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*番外編*かけがえのないお方④
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私ってば、急に何をっ...
ハッとして口を手で押さえたものの、すでに声に出してしまった以上言葉を戻すことなどできません。
「あのっ、違うんです。先程はまともにお礼も言わず申し訳ございませんでした。とても困っていたので助かりました」
話が何も噛み合っていないわ。どうして急に名前の確認なんか...。違う方だったらどうするの。
席を立ちお辞儀をしてお礼の言葉を言いながら、私は内心動揺していました。
「あぁ、別に大したことではない。それと、アクリウスは私だが...」
不思議そうな表情で見つめる男性...いえ、アクリウス公爵様。それがどうかしたのか、と言った表情です。
まともにお礼も言えなかった私に、またも手を差し伸べてくださるお方。公爵という地位や皇帝に仕える騎士団を務めるお方でありながら、偉そうな素振りを一度も見せません。
カトレーヌが話していたように、無愛想な方だと噂では聞いていましたし現にあまり表情豊かな方ではありませんが、今までの振る舞いからとても優しい方だということは明らかでした。
「さっきの事ですが...」
先程の誤解を解かないといけないわ。あの寂しそうな表情が脳裏によぎり、私は真っ直ぐに公爵様を見て言いました。
「私、公爵様を怖いだなんて思いません」
「...っ、そう、か」
一瞬驚いたように目を見開き、公爵様は答えました。そして思い出したかのように足元に視線を移すと、「足は大丈夫なのか?」と心配そうに言いました。
「少しだけ切ったみたいですが...擦り傷のようなので、大丈夫です」
公爵様との会話で、傷のことなどすっかり忘れていました。
「念のためこれをまきつけておけ」
「こっ、公爵様!?」
公爵様は自分でできますからと言う私の言葉を遮るように私を椅子に座らせて、ハンカチを私の足に巻いてくださりました。
「ありがとうございます」
思わず綻ぶように笑顔を向けると、公爵様はパッと顔を横に向けて「大したことではない」とポツリと言いました。
その後、よほど心配してくれたのかカトレーヌが急足で私の元に来ましたが、アクリウス公爵様と一緒にいたことに驚いたようでした。
アクリウス公爵様はカトレーヌが来たのを見て、ぺこっと会釈をしその場から去ってしまいました。
「ソフィア、さっきのってアクリウス公爵様よね?知り合いだったの!?」
「違うわ。さっき道に迷った時に案内してくださったの。あと、今は傷の手当てを...」
「傷!?大丈夫なの?」
一体何があったのよとカトレーヌに問い詰められて一通り説明をすると、あのアクリウス公爵様が令嬢に優しくするなんて!とカトレーヌは興奮気味でした。
他の方よりも体格のいいアクリウス公爵様は、少し離れた場所に移動されてもすぐにどこにいるかがわかります。
私の視線がアクリウス公爵様へ向いているのがわかったのでしょう。「私、邪魔しちゃったわね」カトレーヌはそう言いながらも嬉しそうに微笑んでいました。
ハッとして口を手で押さえたものの、すでに声に出してしまった以上言葉を戻すことなどできません。
「あのっ、違うんです。先程はまともにお礼も言わず申し訳ございませんでした。とても困っていたので助かりました」
話が何も噛み合っていないわ。どうして急に名前の確認なんか...。違う方だったらどうするの。
席を立ちお辞儀をしてお礼の言葉を言いながら、私は内心動揺していました。
「あぁ、別に大したことではない。それと、アクリウスは私だが...」
不思議そうな表情で見つめる男性...いえ、アクリウス公爵様。それがどうかしたのか、と言った表情です。
まともにお礼も言えなかった私に、またも手を差し伸べてくださるお方。公爵という地位や皇帝に仕える騎士団を務めるお方でありながら、偉そうな素振りを一度も見せません。
カトレーヌが話していたように、無愛想な方だと噂では聞いていましたし現にあまり表情豊かな方ではありませんが、今までの振る舞いからとても優しい方だということは明らかでした。
「さっきの事ですが...」
先程の誤解を解かないといけないわ。あの寂しそうな表情が脳裏によぎり、私は真っ直ぐに公爵様を見て言いました。
「私、公爵様を怖いだなんて思いません」
「...っ、そう、か」
一瞬驚いたように目を見開き、公爵様は答えました。そして思い出したかのように足元に視線を移すと、「足は大丈夫なのか?」と心配そうに言いました。
「少しだけ切ったみたいですが...擦り傷のようなので、大丈夫です」
公爵様との会話で、傷のことなどすっかり忘れていました。
「念のためこれをまきつけておけ」
「こっ、公爵様!?」
公爵様は自分でできますからと言う私の言葉を遮るように私を椅子に座らせて、ハンカチを私の足に巻いてくださりました。
「ありがとうございます」
思わず綻ぶように笑顔を向けると、公爵様はパッと顔を横に向けて「大したことではない」とポツリと言いました。
その後、よほど心配してくれたのかカトレーヌが急足で私の元に来ましたが、アクリウス公爵様と一緒にいたことに驚いたようでした。
アクリウス公爵様はカトレーヌが来たのを見て、ぺこっと会釈をしその場から去ってしまいました。
「ソフィア、さっきのってアクリウス公爵様よね?知り合いだったの!?」
「違うわ。さっき道に迷った時に案内してくださったの。あと、今は傷の手当てを...」
「傷!?大丈夫なの?」
一体何があったのよとカトレーヌに問い詰められて一通り説明をすると、あのアクリウス公爵様が令嬢に優しくするなんて!とカトレーヌは興奮気味でした。
他の方よりも体格のいいアクリウス公爵様は、少し離れた場所に移動されてもすぐにどこにいるかがわかります。
私の視線がアクリウス公爵様へ向いているのがわかったのでしょう。「私、邪魔しちゃったわね」カトレーヌはそう言いながらも嬉しそうに微笑んでいました。
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