17 / 52
副騎士団長の悩み
しおりを挟む
さて。一方騎士団では、マリウスの態度にみな戸惑っておりました。
ようやくアクリウスの妻の惚気話が最近収まってきたかと思えば、今度はマリウスの様子がおかしいのです。
ここの騎士団は大丈夫か...?
いよいよ騎士達もみな心配になってきておりました。
「マリウス」
「......」
「マリウス!!」
ビクッと肩を振るわせ、マリウスはようやく視線をアクリウスへと向けました。
「さっきから手をずっと見つめてどうした?何かあるのか?」
「あ、あぁ....いや、なんでもない」
「そうか。では始めるぞ」
「「「はいっ!!」」」
騎士達の会議が滞りなく進められていく中、マリウスは一人昨日の出来事を思い出しておりました。
ナリア...あのメイドはどうしてあんなに可愛いのだろうか。
思い出す度に胸が締め付けられるようで、昨日触れた手を何度も見つめては彼女を思い出していました。
あんな姿で廊下をうろつくなんて何を考えているんだ。ただでさえあの屋敷には男しかいないというのに。
それにしても、彼女の髪は柔らかく良い香りがしたな。
思わず抱き寄せてしまいそうになって誤魔化すように髪をくしゃくしゃにしてしまったが...
怒った顔も可愛かったな。
....って、さっきからメイド相手に俺は一体何を考えているんだ。
「マリウス、どう思う?」
「あ?」
はっと気がつくと、他の騎士達が答えを求めるようにマリウスを見ていることにようやく気がつきました。
「あー、ごめん。どこまで話した?」
「はぁ。...もういい」
アクリウスは呆れたように首を横に振り、話を続けていきます。
やばいな、俺。
どうしてこうも集中出来ないんだ。
マリウスは一人そっと息を吐くのでした。
「マリウス」
「あぁ、どうした?」
会議を終え、他の騎士達がぞろぞろと部屋を後にする中、アクリウスはマリウスを呼び止めました。
「お前、最近どうした?明らかに様子が変だが?」
何かあったのかと少し心配そうな表情でマリウスを見ます。
「いや、別に何でもない」
「何でもなくはないだろう。...もしかしてナリアが何かしでかしたのか?」
マリウスの様子がおかしくなったのは彼女がマリウスのメイドとして引き取られてからのこと。アクリウスはそう言いながらも、「彼女は何かするような子ではないがな...」と不審そうな表情で呟きます。
「いや、そうじゃない。ナリアはちゃんと仕事をしてくれているよ」
「じゃあ何だ...もしかして」
はっと思いついたようにアクリウスは怪訝そうな顔をしながら、少し声を潜めて言いました。
「お前、ナリアと何かあった....」
「ち、違う!!!」
驚いて否定すると、アクリウスは何だ違うのか、と何故か残念そうな表情をしました。
マリウスの態度を見て、密かにアクリウスは確信していた様子でしたが、当の本人に否定されてはそうではないのかと納得するしかありません。
少しだけ可愛いと思っているだけだ。それ以上の感情はない...はず、だ。
今まで女性に対して良い印象はなく、両親によほど結婚を急かされない限りマリウスは誰とも付き合う気はありませんでした。
いざとなれば、適当に相手を見つければ良い。簡単な事だ。
仮にナリアが相手だったとして...いや、これは本当に本当に仮の話だが。そうだったとしても、ナリアは平民のメイド。平民との結婚なんて両親が許さないはずだ。
...そうだ。許されないはずだ。
仮の話で考えているはずでしたが、マリウスは徐々に落ち込むのが自分でもわかりました。
「あの...団長」
その時、一人の騎士がアクリウスに声をかけてきました。
「マルクスか、何だ?」
黒髪短髪姿の彼は、皇族の騎士としては異例の平民出身の男でした。
瞳は希望に満ち溢れ、正義感が人一番強い騎士として、アクリウスとマリウスもマルクスには一目おいておりました。
滅多にアクリウスに話しかけてこない彼が、どうしたというのでしょうか。
「あの...実は以前からずっと気になっていたのですが、ナリアというのは...」
ナリアという言葉を聞き、マリウスはピクッと耳を傾けます。
ナリアが何だ。どうしたんだ。
「あの、オレンジのヘアピンを付けていませんか?」
「ヘアピン?あぁ、付けていたな確か」
マルクスは「やっぱり」と嬉しそうに微笑んだかと思うと、驚くべき言葉を口にしました。
「ナリアは僕の幼馴染なんです」
ようやくアクリウスの妻の惚気話が最近収まってきたかと思えば、今度はマリウスの様子がおかしいのです。
ここの騎士団は大丈夫か...?
いよいよ騎士達もみな心配になってきておりました。
「マリウス」
「......」
「マリウス!!」
ビクッと肩を振るわせ、マリウスはようやく視線をアクリウスへと向けました。
「さっきから手をずっと見つめてどうした?何かあるのか?」
「あ、あぁ....いや、なんでもない」
「そうか。では始めるぞ」
「「「はいっ!!」」」
騎士達の会議が滞りなく進められていく中、マリウスは一人昨日の出来事を思い出しておりました。
ナリア...あのメイドはどうしてあんなに可愛いのだろうか。
思い出す度に胸が締め付けられるようで、昨日触れた手を何度も見つめては彼女を思い出していました。
あんな姿で廊下をうろつくなんて何を考えているんだ。ただでさえあの屋敷には男しかいないというのに。
それにしても、彼女の髪は柔らかく良い香りがしたな。
思わず抱き寄せてしまいそうになって誤魔化すように髪をくしゃくしゃにしてしまったが...
怒った顔も可愛かったな。
....って、さっきからメイド相手に俺は一体何を考えているんだ。
「マリウス、どう思う?」
「あ?」
はっと気がつくと、他の騎士達が答えを求めるようにマリウスを見ていることにようやく気がつきました。
「あー、ごめん。どこまで話した?」
「はぁ。...もういい」
アクリウスは呆れたように首を横に振り、話を続けていきます。
やばいな、俺。
どうしてこうも集中出来ないんだ。
マリウスは一人そっと息を吐くのでした。
「マリウス」
「あぁ、どうした?」
会議を終え、他の騎士達がぞろぞろと部屋を後にする中、アクリウスはマリウスを呼び止めました。
「お前、最近どうした?明らかに様子が変だが?」
何かあったのかと少し心配そうな表情でマリウスを見ます。
「いや、別に何でもない」
「何でもなくはないだろう。...もしかしてナリアが何かしでかしたのか?」
マリウスの様子がおかしくなったのは彼女がマリウスのメイドとして引き取られてからのこと。アクリウスはそう言いながらも、「彼女は何かするような子ではないがな...」と不審そうな表情で呟きます。
「いや、そうじゃない。ナリアはちゃんと仕事をしてくれているよ」
「じゃあ何だ...もしかして」
はっと思いついたようにアクリウスは怪訝そうな顔をしながら、少し声を潜めて言いました。
「お前、ナリアと何かあった....」
「ち、違う!!!」
驚いて否定すると、アクリウスは何だ違うのか、と何故か残念そうな表情をしました。
マリウスの態度を見て、密かにアクリウスは確信していた様子でしたが、当の本人に否定されてはそうではないのかと納得するしかありません。
少しだけ可愛いと思っているだけだ。それ以上の感情はない...はず、だ。
今まで女性に対して良い印象はなく、両親によほど結婚を急かされない限りマリウスは誰とも付き合う気はありませんでした。
いざとなれば、適当に相手を見つければ良い。簡単な事だ。
仮にナリアが相手だったとして...いや、これは本当に本当に仮の話だが。そうだったとしても、ナリアは平民のメイド。平民との結婚なんて両親が許さないはずだ。
...そうだ。許されないはずだ。
仮の話で考えているはずでしたが、マリウスは徐々に落ち込むのが自分でもわかりました。
「あの...団長」
その時、一人の騎士がアクリウスに声をかけてきました。
「マルクスか、何だ?」
黒髪短髪姿の彼は、皇族の騎士としては異例の平民出身の男でした。
瞳は希望に満ち溢れ、正義感が人一番強い騎士として、アクリウスとマリウスもマルクスには一目おいておりました。
滅多にアクリウスに話しかけてこない彼が、どうしたというのでしょうか。
「あの...実は以前からずっと気になっていたのですが、ナリアというのは...」
ナリアという言葉を聞き、マリウスはピクッと耳を傾けます。
ナリアが何だ。どうしたんだ。
「あの、オレンジのヘアピンを付けていませんか?」
「ヘアピン?あぁ、付けていたな確か」
マルクスは「やっぱり」と嬉しそうに微笑んだかと思うと、驚くべき言葉を口にしました。
「ナリアは僕の幼馴染なんです」
1
お気に入りに追加
1,527
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ決定】無敵のシスコン三兄弟は、断罪を力技で回避する。
櫻野くるみ
恋愛
地味な侯爵令嬢のエミリーには、「麗しのシスコン三兄弟」と呼ばれる兄たちと弟がいる。
才能溢れる彼らがエミリーを溺愛していることは有名なのにも関わらず、エミリーのポンコツ婚約者は夜会で婚約破棄と断罪を目論む……。
敵にもならないポンコツな婚約者相手に、力技であっという間に断罪を回避した上、断罪返しまで行い、重すぎる溺愛を見せつける三兄弟のお話。
新たな婚約者候補も…。
ざまぁは少しだけです。
短編
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~
石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。
食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。
そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。
しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。
何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。
扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
美人すぎる姉ばかりの姉妹のモブ末っ子ですが、イケメン公爵令息は、私がお気に入りのようで。
天災
恋愛
美人な姉ばかりの姉妹の末っ子である私、イラノは、モブな性格である。
とある日、公爵令息の誕生日パーティーにて、私はとある事件に遭う!?
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
【完結済】呼ばれたみたいなので、異世界でも生きてみます。
まりぃべる
恋愛
異世界に来てしまった女性。自分の身に起きた事が良く分からないと驚きながらも王宮内の問題を解決しながら前向きに生きていく話。
その内に未知なる力が…?
完結しました。
初めての作品です。拙い文章ですが、読んでいただけると幸いです。
これでも一生懸命書いてますので、誹謗中傷はお止めいただけると幸いです。
獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。
真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。
狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。
私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。
なんとか生きてる。
でも、この世界で、私は最低辺の弱者。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる