幸せな空

ベル

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人生の振り返り~幼少期②~

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母は手芸がとても上手で、鞄やポーチなど、私の持ち物はほぼすべて手縫いやミシンを使って作ってくれた。

私はそれが自慢だった。


「由佳子ちゃんのかばん、かわいいーっ!!」


「いいなぁー!」


そう言われるのがとても嬉しかった。

母は料理も得意で、毎日たくさんのご馳走に囲まれた。
幼心にも恵まれていると感じたし、とても幸せだった。


運動神経はあまり良く無かったけれど、母に似て手先は器用で絵心があったので、幼稚園での工作の時間が誰よりも好きだった。

幼稚園で絵を描いては持って帰って両親に自慢した。


「うわぁ、上手ねぇ」


「由佳子は将来画家になれるんじゃないかー?はははっ」


両親も、私のことをたくさん褒めてくれた。

お友達もたくさんできて、幼稚園に行くのが楽しくて仕方なかった。


お遊戯会や運動会など、両親揃って応援に来てくれて、もちろん祖父母も遠くから駆けつけてくれた。


祖父母は農家で、私たちが住む場所からは少し離れていたものの、行事があるたびに必ず来てくれた。


私は、みんなが来てくれるのが嬉しくて、人一倍頑張った。




*****


「幼い頃は、とても幸せでした」


「側で見ていて、私も幸せでしたよ」


サキさんと目を合わせて、ふふっと笑い合う。


「母が、幼少期に私がよくブツブツと空を見ながら何か話してたって言ってたんですけど、もしかして相手はサキさんですか?」


「そうですよ。人として生まれた時にこの世界の記憶は消えるんですが...少しだけ言葉のようなものを発するようになる時期までは、私の存在だけはわかるんです」


「不思議な人がいるなぁって思ってたんですけど...サキさんと話してたんですね、私」


幼いながらに不思議には思っていたけれど、何故か「私の味方だ」と直感的に思っていた。


そして、この頃の私は無敵だった。
家庭的な母親と優しい父親。

誰が見ても理想の家族。それが、私の家族だった。



「でも.....私が小学校に上がる時に引っ越しをして、少しだけ周りに馴染むのに時間がかかりました」


「あの時は辛かったでしょう。仲のいいお友達がたくさんいたから、余計に。でも、あの状況は仕方がなかったですね」


「はい...母の為、でしたから」



*****


幼稚園の卒業式。
みんなで練習した卒業の歌を歌い、先生やみんなとお別れをした。


「由佳子ちゃん、元気でね」

「あたし、手紙書くね!」


今まで楽しく毎日会っていたみんなと、もう会えなくなってしまう。それが、私にとって初めての別れの経験だった。


それがとても悲しくて

「やだ、行きたくない!みんなと同じ小学校にいくのーーーっ!」

そう言っては泣きじゃくった。


理由も教えてもらえないまま、私は両親とともに新しい土地へと移動した。


母がママ友同士の争いに巻き込まれ、精神を病んでしまった為に引っ越したのだと知ったのは、父の日記を見た時だった。







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