当に…愛らしすぎるのも困りものだな」
「んっ…」
独り言のようにポツリと零れた声に反応する間もなく、頬や目元に唇が落ちた。
チュッ、チュッと啄むような口づけが擽ったくて、キュッと唇を結ぶも、優しいその感触に少しずつ体から力が抜けていく。
少しずつ口づけの位置が変わり、首筋、鎖骨、胸元へと移っていく動きに、覚えたばかりの刺激を思い出し、それだけでフルリと肌が震えた。
「ふ……ん…」
イヴァニエに胸を弄られた時の感覚を思い出し、ドキドキと心臓が鼓動するも、両胸の間に唇が触れたところでルカーシュカは上体を起こし、体は離れていってしまった。
「…?」
「可愛い顔して……エッチなことしてほしくて堪らないって顔だな、アニー」
「うぇっ!?」
思考を読まれたような指摘に、ボッと顔に熱が集まる。まるでいけないことがバレてしまったかのような後ろめたさと、言葉にし難い羞恥に、堪らず両手で顔を覆った。
「あぅ…」
「アニー、可愛い顔を隠したらダメだろう?」
「や…っ、だ、だって…!」
「…イヴァニエとの行為を思い出したんだろう?」
「…っ!」
両手を取られ、真っ赤に染まった顔を隠す手段を取り上げられてしまい、咄嗟に視線を逸らすも、続いた言葉にピクリと体が揺れた。
「恥ずかしがらなくていい。覚えたばかりのことを思い出すのは当然だよ。…アニーは、エッチなことしたくないか?」
「……うぅん…」
「…いやらしいこと、していい?」
「……う…」
直接的な問いに頬がまた熱くなるが、ルカーシュカに触れられることも、恋人として繋がることも素直に嬉しいと思う。
こちらを見つめるルカーシュカを見つめ返し、こっくりと頷けば、淡い微笑みが返ってきた。
「じゃあ、アニーがしてほしいことしてあげるな。アニーはどうしてほしい? 教えて?」
「ひゃ…うっ…」
両手を掴んでいた手が離れ、ルカーシュカの唇が再び肌を啄む。唇の端や、喉元に触れるだけのキスを受けながら、ルカーシュカの細い指先が脇腹を撫で、背筋に痺れが走った。
「んや…っ」
擽ったさとは違うそれに腰を捩るも、それで逃げれるはずもなく、サラリと落ちたルカーシュカの髪の毛が肌の上を滑る感触に、勝手に胸の突起が反応し始める。
「んっ……ん…っ」
「イヴァニエは何をしてくれた? アニーは、どうしてほしい?」
「ふっ…ふぅ…」
これは恐らく、答えない限りずっとこのままなのだろう。
今までの経験から少しずつ学んで覚えた流れに、つい逃げ出したくなるも、このまま黙っていても更に恥ずかしい思いをするだけだ。
自ら『えっち』を望むことの恥ずかしさは慣れないが、グッと気合を入れると、はくりと息を吐いた。
「あ、あの…」
「うん」
「…お、お胸……、触って…っ」
「うん、触ってるぞ?」
「んっ」
その言葉と同時に、ルカーシュカの両手が左右の乳房を包むように寄せ上げた。
元から緩やかな山を描いていた胸部だったが、寄せられたことで浅い谷間ができ、その小さな谷間に向かって、ルカーシュカが鼻先を近づけた。
「あ…」
「…アニーの胸は柔らかいな」
「や…っ」
ポツリと呟かれた声が吐息となって肌を擽る。たったそれだけふるりと身が震えるも、肝心な部分には触れないまま、乳房への優しい口づけが続いた。
「ん…っ、や……ルカ、…ちがう…ちがくて…っ」
「何が違うんだ?」
「そこじゃ、なくて…お胸って…」
「うん、そこじゃなくて?」
「んぅ…っ」
胸に口づける唇の柔らかさは、それだけでも気持ち良くて腰が揺れるが、同時にもどかしくて堪らない気持ちにさせた。
あえて胸の粒を避けた愛撫をされているのは明白で、触れそうで触れないギリギリの位置に唇が触れ、戯れのように舌先で薄皮を舐められる感触に、堪らずイヤイヤと首を振った。
「ちが…ちがうの…っ、お胸ちがう…っ」
「胸じゃないのか? じゃあどこがいい?」
「あっ…、そ、じゃなくて…!」
チュッと小さなリップ音を響かせ、ルカーシュカの唇が離れていく。
きちんと伝えなければ触ってもらえない状況に、小さく唸りながら胸元に視線を向ければ、自身の胸越しにルカーシュカと目が合った。
「睨んでるつもりだろうけど、可愛いだけだぞ?」
「うぅ~っ」
クスリと笑うルカーシュカの楽しそうな様子に、知らず頬が膨れる。
瞬間、ルカーシュカがハッとしたような表情になるも、それよりも速く、自分の体の方が動いていた。
左右の胸に添えられたルカーシュカの手を取り、無理やり持ち上げると、指先を握り、自身の胸の粒へと押し当てた。
「ここ…っ!」
「───」
彼のサラリとした指先が小さな粒に触れただけで、なんとも言えない感覚が走った。
温かな指が触れているだけで、体は勝手に『気持ち良い』と信号を発し、声が漏れそうになるも、なんとか耐える。
(これなら、意地悪されない…!)
言ってはいないが、触れてほしい部位はちゃんと伝えた。
「どうだ!」と胸を張る代わりに捕まえたルカーシュカの手をぎゅうっと握り締めれば、なぜか呆けたまま固まっていたルカーシュカがハッとしたように体を揺らした。
「アニー……はぁ……お前は本当に…恥ずかしいの基準が分からんな…」
「…う?」
はぁ、と息を吐くルカーシュカの体からゆるゆると力が抜けていくのが分かり、それに合わせて彼の手を握り締めていた自身の手の平からも力が抜けていく。
それを見計っていたかのように、握っていた手を逆に握り返され、ついと視線を上げれば、困り顔で微笑むルカーシュカと目が合った。
「…ごめん。意地悪しすぎた」
そう告げたルカーシュカに抱き締められ、その温もりと声の響きに、安心感からほぅっと息が漏れる。
「…ちゃんと…触ってって、できたよ…?」
「そうだな。偉いぞ、アニー」
「ん…」
「良い子」と褒めるように、抱き締められたまま柔らかなキスを受け、ふわふわとした心地良さに包まれる。
優しい感触が気持ち良くて、褒めてもらえたのが嬉しくて、とろりと体から力が抜けるも、不意に胸元を手の平が滑る感触がして肩が跳ねた。
「あっ…」
「アニーのしてほしいこと、してあげるからな」
「ん……」
改めてそう言われ、一瞬どこかに放り出していた羞恥心がじわじわと戻ってくる。
よくよく考えなくても、自ら胸への愛撫を強請ってしまった訳だが、それに対して恥ずかしがっている余裕はすぐになくなった。
「あ…っ」
胸全体を撫でていた手の平が徐々に移動し、指先がピンと勃っていた突起を優しく転がした。
ゆっくりと円を描くような指先の動きに合わせ、ゾクゾクとした疼きが生まれ、喉が戦慄く。
焦らされ続けていたせいか、それとも二度目の性行為だからか、イヴァニエの時よりも更に強く感じる快感に、堪らず身を固くした。
「んん…っ」
「そんなに緊張しなくていい。口を開けて…そう、ゆっくり呼吸しような」
「はぁ……はぁ……あっ…」
「…気持ち良いか?」
「ん…、…ん…っ」
さわさわと撫でられているだけなのに、どうしてこんなに堪らない気持ちになるのか…訳も分からないまま、コクコクと頷けば、ルカーシュカがふっと表情を和らげた。
「アニー、気持ち良い時は、気持ち良いって言ってほしいな」
「っ…! …ぅ…きもちぃ…っ」
「うん、よくできました」
「あっ!」
褒めてもらえたことにほわりと気が緩んだのも束の間、ルカーシュカが視界から消えたと思った直後、熱く湿ったものに胸の先端を覆われ、ビクリと体が跳ねた。
「ひ…っ、あぁ…っ」
固くなった粒をルカーシュカの口の中で転がされ、熱い舌で舐め上げられる感覚に、勝手に声が零れた。
乳輪ごと味わうような舌の動きと、唾液が絡んだぬるぬるとした感触に腰は疼き、口からはひっきりなしに嬌声が漏れた。
「や…っ、ダメ…、ルカ…!」
「気持ちいいだろう?」
「ひぅ…あ……きもち…っ、きもちぃ…っ」
ルカーシュカの口の中から、控えめな水音が響くたび、胸の突起は悦び、腰回りが重くなっていく。
優しく体を抱き締める体温と、胸元に感じるルカーシュカの吐息。覚えのある感覚と共に溢れる愛しさに、キュッと股を締めれば、股間部に違和感を感じ、カァッと頬が熱くなった。
(ま、また…っ)
頭をもたげたソレが視界に入り、羞恥から無意識の内に下半身をくねらせれば、異変に気づいたルカーシュカが顔を上げた。
「どうした?」
「あ…や…、あ、あの…っ」
「…ああ、ちゃんと気持ち良いんだな」
「や…っ、やぁ…!」
ルカーシュカの視線が、下半身へと注がれる。
下着からぴょこんと顔を出したそれは丸見えで、恥ずかしさから堪らず手を伸ばして膝を立てれば、ルカーシュカが体を起こした。
「お胸は気持ち良かったか?」
「……ん」
「良かった。…なぁ、アニー」
「ん…?」
「イヴァニエには、ここも可愛がってもらったのか?」
「…っ」
『ここ』と言いながら、股間を押さえた手にルカーシュカの手が重なり、何を聞かれているのか即座に理解する。
どう答えるべきか一瞬躊躇うも、誤魔化すなんて難しいことができるはずもなく、じわじわと熱くなっていく体に耐えながら、コクンと小さく頷いた。
「……ぅん」
「そこだけか?」
「…ん?」
「胸と股間だけか? 他に、イヴァニエにされたことはないか?」
「…ほか…?」
ルカーシュカの質問の意図が分からず、首を傾げるも、イヴァニエとの行為を思い出すように記憶を手繰り寄せる。
(…お胸と……おちんちん以外…)
記憶に残る淫行にドキドキするも、胸と股間以外と言えば、たくさんキスをしただけで、それ以外のことをされた覚えはない。
「いっぱい、ちゅーした…」
「ふふ、そうか」
ルカーシュカが笑ってくれたことで、縮こまっていた手足からゆるりと力が抜けるも、答えると同時にルカーシュカが腰を浮かせ、立ち上がろうとするので、ギョッとして慌てて手を伸ばした。
「やっ…、やだ! どこ行くの…!?」
「どこにも行かないよ」
返ってきた苦笑気味の言葉通り、位置を少し変えただけで、ルカーシュカがどこかに行ってしまうことはなかった。
ただ、なぜか立てた膝の向こう側に移動してしまい、遠くなったその距離に不安が募る。
「ルカ…?」
「今日はもう少しエッチなことを覚えようか」
「え…、っ…わ…!?」
立てた膝を持ち上げられ、浮いた腰の下にクッションが敷かれた。そのままルカーシュカの足の間に臀部が収まり、彼からは下半身が丸見えの状態になる。
「ひゃっ…やっ、な、なに…!?」
「アニーはお尻も可愛いな」
「や、やっ…イヤ…!」
信じられない状態に、これ以上ないほど顔が熱くなるも、太腿に添えられた手に動きを封じられ、どうすることもできない。
手で隠そうにも届かず、無理に動かそうとすると足がルカーシュカに当たりそうで怖い。半泣き状態で唸っていると、顔がよく見えない状態で、ルカーシュカの声だけが聞こえてきた。
「アニー、少しお勉強をしようか」
「へ…?」
「前に、男同士でどうやって性交をするのかって、聞いてきただろう?」
「え…う、うん…?」
今の状況に似つかわしくない穏やかな声に、パチパチと目を瞬く。
ルカーシュカの雰囲気が元に戻ったからか、安心感はあるものの、下半身を曝け出した状態で続く会話に、戸惑うばかりだった。
「生殖行為としての性交については、知ってるんだな?」
「う…うん」
「うん、じゃあそれを踏まえた上で簡単に説明すると……男同士の場合は、ココを使うんだよ」
「…? ふやっ!?」
言葉と共に、あらぬ所に指が入り込み、ビクリと足先が跳ねた。
臀部の柔らかな肉の間にゆっくりと沈んだ指が、その奥にある窄まりをチョン、と突いたのだ。
自分で触ったことも、見たこともない恥部に初めて触れられ、羞恥と驚きで言葉が出てこない。
「ふえ…しょ…そ、そこ…え?」
「うん、ココだよ」
「わっ! やっ…!」
ルカーシュカの細い指先が、クニクニと小さな孔を優しく撫でる。そのなんとも言えない感覚に、浮いた足がパタパタと宙を蹴った。
「うぅ~…」
「…嫌か?」
「や…じゃ、ないけど……なんか、変…」
「…嫌ではないんだな?」
「……うん」
「良かった。…変なのは、少しずつ慣れていこうな」
「…う…」
言葉を交わしている間も、やわやわと窄まりを撫でる指先は止まらない。
擽ったいのかすら分からない感覚と恥ずかしさに、ふるりと身が震えるも、不思議と嫌だとは思わなかった。と同時に、ある疑問が浮かび、見えないルカーシュカを探すように、視線を彷徨わせた。
「ルカ…」
「どうした?」
「お尻…そこ…小っちゃいから…おちんちん入んないよ…?」
「………そうだな。うん……その通りなんだが…アニーが言うと、なんでも危うくなるな…」
「…?」
「なんでもないよ。…今のままじゃ、確かに入らないな。だから少しずつ、慣らしていくんだよ」
「慣らす…? うひゃっ!?」
瞬間、股が濡れるような感覚がして、ピッと全身が強張った。トロリと垂れたそれは、蜂蜜のようなとろみがあるのが肌を流れる速度で分かった。
臀部の隙間を伝うように垂れたそれが、ルカーシュカの指を伝い、ゆっくりと小さな孔を濡らしていく。
ぬるりとした液体を塗り込むように、ゆるゆると動く指の動きに、か細い悲鳴が漏れた。
「ひぅっ…、や、な、な、なに…?」
「潤滑用の蜜だよ。これを塗っておかないと指が入らないし、痛くなっちゃうからな」
「い…痛いの…?」
「痛くならないように、塗ってるんだよ」
「……指、入れるの…?」
「うん。そうやって少しずつ、アニーの可愛いお尻を柔らかくしていくんだ」
「…そしたら…おちんちん入るの…?」
「………そうだよ」
何故か苦笑気味の返事を聞きながら、少しずつ慣れてきた感覚に、体の力を抜く。
恥ずかしい気持ちは変わらないが、ぬるぬると孔を撫でる感覚は少しだけ気持ち良く、吐息に混じって甘さを含んだ声が漏れた。
「ふ……ぅ……」
「アニー、少しだけ、指を入れるからな。痛いと思ったら言うんだぞ」
「ん…」
緊張を孕んだルカーシュカの声に、体は強張り、羞恥とは異なる鼓動で心臓がドキドキしたが、にゅくり…と僅かに入り込んだ指先は、思っていたような衝撃もなく、少しだけ安堵した。
「大丈夫か?」
「うん…」
「…なるべくゆっくりするけど、痛かったら言うんだぞ?」
「ん…!」
コクコクと頷けば、ゆっくりと後孔への愛撫が始まった。
緊張からか、ぬくぬくと指が動くたびに息が詰まり、無駄に全身が力んだが、それも時間が経つにつれ、少しずつ緩んでいくのが分かった。
ルカーシュカの細い指が太く思える異物感と、ほんの少しの苦しさに、始めは耐えるばかりだったが、それも徐々に徐々に薄れ始め、気づけば体がじんわりと熱を帯び始めていた。
「…指一本、全部入ったぞ」
「…はぇ…?」
「大丈夫か?」
「ふっ……う…」
ゆっくりと抜き差しされる指に、頭がぼんやりとしてくる。丁寧な手つきのおかげで痛みはなく、苦しさも消えた今、感じるのは擽ったいような気持ち良さだけだった。
恥ずかしさよりも、体の中にルカーシュカの温かな指が入っていることが気持ち良くて、ふわふわとした愛しさが込み上げた。
(……ルカ…)
触られているのに、触れない───彼の体温が伝わるからこそだろうか、愛しい気持ちが募るほど、ほんの少しだけ離れているこの距離が寂しくて、届かない手がもどかしくて、だんだんと切なくなってきた。
「柔らかい内に、もう少しだけ慣らそうか。もうちょっとだけ、頑張ろうな」
「え…」
(まだ、やるの…?)
慣らし行為が始まって、どれくらいの時間が経っただろう。じっくりと時間を掛けてもらったおかげで痛みは微塵もなく、気づけば体は火照り、汗が滲んでいた。
気持ち良いのに、温かいのに、安心していいはずなのに───近くにいるのにルカーシュカに届かない手が心細くて、急速に寂しさが膨れていく。
「ふあっ…あっ、やだ…!」
直後、太さを増した指がグッと入り込む感覚に、爪先がパタパタと暴れた。
怖い訳じゃない。痛い訳でもない。
ただ、触れているのに離れていないのが悲しくなってしまったのだ。
「ルカ、やだ…!」
「…! 悪い、急すぎたな。もっとゆっくり───」
「ちがうの…っ、ちがうくて…!」
焦ったような声を遮るように言葉を返し、股を開くと、向こう側にいるルカーシュカに向けて両手を伸ばした。
「やだ…! ルカ…遠いのやだ…っ」
「…!」
「ルカが遠いのやだ…っ」
一度寂しいと思ってしまったら、もうダメだった。
本能のまま、駄々をこねるように零れる声を抑えられず、届かない手を必死に彼まで伸ばせば、下半身に触れていた指先や腰を支えていた手が、パッと離れた。
直後、伸ばした両腕の間にルカーシュカの体が収まり、押し倒すような勢いで全身を抱き締められ、キュウゥッと胸が締め付けられた。
「ふ、ぅ…っ」
「本当に……アニーは可愛いな」
瞬間的に満たされた体と心に、涙が出そうなほど嬉しくなる。反射的に両腕はルカーシュカの背に回り、両足はその身に絡みついた。
ぎゅうぎゅうとしがみつく力に比例するように、ルカーシュカの腕の力も強くなる。
苦しいほどの締め付けと、ぴたりと重なった互いの体から伝わる体温が、今はただひたすらに愛しかった。
「今日のエッチはここまでにしようか」
「……ん」
「お尻、触られるのは嫌じゃないか?」
「…ヤじゃない…」
「それなら良かった。…これから少しずつ、慣らしていこうな」
「…うん」
「うん、良い子。…じゃあ今日は、残りの時間はずっとくっついていようか」
「うん…!」
自分よりも小柄なルカーシュカの肉体を包み込むように抱き締めれば、それだけで安心感で胸が満たされる。
そうして安堵の息を吐きながら、落ち着きを取り戻し始めた頭で、途中で行為を止めてしまったことを詫びた。
「…ごめんね。次は…もっと、えっちできるように、頑張るね」
「ふ…ありがとう。でも、急がなくていいよ。…ゆっくり慣らして、いつか一緒にエッチしような」
「ん…!」
唇が触れ合うだけのキスを繰り返しながら抱き締め合い、鼻先を掠めるルカーシュカの香りを目一杯吸い込む。
体の内側からも満たされるような香りにホッとしつつ、ルカやイヴと繋がるには、彼らを受け入れられるように、自分の体を整えなければいけないことを初めて自覚した。
(…えっちできるように、頑張ろう)
恥ずかしいし、体がおかしくなるし、ドキドキするけれど、ちゃんと彼らと繋がりたい───その為に、これからは自分も頑張ろう…と人知れず決意した。
(…お尻、自分で触ったらいいのかな…?)
後でルカーシュカに聞いてみよう…そんなことを考えながら、胸元に擦り寄る彼の柔らかな髪に頬を擦り寄せ、足を絡ませた体を一層深く抱き締めた。
その後、暫く経ってようやく濡れた下半身で抱き着いていたことを思い出し、声にならない悲鳴を上げるのだった。
--------------------
無自覚だいしゅきホールド。
「…ッ! ま、まって…っ、ルカ…!」
反射的に下げた視線の先では、案の定ルカーシュカの手が腰紐の端を掴んでいて、慌ててその手を押さえる。
ルカの発言や行動から、性行為を求められているのは分かったが、それにしてもいきなり過ぎて、焦りと動揺が先に立ってしまった。
「ル、ルカ…? …え、えっちなこと…するの…?」
「うん。したいな」
「き…っ、急に…どうし…」
「…ダメか?」
「ダ、メじゃないけど…」
一体何が彼の琴線に触れたのか。あまりにも率直に求められ、落ち着かなさから視線が彷徨った。
先ほどまで膝枕をしていた穏やかな空気から一変、突然雄の顔になったルカーシュカの豹変ぶりに戸惑うも、ドキドキと高鳴る胸は正直だった。
「イヴァニエとは、エッチなことしたんだろう?」
「う……し、した…けど…」
「うん。じゃあ、俺ともエッチなことしてほしいな」
「…っ!」
そう言って小首を傾げるルカーシュカに、キュンと胸が鳴る。
いつもと雰囲気が違うせいか、それとも甘えるような声の響きのせいか、ルカーシュカであることは変わりないのに、どうしてか妙にドキドキしてしまう。
(え、えっちなことするのは…いいけど、でも…っ)
ともすればこのまま流され、頷いてしまいそうな自分を慌てて引き止めると、握っていたルカーシュカの手をやんわりと押し返し、こちらを見つめる瞳を真っ直ぐ見つめ返した。
「こ、ここじゃ、ダメ…!」
込み上げる恥ずかしさをグッと堪え、唇を引き結ぶも、対するルカーシュカからはキョトンとした表情が返ってきた。
「なんでだ?」
「だ…だって、ここ…外…!」
そう、外なのだ。上を見上げれば青空が広がる、紛う事なき屋外。
まさかそんな場所で性行為を求められるとは思わず、そのせいで余計に動揺してしまった。
自分の主張はそうおかしいことではないはず…そう思うのに、なぜかルカーシュカの表情は不思議そうなままだった。
「外と言えば外だが…結界を張ってるから、上から覗かれることもないし、誰かが通ることもないぞ?」
「で、でも、…や…!」
「…誰にも見られないのに?」
「だって…お、お部屋からも、見える…っ」
「誰も入ってこないよ」
「で、でも…でも……だって…!」
あまりにも開放的すぎるのだ。
すぐそこでサワサワと草木の揺れる音が聞こえる空間は、周囲からの視線を遮断する物が無い。
確かに離宮の中と言えば中で、他の誰かに見られることはないのかもしれないが、駆け回れそうなほど広い庭の真ん中で、ましてや陽の光が燦々と差し込む中で、どうして裸になれるだろう。
性行為云々の前に、ただただ純粋に恥ずかしい───その気持ちを滲ませ、睨むようにルカーシュカを見つめるも、その表情は柔らかに微笑んでいるだけだった。
「アニーは恥ずかしいんだな?」
「うっ…、だ、だって…」
「いや、良かったよ。アニーもちゃんと、裸を見られるのは恥ずかしいっていう感覚があって、安心した」
「…? なんで…? ちゃんと、ある…っ、あっ、や…、ルカ…!」
一応それくらいの羞恥心はある…と唇を尖らせた一瞬の隙を突かれ、緩んでいた腰紐は簡単に解かれてしまった。
ハラリと解けた合わせを慌てて手で押さえるも、今度はその手を取られ、隠す物の無くなった素肌はルカーシュカの前に呆気なく晒された。
「ああ……綺麗な体だ」
「や、やぁ…っ、やだ!」
うっとりと呟かれた声と共に向けられた視線は、はだけた胸元や腹部に注がれていて、途端に溢れ出した羞恥が体内を駆け上った。
「や、やだ! お外やだ…!」
「部屋の中も外も、ここでは一緒だよ」
「ひぅっ」
ルカーシュカの低い声が鼓膜を揺らし、同時にチュッと首筋に口づけられ、体が跳ねる。
外という場所のせいか、いつも以上に恥ずかしく感じてしまうそれに、つい声に泣きが混じった。
「なんで…っ、お外やだって…言ってるのに…、なんでぇ…っ」
いつものルカーシュカなら、自分の嫌がるようなことは絶対にしない。それがなぜだか今日は意地悪で、まだ何もされていないのに、目尻には涙が滲んだ。
「可愛いよ、アニー」
「やだ…っ、ルカ…!」
「…此処でしたい」
「…っ!」
囁くように紡がれた言葉に、ドキリと胸が鳴った。
「ダメ? お外でエッチなことされて、恥ずかしがってるアニーがたくさん見たいな」
「ぅ……っ」
「…アニー? ダメ?」
「うぅ…っ」
(ず、ずるい…! そんな言い方されたら…!)
…断れない。
許してはいけないのに、その声音に多分に含まれた「ダメ」と言って跳ね除けられない愛らしさに、ぐぅ…と小さく唸った。
いつものルカーシュカの雰囲気とは違った顔に戸惑うも、甘えているようなその仕草と声の響きに、ドキドキと心臓は脈打ち、自分の意思がふにゃふにゃと溶かされていくのが嫌でも分かった。
「可愛いアニーをいっぱい見せて?」
「んぐっ…」
「ね?」
「~~~っ、……ほ…本当に、誰にも、見られない…?」
「見られないし、見せないよ」
「…ルカだけ…? 恥ずかしいの、本当に…他の人に、見られない…?」
「俺だけだよ。アニーの恥ずかしくて可愛い姿は、俺しか見ない」
「…っ」
「…此処で、エッチなことしてもいい?」
「…うぅ…っ」
ダメと言えない───迫り上がるような羞恥を飲み込み、震えながらコクリと小さく頷けば、一瞬だけルカーシュカの微笑みが途切れ、直後に嬉しげに破顔した。
「ふっ…、ありがとう。嬉しいよ、アニー」
「ん…っ」
ゆっくりと互いの唇が重なり、掴まれていた両手が離される。それと同時に、体を隠していた布をすべて除けられてしまった。
「くぅ…っ」
全身を陽の下に晒す背徳感に、ぶるりと肌が粟立つ。
改めて外の世界で裸になっていることを実感し、意味もなくモジモジと左右の足が絡み、忙しなく心臓が脈打った。
あまりの恥ずかしさから喉の奥で小さな悲鳴が漏れるも、その声はルカーシュカの咥内に飲み込まれ、消えていく。
口の中に入り込んだ舌が優しく口の中を撫で、ぞくりとしたものが背中を抜ける。羞恥と混じったその感覚に、堪らずルカーシュカの体を押し返せば、意外にもあっさりと唇は離れていった。
「ふはっ……は…」
「……アニー、可愛いからって、なんでも許してたらダメだぞ」
「…?」
苦笑気味のルカーシュカにパチリと目を瞬くも、その表情はいつもの彼に戻ったようで、少しだけホッとする。
「本当に…愛らしすぎるのも困りものだな」
「んっ…」
独り言のようにポツリと零れた声に反応する間もなく、頬や目元に唇が落ちた。
チュッ、チュッと啄むような口づけが擽ったくて、キュッと唇を結ぶも、優しいその感触に少しずつ体から力が抜けていく。
少しずつ口づけの位置が変わり、首筋、鎖骨、胸元へと移っていく動きに、覚えたばかりの刺激を思い出し、それだけでフルリと肌が震えた。
「ふ……ん…」
イヴァニエに胸を弄られた時の感覚を思い出し、ドキドキと心臓が鼓動するも、両胸の間に唇が触れたところでルカーシュカは上体を起こし、体は離れていってしまった。
「…?」
「可愛い顔して……エッチなことしてほしくて堪らないって顔だな、アニー」
「うぇっ!?」
思考を読まれたような指摘に、ボッと顔に熱が集まる。まるでいけないことがバレてしまったかのような後ろめたさと、言葉にし難い羞恥に、堪らず両手で顔を覆った。
「あぅ…」
「アニー、可愛い顔を隠したらダメだろう?」
「や…っ、だ、だって…!」
「…イヴァニエとの行為を思い出したんだろう?」
「…っ!」
両手を取られ、真っ赤に染まった顔を隠す手段を取り上げられてしまい、咄嗟に視線を逸らすも、続いた言葉にピクリと体が揺れた。
「恥ずかしがらなくていい。覚えたばかりのことを思い出すのは当然だよ。…アニーは、エッチなことしたくないか?」
「……うぅん…」
「…いやらしいこと、していい?」
「……う…」
直接的な問いに頬がまた熱くなるが、ルカーシュカに触れられることも、恋人として繋がることも素直に嬉しいと思う。
こちらを見つめるルカーシュカを見つめ返し、こっくりと頷けば、淡い微笑みが返ってきた。
「じゃあ、アニーがしてほしいことしてあげるな。アニーはどうしてほしい? 教えて?」
「ひゃ…うっ…」
両手を掴んでいた手が離れ、ルカーシュカの唇が再び肌を啄む。唇の端や、喉元に触れるだけのキスを受けながら、ルカーシュカの細い指先が脇腹を撫で、背筋に痺れが走った。
「んや…っ」
擽ったさとは違うそれに腰を捩るも、それで逃げれるはずもなく、サラリと落ちたルカーシュカの髪の毛が肌の上を滑る感触に、勝手に胸の突起が反応し始める。
「んっ……ん…っ」
「イヴァニエは何をしてくれた? アニーは、どうしてほしい?」
「ふっ…ふぅ…」
これは恐らく、答えない限りずっとこのままなのだろう。
今までの経験から少しずつ学んで覚えた流れに、つい逃げ出したくなるも、このまま黙っていても更に恥ずかしい思いをするだけだ。
自ら『えっち』を望むことの恥ずかしさは慣れないが、グッと気合を入れると、はくりと息を吐いた。
「あ、あの…」
「うん」
「…お、お胸……、触って…っ」
「うん、触ってるぞ?」
「んっ」
その言葉と同時に、ルカーシュカの両手が左右の乳房を包むように寄せ上げた。
元から緩やかな山を描いていた胸部だったが、寄せられたことで浅い谷間ができ、その小さな谷間に向かって、ルカーシュカが鼻先を近づけた。
「あ…」
「…アニーの胸は柔らかいな」
「や…っ」
ポツリと呟かれた声が吐息となって肌を擽る。たったそれだけふるりと身が震えるも、肝心な部分には触れないまま、乳房への優しい口づけが続いた。
「ん…っ、や……ルカ、…ちがう…ちがくて…っ」
「何が違うんだ?」
「そこじゃ、なくて…お胸って…」
「うん、そこじゃなくて?」
「んぅ…っ」
胸に口づける唇の柔らかさは、それだけでも気持ち良くて腰が揺れるが、同時にもどかしくて堪らない気持ちにさせた。
あえて胸の粒を避けた愛撫をされているのは明白で、触れそうで触れないギリギリの位置に唇が触れ、戯れのように舌先で薄皮を舐められる感触に、堪らずイヤイヤと首を振った。
「ちが…ちがうの…っ、お胸ちがう…っ」
「胸じゃないのか? じゃあどこがいい?」
「あっ…、そ、じゃなくて…!」
チュッと小さなリップ音を響かせ、ルカーシュカの唇が離れていく。
きちんと伝えなければ触ってもらえない状況に、小さく唸りながら胸元に視線を向ければ、自身の胸越しにルカーシュカと目が合った。
「睨んでるつもりだろうけど、可愛いだけだぞ?」
「うぅ~っ」
クスリと笑うルカーシュカの楽しそうな様子に、知らず頬が膨れる。
瞬間、ルカーシュカがハッとしたような表情になるも、それよりも速く、自分の体の方が動いていた。
左右の胸に添えられたルカーシュカの手を取り、無理やり持ち上げると、指先を握り、自身の胸の粒へと押し当てた。
「ここ…っ!」
「───」
彼のサラリとした指先が小さな粒に触れただけで、なんとも言えない感覚が走った。
温かな指が触れているだけで、体は勝手に『気持ち良い』と信号を発し、声が漏れそうになるも、なんとか耐える。
(これなら、意地悪されない…!)
言ってはいないが、触れてほしい部位はちゃんと伝えた。
「どうだ!」と胸を張る代わりに捕まえたルカーシュカの手をぎゅうっと握り締めれば、なぜか呆けたまま固まっていたルカーシュカがハッとしたように体を揺らした。
「アニー……はぁ……お前は本当に…恥ずかしいの基準が分からんな…」
「…う?」
はぁ、と息を吐くルカーシュカの体からゆるゆると力が抜けていくのが分かり、それに合わせて彼の手を握り締めていた自身の手の平からも力が抜けていく。
それを見計っていたかのように、握っていた手を逆に握り返され、ついと視線を上げれば、困り顔で微笑むルカーシュカと目が合った。
「…ごめん。意地悪しすぎた」
そう告げたルカーシュカに抱き締められ、その温もりと声の響きに、安心感からほぅっと息が漏れる。
「…ちゃんと…触ってって、できたよ…?」
「そうだな。偉いぞ、アニー」
「ん…」
「良い子」と褒めるように、抱き締められたまま柔らかなキスを受け、ふわふわとした心地良さに包まれる。
優しい感触が気持ち良くて、褒めてもらえたのが嬉しくて、とろりと体から力が抜けるも、不意に胸元を手の平が滑る感触がして肩が跳ねた。
「あっ…」
「アニーのしてほしいこと、してあげるからな」
「ん……」
改めてそう言われ、一瞬どこかに放り出していた羞恥心がじわじわと戻ってくる。
よくよく考えなくても、自ら胸への愛撫を強請ってしまった訳だが、それに対して恥ずかしがっている余裕はすぐになくなった。
「あ…っ」
胸全体を撫でていた手の平が徐々に移動し、指先がピンと勃っていた突起を優しく転がした。
ゆっくりと円を描くような指先の動きに合わせ、ゾクゾクとした疼きが生まれ、喉が戦慄く。
焦らされ続けていたせいか、それとも二度目の性行為だからか、イヴァニエの時よりも更に強く感じる快感に、堪らず身を固くした。
「んん…っ」
「そんなに緊張しなくていい。口を開けて…そう、ゆっくり呼吸しような」
「はぁ……はぁ……あっ…」
「…気持ち良いか?」
「ん…、…ん…っ」
さわさわと撫でられているだけなのに、どうしてこんなに堪らない気持ちになるのか…訳も分からないまま、コクコクと頷けば、ルカーシュカがふっと表情を和らげた。
「アニー、気持ち良い時は、気持ち良いって言ってほしいな」
「っ…! …ぅ…きもちぃ…っ」
「うん、よくできました」
「あっ!」
褒めてもらえたことにほわりと気が緩んだのも束の間、ルカーシュカが視界から消えたと思った直後、熱く湿ったものに胸の先端を覆われ、ビクリと体が跳ねた。
「ひ…っ、あぁ…っ」
固くなった粒をルカーシュカの口の中で転がされ、熱い舌で舐め上げられる感覚に、勝手に声が零れた。
乳輪ごと味わうような舌の動きと、唾液が絡んだぬるぬるとした感触に腰は疼き、口からはひっきりなしに嬌声が漏れた。
「や…っ、ダメ…、ルカ…!」
「気持ちいいだろう?」
「ひぅ…あ……きもち…っ、きもちぃ…っ」
ルカーシュカの口の中から、控えめな水音が響くたび、胸の突起は悦び、腰回りが重くなっていく。
優しく体を抱き締める体温と、胸元に感じるルカーシュカの吐息。覚えのある感覚と共に溢れる愛しさに、キュッと股を締めれば、股間部に違和感を感じ、カァッと頬が熱くなった。
(ま、また…っ)
頭をもたげたソレが視界に入り、羞恥から無意識の内に下半身をくねらせれば、異変に気づいたルカーシュカが顔を上げた。
「どうした?」
「あ…や…、あ、あの…っ」
「…ああ、ちゃんと気持ち良いんだな」
「や…っ、やぁ…!」
ルカーシュカの視線が、下半身へと注がれる。
下着からぴょこんと顔を出したそれは丸見えで、恥ずかしさから堪らず手を伸ばして膝を立てれば、ルカーシュカが体を起こした。
「お胸は気持ち良かったか?」
「……ん」
「良かった。…なぁ、アニー」
「ん…?」
「イヴァニエには、ここも可愛がってもらったのか?」
「…っ」
『ここ』と言いながら、股間を押さえた手にルカーシュカの手が重なり、何を聞かれているのか即座に理解する。
どう答えるべきか一瞬躊躇うも、誤魔化すなんて難しいことができるはずもなく、じわじわと熱くなっていく体に耐えながら、コクンと小さく頷いた。
「……ぅん」
「そこだけか?」
「…ん?」
「胸と股間だけか? 他に、イヴァニエにされたことはないか?」
「…ほか…?」
ルカーシュカの質問の意図が分からず、首を傾げるも、イヴァニエとの行為を思い出すように記憶を手繰り寄せる。
(…お胸と……おちんちん以外…)
記憶に残る淫行にドキドキするも、胸と股間以外と言えば、たくさんキスをしただけで、それ以外のことをされた覚えはない。
「いっぱい、ちゅーした…」
「ふふ、そうか」
ルカーシュカが笑ってくれたことで、縮こまっていた手足からゆるりと力が抜けるも、答えると同時にルカーシュカが腰を浮かせ、立ち上がろうとするので、ギョッとして慌てて手を伸ばした。
「やっ…、やだ! どこ行くの…!?」
「どこにも行かないよ」
返ってきた苦笑気味の言葉通り、位置を少し変えただけで、ルカーシュカがどこかに行ってしまうことはなかった。
ただ、なぜか立てた膝の向こう側に移動してしまい、遠くなったその距離に不安が募る。
「ルカ…?」
「今日はもう少しエッチなことを覚えようか」
「え…、っ…わ…!?」
立てた膝を持ち上げられ、浮いた腰の下にクッションが敷かれた。そのままルカーシュカの足の間に臀部が収まり、彼からは下半身が丸見えの状態になる。
「ひゃっ…やっ、な、なに…!?」
「アニーはお尻も可愛いな」
「や、やっ…イヤ…!」
信じられない状態に、これ以上ないほど顔が熱くなるも、太腿に添えられた手に動きを封じられ、どうすることもできない。
手で隠そうにも届かず、無理に動かそうとすると足がルカーシュカに当たりそうで怖い。半泣き状態で唸っていると、顔がよく見えない状態で、ルカーシュカの声だけが聞こえてきた。
「アニー、少しお勉強をしようか」
「へ…?」
「前に、男同士でどうやって性交をするのかって、聞いてきただろう?」
「え…う、うん…?」
今の状況に似つかわしくない穏やかな声に、パチパチと目を瞬く。
ルカーシュカの雰囲気が元に戻ったからか、安心感はあるものの、下半身を曝け出した状態で続く会話に、戸惑うばかりだった。
「生殖行為としての性交については、知ってるんだな?」
「う…うん」
「うん、じゃあそれを踏まえた上で簡単に説明すると……男同士の場合は、ココを使うんだよ」
「…? ふやっ!?」
言葉と共に、あらぬ所に指が入り込み、ビクリと足先が跳ねた。
臀部の柔らかな肉の間にゆっくりと沈んだ指が、その奥にある窄まりをチョン、と突いたのだ。
自分で触ったことも、見たこともない恥部に初めて触れられ、羞恥と驚きで言葉が出てこない。
「ふえ…しょ…そ、そこ…え?」
「うん、ココだよ」
「わっ! やっ…!」
ルカーシュカの細い指先が、クニクニと小さな孔を優しく撫でる。そのなんとも言えない感覚に、浮いた足がパタパタと宙を蹴った。
「うぅ~…」
「…嫌か?」
「や…じゃ、ないけど……なんか、変…」
「…嫌ではないんだな?」
「……うん」
「良かった。…変なのは、少しずつ慣れていこうな」
「…う…」
言葉を交わしている間も、やわやわと窄まりを撫でる指先は止まらない。
擽ったいのかすら分からない感覚と恥ずかしさに、ふるりと身が震えるも、不思議と嫌だとは思わなかった。と同時に、ある疑問が浮かび、見えないルカーシュカを探すように、視線を彷徨わせた。
「ルカ…」
「どうした?」
「お尻…そこ…小っちゃいから…おちんちん入んないよ…?」
「………そうだな。うん……その通りなんだが…アニーが言うと、なんでも危うくなるな…」
「…?」
「なんでもないよ。…今のままじゃ、確かに入らないな。だから少しずつ、慣らしていくんだよ」
「慣らす…? うひゃっ!?」
瞬間、股が濡れるような感覚がして、ピッと全身が強張った。トロリと垂れたそれは、蜂蜜のようなとろみがあるのが肌を流れる速度で分かった。
臀部の隙間を伝うように垂れたそれが、ルカーシュカの指を伝い、ゆっくりと小さな孔を濡らしていく。
ぬるりとした液体を塗り込むように、ゆるゆると動く指の動きに、か細い悲鳴が漏れた。
「ひぅっ…、や、な、な、なに…?」
「潤滑用の蜜だよ。これを塗っておかないと指が入らないし、痛くなっちゃうからな」
「い…痛いの…?」
「痛くならないように、塗ってるんだよ」
「……指、入れるの…?」
「うん。そうやって少しずつ、アニーの可愛いお尻を柔らかくしていくんだ」
「…そしたら…おちんちん入るの…?」
「………そうだよ」
何故か苦笑気味の返事を聞きながら、少しずつ慣れてきた感覚に、体の力を抜く。
恥ずかしい気持ちは変わらないが、ぬるぬると孔を撫でる感覚は少しだけ気持ち良く、吐息に混じって甘さを含んだ声が漏れた。
「ふ……ぅ……」
「アニー、少しだけ、指を入れるからな。痛いと思ったら言うんだぞ」
「ん…」
緊張を孕んだルカーシュカの声に、体は強張り、羞恥とは異なる鼓動で心臓がドキドキしたが、にゅくり…と僅かに入り込んだ指先は、思っていたような衝撃もなく、少しだけ安堵した。
「大丈夫か?」
「うん…」
「…なるべくゆっくりするけど、痛かったら言うんだぞ?」
「ん…!」
コクコクと頷けば、ゆっくりと後孔への愛撫が始まった。
緊張からか、ぬくぬくと指が動くたびに息が詰まり、無駄に全身が力んだが、それも時間が経つにつれ、少しずつ緩んでいくのが分かった。
ルカーシュカの細い指が太く思える異物感と、ほんの少しの苦しさに、始めは耐えるばかりだったが、それも徐々に徐々に薄れ始め、気づけば体がじんわりと熱を帯び始めていた。
「…指一本、全部入ったぞ」
「…はぇ…?」
「大丈夫か?」
「ふっ……う…」
ゆっくりと抜き差しされる指に、頭がぼんやりとしてくる。丁寧な手つきのおかげで痛みはなく、苦しさも消えた今、感じるのは擽ったいような気持ち良さだけだった。
恥ずかしさよりも、体の中にルカーシュカの温かな指が入っていることが気持ち良くて、ふわふわとした愛しさが込み上げた。
(……ルカ…)
触られているのに、触れない───彼の体温が伝わるからこそだろうか、愛しい気持ちが募るほど、ほんの少しだけ離れているこの距離が寂しくて、届かない手がもどかしくて、だんだんと切なくなってきた。
「柔らかい内に、もう少しだけ慣らそうか。もうちょっとだけ、頑張ろうな」
「え…」
(まだ、やるの…?)
慣らし行為が始まって、どれくらいの時間が経っただろう。じっくりと時間を掛けてもらったおかげで痛みは微塵もなく、気づけば体は火照り、汗が滲んでいた。
気持ち良いのに、温かいのに、安心していいはずなのに───近くにいるのにルカーシュカに届かない手が心細くて、急速に寂しさが膨れていく。
「ふあっ…あっ、やだ…!」
直後、太さを増した指がグッと入り込む感覚に、爪先がパタパタと暴れた。
怖い訳じゃない。痛い訳でもない。
ただ、触れているのに離れていないのが悲しくなってしまったのだ。
「ルカ、やだ…!」
「…! 悪い、急すぎたな。もっとゆっくり───」
「ちがうの…っ、ちがうくて…!」
焦ったような声を遮るように言葉を返し、股を開くと、向こう側にいるルカーシュカに向けて両手を伸ばした。
「やだ…! ルカ…遠いのやだ…っ」
「…!」
「ルカが遠いのやだ…っ」
一度寂しいと思ってしまったら、もうダメだった。
本能のまま、駄々をこねるように零れる声を抑えられず、届かない手を必死に彼まで伸ばせば、下半身に触れていた指先や腰を支えていた手が、パッと離れた。
直後、伸ばした両腕の間にルカーシュカの体が収まり、押し倒すような勢いで全身を抱き締められ、キュウゥッと胸が締め付けられた。
「ふ、ぅ…っ」
「本当に……アニーは可愛いな」
瞬間的に満たされた体と心に、涙が出そうなほど嬉しくなる。反射的に両腕はルカーシュカの背に回り、両足はその身に絡みついた。
ぎゅうぎゅうとしがみつく力に比例するように、ルカーシュカの腕の力も強くなる。
苦しいほどの締め付けと、ぴたりと重なった互いの体から伝わる体温が、今はただひたすらに愛しかった。
「今日のエッチはここまでにしようか」
「……ん」
「お尻、触られるのは嫌じゃないか?」
「…ヤじゃない…」
「それなら良かった。…これから少しずつ、慣らしていこうな」
「…うん」
「うん、良い子。…じゃあ今日は、残りの時間はずっとくっついていようか」
「うん…!」
自分よりも小柄なルカーシュカの肉体を包み込むように抱き締めれば、それだけで安心感で胸が満たされる。
そうして安堵の息を吐きながら、落ち着きを取り戻し始めた頭で、途中で行為を止めてしまったことを詫びた。
「…ごめんね。次は…もっと、えっちできるように、頑張るね」
「ふ…ありがとう。でも、急がなくていいよ。…ゆっくり慣らして、いつか一緒にエッチしような」
「ん…!」
唇が触れ合うだけのキスを繰り返しながら抱き締め合い、鼻先を掠めるルカーシュカの香りを目一杯吸い込む。
体の内側からも満たされるような香りにホッとしつつ、ルカやイヴと繋がるには、彼らを受け入れられるように、自分の体を整えなければいけないことを初めて自覚した。
(…えっちできるように、頑張ろう)
恥ずかしいし、体がおかしくなるし、ドキドキするけれど、ちゃんと彼らと繋がりたい───その為に、これからは自分も頑張ろう…と人知れず決意した。
(…お尻、自分で触ったらいいのかな…?)
後でルカーシュカに聞いてみよう…そんなことを考えながら、胸元に擦り寄る彼の柔らかな髪に頬を擦り寄せ、足を絡ませた体を一層深く抱き締めた。
その後、暫く経ってようやく濡れた下半身で抱き着いていたことを思い出し、声にならない悲鳴を上げるのだった。
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無自覚だいしゅきホールド。
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