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学校 Day 1

第10話 結衣さん⁉ ~宮野宅へ~ 

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…トイレを済ませ、理科室へ戻る彩葉は乃愛を守る決意を固める…






理科室には、もう奏太しか残っていなかった。


戻ってきた二人を見ると、奏太は読んでいたライトノベルを閉じ、
「姉ちゃん、着いたって。藤井さんありがとう。じゃあ、帰るか」と言ったので、

すかさず
「あっ、宮野。 私も途中まで一緒に行く」
「あぁ、ありがとう。じゃあ一緒に行こう」

とさりげなく、宮野のお姉さんに直接交渉しにいくことに成功した。

このチャンスを逃してはならない。



アポなしでいきなり泊まりに来るなんて非常識なことだとはわかってる。
でもやるしかない、と意気込んだ。




乃愛ちゃんは、なんだか嬉しそうである。  
やっぱりちょっと懐いてくれたのかな。 

(ちなみに、B組で宮野奏太を「宮野」と呼ぶ人はほとんどいない。大抵の人は「カナタ」と呼ぶ)






誰もいないタイミングを見計らって、駐車場へと向かう。
(乃愛の金髪は非常に目立つので、頭から薄手のブランケットを被せた。靴ももちろんサイズが合わないので、奏太がおんぶをしている)








彩葉は頭の中で何度も交渉シミュレーションをしていたのだが
駐車場にはどこか見覚えのある赤いN-BOXが停まっていた。

そこには彩葉が通っている美容室の仲のいいスタッフが乗っていた。



二人は目をあわせ、
「彩葉ちゃん!?」
「結衣さん!? えっ、宮野のお姉さんだったの」  

動揺が隠せない。宮野もド派手に驚いている。

(乃愛はちゃんは宮野におんぶされているので結衣さんからは見えていない。)




「泊まりに来るって彩葉ちゃんのこと?」
「あ、それは違うくって、でも違うくはなくって」 

彩葉のしどろもどろな返答に結衣は困っている。


「泊まるって言ったのはこの子なんです!」と宮野を反転させて乃愛ちゃんを結衣さんに見せる。








「わぁー…」 乃愛ちゃんを見た結衣さんは口を開けたまま固まってしまったので、
「詳しいことは、後でじっくりお話しします。 それと、私も一緒に泊めてもらえませんか?」

「全然いいよー」と乃愛ちゃんを見つめたまま、結衣さんは気の抜けた返事をした。


OK出たと喜ぶ一方、仕方ないけど、結衣さんの視線を独占してしまう乃愛ちゃんの魅力にほんの少し嫉妬した。

彩葉に密かに好意を寄せていた奏太は激しく動揺し、乃愛は驚きつつもどこか嬉しそうにしていた。






奏太に促され車に乗り込む。
奏太が助手席に、彩葉と乃愛は後ろに座った。
後ろの窓には黒いフィルムが貼ってあり、外から中の様子はうかがえない。




すると結衣さんが後ろに振り返り、
「可愛いコだねー。乃愛ちゃんって言うの? よろしくね」と乃愛ちゃんと握手をし、続けて
「で、なになに、彩葉ちゃん。どうして急に泊まりたくなったの?」と結衣さんがランランと聞いてくる。

「み、宮野が乃愛ちゃんに手を出さないかどうかの監視です」と答えると、
「まあ、確かにこんだけ可愛いと危ないよねー。いい判断だと思うよー」と冗談か本気か分からないトーンで話す。

宮野は全力で否定してるようだが、結衣さんに軽くあしらわれている。


「でも、実は彩葉ちゃんが乃愛ちゃんとアソビたいだけだったりしてー」と結衣さん。
「まあ、それもありますけどねー」と軽く流したが、びっくりした。

ずっと思ってるけど、結衣さん、結構鋭いんだよな。





車に乗って乃愛ちゃんを降ろした後から、宮野は唇が切れた言って口元にティッシュを当ててるけど、なかなか血が止まらないみたいだ。


もしかして、乃愛ちゃんをおんぶしてる間ずっと唇を噛んで背中の感触から気をそらしてたのかな。
















「じゃあ、まずは、ちょっとスーパー行こっか」と結衣さんが車を走らせる。


スーパーに着くまでの間に、乃愛ちゃんについての状況を軽く話したところ、結衣さんも驚きつつも信じてくれた。

軽くしか話さなかったのは、途中で乃愛ちゃんが寝てしまったため、起こさないようにしゃべるのを止めたからだ。それと、本人の前で性の知識どうこうとか言えない。宮野もいるし。




乃愛ちゃんは、道中ずっと眠たそうにウトウトしていた。 
今日はいろんなことがあった、そりゃあ眠くもなるよね。

学校を出て、5分ほどしたとき、乃愛ちゃんは私の肩で眠ってしまったのだ。



すごくいい匂いがする。




車がカタンと揺れたとき、スッと起きて「あっ、ごめんね」といって元の姿勢に戻り、耐えているが超眠そうだ。

それを見かねて乃愛ちゃんの体をそっと倒し、膝枕してあげようとした。
乃愛ちゃんは一瞬、大丈夫と抵抗しようとしたが睡魔に負け、膝に頭をのせて寝てしまった。






膝の上ですやすやと眠る乃愛ちゃんの小さな頭を撫でながら思う。


中野君のことはほとんど何も知らないけど、自身の体が全く違うものになり、大勢の女子に急に話しかけられるなど周囲の環境も激変した。

そんな中でパニックにこそなっていないものの、とても不安なことは間違いない。

改めて、トイレでの自分の行為を反省し、この小さな女の子を守りたいと思った。












スーパーに着くと、そこは彩葉もよく利用するスーパーだった。
乃愛ちゃんを起こさないようにと、宮野と結衣さんが買い出しに行ってくれた。

買い出しから戻り、宮野宅へと向かおうとするとき、


「そういえば、彩葉ちゃん。お家には連絡したの?」と

 
忘れてた…。
勢いで泊まるって言っちゃったからそういうの忘れてた。

「忘れてました、連絡しないと」 


しかし、私のスマホは充電が切れてしまっていた。
結衣さんがスマホを貸してくれたので、それで電話する。



父は決して厳しくはないけど、すごく真面目な人だから、急に男子の家に泊まるなんて許してくれるとは思えない。
コールしながら、どうしようか考えた。

電話に出たのは残念ながら父だった。

「男子の家」の部分をはぐらかしながら、友達の家に泊まるともごもごしながら伝えようとしていると

結衣さんが代わってとジェスチャーしている。


イイ感じに会話を持っていき結衣さんに代わると、抜群の話術で話をまとめ、お泊りOKを勝ち取った。 
そうだ、父は若い女性は苦手だったな。









話がついたところで、宮野宅へと向かう。
スーパーから家までは5分ほどだそうだ。


道中外を見ながら気づいた。


宮野宅と彩葉の家は、結構近い。  
歩いて15分かからないんじゃないだろうか。


彩葉と奏太は小学校が別だった。
また、現在も彩葉はバスで、奏太は自転車で登校するため、登校時に会うことはなかった。




意外な事実に驚きながら、あとで、一旦家に荷物とりに帰ろうかなと考える。








そろそろ着くそうなので、乃愛ちゃんを起こすことにした。
そっと肩をゆすり、「そろそろ着くよー」と小さくささやくと…

「んー」と小さく声を漏らしながら、むくりと起き上がったが覚醒はしておらず、若干寝ぼけているようだった。
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