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フォルセの果実
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浴室を出て少しすると、エルダはイヴァニエの元へと向かった。
赤ん坊達と日向ぼっこをしながら待つこと暫く、ウトウトとしてきた頃にエルダが帰ってきて「イヴァニエ様は人間界に降りるご予定が入ってしまった様です」と教えてくれたのが、つい今ほどのことだった。
「ん…と…? 人間界に降りて…なにをするの?」
「特別なことは何も致しませんよ」
「…?」
ならば何故行くのか?
理由が分からず頭の中に疑問符を浮かべていると、笑みを含んだ声が返ってきた。
「人間界には天災というものが必ず起こります。我らが神の力の及ばぬところ、『そういうもの』として自然と起こってしまうものであり、私達が介入できる問題ではございません。ですが、そういった災いが起こった時に、人間界の様子を見に行くのも、大天使様達のお役目なのです」
「…見に行く、だけ?」
「正確にはそれだけ、とは言えませんが、基本的にはそうですね。人間界に生きる者達の姿を確認しに行くのです」
「…えっと…何もしないのは、干渉はしない…て、ことだから…?」
以前聞いた、天界の在り方を思い出しながら、エルダの話に耳を傾ける。
「左様でございます。ですが干渉しないことと、放置することは異なります。彼ら…人間のみに関わらず、生きとし生ける者達に対し、私達が下手に干渉すれば、その在り方を歪めてしまう可能性がございます。ですので、一定の距離は保ちますが、だからと言って、完全に切り離してしまうことも致しません。それでは、見守ることができませんから」
「……うん」
「見守るというのは、手を貸し、助けるという意味ではございません。彼らがどのように生き、どのように朽ちていくか、それらを見届けるという意味です。…ただ、そうは言っても、天災によって大きく傷ついた彼らを、ただ見放すということもできません。ですから、ほんの少しの希望の種を撒くのです」
「希望の…?」
「我々が直接何かに干渉することはできません。ですからほんの少しの、彼らの希望に繋がる何かを、そっと撒いてくるのです。本当に些細な…ですが、私達が触れることを許されるギリギリの範囲での、小さな奇跡です。その種を撒くか、撒かなくとも、彼らは自分の力で立ち上がることができるか…それらを見極めに、大天使様達は人間界に降りてらっしゃるのですよ」
「…そぅ、なんだ…」
なんだか話が壮大で、きちんと理解できているのか不安しかなかったが、とにかく人間界で大変なことが起きて、その様子を確認する為に、イヴァニエは天界を離れた…ということは理解できた。
「…無情だと思いますか?」
「え…っ、う、うぅん…! ……その、天使様…神様が…あんまり、手を出したらいけないっていうのは…なんとなく、分かる、から…その…」
「…そうですね。彼らには、彼らの生き方があります。我々がそこに手を貸すことで、幸運を呼ぶこともあれば、その裏で不幸を招くこともあるでしょう。まして神の力に縋り、それに頼るようになったら、きっと人間界など簡単に滅びます。それほどに彼らは…特に、人間という生き物は脆いのです。ですが同時に、彼らはとても強い生き物でもあります。逆境の中でも耐え抜く強さと、どんなに些細な希望の種でも、それを慈しみ、懸命に育て、大樹へと成長させることができる者達です。直接的に我々が手助けをすることは出来ませんが、大樹となる芽の、その種を撒くことはできます。種を枯らすも、実らせるも、結局は彼ら次第ですが、その姿もすべて、私達はただ見守るのです」
そう言って微笑むエルダは、どこまでも澄んで見えて、息をすることすら忘れて見惚れた。
(……自分も、そうやって考えてないと…いけないのかな…?)
同時に、ジワリと滲んだ不安。
『天使』としての自覚がまるでない自分には、人間界に生きる者達のことを想えるような思考もなければ、余裕もない。
それどころか、その資格すら有していないのだということを思い出し、思いがけず気分は沈んだ。
「アドニス様?」
「…うぅん、なんでも───」
「…何か、ご不安なことがありますね?」
「え…えっと……」
アッサリと見透かされてしまった不安に、視線を彷徨わせれば、座る自身の足元にエルダがそっと膝をついた。
膝の上に置いた手の平を、エルダの手がやんわりと掬い、包む様に握った。
「どうなさいましたか?」
「えぅ……あの…えっと…」
「はい」
「…あの…」
「大丈夫ですよ。仰って下さいませ」
「……わ、私…、…その…全然…そういう…心配したり…とか、考えられないん、だけど…ど、どうしたら、いいの…?」
「…!」
「全然…想像、できない…し、…エルダとか…ほ、他の、天使様みたいに、人間界…のことも…考えて…心配したり、できない…し……ど、どうしたら…」
「アドニス様」
凛としたエルダの声に、震えてしまった語尾を飲み込むように口を噤んだ。
「ご説明するだけのつもりでしたが、ご不安にさせてしまいましたね。」
「ち、ちがうよ…! そんな…そうじゃなくて…っ」
「アドニス様、大丈夫ですよ。今は彼らのことを考えられなくても当然なのですから、ご心配なさらないで下さい」
「…え?」
柔らかに笑むエルダはとても落ち着いていて、その雰囲気に慰められるように、俯いていた顔を上げた。
「人間界を見守ることが我々の役目ではございますが、それは生まれた瞬間から使命として担っているものではございません。彼らを想う心が備わっている訳でもございません。成長していく過程で、多くのことを学び、知識を得て、少しずつ成長していく感情であり、役目なのです。いきなり、全く知らない、見たこともない相手に対して、心を込めて見守れと言われても、特別な感情など湧きません。アドニス様の心配できないという感情は、極自然なものです」
「………」
「永く関わっていくことで、次第に心を寄せていくものなのですよ。ですから、無理に理解しようとされる必要はございません。無理に彼らを案じる必要もございません。彼らを知ることで、少しずつ、自然と育っていくものです。…プティ達だって、人間界で起きたことも、彼らのことも、遠いどこかで起きたこと、としか感じていないのですから……ねぇ?」
隣に座り、静かに様子を見ていた赤ん坊にエルダが話しを振るが、赤ん坊達はキョトリとした顔で首を傾げるだけだった。
「ご心配されなくとも、大丈夫ですよ。今こうして彼らのことをお考えになられているだけでも、大変なご成長でございます。それだけで、今は充分でございます」
「……うん」
(…赤ちゃんじゃ、ないのに…)
なんとも複雑な気持ちだが、自分自身のことすら知らなかったことを思えば、人間界に対する知識も赤ん坊達と大差はなく、エルダの言う例えも最もだと頷くことしか出来なかった。
「…見守るって、ずっと…見てるの?」
「いいえ。全てが見える訳でもございませんし、ずっと見ている訳でも、ずっと彼らのことを考えている訳でもございませんよ」
「…そうなの?」
「私達には私達の日々がございますから、四六時中、彼らのことを考えていることはできません。それに見守ると言っても、彼らには自分達の力で生きていく能力があります。必要以上に案じる必要もございません。時折遠くから、そっと意識を向けるような感覚ですね」
困り顔で微笑むエルダに「なるほど…」と頷く。
「イヴァニエ様は、行っちゃったけど…ルカーシュカ様は…?」
「ルカーシュカ様はいらっしゃいますよ」
「…今日、来れないのは、どうして?」
「人間界に降りる役目を与えられる時、誰がどこへ向かうのか、バルドル様から直々に通達がされます。その際、大天使の皆様は必ず全員集まる様にと、掟で決まっておりますので、ルカーシュカ様もそちらにご出席されているのです」
「じゃあ…次会えるのは、三日後…?」
「左様でございますね」
「……そっか…」
「…お寂しいですね」
「……うん…」
寂しい───そう言葉にされて、その時初めて、彼らと会えないのだと実感し、心に出来た隙間を『寂しい』と感じた。
決して当たり前のことではないのに、当たり前のように、数日に一度、必ず顔を合わせていた二人と会えない。
言葉を交わしながら、穏やかに紅茶を飲む時間が途切れてしまったことを、急に物悲しく感じた。
「だぅ! あ!」
「…そうだね、みんながいるもんね」
「ぼくたちがいるよ!」とでも言うように、バタバタと腕を動かし、お喋りをする赤子達に、クスリと笑みが零れる。
「エルダも、いてくれるもの」
「ええ。私はずっと、お側におります」
「ふふ…ありがとう。…次、ルカーシュカ様にお会いした時に…色々、お話し聞いても、いいかな…?」
「勿論でございます。ルカーシュカ様でしたら、きっと色々教えて下さいますよ」
「うん」
『こうあらねばならない』
その枠に当て嵌まらない自分が不安で、他の天使達と同じように考えられない自分が酷く悲しかったが、今すぐどうこう成れるものではなく、少しずつ培っていくものであるということが分かり、ホッと安堵の息を吐いた。
(いつか自分も、エルダや、ルカーシュカ様や、イヴァニエ様みたいになれるのかな…?)
想像することすら難しい未来は、とても曖昧で───今はただ、人間界に降りたイヴァニエが、無事に帰ってきてくれることを、心の内でそっと祈るだけだった。
三日後。いつもはイヴァニエと一緒に来てくれるルカーシュカが、一人で現れた姿を見て、改めてイヴァニエは天界にいないのだと実感した。
一人分足りない、空いた空間に意識を向けている間に、ルカーシュカがすぐ目の前まで近づいていた。
「どうした?」
「あ……いえ…」
「…来たのが俺だけで、残念だったか?」
「へっ!? ち、ちが…!」
「ふ…冗談だ。イヴァニエがいないのが、不思議だったんだろう?」
「ぅ……あの…はい…」
「ずっと一緒に通ってたからな。俺も変な感じだ」
軽い口調で冗談を言うルカーシュカからは、イヴァニエを案じるような雰囲気は感じなかった。
差し出された彼の手を取り、ゆっくりと部屋の中を移動しながら、定位置となった長椅子に並んで腰を下ろした。
「あの…ルカーシュカ様は…人間界に、行かなくて、いいん、ですか…?」
「全員で行く必要はないからな。三人か四人で向かえば充分だ」
「誰が行くって…どうやって、決めるんですか…?」
「持ち回りで決まる時もあれば、加護を与えた人間が関わっている時は、与えた者が優先的に向かう時もある。その時の状況によって違うかな」
「…人間界で、大変なことがあったから…イヴァニエ様は、行ってるんです…よね?」
「そうだな。今回は大きな地動があったらしい」
「…危なく、ない…?」
「人間界に住まう者達には危険な状況だが、イヴァニエ達なら大丈夫だぞ。俺達は基本、あちらの世界から干渉されない存在だからな」
「…ふ…ぅん…?」
「…分かってないだろ。まぁ、何も危険なことはないと思っていればいい」
「…はい」
ゆるゆると会話を続けている間に、エルダが紅茶を淹れてくれた。
「どうぞ、お召し上がり下さい」
「ありがとう」
「あ、ありがとう」
目の前に出された温かなミルクティーを、ちびちびと口に含みながら、ルカーシュカに質問を続けた。
「天使様は…えっと、人間…とか、人間界の…生き物に、見えないん、ですか…?」
「そうだな…獣達は、それとなく気配は感じ取っているかもしれないが、姿を認識できる生き物は多くないだろう。人間達は、見えないし感じ取れない者が殆どだ。赤ん坊や、よほど敬虔な聖職者、もしくは見えざる者を見れるような、特異な体質の者の中には、稀に俺達の姿を認識できるような者もいるが、基本的にはまったく見えていないな」
「…赤ちゃんは、見えるんですね」
「あの子らは、まだ人間としては未熟で、俺達に近しい存在だからな。成長していくほどに、俺達とは離れていく。そうすると必然的に、俺達のことも見えなくなるんだよ」
「はぇ…」
感覚的に理解しながら、希望の種とは何か、どのように撒くのか、どうやって人間界まで行くのか…思いつくことを思いつくまま、端から口に出していった。
どんなに纏まりのない質問でも、ルカーシュカは一つずつ、噛み砕きながら丁寧に教えてくれる───六日ぶりに話せるのが嬉しくて、アレもコレもと聞いていた。
「今日はやけにたくさん喋るな」
「え…えっと…」
「前回お会いできなかった分、お時間が空いてしまいましたから…アドニス様も、お寂しかったんですよね?」
「エ、エルダ…!」
「……寂しい?」
突然のエルダの発言にギョッとするも、否定できるものでもなく、アワアワと忙しなく視線は泳いだ。
「だ…だって…っ、エルダに、聞いても…、ルカーシュカ様に、聞きましょうって…言って、教えてくれなかった、し…」
この数日間、人間界にイヴァニエが降りた件について色々と尋ねてみたのだが、エルダからの返答は一貫して「ルカーシュカ様に聞いてみましょうね」というやんわりとした回答拒否だった。
(寂しいとは…思ったけど…)
だがそれは、一方的な自分の我が儘だ。
ルカーシュカにも、イヴァニエにも、それぞれ役割があり、それらを優先するのは当然で、自分の為に時間を割いてもらうのは当然のことではないのだ。
それなのに「寂しい」と言って、変に気負わせるのも、気を遣わせるのも…まして、そんなことを言って、二人を困惑させるのも嫌だった。
心の中に留めておくだけなら許されるだろう、そう思っていたのに…
(言っちゃった…)
恥ずかしさと申し訳なさで、行き場を失った視線は自然と下を向いた。
寂しいと思ったのは本当なので否定もできない。だからと言って、その感情をルカーシュカに押し付けるつもりもなかった。
どんな顔をして、どう取り繕えばいいのか…ぐるぐると頭を悩ませていると、不意に隣に座るルカーシュカが動く気配がした。
「寂しかったのか?」
「わっ…!?」
俯いていた顔を覗き込むように、至近距離に寄ったルカーシュカの綺麗な顔に驚き、思わず身を引っ込めてしまった。
「…そこまで驚かなくてもいいだろ。お前だって似たようなことをしたじゃないか」
「え…? ど……え?」
「良い匂いがすると言って、自分から寄ってきただろう?」
少しばかり膨れた表情のルカーシュカに、心あたりのある出来事を思い出し、「あ」と小さく声が漏れた。
「あ、あれは…だ、だって…」
思い返せば、あの時の自分は随分とルカーシュカに近かった気がする。
体が触れていないのだからと、あまり気にしていなかったが、改めて同じような行為をされ、急に恥ずかしさが込み上げた。
「だって、なんだ?」
「ぅ…あの……だって…あれは…っ」
「…ルカーシュカ様、あまりアドニス様をいじめないで下さいませ」
「いじめているつもりはないんだがな」
そう言いつつ、その瞳は楽し気に揺れていた。
エルダの一言に、ようやく詰めていた距離を戻してくれたルカーシュカにホッと息を吐きながら、熱くなった頬を誤魔化すように、温くなったミルクティーを口に含んだ。
「で? 寂しかったのか?」
「…っ」
追い打ちのように聞かれ、喉の奥が「ぐぅ」と鳴った。
「そ…その…」
「うん」
「……でも…あの…」
「…なんで泣きそうになるんだ」
泣いてはいない…が、震えた語尾までは隠せなかった。
「……め、迷惑に…なっちゃう…から…」
口から零れた声は、思った以上に小さく、掠れていた。
寂しいと、そう伝えたいところで困らせる…そう思っての発言だったのだが、この言い方では余計にルカーシュカを困らせるだけだということに気づき、瞬時に後悔の念が押し寄せた。
(…聞こえなかった…とか、ないかな…)
声の小ささを考えれば、聞き取れなかったという可能性も…そんな淡い願いも虚しく、隣からルカーシュカの小さな溜め息が聞こえ、ビクリと肩が揺れた。
「お前は…またそんなことを言って…」
「っ…、ご、ごめ…」
「まて、謝るな。…怒ってる訳じゃない」
不意に伸びてきたルカーシュカの手が、カップに添えていた手を絡め取り、ぎゅうっと握り締めた。
「…なんとなく、何を考えているのかは想像がつくが、その心配は無用だ。おかしな我慢はしなくていい。…寂しいと思ったなら、素直にそう言えばいいだろう」
「…で、でも…」
「…なんだ、嘘だったのか?」
「ちがっ、嘘じゃない…! ……ぁ…」
言外に「寂しかった」と言ってしまったことに気づき、再び顔に熱が集まった。
「…アドニス様、そんなにご不安にならなくとも、大丈夫ですよ」
「う…」
困り顔のエルダにまで言われ、いよいよ逃げ場を失ってしまう。
「ぅ…と…」
「うん」
「……ず、ずっと…今まで…三日に、一度…会えて、たのに……きゅ、急に…今日は…会えないですって、なって……だから…」
「うん」
「……さ…びしい…な…て…」
言いながらどんどん語尾は小さくなってしまったが、それでも「寂しい」と口にするのが精一杯で、ルカーシュカの顔を見る余裕などまるで無かった。
「…その気持ちが嬉しいと言ったら、お前は怒るか?」
「……え?」
(……うれしい…?)
瞬時に言葉の意味を理解できず、やや呆けながらルカーシュカを見遣れば、楽しそうに笑うルカーシュカと目が合った。
その表情は、本当に嬉しそうで、困惑のような感情を含んでいないことは自分にも分かった。
(…寂しい気持ちが…嬉しい…? 自分が、怒る…?)
色んな感情がごちゃ混ぜになり、どうにも頭が上手く回らない。必死に意味を理解しようと、急に鈍くなった頭を動かしている間に、ルカーシュカが困ったように笑った。
「お前のその後ろ向きな考え方は、少しずつ解していかないとな」
「ん…と?」
「アドニス様、後ほど一緒に、ゆっくりお考えになりましょう?」
「…うん」
(…よく、分からないけど……寂しいって言っても、迷惑にならないなら…良かった)
それが分かっただけでも安心した。
『嬉しい』の意味は、後でエルダと一緒に考えよう…そう思いながら、ホッと気を緩めた───と、繋がっていたルカーシュカの指先が、撫でるように指の先に絡む感覚がして、そちらに意識を向けた。
「…?」
「…いや、なんでもない」
そのままするりと解けてしまった手に、少しばかりの名残惜しさを感じつつ、柔らかな雰囲気に戻った空気の中、ゆるりと会話を続けた。
「イヴァニエも、早く帰ってこれるといいな」
「…はい」
呟くように零れたルカーシュカの言葉に、コクリと頷く。
エルダもいて、赤ん坊達もいて、ルカーシュカもいる。
穏やかに過ごす時間は、いつもと変わらず温かくて、決して寂しいとは思わない。
それでも、いつもイヴァニエがいる向かい側の席が、ポツンと空いている光景が、今は妙に冷たく見えた。
その日の夜、エルダと二人で話しをした。
たくさん話して、考えて───そうしてようやく、ルカーシュカの言った『嬉しい』という言葉の意味を、きちんと理解したのだ。
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補足:人間界についてですが、基本触れる予定はありません。
あくまで天界メインで、人間界との関わり方について、補足として書く程度…とお考え頂けますと幸いです。
赤ん坊達と日向ぼっこをしながら待つこと暫く、ウトウトとしてきた頃にエルダが帰ってきて「イヴァニエ様は人間界に降りるご予定が入ってしまった様です」と教えてくれたのが、つい今ほどのことだった。
「ん…と…? 人間界に降りて…なにをするの?」
「特別なことは何も致しませんよ」
「…?」
ならば何故行くのか?
理由が分からず頭の中に疑問符を浮かべていると、笑みを含んだ声が返ってきた。
「人間界には天災というものが必ず起こります。我らが神の力の及ばぬところ、『そういうもの』として自然と起こってしまうものであり、私達が介入できる問題ではございません。ですが、そういった災いが起こった時に、人間界の様子を見に行くのも、大天使様達のお役目なのです」
「…見に行く、だけ?」
「正確にはそれだけ、とは言えませんが、基本的にはそうですね。人間界に生きる者達の姿を確認しに行くのです」
「…えっと…何もしないのは、干渉はしない…て、ことだから…?」
以前聞いた、天界の在り方を思い出しながら、エルダの話に耳を傾ける。
「左様でございます。ですが干渉しないことと、放置することは異なります。彼ら…人間のみに関わらず、生きとし生ける者達に対し、私達が下手に干渉すれば、その在り方を歪めてしまう可能性がございます。ですので、一定の距離は保ちますが、だからと言って、完全に切り離してしまうことも致しません。それでは、見守ることができませんから」
「……うん」
「見守るというのは、手を貸し、助けるという意味ではございません。彼らがどのように生き、どのように朽ちていくか、それらを見届けるという意味です。…ただ、そうは言っても、天災によって大きく傷ついた彼らを、ただ見放すということもできません。ですから、ほんの少しの希望の種を撒くのです」
「希望の…?」
「我々が直接何かに干渉することはできません。ですからほんの少しの、彼らの希望に繋がる何かを、そっと撒いてくるのです。本当に些細な…ですが、私達が触れることを許されるギリギリの範囲での、小さな奇跡です。その種を撒くか、撒かなくとも、彼らは自分の力で立ち上がることができるか…それらを見極めに、大天使様達は人間界に降りてらっしゃるのですよ」
「…そぅ、なんだ…」
なんだか話が壮大で、きちんと理解できているのか不安しかなかったが、とにかく人間界で大変なことが起きて、その様子を確認する為に、イヴァニエは天界を離れた…ということは理解できた。
「…無情だと思いますか?」
「え…っ、う、うぅん…! ……その、天使様…神様が…あんまり、手を出したらいけないっていうのは…なんとなく、分かる、から…その…」
「…そうですね。彼らには、彼らの生き方があります。我々がそこに手を貸すことで、幸運を呼ぶこともあれば、その裏で不幸を招くこともあるでしょう。まして神の力に縋り、それに頼るようになったら、きっと人間界など簡単に滅びます。それほどに彼らは…特に、人間という生き物は脆いのです。ですが同時に、彼らはとても強い生き物でもあります。逆境の中でも耐え抜く強さと、どんなに些細な希望の種でも、それを慈しみ、懸命に育て、大樹へと成長させることができる者達です。直接的に我々が手助けをすることは出来ませんが、大樹となる芽の、その種を撒くことはできます。種を枯らすも、実らせるも、結局は彼ら次第ですが、その姿もすべて、私達はただ見守るのです」
そう言って微笑むエルダは、どこまでも澄んで見えて、息をすることすら忘れて見惚れた。
(……自分も、そうやって考えてないと…いけないのかな…?)
同時に、ジワリと滲んだ不安。
『天使』としての自覚がまるでない自分には、人間界に生きる者達のことを想えるような思考もなければ、余裕もない。
それどころか、その資格すら有していないのだということを思い出し、思いがけず気分は沈んだ。
「アドニス様?」
「…うぅん、なんでも───」
「…何か、ご不安なことがありますね?」
「え…えっと……」
アッサリと見透かされてしまった不安に、視線を彷徨わせれば、座る自身の足元にエルダがそっと膝をついた。
膝の上に置いた手の平を、エルダの手がやんわりと掬い、包む様に握った。
「どうなさいましたか?」
「えぅ……あの…えっと…」
「はい」
「…あの…」
「大丈夫ですよ。仰って下さいませ」
「……わ、私…、…その…全然…そういう…心配したり…とか、考えられないん、だけど…ど、どうしたら、いいの…?」
「…!」
「全然…想像、できない…し、…エルダとか…ほ、他の、天使様みたいに、人間界…のことも…考えて…心配したり、できない…し……ど、どうしたら…」
「アドニス様」
凛としたエルダの声に、震えてしまった語尾を飲み込むように口を噤んだ。
「ご説明するだけのつもりでしたが、ご不安にさせてしまいましたね。」
「ち、ちがうよ…! そんな…そうじゃなくて…っ」
「アドニス様、大丈夫ですよ。今は彼らのことを考えられなくても当然なのですから、ご心配なさらないで下さい」
「…え?」
柔らかに笑むエルダはとても落ち着いていて、その雰囲気に慰められるように、俯いていた顔を上げた。
「人間界を見守ることが我々の役目ではございますが、それは生まれた瞬間から使命として担っているものではございません。彼らを想う心が備わっている訳でもございません。成長していく過程で、多くのことを学び、知識を得て、少しずつ成長していく感情であり、役目なのです。いきなり、全く知らない、見たこともない相手に対して、心を込めて見守れと言われても、特別な感情など湧きません。アドニス様の心配できないという感情は、極自然なものです」
「………」
「永く関わっていくことで、次第に心を寄せていくものなのですよ。ですから、無理に理解しようとされる必要はございません。無理に彼らを案じる必要もございません。彼らを知ることで、少しずつ、自然と育っていくものです。…プティ達だって、人間界で起きたことも、彼らのことも、遠いどこかで起きたこと、としか感じていないのですから……ねぇ?」
隣に座り、静かに様子を見ていた赤ん坊にエルダが話しを振るが、赤ん坊達はキョトリとした顔で首を傾げるだけだった。
「ご心配されなくとも、大丈夫ですよ。今こうして彼らのことをお考えになられているだけでも、大変なご成長でございます。それだけで、今は充分でございます」
「……うん」
(…赤ちゃんじゃ、ないのに…)
なんとも複雑な気持ちだが、自分自身のことすら知らなかったことを思えば、人間界に対する知識も赤ん坊達と大差はなく、エルダの言う例えも最もだと頷くことしか出来なかった。
「…見守るって、ずっと…見てるの?」
「いいえ。全てが見える訳でもございませんし、ずっと見ている訳でも、ずっと彼らのことを考えている訳でもございませんよ」
「…そうなの?」
「私達には私達の日々がございますから、四六時中、彼らのことを考えていることはできません。それに見守ると言っても、彼らには自分達の力で生きていく能力があります。必要以上に案じる必要もございません。時折遠くから、そっと意識を向けるような感覚ですね」
困り顔で微笑むエルダに「なるほど…」と頷く。
「イヴァニエ様は、行っちゃったけど…ルカーシュカ様は…?」
「ルカーシュカ様はいらっしゃいますよ」
「…今日、来れないのは、どうして?」
「人間界に降りる役目を与えられる時、誰がどこへ向かうのか、バルドル様から直々に通達がされます。その際、大天使の皆様は必ず全員集まる様にと、掟で決まっておりますので、ルカーシュカ様もそちらにご出席されているのです」
「じゃあ…次会えるのは、三日後…?」
「左様でございますね」
「……そっか…」
「…お寂しいですね」
「……うん…」
寂しい───そう言葉にされて、その時初めて、彼らと会えないのだと実感し、心に出来た隙間を『寂しい』と感じた。
決して当たり前のことではないのに、当たり前のように、数日に一度、必ず顔を合わせていた二人と会えない。
言葉を交わしながら、穏やかに紅茶を飲む時間が途切れてしまったことを、急に物悲しく感じた。
「だぅ! あ!」
「…そうだね、みんながいるもんね」
「ぼくたちがいるよ!」とでも言うように、バタバタと腕を動かし、お喋りをする赤子達に、クスリと笑みが零れる。
「エルダも、いてくれるもの」
「ええ。私はずっと、お側におります」
「ふふ…ありがとう。…次、ルカーシュカ様にお会いした時に…色々、お話し聞いても、いいかな…?」
「勿論でございます。ルカーシュカ様でしたら、きっと色々教えて下さいますよ」
「うん」
『こうあらねばならない』
その枠に当て嵌まらない自分が不安で、他の天使達と同じように考えられない自分が酷く悲しかったが、今すぐどうこう成れるものではなく、少しずつ培っていくものであるということが分かり、ホッと安堵の息を吐いた。
(いつか自分も、エルダや、ルカーシュカ様や、イヴァニエ様みたいになれるのかな…?)
想像することすら難しい未来は、とても曖昧で───今はただ、人間界に降りたイヴァニエが、無事に帰ってきてくれることを、心の内でそっと祈るだけだった。
三日後。いつもはイヴァニエと一緒に来てくれるルカーシュカが、一人で現れた姿を見て、改めてイヴァニエは天界にいないのだと実感した。
一人分足りない、空いた空間に意識を向けている間に、ルカーシュカがすぐ目の前まで近づいていた。
「どうした?」
「あ……いえ…」
「…来たのが俺だけで、残念だったか?」
「へっ!? ち、ちが…!」
「ふ…冗談だ。イヴァニエがいないのが、不思議だったんだろう?」
「ぅ……あの…はい…」
「ずっと一緒に通ってたからな。俺も変な感じだ」
軽い口調で冗談を言うルカーシュカからは、イヴァニエを案じるような雰囲気は感じなかった。
差し出された彼の手を取り、ゆっくりと部屋の中を移動しながら、定位置となった長椅子に並んで腰を下ろした。
「あの…ルカーシュカ様は…人間界に、行かなくて、いいん、ですか…?」
「全員で行く必要はないからな。三人か四人で向かえば充分だ」
「誰が行くって…どうやって、決めるんですか…?」
「持ち回りで決まる時もあれば、加護を与えた人間が関わっている時は、与えた者が優先的に向かう時もある。その時の状況によって違うかな」
「…人間界で、大変なことがあったから…イヴァニエ様は、行ってるんです…よね?」
「そうだな。今回は大きな地動があったらしい」
「…危なく、ない…?」
「人間界に住まう者達には危険な状況だが、イヴァニエ達なら大丈夫だぞ。俺達は基本、あちらの世界から干渉されない存在だからな」
「…ふ…ぅん…?」
「…分かってないだろ。まぁ、何も危険なことはないと思っていればいい」
「…はい」
ゆるゆると会話を続けている間に、エルダが紅茶を淹れてくれた。
「どうぞ、お召し上がり下さい」
「ありがとう」
「あ、ありがとう」
目の前に出された温かなミルクティーを、ちびちびと口に含みながら、ルカーシュカに質問を続けた。
「天使様は…えっと、人間…とか、人間界の…生き物に、見えないん、ですか…?」
「そうだな…獣達は、それとなく気配は感じ取っているかもしれないが、姿を認識できる生き物は多くないだろう。人間達は、見えないし感じ取れない者が殆どだ。赤ん坊や、よほど敬虔な聖職者、もしくは見えざる者を見れるような、特異な体質の者の中には、稀に俺達の姿を認識できるような者もいるが、基本的にはまったく見えていないな」
「…赤ちゃんは、見えるんですね」
「あの子らは、まだ人間としては未熟で、俺達に近しい存在だからな。成長していくほどに、俺達とは離れていく。そうすると必然的に、俺達のことも見えなくなるんだよ」
「はぇ…」
感覚的に理解しながら、希望の種とは何か、どのように撒くのか、どうやって人間界まで行くのか…思いつくことを思いつくまま、端から口に出していった。
どんなに纏まりのない質問でも、ルカーシュカは一つずつ、噛み砕きながら丁寧に教えてくれる───六日ぶりに話せるのが嬉しくて、アレもコレもと聞いていた。
「今日はやけにたくさん喋るな」
「え…えっと…」
「前回お会いできなかった分、お時間が空いてしまいましたから…アドニス様も、お寂しかったんですよね?」
「エ、エルダ…!」
「……寂しい?」
突然のエルダの発言にギョッとするも、否定できるものでもなく、アワアワと忙しなく視線は泳いだ。
「だ…だって…っ、エルダに、聞いても…、ルカーシュカ様に、聞きましょうって…言って、教えてくれなかった、し…」
この数日間、人間界にイヴァニエが降りた件について色々と尋ねてみたのだが、エルダからの返答は一貫して「ルカーシュカ様に聞いてみましょうね」というやんわりとした回答拒否だった。
(寂しいとは…思ったけど…)
だがそれは、一方的な自分の我が儘だ。
ルカーシュカにも、イヴァニエにも、それぞれ役割があり、それらを優先するのは当然で、自分の為に時間を割いてもらうのは当然のことではないのだ。
それなのに「寂しい」と言って、変に気負わせるのも、気を遣わせるのも…まして、そんなことを言って、二人を困惑させるのも嫌だった。
心の中に留めておくだけなら許されるだろう、そう思っていたのに…
(言っちゃった…)
恥ずかしさと申し訳なさで、行き場を失った視線は自然と下を向いた。
寂しいと思ったのは本当なので否定もできない。だからと言って、その感情をルカーシュカに押し付けるつもりもなかった。
どんな顔をして、どう取り繕えばいいのか…ぐるぐると頭を悩ませていると、不意に隣に座るルカーシュカが動く気配がした。
「寂しかったのか?」
「わっ…!?」
俯いていた顔を覗き込むように、至近距離に寄ったルカーシュカの綺麗な顔に驚き、思わず身を引っ込めてしまった。
「…そこまで驚かなくてもいいだろ。お前だって似たようなことをしたじゃないか」
「え…? ど……え?」
「良い匂いがすると言って、自分から寄ってきただろう?」
少しばかり膨れた表情のルカーシュカに、心あたりのある出来事を思い出し、「あ」と小さく声が漏れた。
「あ、あれは…だ、だって…」
思い返せば、あの時の自分は随分とルカーシュカに近かった気がする。
体が触れていないのだからと、あまり気にしていなかったが、改めて同じような行為をされ、急に恥ずかしさが込み上げた。
「だって、なんだ?」
「ぅ…あの……だって…あれは…っ」
「…ルカーシュカ様、あまりアドニス様をいじめないで下さいませ」
「いじめているつもりはないんだがな」
そう言いつつ、その瞳は楽し気に揺れていた。
エルダの一言に、ようやく詰めていた距離を戻してくれたルカーシュカにホッと息を吐きながら、熱くなった頬を誤魔化すように、温くなったミルクティーを口に含んだ。
「で? 寂しかったのか?」
「…っ」
追い打ちのように聞かれ、喉の奥が「ぐぅ」と鳴った。
「そ…その…」
「うん」
「……でも…あの…」
「…なんで泣きそうになるんだ」
泣いてはいない…が、震えた語尾までは隠せなかった。
「……め、迷惑に…なっちゃう…から…」
口から零れた声は、思った以上に小さく、掠れていた。
寂しいと、そう伝えたいところで困らせる…そう思っての発言だったのだが、この言い方では余計にルカーシュカを困らせるだけだということに気づき、瞬時に後悔の念が押し寄せた。
(…聞こえなかった…とか、ないかな…)
声の小ささを考えれば、聞き取れなかったという可能性も…そんな淡い願いも虚しく、隣からルカーシュカの小さな溜め息が聞こえ、ビクリと肩が揺れた。
「お前は…またそんなことを言って…」
「っ…、ご、ごめ…」
「まて、謝るな。…怒ってる訳じゃない」
不意に伸びてきたルカーシュカの手が、カップに添えていた手を絡め取り、ぎゅうっと握り締めた。
「…なんとなく、何を考えているのかは想像がつくが、その心配は無用だ。おかしな我慢はしなくていい。…寂しいと思ったなら、素直にそう言えばいいだろう」
「…で、でも…」
「…なんだ、嘘だったのか?」
「ちがっ、嘘じゃない…! ……ぁ…」
言外に「寂しかった」と言ってしまったことに気づき、再び顔に熱が集まった。
「…アドニス様、そんなにご不安にならなくとも、大丈夫ですよ」
「う…」
困り顔のエルダにまで言われ、いよいよ逃げ場を失ってしまう。
「ぅ…と…」
「うん」
「……ず、ずっと…今まで…三日に、一度…会えて、たのに……きゅ、急に…今日は…会えないですって、なって……だから…」
「うん」
「……さ…びしい…な…て…」
言いながらどんどん語尾は小さくなってしまったが、それでも「寂しい」と口にするのが精一杯で、ルカーシュカの顔を見る余裕などまるで無かった。
「…その気持ちが嬉しいと言ったら、お前は怒るか?」
「……え?」
(……うれしい…?)
瞬時に言葉の意味を理解できず、やや呆けながらルカーシュカを見遣れば、楽しそうに笑うルカーシュカと目が合った。
その表情は、本当に嬉しそうで、困惑のような感情を含んでいないことは自分にも分かった。
(…寂しい気持ちが…嬉しい…? 自分が、怒る…?)
色んな感情がごちゃ混ぜになり、どうにも頭が上手く回らない。必死に意味を理解しようと、急に鈍くなった頭を動かしている間に、ルカーシュカが困ったように笑った。
「お前のその後ろ向きな考え方は、少しずつ解していかないとな」
「ん…と?」
「アドニス様、後ほど一緒に、ゆっくりお考えになりましょう?」
「…うん」
(…よく、分からないけど……寂しいって言っても、迷惑にならないなら…良かった)
それが分かっただけでも安心した。
『嬉しい』の意味は、後でエルダと一緒に考えよう…そう思いながら、ホッと気を緩めた───と、繋がっていたルカーシュカの指先が、撫でるように指の先に絡む感覚がして、そちらに意識を向けた。
「…?」
「…いや、なんでもない」
そのままするりと解けてしまった手に、少しばかりの名残惜しさを感じつつ、柔らかな雰囲気に戻った空気の中、ゆるりと会話を続けた。
「イヴァニエも、早く帰ってこれるといいな」
「…はい」
呟くように零れたルカーシュカの言葉に、コクリと頷く。
エルダもいて、赤ん坊達もいて、ルカーシュカもいる。
穏やかに過ごす時間は、いつもと変わらず温かくて、決して寂しいとは思わない。
それでも、いつもイヴァニエがいる向かい側の席が、ポツンと空いている光景が、今は妙に冷たく見えた。
その日の夜、エルダと二人で話しをした。
たくさん話して、考えて───そうしてようやく、ルカーシュカの言った『嬉しい』という言葉の意味を、きちんと理解したのだ。
--------------------
補足:人間界についてですが、基本触れる予定はありません。
あくまで天界メインで、人間界との関わり方について、補足として書く程度…とお考え頂けますと幸いです。
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