上 下
13 / 28
続編 クライドル学院にて

1.緊張の転校初日

しおりを挟む

リクエストにお応えして番外編に突入です。
よろしくお願いします(*^^*)

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 クライドル高等学院はアリシアが通っていたランタナ王立学園よりも規模が大きかった。
 あちらは三年制の学校だったけれど、こちらは中等部と高等部があって六年制となっている。
 おまけに高等部は全員入寮することになっていて、アリシアの荷物も昨日のうちに寮の部屋へと運び込まれている。


「ランタナ王立学園から転校して参りました、アリシア・ブルーベルと申します。よろしくお願い致します」


 転校初日。
 新しい制服に身を包み、かなり緊張していたアリシアだったが、クラスの皆が概ね笑顔で迎えてくれたのでホッと胸を撫で下ろす。

 歓迎の拍手が止み、教師から勧められるまま席に着く。そこは窓際からは二列目の、一番後ろの席だった。


 右隣にはヒラヒラ手を振る、ちょっと軽そうな男子。
 前の席には、振り返ってまで微笑んでくれる人の良さそうな男子。
 それから窓側の男子は無愛想だったけれど、目が合った瞬間、頬を真っ赤に染めて固まってしまった。

(まあ、極度の照れ屋さんなのね)

 やたらと男子が多いことが気になったけれど、周りを見ても男女が交互に座っているためアリシアはそういう並びなのだと理解した。



 そのまま授業に入りアリシアも新品の教科書を開いてはみたものの、正直かなりレベルが高く、今日来ていきなり飛び込めるような内容ではなかった。

 そしてそれはどの教科も似たようなもので、四時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った時は流石にアリシアもくたびれ果てていた。


「大丈夫?」

 右隣の男子が声を掛けてくれる。

「ええ、正直とても難しくて。さすがクライドル高等学院はレベルが高いですね」

 そう言ってアリシアが微笑むと、その男子はなぜか息を呑んで固まってしまった。

(みんな一体どうしたのかしら……?)




 アリシアは自分の容姿にあまり興味がない。けれど、一般的に言えば相当な美少女な上、最近ますます色気も出てきた。
 つまり、転校早々男子生徒を中心にかなりの視線を集めている。
 もちろん前の学園でも、入学した時にはかなり注目を集めたのだが。
 お察しの通り、脇目も振らずマーク一筋なアリシアだったので、次第に興味を持たれなくなっていったのだった。



 アリシアが昼食のため立ち上がると、ようやく女子の集団が近づいてきて声をかけてきた。

「アリシアさんとお呼びしてもいいかしら?」

 なんだかとても迫力のある女子生徒だった。
 左右に二人ずつ従えた彼女は、顎をくいっと上げて品定めするかのような目線をアリシアに向けている。

(あら、あのお胸は本物かしら?)

 アリシアは制服の上からでも主張の激しい彼女の胸部に一瞬視線も興味も奪われてしまった。

「ええ。あの、えっと、貴女のお名前をお伺いしても?」

 彼女の高慢ちきな態度が少し気にかかったけれど、アリシアはひとまず笑顔で尋ねた。
 すると。

「まあ! ロスヴィータ様をご存知ないなんて信じられないわっっ」
「これだから小国の田舎貴族は……」

 左右から一人ずつ順に前に出ると、大袈裟な身振り手振りでそんなことを言った。
 そして二人とも、言い終わった後は申し合わせたように大きなため息を吐いた。

 セリフの無かった両外の二人は、真ん中のロスヴィータ同様、顎をツンと上に向けアリシアにきつい視線をぶつけている。
 転校早々、波乱の予感である。

(まあ、まるでお芝居だわ!)

 しかし、当のアリシアは場違いな感想を抱いていた。


「ねえ、そういうのクライドルの恥だと思うんだ。やめた方がいいよ?」

 アリシアが困っていると思ってか、前の席の男子が間に入ってくれた。

「アリシアちゃん、こっちへおいで。ランチルームへ案内するよ」

 そして右隣の男子が、アリシアにさっと手を差し出した。


 ただランチルームに行きたいだけなのにそこまでのエスコートはちょっと、とアリシアは躊躇った。
 けれど、出された手を断るのは失礼にあたる。その時、


ーーパシッ


 と、軽く音を立ててその手を払ったのは、もちろんアリシアではない。

 それは窓際に座っていた無愛想な彼の仕業だった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーー
書き切ってもないのに投稿してしまいました。
今3話を書いてますが6話くらいかなと予想。完全に未定です。
迷走しそうで不安なのですが、皆さんが内容を覚えていらっしゃるうちに書きたいな、と。

どうぞ引き続きお付き合いください♫
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

業腹

ごろごろみかん。
恋愛
夫に蔑ろにされていた妻、テレスティアはある日夜会で突然の爆発事故に巻き込まれる。唯一頼れるはずの夫はそんな時でさえテレスティアを置いて、自分の大切な主君の元に向かってしまった。 置いていかれたテレスティアはそのまま階段から落ちてしまい、頭をうってしまう。テレスティアはそのまま意識を失いーーー 気がつくと自室のベッドの上だった。 先程のことは夢ではない。実際あったことだと感じたテレスティアはそうそうに夫への見切りをつけた

ゼラニウムの花束をあなたに

ごろごろみかん。
恋愛
リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。 じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。 レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。 二人は知らない。 国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。 彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。 ※タイトル変更しました

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

大好きな恋人が、いつも幼馴染を優先します

山科ひさき
恋愛
騎士のロバートに一目惚れをしたオリビアは、積極的なアプローチを繰り返して恋人の座を勝ち取ることに成功した。しかし、彼はいつもオリビアよりも幼馴染を優先し、二人きりのデートもままならない。そんなある日、彼からの提案でオリビアの誕生日にデートをすることになり、心を浮き立たせるが……。

殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のアナスタシアは、毒を盛られて3年間眠り続けていた。そして3年後目を覚ますと、婚約者で王太子のルイスは親友のマルモットと結婚していた。さらに自分を毒殺した犯人は、家族以上に信頼していた、専属メイドのリーナだと聞かされる。 真実を知ったアナスタシアは、深いショックを受ける。追い打ちをかける様に、家族からは役立たずと罵られ、ルイスからは側室として迎える準備をしていると告げられた。 そして輿入れ前日、マルモットから恐ろしい真実を聞かされたアナスタシアは、生きる希望を失い、着の身着のまま屋敷から逃げ出したのだが… 7万文字くらいのお話です。 よろしくお願いいたしますm(__)m

婚約者の心の声が聞こえてくるんですけど!!

ごろごろみかん。
恋愛
公爵令嬢ミレイユは、婚約者である王太子に聞きただすつもりだった。「最近あなたと仲がよろしいと噂のミシェルとはどんなご関係なの?」と。ミレイユと婚約者ユリウスの仲はとてもいいとは言えない。ここ数年は定例の茶会以外ではまともに話したことすらなかった。ミレイユは悪女顔だった。黒の巻き髪に気の強そうな青い瞳。これは良くない傾向だとミレイユが危惧していた、その時。 不意にとんでもない声が頭の中に流れ込んできたのである!! *短めです。さくっと終わる

妻の死で思い知らされました。

あとさん♪
恋愛
外交先で妻の突然の訃報を聞いたジュリアン・カレイジャス公爵。 急ぎ帰国した彼が目にしたのは、淡々と葬儀の支度をし弔問客たちの対応をする子どもらの姿だった。 「おまえたちは母親の死を悲しいとは思わないのか⁈」 ジュリアンは知らなかった。 愛妻クリスティアナと子どもたちがどのように生活していたのか。 多忙のジュリアンは気がついていなかったし、見ようともしなかったのだ……。 そしてクリスティアナの本心は——。 ※全十二話。 ※作者独自のなんちゃってご都合主義異世界だとご了承ください ※時代考証とか野暮は言わないお約束 ※『愚かな夫とそれを見限る妻』というコンセプトで書いた第三弾。 第一弾『妻の死を人伝てに聞きました。』 第二弾『そういうとこだぞ』 それぞれ因果関係のない独立したお話です。合わせてお楽しみくださると一興かと。 ※この話は小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...