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一話
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私はとある公爵令嬢に雇われて仮の聖女(偽)をしていた
椅子の背もたれに背中預けて三年前を思い出す
なんでも今この世界に聖女がいるらしいと噂が流れている
兵たちは一軒一軒聞き取り調査をして、十八歳以上には強制的に魔法属性の検査をしている
本来魔法属性を申告する必要はないのに、無理やりあばかれる
個人的な事に無理やり土足で踏み込む行為に、市民の不満が兵に向いている
「お役人様も大変だね」
当時の私は呑気にそんな事を考えていた
「リリィ!このパンをカラマさんの所に届けてきて」
「はーい」
足を痛めてしまったカラマさんの所に治るまでと数日に一回パンを届けている
普段から慣れた道をパンを持って届けるだけの普通の日で、あの女に会わなければ思い出す事もない日だった
「今思い出しても腹が立つ」
賢く寄り道をせずカラマさんの所にパンを持って行った帰り、一代の馬車に呼び止められた
「ちょっと、そこのあなた」
足をとめて振り向けば、どこを見てもお貴族様とわかる綺麗な馬車
貴族に知り合いなどいるはずもない私に何の用だろうと心臓が止まるかと思った
怖くなって一歩後ろに下がってしまったのを覚えている
そんな私を気にもせず真横に止まり、扉が開けられた
身構えてしまった私に中から声がかかる
「あなた、名前は?」
『正直に名乗るべきか』考えていると同じ質問が聞こえた
「あなた、名前は?」
「はい、ソフィアと申します」
「そう。ご実家はパン屋さんかしら?」
「は、はい」
『なぜ知っているのか』や『もし何かして、両親に何かあったらどうしよう』なんて心配をよそに同い年くらいの綺麗な女性が降りてきた
「あなたの家まで連れて行ってくださる?」
「あ、え、いえ。私の家なんてしがないパン屋ですので、貴族様のお口に合う物など、、、」
「いいから、連れて行きなさい」
有無を言わさないような口調で言ってくる
でも家族を守る為に私も戦った
「何でしたら、人気のパン屋をご紹介致しますが」
「私に何度同じ事を言わせる気?私をあなたの所のパン屋に連れていきなさい」
「は、、い」
お父さん・お母さん、ごめんなさい
仕方無しにゆっくりとした足取りで家に戻った
なぜか貴族の令嬢も歩いてついてくる
「ここがそうね」
「いえ、あ、はい」
貴族のお嬢様が自ら扉を開けて入っていくので、重い足で入っていくしかなかった
「いらっしゃ、、、」
「お邪魔するわね」
店内をぐるっと見回したかと思うと父に向かって言った
「店にあるパンを全部貰うわ」
「え、は、はい」
父は私をチラッと見たが私の方が目を逸らせてしまった
平民が貴族に逆らえるはずがない
父も母も急いで袋を取り出して並べてあるパンを詰めていく
貴族様に渡すパンに何か不備があればと潰さないよう一袋に少しの量しか入れていない
「ちょっと。この袋まだ入るわ。袋なんて食べられないんだから、もっと一杯に詰めて」
「は、はい」
入れ終わって棚に置いてある紙袋を取り、詰め直す
やっと詰め終わって棚の袋を見てから父に話かけた
「これで足りるかしら?」
少女の言葉に後ろに控えていたメイドが前に出て父にお金を渡してからまたさがった
父は手の上を見て驚いてから
「は、はい。ありがとうございます」
「そう。それでは今日は店じまいするわよね」
貴族のご令嬢はくるっと振り向いてメイドをみた
「これを孤児院や浮浪者に適当に配ってきて。わかっていると思うけれど、護衛も連れて行くように。その間私はここで待ちますから、護衛は不要。荷物持ちも兼ねてみんな連れて行きなさい。これは命令よ」
メイドは一瞬顔を歪ませたが「畏まりました」と一礼してさがってから、護衛をつれて戻ってパンを持って出て行った
「もし、一つでもパンを食べたらクビよ」
『流石お貴族様』と心でつっこみながら家にある一番いい紅茶を出した
貴族のお嬢様は一口のんでから置くと話し始めた
「早速なのだけど、今日こちらに来たのはリ、、ソフィアさんの事よ」
一瞬『だれだ?』の顔をしたが気づいてくれた
「む、娘が何か粗相をいたしましたでしょうか?」
父が怯えながら聞くが、一切記憶にぬい
それでも難癖つけるのが貴族
私も生唾を飲んで答えを待つ
「いいえ。今日は来年から学園に通って頂きたくお願いにあがりましたの。あ、学費も当家が援助させていただきます」
「はい?学園ですか?」
「そうよ。平民でも学があった方がいいでしょ。私は今回そのお手伝いをしたいと思いまして」
「はぁ」
「気になさる必要は御座いませんわ。私、シルビア・ノマノフ個人でします慈善事業の一環です。ただ、私が後ろ盾する事は誰一人口外してはなりません。たとえ王様であってもです」
「お、お父さん、私学園なんて行くたくない。学園なんて行かなくても、パン屋は継げるもん」
震える手で父に縋った
このシルビアと名乗る令嬢の提案に不安を感じた
「あら?私の素晴らしい提案に逆らう気ですの?随分と教育が行き届いています事」
シルビアが悪そうに微笑む
父と母は顔を見合わせてシルビアに対峙する
「ご提案は大変名誉な事でございますが、娘が私共から離れたがっておりませんし、、」
「は?それがどうしました?あなた方に拒否権ごあるとでも?」
「い、いえ。ただ、娘が離れたがっていませんので、、、」
「それが何か?別に私は取って食おうとしている訳ではありません。二年間、学園に通う名誉を与えてあげるのです。卒業後、私はあなたに会うつもりはないから安心して。手紙も送るつもりもないわ。それとも私の顔に泥を塗るきですの?」
両親は顔色を悪くしながらも守ろうとしてくれている
「まってください。行きます。私学園に行きますから」
「わかれば良いのよ。くれぐれも、ノマノフ家が後見人である事は言ってはダメよ」
シルビアは口元だけ微笑んでから冷めてしまっているであろう紅茶一口飲んでから戻して立ち上がった
「帰ります」
振り向いて何歩か進んでから、とまって
からまた振り返った
「制服なんかのお金を渡しておかないとね。明日、届けさせるからきちんと準備するのよ。もし逃げたりしたら、ね」
シルビアはまたニッコリと微笑んだが、やはり目だけは笑っていない
メイド達がまだ戻っていないのに一人で出て行き、来た道を戻っていったようだ
少ししてから慌てた様子で戻ってきたメイド達に
シルビアが帰ってしまったのを告げると、簡単に一礼をして慌てて後を追っていった
「あれは本当に怖かったわ」
椅子の背もたれに背中預けて三年前を思い出す
なんでも今この世界に聖女がいるらしいと噂が流れている
兵たちは一軒一軒聞き取り調査をして、十八歳以上には強制的に魔法属性の検査をしている
本来魔法属性を申告する必要はないのに、無理やりあばかれる
個人的な事に無理やり土足で踏み込む行為に、市民の不満が兵に向いている
「お役人様も大変だね」
当時の私は呑気にそんな事を考えていた
「リリィ!このパンをカラマさんの所に届けてきて」
「はーい」
足を痛めてしまったカラマさんの所に治るまでと数日に一回パンを届けている
普段から慣れた道をパンを持って届けるだけの普通の日で、あの女に会わなければ思い出す事もない日だった
「今思い出しても腹が立つ」
賢く寄り道をせずカラマさんの所にパンを持って行った帰り、一代の馬車に呼び止められた
「ちょっと、そこのあなた」
足をとめて振り向けば、どこを見てもお貴族様とわかる綺麗な馬車
貴族に知り合いなどいるはずもない私に何の用だろうと心臓が止まるかと思った
怖くなって一歩後ろに下がってしまったのを覚えている
そんな私を気にもせず真横に止まり、扉が開けられた
身構えてしまった私に中から声がかかる
「あなた、名前は?」
『正直に名乗るべきか』考えていると同じ質問が聞こえた
「あなた、名前は?」
「はい、ソフィアと申します」
「そう。ご実家はパン屋さんかしら?」
「は、はい」
『なぜ知っているのか』や『もし何かして、両親に何かあったらどうしよう』なんて心配をよそに同い年くらいの綺麗な女性が降りてきた
「あなたの家まで連れて行ってくださる?」
「あ、え、いえ。私の家なんてしがないパン屋ですので、貴族様のお口に合う物など、、、」
「いいから、連れて行きなさい」
有無を言わさないような口調で言ってくる
でも家族を守る為に私も戦った
「何でしたら、人気のパン屋をご紹介致しますが」
「私に何度同じ事を言わせる気?私をあなたの所のパン屋に連れていきなさい」
「は、、い」
お父さん・お母さん、ごめんなさい
仕方無しにゆっくりとした足取りで家に戻った
なぜか貴族の令嬢も歩いてついてくる
「ここがそうね」
「いえ、あ、はい」
貴族のお嬢様が自ら扉を開けて入っていくので、重い足で入っていくしかなかった
「いらっしゃ、、、」
「お邪魔するわね」
店内をぐるっと見回したかと思うと父に向かって言った
「店にあるパンを全部貰うわ」
「え、は、はい」
父は私をチラッと見たが私の方が目を逸らせてしまった
平民が貴族に逆らえるはずがない
父も母も急いで袋を取り出して並べてあるパンを詰めていく
貴族様に渡すパンに何か不備があればと潰さないよう一袋に少しの量しか入れていない
「ちょっと。この袋まだ入るわ。袋なんて食べられないんだから、もっと一杯に詰めて」
「は、はい」
入れ終わって棚に置いてある紙袋を取り、詰め直す
やっと詰め終わって棚の袋を見てから父に話かけた
「これで足りるかしら?」
少女の言葉に後ろに控えていたメイドが前に出て父にお金を渡してからまたさがった
父は手の上を見て驚いてから
「は、はい。ありがとうございます」
「そう。それでは今日は店じまいするわよね」
貴族のご令嬢はくるっと振り向いてメイドをみた
「これを孤児院や浮浪者に適当に配ってきて。わかっていると思うけれど、護衛も連れて行くように。その間私はここで待ちますから、護衛は不要。荷物持ちも兼ねてみんな連れて行きなさい。これは命令よ」
メイドは一瞬顔を歪ませたが「畏まりました」と一礼してさがってから、護衛をつれて戻ってパンを持って出て行った
「もし、一つでもパンを食べたらクビよ」
『流石お貴族様』と心でつっこみながら家にある一番いい紅茶を出した
貴族のお嬢様は一口のんでから置くと話し始めた
「早速なのだけど、今日こちらに来たのはリ、、ソフィアさんの事よ」
一瞬『だれだ?』の顔をしたが気づいてくれた
「む、娘が何か粗相をいたしましたでしょうか?」
父が怯えながら聞くが、一切記憶にぬい
それでも難癖つけるのが貴族
私も生唾を飲んで答えを待つ
「いいえ。今日は来年から学園に通って頂きたくお願いにあがりましたの。あ、学費も当家が援助させていただきます」
「はい?学園ですか?」
「そうよ。平民でも学があった方がいいでしょ。私は今回そのお手伝いをしたいと思いまして」
「はぁ」
「気になさる必要は御座いませんわ。私、シルビア・ノマノフ個人でします慈善事業の一環です。ただ、私が後ろ盾する事は誰一人口外してはなりません。たとえ王様であってもです」
「お、お父さん、私学園なんて行くたくない。学園なんて行かなくても、パン屋は継げるもん」
震える手で父に縋った
このシルビアと名乗る令嬢の提案に不安を感じた
「あら?私の素晴らしい提案に逆らう気ですの?随分と教育が行き届いています事」
シルビアが悪そうに微笑む
父と母は顔を見合わせてシルビアに対峙する
「ご提案は大変名誉な事でございますが、娘が私共から離れたがっておりませんし、、」
「は?それがどうしました?あなた方に拒否権ごあるとでも?」
「い、いえ。ただ、娘が離れたがっていませんので、、、」
「それが何か?別に私は取って食おうとしている訳ではありません。二年間、学園に通う名誉を与えてあげるのです。卒業後、私はあなたに会うつもりはないから安心して。手紙も送るつもりもないわ。それとも私の顔に泥を塗るきですの?」
両親は顔色を悪くしながらも守ろうとしてくれている
「まってください。行きます。私学園に行きますから」
「わかれば良いのよ。くれぐれも、ノマノフ家が後見人である事は言ってはダメよ」
シルビアは口元だけ微笑んでから冷めてしまっているであろう紅茶一口飲んでから戻して立ち上がった
「帰ります」
振り向いて何歩か進んでから、とまって
からまた振り返った
「制服なんかのお金を渡しておかないとね。明日、届けさせるからきちんと準備するのよ。もし逃げたりしたら、ね」
シルビアはまたニッコリと微笑んだが、やはり目だけは笑っていない
メイド達がまだ戻っていないのに一人で出て行き、来た道を戻っていったようだ
少ししてから慌てた様子で戻ってきたメイド達に
シルビアが帰ってしまったのを告げると、簡単に一礼をして慌てて後を追っていった
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