20 / 23
*番外編*かけがえのないお方⑥
しおりを挟む
「ソフィア、少しいいかい?」
新しい生活にも慣れてきた頃、部屋の片付けをしていた私に神妙な面持ちでお父様が声をかけてきました。
一体どうしたのかしら?
不安に感じつつ、私はお父様と向かい合うように椅子に腰掛け、苦しそうな表情のお父様を見つめました。
「...縁談の話がきたんだ」
その言葉を聞いた瞬間、私は胸がドクドクと嫌な音を立てるのを感じました。
没落寸前の伯爵令嬢に縁談を持ちかけるなんて、普通のお方ではないことは分かっていたからです。
いずれはこうなるとは思っていました。お父様もお母様も無理矢理結婚をさせるような人ではありません。相当に悩んだのでしょう。
「...そう、ですか」
アクリウス公爵様の顔が浮かびましたが、すぐにこの感情は捨て去らなければならないのだと思うと胸が締め付けられるようでした。
こんな事になるのなら、もっと早く気持ちを打ち明けていれば良かった...
「ザーグ公爵家は知っているな?」
その瞬間、私はパッと視線をお父様へ向けました。
「その御子息からだ」
ザーグ公爵家。そこの御子息様はアクリウス公爵様に他ならないのです。
アクリウス公爵様が、私に縁談話を?
一体どうして?
嬉しい気持ちと疑問が湧き上がり、オロオロとする私の姿に、お父様は何か勘違いしたのか、悲しそうな表情で言いました。
「ソフィア、私もこれからまだ頑張ろうと思っているんだ。心配することはない。お前が嫌なのであれば断る事だって...」
「お受けします!!!」
「あぁ、分かった。お受け....え?」
「アクリウス公爵様と結婚させてください、お父様!」
新しい生活にも慣れてきた頃、部屋の片付けをしていた私に神妙な面持ちでお父様が声をかけてきました。
一体どうしたのかしら?
不安に感じつつ、私はお父様と向かい合うように椅子に腰掛け、苦しそうな表情のお父様を見つめました。
「...縁談の話がきたんだ」
その言葉を聞いた瞬間、私は胸がドクドクと嫌な音を立てるのを感じました。
没落寸前の伯爵令嬢に縁談を持ちかけるなんて、普通のお方ではないことは分かっていたからです。
いずれはこうなるとは思っていました。お父様もお母様も無理矢理結婚をさせるような人ではありません。相当に悩んだのでしょう。
「...そう、ですか」
アクリウス公爵様の顔が浮かびましたが、すぐにこの感情は捨て去らなければならないのだと思うと胸が締め付けられるようでした。
こんな事になるのなら、もっと早く気持ちを打ち明けていれば良かった...
「ザーグ公爵家は知っているな?」
その瞬間、私はパッと視線をお父様へ向けました。
「その御子息からだ」
ザーグ公爵家。そこの御子息様はアクリウス公爵様に他ならないのです。
アクリウス公爵様が、私に縁談話を?
一体どうして?
嬉しい気持ちと疑問が湧き上がり、オロオロとする私の姿に、お父様は何か勘違いしたのか、悲しそうな表情で言いました。
「ソフィア、私もこれからまだ頑張ろうと思っているんだ。心配することはない。お前が嫌なのであれば断る事だって...」
「お受けします!!!」
「あぁ、分かった。お受け....え?」
「アクリウス公爵様と結婚させてください、お父様!」
33
お気に入りに追加
3,069
あなたにおすすめの小説

【短編】白い結婚の行く末~戦地から戻った夫は、妻の秘密を持って帰りました~
八重
恋愛
「悪いが、君を愛することはない」
フェリシア・リズ・デュヴィラール王女は結婚式後の初夜に、夫の第一王子オリヴァー・ローゼクラインからそう言われた。
この結婚はいわゆる政略結婚の一環でなされたもので、二国間の友好の証として王女と王子の結婚がおこなわれた。
結婚から半年、オリヴァーの戦地入りが決まる。
そして無事に一年後に彼は帰還した。
フェリシアの秘密を持って──。
※小説家になろうでは、連載をしております

【完結済】侯爵令息様のお飾り妻
鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
没落の一途をたどるアップルヤード伯爵家の娘メリナは、とある理由から美しい侯爵令息のザイール・コネリーに“お飾りの妻になって欲しい”と持ちかけられる。期間限定のその白い結婚は互いの都合のための秘密の契約結婚だったが、メリナは過去に優しくしてくれたことのあるザイールに、ひそかにずっと想いを寄せていて─────

【完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る
金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。
ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの?
お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。
ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。
少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。
どうしてくれるのよ。
ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ!
腹立つわ〜。
舞台は独自の世界です。
ご都合主義です。
緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】「君を手に入れるためなら、何でもするよ?」――冷徹公爵の執着愛から逃げられません」
21時完結
恋愛
「君との婚約はなかったことにしよう」
そう言い放ったのは、幼い頃から婚約者だった第一王子アレクシス。
理由は簡単――新たな愛を見つけたから。
(まあ、よくある話よね)
私は王子の愛を信じていたわけでもないし、泣き喚くつもりもない。
むしろ、自由になれてラッキー! これで平穏な人生を――
そう思っていたのに。
「お前が王子との婚約を解消したと聞いた時、心が震えたよ」
「これで、ようやく君を手に入れられる」
王都一の冷徹貴族と恐れられる公爵・レオンハルトが、なぜか私に異常な執着を見せ始めた。
それどころか、王子が私に未練がましく接しようとすると――
「君を奪う者は、例外なく排除する」
と、不穏な笑みを浮かべながら告げてきて――!?
(ちょっと待って、これって普通の求愛じゃない!)
冷酷無慈悲と噂される公爵様は、どうやら私のためなら何でもするらしい。
……って、私の周りから次々と邪魔者が消えていくのは気のせいですか!?
自由を手に入れるはずが、今度は公爵様の異常な愛から逃げられなくなってしまいました――。
あなたの側にいられたら、それだけで
椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。
私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。
傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。
彼は一体誰?
そして私は……?
アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。
_____________________________
私らしい作品になっているかと思います。
ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。
※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります
※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる