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旦那様の使用人達
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初めまして、突然の乱入失礼致します。
自己紹介をしたいのですが、残念ながら私はメイドAというモブ中のモブ。
名乗る名前がないことをご了承ください。
できれば名前をつけてください。チャームポイントは明るい笑顔、そして前髪を留めるオレンジ色のヘアピンくらいでしょうか。
さて、冗談はさておき。
この状況どう致しましょうか。先程からあまりの甘い空気に使用人達はどう対応して良いか分からず、いつものにこやかな笑顔を浮かべ、耐えております。
ええ、毎朝儀式のように行われるこの行動です。
堅物で口数が少ない旦那様。突然婚約をされたかと思うと、すぐにご結婚されて連れてこられたのが奥様となったソフィア様。
それはそれは可愛らしい方で、側で見ていても旦那様が大好きなのが伝わってくるほど。
没落寸前のところを旦那様に見染められて結婚に至ったとの噂ですが、実際は旦那様が奥様のことを随分前から慕っていたということは使用人であれば誰もが周知の事実です。
旦那様は寡黙な方ですが、私たち使用人に対して威張ることもせず、不器用ながらに気を遣ってくださるお優しい方。
ただ、その寡黙さから御令嬢からは避けられていたことに使用人たちは胸が痛んでおりました。
そんな旦那様が結婚されると聞き、それはそれはみな嬉しく思っておりました。
いつものように旦那様をお見送りする時のこと。突然、旦那様が奥様の腕を取ったかと思うとキスをしたのです。
「!!???」
表情を崩すわけにはいきません。ですが、使用人達は全員動揺しておりました。
な、何が起こったんだ!??と
嬉し恥ずかしそうに頬を染め、微笑む奥様と顔を赤くしながらいってくる、と言い出かける旦那様。
とてつもなく甘い空気。
し、新婚さんだ...!!
まさか旦那様がこんな行動を私達の前で行うとは思わず、とても驚いたものです。ですが、慣れというのは怖いですね。
毎朝のように甘い空気を出されると、私たちもそれに慣れてきたのでしょう。生温かい微笑みを浮かべるようになりました。
あの寡黙で表情を崩さない旦那様が顔を赤くされている...あぁ、平和だな。
そして、今朝から何故か旦那様も奥様も様子がおかしかったのですが、夕食の際はなお変でした。
いや、変というより...
「ソ、ソフィア、今日はどんな一日だった?」
「ゆ、友人とお茶をして世間話を致しました。だ、旦那様はどうでしたか?」
「わ、私か?ふ、普通だ」
いやいや、普通ってなんだよ。
使用人の心の声が聞こえてくるようです。
ちらちらっとお互いの顔を見てはさらに顔を赤らめる。
むず痒くて仕方がない中で、私は表情を管理するのに必死でした。
他の使用人達もそうなのでしょう。初々しさ満載の夫婦は生温かい微笑みを浴びながら夕食を済ませるのでした。
自己紹介をしたいのですが、残念ながら私はメイドAというモブ中のモブ。
名乗る名前がないことをご了承ください。
できれば名前をつけてください。チャームポイントは明るい笑顔、そして前髪を留めるオレンジ色のヘアピンくらいでしょうか。
さて、冗談はさておき。
この状況どう致しましょうか。先程からあまりの甘い空気に使用人達はどう対応して良いか分からず、いつものにこやかな笑顔を浮かべ、耐えております。
ええ、毎朝儀式のように行われるこの行動です。
堅物で口数が少ない旦那様。突然婚約をされたかと思うと、すぐにご結婚されて連れてこられたのが奥様となったソフィア様。
それはそれは可愛らしい方で、側で見ていても旦那様が大好きなのが伝わってくるほど。
没落寸前のところを旦那様に見染められて結婚に至ったとの噂ですが、実際は旦那様が奥様のことを随分前から慕っていたということは使用人であれば誰もが周知の事実です。
旦那様は寡黙な方ですが、私たち使用人に対して威張ることもせず、不器用ながらに気を遣ってくださるお優しい方。
ただ、その寡黙さから御令嬢からは避けられていたことに使用人たちは胸が痛んでおりました。
そんな旦那様が結婚されると聞き、それはそれはみな嬉しく思っておりました。
いつものように旦那様をお見送りする時のこと。突然、旦那様が奥様の腕を取ったかと思うとキスをしたのです。
「!!???」
表情を崩すわけにはいきません。ですが、使用人達は全員動揺しておりました。
な、何が起こったんだ!??と
嬉し恥ずかしそうに頬を染め、微笑む奥様と顔を赤くしながらいってくる、と言い出かける旦那様。
とてつもなく甘い空気。
し、新婚さんだ...!!
まさか旦那様がこんな行動を私達の前で行うとは思わず、とても驚いたものです。ですが、慣れというのは怖いですね。
毎朝のように甘い空気を出されると、私たちもそれに慣れてきたのでしょう。生温かい微笑みを浮かべるようになりました。
あの寡黙で表情を崩さない旦那様が顔を赤くされている...あぁ、平和だな。
そして、今朝から何故か旦那様も奥様も様子がおかしかったのですが、夕食の際はなお変でした。
いや、変というより...
「ソ、ソフィア、今日はどんな一日だった?」
「ゆ、友人とお茶をして世間話を致しました。だ、旦那様はどうでしたか?」
「わ、私か?ふ、普通だ」
いやいや、普通ってなんだよ。
使用人の心の声が聞こえてくるようです。
ちらちらっとお互いの顔を見てはさらに顔を赤らめる。
むず痒くて仕方がない中で、私は表情を管理するのに必死でした。
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