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私の宝物
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「ない....」
何度探しても、どこにも私のヘアピンは見つかりませんでした。いつくか母が作ってくれていたので、一つなくなっていたことに全く気が付かなかったのです。
きっとどこかに落としたのでしょう。全てデザインが違うその中でも、一番お気に入りだった薔薇のデザインが無くなってしまったので、私はとてもショックを受けました。
「仕方ないわよね」
諦めきれず何度か廊下や部屋を探しましたが見つからず、泣く泣く諦めることにしました。
...ふと、廊下に飾った花瓶が目に止まりました。マリウス公爵様が今朝持ってきたオレンジ色の花束をその花瓶に入れて飾っておいたのです。
もしかして、あの方が拾って...?
いや、そんなはずないわよね。
いや、でも...
考えたところで答えが見つかるはずもありません。例えマリウス公爵様が持っていたとしても、またあの方と会えるとは限りません。
そもそも私はメイドの身。公爵家の方と話せるような身分ではありません。
それに、拾ったとしてもヘアピンなんてずっと持っているはずもないのです。
きっと、どこかに捨ててしまっているわ。
私はふぅ、とため息をつくのでした。
翌朝、私が庭の掃除をしていると、ふっと目の前に人影が現れました。
....まさか。
「おはよう!」
いや...こんなにすんなりと会えるのですね。もしかして暇なんでしょうか。
「...おはようございます、マリウス公爵様。旦那様は今朝食を...」
至って冷静に対応しようと、頭を下げて話そうとすると、マリウス公爵様が私の話を遮るように言いました。
「昨日も言ったが、アクリウスに用はない。また午後に会う予定だからな。...なぁ、ナリア」
「そうですか。.........はい?」
い、今なんて...
動揺して思わず声がうわずります。え、今この人なんて言いました?
マリウス公爵様は、ニヤッと笑いながら私の反応を楽しそうに見ています。
...腹黒公爵め。
「...何故私の名前を?」
「何だ、案外そこまで動揺しないのだな」
「...旦那様から聞いたのですか?」
どのような成り行きでマリウス公爵様が私の名を知ったのかはわかりませんが、どう考えても旦那様から聞いたとしか思えません。
「そうだ。...ナリア」
「はい」
「これを渡しに来たんだ」
そう言うと、マリウス公爵様は私の手をぐいっと引き寄せたかと思うと、私に顔を近づけてきました。
「なっ...!?何ですかっ?!」
驚いて離れようとする私の腕をぐっと強く握ると、ポケットから何かを取り出して私の髪にそっと付けました。
「...よし」
何が起きているのか分からず、私は頭をはてなマークでいっぱいにさせながらマリウス公爵様の顔を下から覗き込んでいました。
うわぁ、悔しいけれど、近くで見るとますます綺麗な顔立ちをしているわ。
そんなことを考えながらマリウス公爵様を見つめていると、ぱちっと視線が合いました。
マリウス公爵様は一瞬目を見開き、そのまま固まります。
...何なのかしら?
「マリウス公爵様?」
「あ...あ、あぁ」
マリウス公爵様はハッとしたように我に返り、さっと私から離れました。
心なしか顔が赤いような...?
いや、気のせいね。
「...それ。ナリア、お前のだろう?」
私はそっと、髪についている物に触れると、探していたヘアピンが付いていました。
何度探しても、どこにも私のヘアピンは見つかりませんでした。いつくか母が作ってくれていたので、一つなくなっていたことに全く気が付かなかったのです。
きっとどこかに落としたのでしょう。全てデザインが違うその中でも、一番お気に入りだった薔薇のデザインが無くなってしまったので、私はとてもショックを受けました。
「仕方ないわよね」
諦めきれず何度か廊下や部屋を探しましたが見つからず、泣く泣く諦めることにしました。
...ふと、廊下に飾った花瓶が目に止まりました。マリウス公爵様が今朝持ってきたオレンジ色の花束をその花瓶に入れて飾っておいたのです。
もしかして、あの方が拾って...?
いや、そんなはずないわよね。
いや、でも...
考えたところで答えが見つかるはずもありません。例えマリウス公爵様が持っていたとしても、またあの方と会えるとは限りません。
そもそも私はメイドの身。公爵家の方と話せるような身分ではありません。
それに、拾ったとしてもヘアピンなんてずっと持っているはずもないのです。
きっと、どこかに捨ててしまっているわ。
私はふぅ、とため息をつくのでした。
翌朝、私が庭の掃除をしていると、ふっと目の前に人影が現れました。
....まさか。
「おはよう!」
いや...こんなにすんなりと会えるのですね。もしかして暇なんでしょうか。
「...おはようございます、マリウス公爵様。旦那様は今朝食を...」
至って冷静に対応しようと、頭を下げて話そうとすると、マリウス公爵様が私の話を遮るように言いました。
「昨日も言ったが、アクリウスに用はない。また午後に会う予定だからな。...なぁ、ナリア」
「そうですか。.........はい?」
い、今なんて...
動揺して思わず声がうわずります。え、今この人なんて言いました?
マリウス公爵様は、ニヤッと笑いながら私の反応を楽しそうに見ています。
...腹黒公爵め。
「...何故私の名前を?」
「何だ、案外そこまで動揺しないのだな」
「...旦那様から聞いたのですか?」
どのような成り行きでマリウス公爵様が私の名を知ったのかはわかりませんが、どう考えても旦那様から聞いたとしか思えません。
「そうだ。...ナリア」
「はい」
「これを渡しに来たんだ」
そう言うと、マリウス公爵様は私の手をぐいっと引き寄せたかと思うと、私に顔を近づけてきました。
「なっ...!?何ですかっ?!」
驚いて離れようとする私の腕をぐっと強く握ると、ポケットから何かを取り出して私の髪にそっと付けました。
「...よし」
何が起きているのか分からず、私は頭をはてなマークでいっぱいにさせながらマリウス公爵様の顔を下から覗き込んでいました。
うわぁ、悔しいけれど、近くで見るとますます綺麗な顔立ちをしているわ。
そんなことを考えながらマリウス公爵様を見つめていると、ぱちっと視線が合いました。
マリウス公爵様は一瞬目を見開き、そのまま固まります。
...何なのかしら?
「マリウス公爵様?」
「あ...あ、あぁ」
マリウス公爵様はハッとしたように我に返り、さっと私から離れました。
心なしか顔が赤いような...?
いや、気のせいね。
「...それ。ナリア、お前のだろう?」
私はそっと、髪についている物に触れると、探していたヘアピンが付いていました。
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