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旦那様の精神統一

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「あのぅ、奥様?」


「はっ!?な、何かしら?」


ずっと玄関でウロウロと彷徨っていたからか、メイドの一人が声をかけてきました。


私は考え事をしていて全く気が付かず、ビクウッと肩を上げてしまいます。


「も、申し訳ありません、驚かせてしまって。ずっと廊下でうろうろとされていたのでどうかなさったのかと思って...」


私の反応を見て、申し訳なさそうに彼女が謝ってきますが、悪いのは私の方です。


「謝らないで。心配してくれてありがとう。ちょっと考え事をしていただけよ。すぐに部屋へ戻るから」


そう言って微笑むと、彼女は安心したようにでは、と頭を下げて戻っていきました。


カトレーヌがあんな事を言うものだから何だか落ち着かないわ。それに、今朝は昨夜の事で動揺してしまって、なんだか変な振る舞いをしてしまったから、旦那様も不審に思われたわよね...


悩んでも仕方ないわ。きちんと、今日こそ気持ちを伝えるのよ。


私は覚悟を決めて、ぐっと拳を握りました。今まで聞けなかったけれど、どうして私と結婚してくださったのかも聞いてしまいましょう。


例えどんな理由だったとしても、私が旦那様を好きな気持ちは変わらないわ。


しばらくして、旦那様が帰ってきたのがわかり私は飛び上がるように旦那様を迎えに行きました。


既に使用人達は旦那様の道を開けるように両側に並び出迎えていました。


「旦那様、おかえりなさいませ」


「...ただいま、ソフィア」


いつもの優しい旦那様の声。ですが、何故か旦那様は私の目を見ようとしないのです。


「旦那様...?」


少し不安になって旦那様を呼びます。


「な、なんだ?今日は少し疲れたんだ。また夕食の時に会おう」


そう言って、そのまま自室へと向かってしまいました。


一体どうしたのかしら。旦那様が少し変だわ。


さっきまでの勢いはどこへやら、話をしようと決めたのに旦那様の態度を見て急に不安になりました。


一方、旦那様はというと...


ソフィアは何故あんなに可愛いのだ。マリウスに言われて今日話をしようと思っていたが、あんなに可愛い姿を見たら話どころではない。


昨夜初めて自らの意思でキスをし、理性を抑えていた旦那様はソフィアの可愛さにやられておりました。


なんとか落ち着かせなければ...ソフィアの様子も今朝と違って戻っていたようだし、話をするなら今日だ。


そう思いながら、必死で精神統一する旦那様でした。
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