上 下
12 / 21

12 翌日、かの国では・・・

しおりを挟む

聖フロイライン国、大神殿祈りの間。

女神アルテミスの彫像を前に跪いて祈りを捧げるのは、異世界より召喚されたこの私、聖女「サーラ」。ほんとは沙亞良って漢字で書くんだけどぉ。


昨日この世界にやってきて、大歓迎されたのは気分良いんだけどさぁ。
今朝、めっちゃ早起きさせられたんですけどぉ??
何気に人使い荒くない??


「聖女様、朝のお祈りお疲れ様でした」

「早速ですが、本日から第3孤児院へ赴き、祈りを捧げて頂きます」

「果実水をどうぞ」


若い神官達に甲斐甲斐しく世話を焼かれて、これもまぁ悪い気はしないよ?
けど、何か思ってたのと違うんですけどぉ??
もうちょっと、こう・・・潤いっていうの?


「ねぇ、リヒャルト様はいついらっしゃるの?」

神官達は顔を見合わせて首を傾げる。

「え、皇太子殿下ですか? 我々は何も伺っておりませんが・・・」


もう、使えないんだからぁ!
だけどとにかく、祈りを捧げてさえいればいいわけよ。ここの人たちは私を崇め奉るわけだし、ゆくゆくはあれでしょう?

リヒャルト様と結婚・・・


「っふ、ふふふ」
「ど、どうされたんですか、聖女様?」
「あっ、ごめんね。なんでもないからぁ」


だめだめ、妄想が行き過ぎて笑いが込み上げちゃったぁ!



実は一昨日、2年も片思いしてた相手に思いきって告白したのにバッサリ振られてさぁ・・・昨日は昨日で、確実だって言われてた推薦入試にも落ちるしさぁ・・・

ほんといいことなんてなぁんにもなくて、ヤケになって飛び出したんだけど、まさかこんなことになるなんてね。

私って、やっぱり普通の女の子じゃなかったんだぁ。


ふふふ


そういえば、勝手についてきた非処女のおばさん、傑作だったよね。

追い出されたらしいの。娼館送りなんだって、超ウケる。
何気に美人だったのもムカついたんだよね。
人様の召喚に勝手について来るからそんな目に遭うんだよ、バァーカ!


そうそう名前は「ウッシ」って私が決めてあげんたんだぁ。
いくつか候補があったんだけど、わざわざ私が選んであげたの。

「マリアンヌ」とか「エリーゼ」とか色々あったけど、どうせなら日本人らしい名前のほうがいいじゃん‼︎


私ってほんと優しいからぁ。
はぁ、そんなことより早く逢いにきてくれないかなぁ、リヒャルト様・・・



◆◇◆



「大神官、聖女の様子はどうだ?」
「はっ、早朝より熱心に祈りを捧げておられます」

「そうか・・・来て早々聖女も大変だな」
「ですが早速、王都の邪気溜まりに対流が生じております。まぁ、そのために召喚したのですから、聖女様には頑張っていただかないと」


たしかにな。国庫を削って召喚術に必要な素材を集めたのだ。それこそ召喚した甲斐があったというものだ。
 

「ところで、あの女はどうなった?」
「あの女、と申しますと?」

「とぼけるな、私がヒルデガルトに推薦したもう1人の女だ、黒髪の」
「ああ、彼女ならあの後すぐ神殿を出てまっすぐ紹介所に向かいました。今頃はヒルデガルトで仕事の説明でも受けているのではないでしょうか」

「ふむ・・・」


そうか、そうか。
聖女様をどうこうするわけにはいかないからな。

処女神の御使である聖女サーラには、生涯純潔を守って、我が聖フロイライン国に清い祈りを捧げ続けてもらわねばならん。


まさか異世界の女があんなに美しいとは思わなかった。
いや、見たことのないものや珍しいものに惹かれるのが人の性というものか。

聖女のほかにも妙齢の女を渡してくださるなど、天も粋なことをなさる。



それにしても凛としたいい女だった。名前はウッシだったか・・・組み敷いて啼かせてみるのが楽しみで仕方ない。


エグゼクティブ専用にしたとは言え、先に他の高位貴族に手をつけられては気分が悪いな。


よし、今夜あたり早速ヒルデガルトを訪ねてみるか・・・






ーーーーーーーー

読んでくださってどうもありがとうございます!
サブタイトルを付けようかと検討中です。
あと、ストーリーごとのタイトルも・・・

お気に入り登録もありがとうございます。とっても励みになってます!
また、しおりとか挟んで下さったら今この辺読んで下さってるんだなぁって思って参考にしてます。
引き続きよろしくお願いします(^^)

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

【完結】帰れると聞いたのに……

ウミ
恋愛
 聖女の役割が終わり、いざ帰ろうとしていた主人公がまさかの聖獣にパクリと食べられて帰り損ねたお話し。 ※登場人物※ ・ゆかり:黒目黒髪の和風美人 ・ラグ:聖獣。ヒト化すると銀髪金眼の細マッチョ

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

皇太子に愛されない正妃

天災
恋愛
 皇太子に愛されない正妃……

極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました

白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。 あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。 そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。 翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。 しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。 ********** ●早瀬 果歩(はやせ かほ) 25歳、OL 元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。 ●逢見 翔(おうみ しょう) 28歳、パイロット 世界を飛び回るエリートパイロット。 ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。 翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……? ●航(わたる) 1歳半 果歩と翔の息子。飛行機が好き。 ※表記年齢は初登場です ********** webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です! 完結しました!

王太子殿下の執着が怖いので、とりあえず寝ます。【完結】

霙アルカ。
恋愛
王太子殿下がところ構わず愛を囁いてくるので困ってます。 辞めてと言っても辞めてくれないので、とりあえず寝ます。 王太子アスランは愛しいルディリアナに執着し、彼女を部屋に閉じ込めるが、アスランには他の女がいて、ルディリアナの心は壊れていく。 8月4日 完結しました。

好きでした、昨日まで

ヘロディア
恋愛
幸せな毎日を彼氏と送っていた主人公。 今日もデートに行くのだが、そこで知らない少女を見てから彼氏の様子がおかしい。 その真相は…

たとえこの想いが届かなくても

白雲八鈴
恋愛
 恋に落ちるというのはこういう事なのでしょうか。ああ、でもそれは駄目なこと、目の前の人物は隣国の王で、私はこの国の王太子妃。報われぬ恋。たとえこの想いが届かなくても・・・。  王太子は愛妾を愛し、自分はお飾りの王太子妃。しかし、自分の立場ではこの思いを言葉にすることはできないと恋心を己の中に押し込めていく。そんな彼女の生き様とは。 *いつもどおり誤字脱字はほどほどにあります。 *主人公に少々問題があるかもしれません。(これもいつもどおり?)

処理中です...