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人生の振り返り~中学生③~
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父が接触事故に巻き込まれたと聞いたのは、中学生2年生のクラス替えがあってすぐの事だった。
「由佳子っ、病院に行くわよ!!」
血相を変えた母が、校門から出て来た私を凄い勢いで車に押し乗せ、車を急発進させた。
「はははっ、心配させて悪かったなぁ」
「.........びっくりさせないでよ」
病院に着くと、呑気な顔で雑誌を広げる父がいた。
ギプスで足が固定され状態だったが、幸い大事には至らなかった。
それほど酷くはなかったが、2週間ほど入院することになった。
「あれ....これ、日記?」
入院する父の荷物を母と一緒にまとめていると、机の上にノートがあった。
気になってみてみると、どうやら日記のようだ。
「あら、まだ続けてたのね。昔からなのよ、お父さんが日記を書くの。それも持って行ってあげましょっか。とりあえず、服だけ先に持ってくわね」
そう言って、母は荷物を車に運んでいった。
父には申し訳なかったけれど、日記と分かると見たくなってしまう。
少しだけ...お父さん、ごめん。
心の中で謝りながら、ページをめくる。
父の、お世辞にも綺麗とは言えない文字で日記は綴られていた。
大学生の頃からつけているようで、母との出会いや私が生まれた日の事も書いてある。
そして、パラパラとめくっていると、折り目のようなページがあった。
そして、手が止まる。
そこには、母がママ友に酷いイジメを受けていた事、それで精神が不安定になり、引っ越しをした事、それにすぐに気づけなかった自分への後悔や、友達と離れ離れになってしまう私への謝罪の言葉が綴られていた。
そして、母は今でも定期的に病院に通ってる事も分かった。
あの時引っ越しをしたのは、母の為だったのか。そして、今でも.....
その時初めて私は母の苦悩を知った。
いつも、明るく笑顔を絶やさずにいてくれた。
「....お母さん」
車に荷物を乗せる母を見て、私はじんわりと目頭が熱くなった。
「私ね、今学校に行くの、辛いの」
「え?」
「でも、大丈夫。今なら、大丈夫な気がする」
「.....そう」
母は、何も言わずに私を抱きしめた。
その日から、私は今までの性格が嘘のように、周りに明るく話しかけられるようになった。
最初はとても緊張したけれど、笑顔で接すれば相手は自然と笑顔を向けてくれた。
私が変われたのは、クラスが変わった事も影響していたのかもしれない。
陰口がすべて無くなったわけではなかったけれど、新しい友達ができ、心に余裕ができたからか、全く気にならないようになった。
ようやく学校生活が充実してきた頃、気がつくと周りは受験モード一色になっていた。
私も必死で勉強に望み、無事に希望の高校に進学した。
*****
「母に話してからです、私が変われたのは」
当時のことを思い出すと、胸がじんわりと熱くなる。
「そうでしたね。あの時は本当に驚きました。あんなに変われるのかって」
ふふっと、懐かしむようにサキさんが微笑む。
「きっかけをくれたのはサキさんでしょう?今考えたら不思議でした。恥ずかしがり屋の父の日記が、あんなに堂々と机の上に置いてあるなんて」
「だとしても、行動を起こしたのは由佳子さんですよ。行動次第で、運命は変わるんです」
ふと....
何か声が聞こえた気がした。
それが誰なのかは分からないけれど。
「どうしました?」
「あ、いえ。なんでもないです」
この世界は、人間として生きていた世界とは違う。
不思議なことが起こっても、特におかしくはない。
私は気を取り直し、サキさんと向かい合う。
「では、ここからは...高校生、ですね」
「由佳子っ、病院に行くわよ!!」
血相を変えた母が、校門から出て来た私を凄い勢いで車に押し乗せ、車を急発進させた。
「はははっ、心配させて悪かったなぁ」
「.........びっくりさせないでよ」
病院に着くと、呑気な顔で雑誌を広げる父がいた。
ギプスで足が固定され状態だったが、幸い大事には至らなかった。
それほど酷くはなかったが、2週間ほど入院することになった。
「あれ....これ、日記?」
入院する父の荷物を母と一緒にまとめていると、机の上にノートがあった。
気になってみてみると、どうやら日記のようだ。
「あら、まだ続けてたのね。昔からなのよ、お父さんが日記を書くの。それも持って行ってあげましょっか。とりあえず、服だけ先に持ってくわね」
そう言って、母は荷物を車に運んでいった。
父には申し訳なかったけれど、日記と分かると見たくなってしまう。
少しだけ...お父さん、ごめん。
心の中で謝りながら、ページをめくる。
父の、お世辞にも綺麗とは言えない文字で日記は綴られていた。
大学生の頃からつけているようで、母との出会いや私が生まれた日の事も書いてある。
そして、パラパラとめくっていると、折り目のようなページがあった。
そして、手が止まる。
そこには、母がママ友に酷いイジメを受けていた事、それで精神が不安定になり、引っ越しをした事、それにすぐに気づけなかった自分への後悔や、友達と離れ離れになってしまう私への謝罪の言葉が綴られていた。
そして、母は今でも定期的に病院に通ってる事も分かった。
あの時引っ越しをしたのは、母の為だったのか。そして、今でも.....
その時初めて私は母の苦悩を知った。
いつも、明るく笑顔を絶やさずにいてくれた。
「....お母さん」
車に荷物を乗せる母を見て、私はじんわりと目頭が熱くなった。
「私ね、今学校に行くの、辛いの」
「え?」
「でも、大丈夫。今なら、大丈夫な気がする」
「.....そう」
母は、何も言わずに私を抱きしめた。
その日から、私は今までの性格が嘘のように、周りに明るく話しかけられるようになった。
最初はとても緊張したけれど、笑顔で接すれば相手は自然と笑顔を向けてくれた。
私が変われたのは、クラスが変わった事も影響していたのかもしれない。
陰口がすべて無くなったわけではなかったけれど、新しい友達ができ、心に余裕ができたからか、全く気にならないようになった。
ようやく学校生活が充実してきた頃、気がつくと周りは受験モード一色になっていた。
私も必死で勉強に望み、無事に希望の高校に進学した。
*****
「母に話してからです、私が変われたのは」
当時のことを思い出すと、胸がじんわりと熱くなる。
「そうでしたね。あの時は本当に驚きました。あんなに変われるのかって」
ふふっと、懐かしむようにサキさんが微笑む。
「きっかけをくれたのはサキさんでしょう?今考えたら不思議でした。恥ずかしがり屋の父の日記が、あんなに堂々と机の上に置いてあるなんて」
「だとしても、行動を起こしたのは由佳子さんですよ。行動次第で、運命は変わるんです」
ふと....
何か声が聞こえた気がした。
それが誰なのかは分からないけれど。
「どうしました?」
「あ、いえ。なんでもないです」
この世界は、人間として生きていた世界とは違う。
不思議なことが起こっても、特におかしくはない。
私は気を取り直し、サキさんと向かい合う。
「では、ここからは...高校生、ですね」
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