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*side マーガレット*⑥
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ルーカス侯爵様と正式に婚約をし、私は幸せでいっぱいでした。
こんなに素敵な方の婚約者になれた事、ずっと大事に思ってくださっていた事がとても嬉しくて。
それと同時に、学園内でのルーカス侯爵様を取り囲む御令嬢達の顔が脳裏に浮かび、婚約を公表してしまったら私は学園内でこれまま平和に過ごせるはずがないこともわかっていました。
そこで、恐る恐る提案したのです。
せめて卒業するまではこの婚約は秘密にしたいと。
ルーカス侯爵様はショックを受けたような表情をしつつも、「わかった」と承諾してくださいました。
ほっとしたのも束の間、突然ルーカス侯爵様のお顔が目の前に現れたかと思うと、唇が触れ合いました。
突然の出来事に戸惑う私をよそに、ルーカス侯爵様はそのまま私を優しく包み込むように抱きしめました。驚きつつもルーカス侯爵様の温もりに徐々に落ち着いていきます。
ドキドキするのに、落ち着く。
なんだか変な感じだわ。
ずっと手の届かない方だと思っていた侯爵様の腕の中にいるなんて、まだ信じられないけれど。
婚約者になったんだもの。
これからこういう触れ合いが増えるんだから、しっかりとお応えしないと。
腕の力が緩んだかと思うと、ルーカス侯爵様のお顔が首筋に近付いていく。
「んっ」
驚いて離そうと思い切り肩を押してもびくともしない侯爵様。私がパニックになっている間にも、侯爵様は首筋から離れることなく、時折私を覗き込んではふふっと怪しげな表情を浮かべる。
「マーガレット」
「はいっ」
「卒業したらすぐに婚姻を結ぼう。君は私のものだ。…いいかい?」
そう言うルーカス侯爵様の表情は、微笑んでいるように見えて瞳の奥が笑っていないように見えて、思わず後退りしてしまいました。
ルーカス侯爵様は馬車に乗る直前まで私の手を握り、「離れ難いな…」と名残惜しそうに私の手を離されました。
「また、明日会おう。研究が終わったら迎えの馬車を送るから、私の家まで来てくれるか?」
「はいっ」
私は返事をするのが精一杯でした。
帰宅した途端、今日はどうだったかと心配して出迎えてくれた両親と使用人たちは私を見た瞬間固まってしまいました。
「あの…どうかしたの?」
「上手く行ったようで嬉しいが…さすがはクラスト侯爵様のご子息だ…血は争えぬか」
「まぁまぁ、愛妻家で有名ですからね。マーガレットも愛されているからよろしいじゃないですか。上手く行ってよかったわ」
はぁ、とため息をつく父と、顔を真っ赤にさせながらも父をなだめる母。
そして、なぜか私と目を合わせてくれない使用人の方々。
一体、どうしたっていうの?
「…とりあえず、一旦部屋で着替えてきなさい」
こほん、と気まずそうに目を逸らしながら父が言い、私は不思議に思いつつも部屋へと戻りました。
そして、その謎はすぐに解けたのです。
「なっ…なに、これ…」
見たこともない赤い跡が首全体に付いているのです。
これって、もしかしてさっきの…
その日は一日中、私は首元を隠すように部屋で過ごすことになりました。
***
そうだ。私、正式にルーカス侯爵様の婚約者になったんだわ。
翌日も朝起きてすぐに昨日のことを思い出して、心がほわっと温かくなりました。それと同時に昨日の首筋の跡を思い出して思わず赤面してしまいます。
鏡を見て、とてつもない跡がついた首元をなんとか服で隠しながら学校へと向かいました。
ルーカス侯爵様は相変わらず、私のクラスまで噂が聞こえてくるほどの人気で。
侯爵様に申し訳なく思いつつも、卒業まで婚約を秘密にしたいという判断をしてよかったとほっとしていました。
まさか、ルーカス侯爵様をそのことで悩ませてしまっていたなんて、思いもしなかったのです。
こんなに素敵な方の婚約者になれた事、ずっと大事に思ってくださっていた事がとても嬉しくて。
それと同時に、学園内でのルーカス侯爵様を取り囲む御令嬢達の顔が脳裏に浮かび、婚約を公表してしまったら私は学園内でこれまま平和に過ごせるはずがないこともわかっていました。
そこで、恐る恐る提案したのです。
せめて卒業するまではこの婚約は秘密にしたいと。
ルーカス侯爵様はショックを受けたような表情をしつつも、「わかった」と承諾してくださいました。
ほっとしたのも束の間、突然ルーカス侯爵様のお顔が目の前に現れたかと思うと、唇が触れ合いました。
突然の出来事に戸惑う私をよそに、ルーカス侯爵様はそのまま私を優しく包み込むように抱きしめました。驚きつつもルーカス侯爵様の温もりに徐々に落ち着いていきます。
ドキドキするのに、落ち着く。
なんだか変な感じだわ。
ずっと手の届かない方だと思っていた侯爵様の腕の中にいるなんて、まだ信じられないけれど。
婚約者になったんだもの。
これからこういう触れ合いが増えるんだから、しっかりとお応えしないと。
腕の力が緩んだかと思うと、ルーカス侯爵様のお顔が首筋に近付いていく。
「んっ」
驚いて離そうと思い切り肩を押してもびくともしない侯爵様。私がパニックになっている間にも、侯爵様は首筋から離れることなく、時折私を覗き込んではふふっと怪しげな表情を浮かべる。
「マーガレット」
「はいっ」
「卒業したらすぐに婚姻を結ぼう。君は私のものだ。…いいかい?」
そう言うルーカス侯爵様の表情は、微笑んでいるように見えて瞳の奥が笑っていないように見えて、思わず後退りしてしまいました。
ルーカス侯爵様は馬車に乗る直前まで私の手を握り、「離れ難いな…」と名残惜しそうに私の手を離されました。
「また、明日会おう。研究が終わったら迎えの馬車を送るから、私の家まで来てくれるか?」
「はいっ」
私は返事をするのが精一杯でした。
帰宅した途端、今日はどうだったかと心配して出迎えてくれた両親と使用人たちは私を見た瞬間固まってしまいました。
「あの…どうかしたの?」
「上手く行ったようで嬉しいが…さすがはクラスト侯爵様のご子息だ…血は争えぬか」
「まぁまぁ、愛妻家で有名ですからね。マーガレットも愛されているからよろしいじゃないですか。上手く行ってよかったわ」
はぁ、とため息をつく父と、顔を真っ赤にさせながらも父をなだめる母。
そして、なぜか私と目を合わせてくれない使用人の方々。
一体、どうしたっていうの?
「…とりあえず、一旦部屋で着替えてきなさい」
こほん、と気まずそうに目を逸らしながら父が言い、私は不思議に思いつつも部屋へと戻りました。
そして、その謎はすぐに解けたのです。
「なっ…なに、これ…」
見たこともない赤い跡が首全体に付いているのです。
これって、もしかしてさっきの…
その日は一日中、私は首元を隠すように部屋で過ごすことになりました。
***
そうだ。私、正式にルーカス侯爵様の婚約者になったんだわ。
翌日も朝起きてすぐに昨日のことを思い出して、心がほわっと温かくなりました。それと同時に昨日の首筋の跡を思い出して思わず赤面してしまいます。
鏡を見て、とてつもない跡がついた首元をなんとか服で隠しながら学校へと向かいました。
ルーカス侯爵様は相変わらず、私のクラスまで噂が聞こえてくるほどの人気で。
侯爵様に申し訳なく思いつつも、卒業まで婚約を秘密にしたいという判断をしてよかったとほっとしていました。
まさか、ルーカス侯爵様をそのことで悩ませてしまっていたなんて、思いもしなかったのです。
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