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政略結婚なのにここまで溺愛されるなんて思いませんでした
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クラストは呆然としながらマリーを見た。
今のは、幻聴か?
ずっとずっと好きで好きで仕方なかった。彼女のためなら何だってできた。辛い公務も乗り越えられた。
何度も願った。彼女に愛されたい、好きになって欲しいと。
少しでもいい。興味を持って欲しかった。僕を知って欲しかった。
「クラスト、様...?」
マリーの瞳が大きく見開かれる。火照るマリーの頬を見た瞬間、ようやく実感した。
あぁ.....
「やっとだ.....」
「あの......っ」
戸惑う彼女を力強く抱きしめる。隙間がないほど、強く強く。
涙が頬を伝う。溢れて止まらなかった。
「....っ、ぅ....」
その言葉が、どれほど聞きたかったか。
どれほど、君が欲しかったか。
「....っ、マリー」
顔を彼女の肩に擦り付け、彼女にしがみつくような体勢になる。それでもマリーはポンポンと僕の背中を小さな手で優しく撫でてくれた。
こんなの、不意打ちすぎる。
...でも
「マリー。好きだよ....僕も君が大好きだ」
ぎゅっと再び抱きしめると、マリーの手が僕の背中に回るのがわかり、再び涙が零れ落ちた。
ようやく、僕とマリーは本当の夫婦になった。お互いを想い、愛し合う夫婦に。
「クラスト様、あの...」
「何だい?」
「公務はよろしいのですか?」
「今日はずっとここにいるつもりだよ。...もしかして僕に公務に行って欲しいのかい?」
しゅんとした瞳をマリーに向ける。子犬のようなその視線に、マリーはゔっと言葉につまり、俯きながら「そういうわけでは...」とつぶやく。
いや。そもそもこの状態がおかしいのよ。
「はい、マリー」
「じ、自分で食べれますからっ」
「そんなこと言わないで。ほら」
そんな幸せそうな顔で言われてしまっては何も言えなくなってしまう。
マリーはおずおずと口を開き、スープを飲んだ。
クラストの膝の上に乗せられ、食事もクラストがマリーの口へと運ぶ。
いくら二人きりでの食事とはいえ、恥ずかしくてたまらなかった。
あの告白から数日が経ったが、クラストは以前にも増してマリーを溺愛するようになった。
カイルスから送られた小説にも嫉妬し、クラストはなんと同じ小説をどこからか取り寄せ、マリーへと渡した。
「はい、マリー。これは僕から君へのプレゼントだ。公爵様からもらった方は僕から返しておくからね」
そして毎晩何度も求めてくるので、マリーもいよいよ体力の限界を迎え、ついにクラストに抗議した。
「クラスト様!」
「ん?」
いつものように寝室に行くと、当然のように覆い被さってくるクラストに向かって押し返すように手を伸ばす。
クラストは一瞬不思議そうな顔でマリーを見つめたが、すぐに微笑みながらマリーの手のひらにチュッとキスをした。
「どうかした?」
「...もう少し、減らしてください」
「何を?」
「その...回数を、です」
真っ赤になりながらマリーは訴える。こんな話をする日が来るなんて思わなかった。
「それは...どうかな?」
「なっ...!そろそろ体力も限界で...」
「マリーが可愛いのがいけないんだよ」
これでも結構抑えている方なんだけどな、なんて言葉がボソッと聞こえ、マリーはさっと青ざめた。
う、嘘でしょ?
「まぁ、マリー」
「は、い...」
「もう少しだけ、体力つけてくれると嬉しいな」
にこりと微笑むクラストに、今日も手加減なく求められるのだと覚悟する。
政略結婚だと思っていた。結婚したら本を読んで悠々自適に過ごせると、そう思っていた。
こんなにも愛されるなんて...愛してしまうなんて思いもしなかった。
「マリー...愛してるよ」
もう何度目かわからない愛の言葉をくれる愛しい旦那様と、これからずっと人生を共にしていくのだろう。
「クラスト様...愛しています」
お互いに微笑み、手を握る。
愛し合う夫婦の間に可愛らしい男の子が生まれるのは、あと数年後のお話。
~Fin~
ここまでお読みいただき本当にありがとうございましたm(__)m
ラブコメの予定で書き始めたのですが...予想以上にクラストの病み具合がひどく、どうしようかと悩んでおりましたが...。無事幸せな夫婦になったようで良かった良かった(*´ω`*)
クラストの溺愛ぶりがすごいので、どうかなぁと若干心配しつつも楽しく書かせていただきました。
今更ながら、ずっとR指定にするか思案していましたが、保険で付けることにしました(^^;
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました!
今のは、幻聴か?
ずっとずっと好きで好きで仕方なかった。彼女のためなら何だってできた。辛い公務も乗り越えられた。
何度も願った。彼女に愛されたい、好きになって欲しいと。
少しでもいい。興味を持って欲しかった。僕を知って欲しかった。
「クラスト、様...?」
マリーの瞳が大きく見開かれる。火照るマリーの頬を見た瞬間、ようやく実感した。
あぁ.....
「やっとだ.....」
「あの......っ」
戸惑う彼女を力強く抱きしめる。隙間がないほど、強く強く。
涙が頬を伝う。溢れて止まらなかった。
「....っ、ぅ....」
その言葉が、どれほど聞きたかったか。
どれほど、君が欲しかったか。
「....っ、マリー」
顔を彼女の肩に擦り付け、彼女にしがみつくような体勢になる。それでもマリーはポンポンと僕の背中を小さな手で優しく撫でてくれた。
こんなの、不意打ちすぎる。
...でも
「マリー。好きだよ....僕も君が大好きだ」
ぎゅっと再び抱きしめると、マリーの手が僕の背中に回るのがわかり、再び涙が零れ落ちた。
ようやく、僕とマリーは本当の夫婦になった。お互いを想い、愛し合う夫婦に。
「クラスト様、あの...」
「何だい?」
「公務はよろしいのですか?」
「今日はずっとここにいるつもりだよ。...もしかして僕に公務に行って欲しいのかい?」
しゅんとした瞳をマリーに向ける。子犬のようなその視線に、マリーはゔっと言葉につまり、俯きながら「そういうわけでは...」とつぶやく。
いや。そもそもこの状態がおかしいのよ。
「はい、マリー」
「じ、自分で食べれますからっ」
「そんなこと言わないで。ほら」
そんな幸せそうな顔で言われてしまっては何も言えなくなってしまう。
マリーはおずおずと口を開き、スープを飲んだ。
クラストの膝の上に乗せられ、食事もクラストがマリーの口へと運ぶ。
いくら二人きりでの食事とはいえ、恥ずかしくてたまらなかった。
あの告白から数日が経ったが、クラストは以前にも増してマリーを溺愛するようになった。
カイルスから送られた小説にも嫉妬し、クラストはなんと同じ小説をどこからか取り寄せ、マリーへと渡した。
「はい、マリー。これは僕から君へのプレゼントだ。公爵様からもらった方は僕から返しておくからね」
そして毎晩何度も求めてくるので、マリーもいよいよ体力の限界を迎え、ついにクラストに抗議した。
「クラスト様!」
「ん?」
いつものように寝室に行くと、当然のように覆い被さってくるクラストに向かって押し返すように手を伸ばす。
クラストは一瞬不思議そうな顔でマリーを見つめたが、すぐに微笑みながらマリーの手のひらにチュッとキスをした。
「どうかした?」
「...もう少し、減らしてください」
「何を?」
「その...回数を、です」
真っ赤になりながらマリーは訴える。こんな話をする日が来るなんて思わなかった。
「それは...どうかな?」
「なっ...!そろそろ体力も限界で...」
「マリーが可愛いのがいけないんだよ」
これでも結構抑えている方なんだけどな、なんて言葉がボソッと聞こえ、マリーはさっと青ざめた。
う、嘘でしょ?
「まぁ、マリー」
「は、い...」
「もう少しだけ、体力つけてくれると嬉しいな」
にこりと微笑むクラストに、今日も手加減なく求められるのだと覚悟する。
政略結婚だと思っていた。結婚したら本を読んで悠々自適に過ごせると、そう思っていた。
こんなにも愛されるなんて...愛してしまうなんて思いもしなかった。
「マリー...愛してるよ」
もう何度目かわからない愛の言葉をくれる愛しい旦那様と、これからずっと人生を共にしていくのだろう。
「クラスト様...愛しています」
お互いに微笑み、手を握る。
愛し合う夫婦の間に可愛らしい男の子が生まれるのは、あと数年後のお話。
~Fin~
ここまでお読みいただき本当にありがとうございましたm(__)m
ラブコメの予定で書き始めたのですが...予想以上にクラストの病み具合がひどく、どうしようかと悩んでおりましたが...。無事幸せな夫婦になったようで良かった良かった(*´ω`*)
クラストの溺愛ぶりがすごいので、どうかなぁと若干心配しつつも楽しく書かせていただきました。
今更ながら、ずっとR指定にするか思案していましたが、保険で付けることにしました(^^;
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました!
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