冷たい侯爵様の甘い視線

ベル

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「いやぁー、ルーカスのお父様がぶっ飛んだ方だとは思っていたけど、ここまでとはな」


「…静かに食べろ」


「わかったよ」


楽しそうに私を見るウィルと、どうしていいのかわからないという風に明らかにオロオロとするマーガレット男爵令嬢。


それにしても、なぜウィルと彼女と3人で私の家で夕食をとっているんだ。それに、なぜ彼女はウィルの隣に座っているんだ。


ふと視線を彼女に向けた瞬間、バチっと目が合ってしまった。思わず視線を逸らしてしまう。


「それで、お前は何でここに?」


「ん?ちょっと彼女に用事があってね」


ね?と、ウィルはいつものように綺麗な笑みを浮かべて彼女に微笑みかける。ウィルが令嬢に対して声して優しく接する姿は見慣れているはずなのに、なぜか今日は苛立って仕方がない。


「用事って、何の用事だ?」


「どうした、気にかけるなんて珍しいな」


「別に、ただ聞いただけだ。こんな夜に帰ってくるなんて…。彼女に何かあったら怒られるのは私だからな」


「ふぅーん?」


ウィルはなぜか笑みを浮かべてニヤニヤしながら私の方を見てくる。いちいち癪に触るんだが。


そんなことを思っているうちに時間は経ち、ウィルは思ったよりも早めに夕食を切り上げた。


「彼女とは何もないよ。俺が気になってるのは彼女の従兄弟の方だ。…一目惚れをしてね」


帰り際、ウィルはこそっと私に耳打ちして言った。


一目惚れ、だと?


驚いてウィルの方を見ると、初めて見る真剣な眼差しをしていた。


「ルーカス……もし俺が変なことを言い出したとしても、どうか味方になってくれないか?お前が味方でいてくれさえすれば、俺は大丈夫だと思うんだ」


「…本気か?」


「あぁ、本気だよ」


マーガレット男爵令嬢は地位を与えられたが、あくまでも彼女の両親に限っての事。ということは、従兄弟は平民のはず。例えウィルが本気だとしても、代々培われてきた公爵家という地位と名誉を誇りに生きる厳格なウィルの父親が、交際を許すはずがない。知られてしまえば終わりだ。


それを誰よりも良くわかっているのはウィル自身のはず。ずっと側で見ていたからわかる。どれだけの想いを背負ってここまできたのかを。


それを全て、その女性のために放棄するというのか?


「…やめておけ」


「そういうと思ったよ」


「ウィルっ!」


「まぁいいや。気が変わったら教えてくれ」


ウィルは振り向きもせずに出て行ってしまった。
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