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初めての気持ち
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「おはよう」
「おはよう、ございます」
翌日、目が覚めると隣にクラストはいなかった。いつもは微笑みながらマリーの頬を撫で、幸せそうに見つめているのに。
朝食をとりながら、クラストはいつものように優しい笑みを浮かべながらマリーを見つめる。マリーはどう振舞っていいか分からず、視線が合う度にぎこちなく笑みを浮かべた。
「じゃあ、行ってくるね」
クラストは食事をいつもより早く済ませると、すぐに出かけて行った。マリーは息をふっと吐き出す。
嫌いなわけではない。かと言って、クラストの想いと同じくらい恋愛感情を抱いているかと言われるとそれも違うような気がした。
まさか、クラスト様がそこまで私の事を想ってくださっていたなんて思わなかった。確かに、好きだよと毎日のように言われていたし、好意を持ってくださっていたのはさすがに自覚していたけれど。
あんなに、辛そうな顔をさせてしまうなんて。思い出すと胸が痛くてたまらなかった。
朝食を済ませて書斎へと向かう途中、エスラが声をかけてきた。
「マリー様、今日は街に出掛けてみませんか?ここに来てからずっと書斎にばかりこもっていらっしゃるじゃないですか。外に出て、少しは気分転換も必要ですよ?」
マリーの様子がおかしいことに、エスラは素早く気づいたようだった。
今まではなにも言わなかったのに、さすがエスラだわ。すぐに見抜くなんて。
マリーは頷き、すぐに外出する支度をして街へと出掛けた。
「すごい人ね」
街は活気で溢れていた。特に本以外に興味を持ったことはないけれど、人混みが嫌いなわけではなかった。
人が多い場所はむしろ楽しいと思う。この前のパーティーの時も、初めての場所に最初は戸惑ったけれど、綺麗な装飾に楽しそうな人々、美味しそうな見たこともない料理の数々にとても気分が上がっていたことを思い出す。
エスラとショッピングを楽しんでいると、ふと見覚えのある人物が遠くの方に見えた。
あれは...
「旦那様じゃないですか。そういえば、今日は街の視察に行くとおっしゃっておりましたね」
クラストは、部下に何か指示を出している様子だった。公務中のクラストの姿を初めて見るマリーは、どこか別の誰かを見ているように感じていた。
あんな大勢の騎士や部下たちを率いているなんて、知らなかったわ。それに、こんな大きな街の視察の公務も任されているのね。...私、クラスト様の事を何も知らないわ。
「マリー様、せっかくお会いしたんですから声をかけたらどうですか?旦那様もきっと喜ばれますよ」
良かれと思ってエスラは言っているのだろうけど、今はとても声をかけられるような状態ではないのよ...
心の中で呟きながらも、それを知ってか知らずかエスラはね?とニコニコしながら視線で訴えてくる。
確かに、旦那様がいるのを見つけて無視する妻なんていないわよね。一言、声をかけるだけならいいかしら。
意を決してクラストの元へ踏み出そうとしたその時、一人の女性がクラストの元へ走って向かっていくのが見えた。
「えっ...」
思わずマリーは小さく声を上げた。
クラストは、その女性を見ると...とても嬉しそうに微笑んだのだ。マリーに対して向けるものとは違う、初めて見る表情だった。
そのまま二人は親しい様子で話しながら、時折女性の手がクラストの腕に触れる。それを振り払うような素振りも見せず、クラストは受け入れて楽しそうに話をしている。
心臓がドクドクと嫌な音を立てる。今、どうやって立っているのか分からないほど、マリーは動揺していた。
「マリー様...」
エスラが決まり悪そうにマリーを見る。けれど、すぐにはっと思い出したかのように言葉を続けようとした。
「マリー様、あの方は...」
「あれ、君はクラスト侯爵の奥さんじゃないかい?」
その声の方を向くと、大勢の騎士に囲まれたカイルス公爵が立っていた。
「おはよう、ございます」
翌日、目が覚めると隣にクラストはいなかった。いつもは微笑みながらマリーの頬を撫で、幸せそうに見つめているのに。
朝食をとりながら、クラストはいつものように優しい笑みを浮かべながらマリーを見つめる。マリーはどう振舞っていいか分からず、視線が合う度にぎこちなく笑みを浮かべた。
「じゃあ、行ってくるね」
クラストは食事をいつもより早く済ませると、すぐに出かけて行った。マリーは息をふっと吐き出す。
嫌いなわけではない。かと言って、クラストの想いと同じくらい恋愛感情を抱いているかと言われるとそれも違うような気がした。
まさか、クラスト様がそこまで私の事を想ってくださっていたなんて思わなかった。確かに、好きだよと毎日のように言われていたし、好意を持ってくださっていたのはさすがに自覚していたけれど。
あんなに、辛そうな顔をさせてしまうなんて。思い出すと胸が痛くてたまらなかった。
朝食を済ませて書斎へと向かう途中、エスラが声をかけてきた。
「マリー様、今日は街に出掛けてみませんか?ここに来てからずっと書斎にばかりこもっていらっしゃるじゃないですか。外に出て、少しは気分転換も必要ですよ?」
マリーの様子がおかしいことに、エスラは素早く気づいたようだった。
今まではなにも言わなかったのに、さすがエスラだわ。すぐに見抜くなんて。
マリーは頷き、すぐに外出する支度をして街へと出掛けた。
「すごい人ね」
街は活気で溢れていた。特に本以外に興味を持ったことはないけれど、人混みが嫌いなわけではなかった。
人が多い場所はむしろ楽しいと思う。この前のパーティーの時も、初めての場所に最初は戸惑ったけれど、綺麗な装飾に楽しそうな人々、美味しそうな見たこともない料理の数々にとても気分が上がっていたことを思い出す。
エスラとショッピングを楽しんでいると、ふと見覚えのある人物が遠くの方に見えた。
あれは...
「旦那様じゃないですか。そういえば、今日は街の視察に行くとおっしゃっておりましたね」
クラストは、部下に何か指示を出している様子だった。公務中のクラストの姿を初めて見るマリーは、どこか別の誰かを見ているように感じていた。
あんな大勢の騎士や部下たちを率いているなんて、知らなかったわ。それに、こんな大きな街の視察の公務も任されているのね。...私、クラスト様の事を何も知らないわ。
「マリー様、せっかくお会いしたんですから声をかけたらどうですか?旦那様もきっと喜ばれますよ」
良かれと思ってエスラは言っているのだろうけど、今はとても声をかけられるような状態ではないのよ...
心の中で呟きながらも、それを知ってか知らずかエスラはね?とニコニコしながら視線で訴えてくる。
確かに、旦那様がいるのを見つけて無視する妻なんていないわよね。一言、声をかけるだけならいいかしら。
意を決してクラストの元へ踏み出そうとしたその時、一人の女性がクラストの元へ走って向かっていくのが見えた。
「えっ...」
思わずマリーは小さく声を上げた。
クラストは、その女性を見ると...とても嬉しそうに微笑んだのだ。マリーに対して向けるものとは違う、初めて見る表情だった。
そのまま二人は親しい様子で話しながら、時折女性の手がクラストの腕に触れる。それを振り払うような素振りも見せず、クラストは受け入れて楽しそうに話をしている。
心臓がドクドクと嫌な音を立てる。今、どうやって立っているのか分からないほど、マリーは動揺していた。
「マリー様...」
エスラが決まり悪そうにマリーを見る。けれど、すぐにはっと思い出したかのように言葉を続けようとした。
「マリー様、あの方は...」
「あれ、君はクラスト侯爵の奥さんじゃないかい?」
その声の方を向くと、大勢の騎士に囲まれたカイルス公爵が立っていた。
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